大赦から勇者システムの新たな力に聞かされた僕。
「何だよこれ……」
「それが大赦が見つけた勇者たちの力です」
安芸先生は平静を保っているが、やっぱり辛そうにしている。そうだよな。このシステムならそのっちも須美も死ぬことはない。死ぬことはないけど……
「二人には?」
「伝えていません」
「……」
僕はこの事を二人に伝えようとするが、安芸先生が僕の腕を掴んで止めた。
「二人に話してどうするつもりですか?」
「こんなの……隠していた所でいずれ二人に気づかれる……それだったら……」
「二人に話し、二人は戦うことを止めるでしょう。ですがそうすれば四国は……世界は滅びますよ。貴方はたった二人のために他の人を見捨てるのですか?」
「誰かを犠牲にしないといけないなんて許されると思ってるんですか?先生……」
「許されないでしょう。だからこそ私達大人は責任を取ります。貴方は彼女たちの友達という立場ではなく、上里家の人間としてよく考えてください」
「……くそったれ」
僕は壁を思いっきり殴るのであった。
一人でどうすればいいのか悩んでいたせいか、学校を休んでいた。
「二人を犠牲にするか……他の人を犠牲にするか……か」
何でその二つの道しかないんだろうか?勇者も人類も救う道があるんじゃないのか?
だけどいくら考えても何も思いつかない。どうしたらいいのか悩んでいると……
『カイくん~入るよ~』
部屋の扉越しからそのっちの声が聞こえた。時間を見るともう学校も終わっている……
「どうぞ」
そのっちを部屋に招くと、そのっちはニコニコしていた。
「病気かなって思ってたけど、ズル休みだったんだね~」
「ズル休みではないよ。ただ色々と考えることがあって……」
「考えること?」
僕はそっとそのっちを抱き寄せた。前だったらそのっちはどうにか逃げようとしていたのに、ぎゅっと抱きしめ返した。
「どうしたの?」
「ごめん……僕は……大赦はそのっちと須美の二人にある隠し事をしてるんだ」
「隠し事?」
「言えないけど……きっとお前ならすぐに気がつくと思う……それに対してお前は怒ったりするから……だからそのときは僕のこと……」
僕が何かを言いかけた瞬間、そのっちがキスをしてきた。キスを終え、そのっちは恥ずかしそうにしながら……
「嫌いにならないよ。だってカイくんは言えなくって辛いんだよね……きっと大赦の大人の人たちもそうかもしれない……だからって私はカイくんのこと嫌いにならないよ」
そのっちは笑顔でそう告げるのであった。全くそのっちは……
「そうだ、カイくん。今からわっしーと遊びに行くんだけど、一緒に行く?」
「いや、やめておくよ。一応学校休んでるからさ」
「そっか~それじゃまた今度ね」
そのっちは笑顔でそう言うのであったけど……
「また今度……か」
何故か嫌な予感がする。きっと何も起きないよな……
一週間後
僕は大赦のある一室に来ていた。その一室はまるで何かを祀っているような……いや祀っているんだよな。
「上里海、只今参りました」
「………ごめんね。彼と二人にしてほしいかな?」
彼女は周りにいる大赦の神官たちにそう告げ、神官たちが部屋から出ていった。
「……呼んだ理由はなんですか?」
「……カイくん……やめて、その喋り方……」
祀られた少女……そのっちは悲しそうな声でそう告げる。一週間前、そのっちがお見舞いから帰った後の夕方、バーテックスの進行があり、そのっちと須美の二人は勇者の新たな力『満開』を使用して戦った。だけど満開には危険な後遺症……『散華』と呼ばれる体の一部を供物に捧げられてしまい、須美は記憶と両足の機能を失い、そのっちは肉体の多くを失い、現在は神樹様に多くの供物を捧げた存在『半神』と呼ばれ、祀らわれている。
「今の貴方に対しては……こうするように言われているんで……」
「カイくん……」
僕はそのっちの左手の薬指にはめられた指輪を見た。まだはめていたんだな……
「要件がなければ僕は行きます……」
そう言い残して、僕は部屋から出ていこうとするが、そのっちに僕はあるものを見せた
「カイくん……」
「きっと元の体に戻してやるからな」
部屋から出る瞬間、そのっちは泣いていた。僕は首にかけた指輪を見つめた。
「きっともとに戻してみせるからな……そのっち……」
それから月日が経った。再びバーテックスの進行があると言われ、僕は勇者になるかもしれない数多くの候補地の一つである讃州中学に入学し、ある部室に来ていた。
「……あんたは入部希望者?」
「話は聞いてるはずだよ」
「………そう、あんたがお目付け役?」
「あんたの方にも命令が言ってるはずだ。勇者候補である二人を勇者部に確保するようにって……」
「そしてあんたはその見張りってわけね」
「見張りか………それはちょっと違うかな?僕は見届けるしか出来ない」
僕には見届けることしか出来ない。
「見届けるだけ……ね。あんたはそれでいいの?」
「………」
「まぁいいわ。はい、これ入部届」
「……入部しろと?というかここは何の部活なんですか?」
「勇者部よ。まぁ言うなれば勇んで人助けをやっていく部活」
「ボランティアってことか。まぁ面白そうだし、いいか」
僕は入部届に名前を書き、先輩に渡した。先輩は満足そうな顔をしていた。
「それじゃよろしくね。えっと」
「上里海です。よろしくお願いします。先輩」
「私は犬吠崎風。どれくらいの付き合いになるかはわからないけど、よろしく」
僕は先輩と握手を交わす中、突然部室の扉が開かれた。そこには……
「あれ?えっと……」
「同じクラスの……上里くん?」
同じクラスの結城友奈……大赦に伝わる習わしの名前を持つ少女と鷲尾須美だった少女東郷美森か
「一応自己紹介はしたけど、もう一度しておくよ。僕は上里海。よろしく」
「初めまして、私は結城友奈です」
「友奈ちゃん、初めましてじゃないよ。東郷美森です。あの出来れば東郷って呼んでほしいな」
「分かった。よろしく」
こうして新たな物語が進もうとしていた。だけど僕はもう見届けることはしないから……