そのっちSIDE
あれから月日が経ち、私達勇者部は色んな事が起きた。神樹様は消えてしまい、世界は元の形に変わった。
私達は色んな場所で勇者部としての活動を行っていたけど……彼だけはいなかった。
「……カイくん……」
カイくんは私達を助けるためにその生命を犠牲にしたけど、私達の散華が治ったのは神樹様が新しく体を作ってくれたからだった。
カイくんがやったことは……
「そのちゃん、どうかしたの?」
「あっ、ゆーゆ~ただ……」
私はカイくんからもらった指輪を見つめていた。彼が行ったことは無駄だなんて言えないよ。彼は私達のことを思って……
「そのちゃんのその指輪。海くんがもっていたのと同じだね。もしかして海くんの大切な人って……」
「えへへ~実は言うと婚約指輪だったりするんよ……」
私は笑顔でそういうのであった。カイくんがいなくなって悲しい。だけど泣いていたりしたらカイくん、きっとあの世で怒っちゃうかもしれないよね。だから私は笑顔で居続けないと……
「海くん、まだ戻ってこないんだね」
「う、うん……」
ゆーゆ、ふーみん先輩、いっつん、にぼっしーにはカイくんが死んだということは伝えていない。いや、まだ伝えられていない。わっしーは自分から伝えようと言ってきたけど、私が伝えると言った。でも私はまだ彼の死を伝える覚悟ができていなかった。
「ちゃんと伝えないとね……」
「何を?」
「ゆーゆ、お願いがあるんだけど……みんなを勇者部に集めてほしいかな?」
勇者部にみんなを集め、私とわっしーはカイくんのことを話そうとしていた。
「どうしたのよ。二人共……」
「もしかしてまた何かあったんですか?」
「それだったらいくらでも力になるわよ」
「勇者部五箇条!悩んだら相談!話して」
「友奈ちゃん……」
「あのね、実はね……カイくんのことなんだけど…」
「海の?」
「海さん、今どうしてるんですか?」
はっきり伝えないと……カイくんはもうこの世にいないことを……でも……
「あの、あのね……カイくんはもう……」
私がカイくんの死を伝えようとした瞬間、突然部室の扉が開かれ、そこには……
「ここにいたか……久しぶり。みんな」
カイくんが笑顔でそこにいた。突然のことで私はもちろん、わっしーも驚きを隠せないでいた。
「海!?あんた、帰ってきたの!?」
「帰ってくるならちゃんと連絡くらいしなさい!」
「元気そうでよかったです」
「おかえり。海くん」
「ただいま……みんな。それに……」
カイくんは私に近寄り、そっと抱きしめてきた。
「ただいま……そのっち」
「か、カイくん……どうして……生きてるの?生きてるんだよね」
「あぁ、生きてるよ」
「ど、どうして……海くんは……」
海SIDE
僕はみんなに今までのことを話した。あの時、みんなを助けるために首にナイフを突き刺し、意識がなくなったときのことだった。
「ここは……?」
気がつくとそこは暗い空間にいた。ここが死後の世界なのかと思っていると、一羽の白いカラスが僕のところへ降り立った。
「カラス?」
『初めまして、上里海くん』
どこからともなく声が聞こえると同時に、カラスはまばゆい光を放ちながら、一人の少女に変わった。
『私は上里ひなた。貴方からしてみれば先祖になりますね』
「ご先祖様?それじゃやっぱり僕は死んだんですね」
きっとご先祖様が迎えに来てくれたのかと思った。だけどひなたさんは首を横に振った。
『いいえ、今の貴方は一時的に死んでいるだけです』
「一時的に?どういう事?」
『貴方がやろうとしたこと。自分の命と引き換えにみなさんを救うということは間違っていました』
「どういうことだ?」
『彼女たちの失った体は神樹様が新しく作り直し、与えてくれるはずでした。ですが貴方はその……』
もしかして僕は早まったことをしたのか?それはそれでショックなんだけど……
「無駄死に?」
『無駄死に……になるはずでしたが、私が貴方を助けました』
ひなたさんが助けてくれたって……
『私は貴方のことをずっと見ていました。勇者になれず悔しく辛い思いをしていたことを……自分にできることがないか探していたことを………』
「そうだったんだ……」
『勇者たちを……大切な人を守りたいという思いを受け、私は貴方をこの空間に呼び出しました。ですが、一時的に貴方の魂はまだ召されていないだけ……貴方に選択してもらいたいんです』
「選択?」
『貴方はこのまま天国に行くか……または別の世界で新たな人生を送るか……』
「ちょっと待って、別世界とかよくわからないんだけど……」
『世界というのは無数にあります。どこの世界でも貴方は彼女たちのためにその生命を捧げています。そしてその無数にある世界では貴方は勇者になり、世界を救いました』
別世界では……か。
『貴方はこれからどうしますか?別世界の貴方と同じように勇者になって世界を救いますか?それともこのまま天国に?』
ずっとなりたいと思っていた勇者になれるなら、そうするべきなのだろうけど……僕は……
「僕は勇者に……ならない。天国にも行かない。ただ生き返って……あいつの……大好きなそのっちの所に帰りたい」
『勇者になれるチャンスを失いますよ。貴方はずっと……』
「僕は勇者だよ。ただみんなの勇者じゃない」
みんなの勇者はもうすでにいるからな。勇者部の皆が……友奈がみんなの勇者になってくれるはずだ。それだったら僕は……
「僕は大好きなそのっちの……乃木園子の勇者だよ」
笑顔でそう答えた瞬間、ひなたさんは笑顔になっていた。
『やっぱりあの子の言うとおりね』
「あの子?」
『私にこの事を知らせてくれた人がいるんです。きっと貴方はそう答えるんじゃないかって……』
それって誰なんだ?もしかして神樹様とか?
