さて、実はこのすばととある別作品とでクロスオーバー二次小説を書こうと思ってますが、結構難航してます。頭でプロット作る癖はやめた方が良いですね、はい。
「アクア。これ、お湯なんだけど。僕が要求したのはお茶なんだけど」
「あらあら、私としたことがうっかりしていましたわ。今、入れ直しますわね、カズマさん」
水の女神による浄化作用により、ただの熱いお湯を飲まされて早くも5杯目。いい加減味のある飲み物を口にしたいため、指を突っ込むなよ、と念を押しておく。多分無駄な助言だとは思うが。
今日は全員屋敷で特に何かをする予定もなく、各々満喫したスローライフを送っている。最も、カズマとアクアはいつも通りと言えばいつも通りなのだが。
アクアのお茶を待っている間に、ソファーに座るカズマの隣にめぐみんがちょむすけを抱きつつ座る。
「それにしても、触れただけで水に変化するなんて、どういう原理なんですか? 確かにプリーストは浄化魔法は使えますが……」
「うむ、それは私も気になるな。魔法を使っている素振りもないし、まさかアクアの新しい芸の力か?」
椅子に座り、優雅に紅茶を飲むダクネスもアクアの力に興味を抱いたようだ。だが、アクア自体は聞こえておらず、鼻歌混じりでお茶の準備に勤しんでいる。
アクアが魔法を使わずに汚染水等の浄化ができるのは、アクアが本物の水の女神であるおかげなのだが、いかんせん信じない人達の方が圧倒的に多い。女神なんて不可思議な存在が実在する、なんて言われて信じる人は稀有だろう。黒髪黒目のチート持ち日本人なら信じるだろうが、この世界の住人達はアクアやエリスといった女神は空想上の生き物という認識しかないのだ。信じられないと言われるのも無理はないだろう。というか、アクアを信仰するアクシズ教徒自体ヤバイ宗教なのであまり関わりたくないのも本心である。
なのでこれ以上の話題は無意味だと思い、カズマは何も言わずめぐみんが撫でるちょむすけの鼻を指先で弄る。可愛らしくくしゃみをして心がホッコリしたところで、
「カズマ様。お茶の用意ができましたわ」
「ご苦労である」
ホカホカと湯気が立ち込めるカップがテーブルに置かれ、カズマはそのカップを手に持ち香りを確かめる。茶独特の匂いが鼻孔を擽り、しかし喉が渇いている今はその香りだけで飲みたい衝動に駆られてしまう。抹茶のような匂いに誘われ、カップの中にある茶を一口啜る。苦味があり、しかしそれが癖にもなる深い味わいが口いっぱいに広がりーー
「って、またお湯じゃねぇか!!」
そんな訳はなく、口に広がるのは味もしない普通のお湯だった。香りだけはちゃんと茶葉の匂いなだけにタチが悪い。
カズマはアクアに摑みかかるが、アクアはそれを阻止する。
「ま、待ってくださいませ、旦那様! こ、これには深い訳が!!」
「どんな訳があるというのかね?! どれ、茶も満足に淹れることもできない駄メイドには、キツーイお仕置きをしてやろうじゃないか!!」
「あーれー!! お代官様ー、お慈悲をー!!」
「……そのオダイカン様とはなんだ? というか、何のモノマネだ、それは?」
「「ララティーナお嬢様宅のメイド事情バージョン改」」
「だから、私のメイドがそんなふしだらな事するわけがないだろう!!」
飲み干したカップを乱雑にテーブルに起きつつ、ダクネスの怒号が屋敷に響き渡る。息ピッタリのカズマとアクアの連携にもつい苛立ちが沸いてしまったのだろう。
そんな様子を見てめぐみんが溜め息を吐きつつ、改めてアクアを見る。
「しかし、先程から給仕とかやってましたからどういう風の吹きまわしだろうって思ったら、メイドになりきってたんですね……しかもちゃっかりメイド服まで着て、一体どこで手に入れたんですか?」
そう、今のアクアの姿は完全にメイドそのものである。白黒の生地が使われ、長袖にフリルの膝が見えない程の長めのスカートを履いている。露出は少なめだが、胸の部分は強調されており、上半分が少しだけ肌が出ている。客観的に見てもかなりエロい姿だ。メイドのカチューシャ帽もきちんと着けている。
アクアはその場で一回転する。
「ふふ、いいでしょ? カズマが試作品として作ったメイド服よ。まだ改良の余地があるとかで捨てる気満々だったから、この美しい女神ことアクア様が貰っておいてあげようって思ってね」
「この男はまた無駄なスキルを活用して……なんですか、この胸元は。完全にカズマの趣味全開じゃないですか」
「男は常にロマンを求めるもんさ……俺がその気になれば、これ以上にエロい服を仕立てることも可能だぞ」
鍛治スキルのおかげか手先が器用になりつつあるカズマは、興味本位で服を作り始めたのだが、これが意外に楽しいということに気付く。そしてメイド服を仕立てたものの、まだ納得がいく出来栄えではなかったため、今夜も試行錯誤の徹夜ルートは免れないだろう。
そんなことを考えて満足気に頷くカズマだったが、めぐみんはどこか不機嫌そうだ。頰を若干膨らませ、目も紅く輝いている。
「なんですか。誰かに着せる予定があるということですか。誰ですか! 一体誰なのか、聞かせてもらおうか!!」
「ちょ、お前何怒ってんの?! そんな予定ないから!」
「では、私がその役を買ってでましょう! それなら、作業効率も上がるでしょう?!」
「えっ、いや、だってお前……胸がーー」
「ぶっころ」
カズマが言い終わる前に全てを察しためぐみんがカズマに襲い掛かる。ソファーから飛び上がり、両手を振り上げて攻撃を仕掛けるが、カズマはその両手の手首を己の両手で掴み、なんとか押さえ込む。ちなみにめぐみんが抱いていたちょむすけは避難を終え、片隅で丸くなっている。
「ちょ、落ち着け! こればっかりは仕方ないだろ! 服作りだって色々と考えて作らなきゃいけないし、お前の好みの服もちゃんと作ってやるから!」
「本音は?!」
「ぶっちゃけ巨乳の美人さんに着せたいたたたた!! 腕が、腕がもげるぅうううう!!」
めぐみんが魔法使い職とはいえ、レベル的にはめぐみんの方が上ということもあり、腕力もカズマよりも上である。手首を掴まれているというのに、捻りを加えて逆にカズマの方がダメージを受けてしまっている。
「この男は!! やはり胸ですか!! 男という生き物は巨乳が好きなんですか!! 数年後には絶対後悔しますよ!! 私もいずれは大きい胸でカズマを誘惑してやりますからね!!」
「望みは薄いから諦めろ!! おい、アクア! ダクネス! 助けてーー」
「ねぇ、ダクネス。カズマとめぐみん、どっちが勝つと思う? 私はめぐみんが勝つに一票よ」
「む、これは難しいな……カズマが卑怯な手を使えば勝てる可能性はグッと上がるが……」
「なに賭け事してんだ、お前らぁあああ!!」
真剣な表情で賭け事をするアクアとダクネスに渾身の叫びを上げるカズマ。いよいよもってガチで腕が折れる寸前まで持っていかれーー
「あ、そういえばカズマ」
「うぉ!!」
急に取っ組み合いを止め力を緩めためぐみんに、力のやり場を失ったカズマは思わず前のめりになり、めぐみんに思わず抱きついてしまった。しかも勢いもあったためか足が縺れてしまい、めぐみんの後ろにあるソファーに二人とも倒れてしまう。
「きゃっ」
可愛らしい声がカズマの耳元から聞こえたがそれどころではない。カズマは憤りを露わにしつつ顔を上げる。
「おま、危ねぇじゃねぇか! 力緩めるなら、前もって言ってくれよ! 怪我ない……か……あれ?」
今、自分とめぐみんの状態が非常にマズイことに気付く。
端的に言えば、カズマがめぐみんを押し倒しているようにしか見えない。めぐみんの顔の横には自分の手が置かれ、めぐみんは心なしか顔を赤くしている。先程の興奮状態から抜け出せていないのか、それとも今この瞬間にも照れてしまっているのか、目も紅く息も若干荒い。
カズマは冷や汗をダラダラと額から流しつつ、椅子に座っているであろうダクネスと、その近くにいるアクアを横目で確認する。
「お、おま、お前……な、何をしているんだ……!!」
「うわぁ、これはもうロリマさん確定ねー……」
そこにいるのは、怒りと羞恥で顔を真っ赤にするダクネスと呆れ顔でこちらを見るアクアの姿だった。