『あの子は貴方に私のことを姉と呼ばせたりしていましたけど……もしも弟がいたら……海くんみたいな感じだったのかな?』
ひなたさんがそう告げた瞬間、僕の体が光り始めた。
『戻りなさい。大切な人を守ると誓った勇者よ。そして幸せになってね』
「……ひなたさん……」
『私の役割は終わりです。もう会うことは……』
「という事があったんだよ。そして気がついたら病院のベッドで……」
「な、何というか色々とありすぎね」
「でも、海さんが眠っていることをどうして大赦の人は知らなかったんですか?」
「確かに……どうしてかしら」
「ん?起きたときに神官が伝えてくれたみたいだけど……そのっち、なにか聞いてないのか?」
抱きしめているそのっちに聞くと、そのっちは首を傾げていた。
「聞いてないよ~あれ?でも……もしかして……」
「まさかと思うけど、聞いてなかったとか?」
「えへへ~そのまさかだったりするかも~だってカイくんが死んだと思って……思いっきり泣いちゃって……」
まぁそれは仕方ないことだろうけど……
「ねぇ海くん。そのさっき出てきたご先祖様って……海くんの後ろにいる人のこと?」
東郷が指さしたほうを見ると、ひなたさんが笑顔で立っていた。
「ちょ、幽霊とかじゃないわよね」
「違いますよ。初めまして勇者の皆さん。上里ひなたです」
「えっ?えっ?どういう事?生き返ったの?」
「実は言うとですね。海くんが目覚めようとしたときに私の腕を掴んで……『会うことができないと寂しいこと言わないでください。それに見届けるなら最後まで見届けてください』って言ってくれて……気がついたら私も……」
まさかひなたさんがこうして存在してるなんて……もしかして神樹様の力なのか?でももう消えてしまったって言うし……
『まぁちょっとしたサービスですよ』
聞き覚えのある声が聞こえた気がした。今の声って……別世界でもおせっかいな人がいるものだな
「というわけでこれからよろしくおねがいしますね。勇者の皆さん。それに園子さん……海くんとお幸せに」
「うん、海くん。もう死んだりしないでね」
「分かってるよ。お前を最後まで幸せにしてやるからな」
僕とそのっちはひと目を気にせずキスをするのであった。もう離れ離れになったりしないからな
数十年後
僕とそのっちはある場所に来ていた。
「えへへ~ひなたさんと会うの久しぶりだね~」
「本当だよ。というか一度死んだ人だからって、大赦に僕の姉という関係にしてくれって……」
まぁ大赦も初代の巫女に逆らえれないからそうするしかないのだけど……
「にしてもそんなに会いたがるとはな」
「うん、ひなたさんの事好きみたいだからね。ねぇ、みゆちゃん」
「うん、ママ、パパ」
僕らは結婚し、一人娘を授かった。名前はみゆ。みゆは巫女の力と勇者の力を扱えるらしいけど、今はもう戦うことはなくなったか必要じゃないけど、あることがきっかけで変なことができるようになったりしている。
「みゆちゃん、別世界に行ったって本当かな?」
「どうだろう?お姉ちゃんなら知ってるんじゃないのか?」
まぁ不思議な事があるということだな。
「……ねぇ、あなた」
「どうしたんだよ。改まって……」
「私、幸せだよ」
「僕もだ」
「約束……忘れないでね」
「分かってる」
最後まで幸せにしてやるからな。そのっち
というわけでHappy Endだとひなたのおかげ……というべきかある人のおかげで海は生存。そしてひなたも何故か生き返ったという形でいたりします。
Happy Endはどんな風にするか悩みに悩みまくり、勇者の章が終わった時点での話になっています。
そして最後に出てきた二人の娘、みゆは不思議な力を扱えるようになっているということは……あることがきっかけだったりしますね。
因みにハーデンベルギアの花言葉は壮麗 広き心 思いやり 過去の愛 奇跡的な再会 運命的な出逢い 幸せが舞い込むです。
短い連載でしたが、自分でも満足できる形で終われました。また何かしらの機会があったらゆゆゆで書くか……はたまた10月より始まる同じ原作者のアニメの話を書くか……お楽しみに