最後にめぐみんを見る。めぐみんは目を若干逸らしつつ頬を赤くしながらも、小声で呟いた。
「……き、キスまでなら良いですよ……」
カズマは近くに置いてあったお湯を自分の頭に思い切りぶちまけた。
ーーーー
「カズマ、いい加減機嫌直してください。私も悪いと思ってますから」
めぐみんは反省混じりの声を出すも、肝心のカズマはため息を吐いていた。よほどさっきのトラブルに神経を擦り減らしてしまったのだろうか。
現在カズマとめぐみんはアクセルの市場に来ている。というのも、めぐみんが朝に冷蔵庫を確認したところ、晩飯までの食材が色々と足りていないことに気付いたのだ。早めにカズマに報告しようと考えてはいたのだが、肝心のカズマが昼過ぎにようやく起きてきたため、報告するのをすっかり忘れていたのだ。
そして取っ組み合いの最中に思い出し、予期せぬトラブルが発生してしまったため、カズマの機嫌はまだ悪い。
「でも、頭からお湯を被るのは正直どうかと。火傷しなかったから良かったですけど、カズマの行動は最早ヘタレを通り越して無謀の域に達していますよ」
「うるせー。男はな、頭を冷やすんじゃなくて、その逆をしたくなる生き物なんだよ」
「意味がわかりません……あ、その野菜取ってください」
カズマはまだ機嫌が悪そうだが、ちゃんと野菜を取ってくれる辺り、既に怒り自体は収まっているのだろう。めぐみんも先程のトラブルに罪悪感を感じ、買い物に付き合うことにしている。
晩飯の献立を何にしようか、今日の料理当番担当のめぐみんは考える。最近はカモネギを使った料理ばかりだったので(主にカズマのレベル上げのため)たまにはさっぱりした物が食べたいところだ。
そこまで考えて、ふと気付いてしまう。
現在、カズマとめぐみんは二人で買い物をしている。そう、二人で。
これは、所謂デートというやつではないのか。
つい最近のデートといえば、アクアも同席で爆裂散歩に行き、そこで弁当を食したのが新しいが、あれは誰が見てもただの家族旅行にしか見えなかっただろう。つまりは、失敗に終わっている。
だが今はカズマと二人きり。カズマはまだ若干不機嫌そうだが、こうして二人で買い物をしている風景は、誰しもが恋人同士に見えるのではないか。それを考えるだけで胸が高鳴り、頬も熱くなる感覚を覚える。
チラリと、無意識にカズマを見る。
「なぁ、めぐみん。他に何か買うもんあるか? お前欲なさ過ぎだから、たまには何か買ってやるぞ」
会計を済ませながらそんなことを言うカズマに、やはり彼は心根の底は優しさに満ちていると実感する。そんなカズマがとても愛おしくて、空いている手をギュッと握り締める。
「……えっ?」
「特に何もないですよ。これだけで充分です」
めぐみんは微笑みつつ、少しだけ握りしめる手に力を込める。それだけでカズマは照れてしまったのか、そっぽを向いた。耳まで赤くなってしまっているため、隠せてもいない。
「相変わらず照れ屋ですね、カズマは。そろそろ慣れてくれても良いんですよ?」
「てて照れてねーし。っていうか、お前もお前だよ。いきなり手なんか握りやがって。思春期真っ盛りな男子はなぁ、それだけで勘違いしつまうんだよ。少しはこういうのやめろよな」
「そんなに顔が真っ赤では説得力がありませんよ。さぁ、買うものはこれで全部ですよね? 今日はこのまま手を繋いだまま帰りましょう」
悪戯染みた笑顔でそんな要求をしためぐみんに、カズマは驚愕していた。手を繋いだまま帰るという公開処刑に物申したいのだろう。
だが、その抗議の声を出させる間もなくめぐみんはカズマの手を引っ張る。
「さぁ、帰りましょう、カズマ」
振り向きつつ、常に笑顔を絶やさぬめぐみんに、カズマはどう思ったのかはわからない。だが、照れくさそうにされるがままのカズマは決して手を振り払おうとはせず、ただめぐみんの最低限の我が儘に付き合ってくれる彼の優しさが、今はとても心地よく感じていた。
いつか、仲間以上恋人未満の関係からその先に行けることを、めぐみんは心の底から願った。