このすば!短編集   作:ヒザクラ

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どもども、ネタは浮かぶけどなかなか執筆が思うようにいかない男、ヒザクラです。

最近自分が書くカズマ達って性格違うんじゃないかなーって思ったんです原作読み直してます、はい。


カズマの膝枕

「カズマー。少しは構ってくださーい」

「……いや、何やってんの、お前……」

 

 月明かりが窓から注ぎ込み、暖炉の火も少しだけ弱くなってはいるが、月明かりと相まってより幻想的な姿を見せている頃。

 テーブルには酒が乱雑に置かれていたり転がっていたり、そしてその酒を飲み過ぎたアクアとダクネスは酔いが回り、床で寝転がっていた。アクアに至ってはイビキが出てしまっており、この幻想的な景色は全て台無しになってしまっている。

 そんな中、酒を飲む気になれなかったカズマと、やはり飲ませてくれないめぐみんは暖炉の前にあるソファーに座り、しばらく談笑していた。時には旅の思い出、時にはクズマさんのお出まし、時にはこんな夜中なのに爆裂散歩に行こうと宣うめぐみん。しかし、なかなかに充実した時間を過ごしていた。

 そしてそろそろ眠気が来た頃に、カズマは今の状況に困惑する。

 何故かめぐみんが寝転がるーーいや、正確にはカズマの膝を枕代わりに頭を置き、カズマを見上げている状態で構えと言い始めたのだ。

 普通逆ではないのかと問いたいところだが、突っ込むと余計拗らせる気がするので割愛する。

 

「構えって、この状況でどうしろっつーんだよ。エロいことして良いの?」

「迂闊に私の体に触れた瞬間、カズマの指が一本ずつ逆向きになる刑を与えます」

「サラッと怖いこと言うんじゃねぇよ! ってかステータス的に出来そうな気がするし!」

「あまり大声出さないでください。二人とも起きちゃいますから」

「はいはい……で、お前は何故急に俺の膝を枕にしてんの」

「カズマの膝って固くて枕の代わりにもなりませんね」

「喧嘩売ってんのか」

 

 カズマの暴言を物ともせず、めぐみんは微笑みつつ、

 

「いえいえ、ちょっと気になっただけですよ。カズマってアクアに生き返らせて貰う時に毎回膝枕して貰ってるじゃないですか。膝枕ってどんな感じなんだろうなって」

「だからって俺で試さなくてもいいだろ。アクアに頼めばいつでもしてくれると思うぞ? ってか、男の膝枕なんて誰得だよ」

 

 アクアがいつもしてくれる膝枕は、生き返ったばかりで意識はしたことはないのだが、今思えば女性特有の柔らかさがあった。まるで母性が溢れんばかりに心も体も優しく包み込まれるかのような感覚に、つい二度寝も辞さない程の気持ち良さだった。性格がアレなアクアと言えども、そこだけは良かったと思える程だ。

 対して、男の体は余程肥えていなければ筋肉質な方だ。つまり固い。とてもじゃないが膝枕して貰いたいとは思わないだろう。

 そんな結論を導き出したカズマは悩ましげに頷くが、めぐみんは少しだけ口を尖らせる。

 

「まぁ、確かに気持ちの良いものではないですね。少し固いですし、寝れるか? と問われれば、いいえと答えるしかないでしょう」

「だろ? だったら早めにどいてくれ。でないと俺の足が痺れる」

「もう少し良いでしょう? 確かに寝心地は悪い方ですが、カズマの顔を下から見れるのがなんか新鮮で」

 

 再び微笑みつつ言うめぐみんに、体がこそばゆくなる感覚を覚える。

 こうも毎回ストレートな好意をぶつけられているというのに慣れる気が全くしない。常に豪速球であるため、その想いを受け止めるだけの度量の無さに自分が情けなくなってくる。

 なので、少しばかり悔しいのでカズマはめぐみんの頭に手を置いた。

 

「ひゃ……な、なんですか?」

「日頃のお返し的な感じ」

 

 言いつつ、そのまま猫をあやすように撫で始める。最初は額を、次第に鮮やかな程の黒髪へ指を這う。風呂上がりだからだろうか、髪はしっとりとしており、なかなかの心地良さを感じる。

 

「ん……」

 

 少し艶やかなめぐみんの声が耳に入り、カズマは正気に戻る。悪戯するにしても、女性の髪に迂闊に触れるのは幾らなんでもタブーのはずだ。

 慌てて手を離すと、めぐみんは少々不機嫌そうな顔でカズマを見上げる。

 

「やめちゃうんですか……?」

「ばっ、おま……変な声出すからだろ!」

「流石はヘタレで有名なカズマですね。まぁ、頑張った方でしょう」

「あのなぁ……はぁ、もういいや」

 

 勝ち誇るめぐみんにもう何も言えなくなってしまったカズマは、諦めて溜め息を吐く。

 めぐみんの余裕のある言動や何度もぶつけてくる好意には慣れる気が一切しない。むしろ何故ここまで自分のようなヒキニートに本気でぶつけてくるのか理解できない、というのが本音だ。

 だが、こうやって時折ふざけるような喧嘩をしたり話し合ったりする関係がとても心地よく感じてしまっている自分がいる。

 そんな考えが浮かんでつい照れ臭くなってしまい、

 

「めぐみん」

「なんです?」

「俺、お前のこと好きか好きじゃないかって言われたら、好きな方かもしれなくもないかもしれない」

「何ですかいきなり?! しかも曖昧すぎて反応に困るんですけど?!」

「照れてんだよ、言わせんな恥ずかしい」

「照れるならもう少しまとまった言葉でお願いしますよ!!」

 

 小さな怒号が聞こえるが、めぐみんの耳が赤いので彼女も若干ながら照れてしまったのだろう。何とか仕返しができて感無量といったところか。

 カズマは欠伸をする。

 

「さて、そろそろ寝るかぁ。めぐみん。アクアを頼む」

「えぇー。もう寝るんですか? いつもなら朝までゲームしているというのに」

「流石に今日は疲れたんだよ。明日は朝どころか昼まで寝ちまうな」

「それいつも通りじゃないですか……あっ、ダクネス背負うのは良いですが、セクハラしないようにお願いしますね」

「……」

「おい、何故目を逸らしたのか聞こうじゃないか」

 

 完璧なまでに思考を読まれてしまい、冷や汗を少量流しながら暖炉を見つめるが、かえってめぐみんの逆鱗に触れたようだ。目を赤く輝かせ、侮蔑の表情で見上げている。

 

「し、しないから目光らせんな。ほら、どけよ」

「全く……あ、カズマ。もう少し顔を降ろしてくれませんか?」

「寝るって言ってんだろ」

「最後のお願いですよ。ほら、早くお願いします」

 

 最後のお願いにしては随分と図々しいと思いつつ、カズマは溜め息を再び吐きながら顔を下に下げる。

 瞬間、めぐみんの手がカズマの頬に添えられる。急な仕草に思わず体がビクッと震え、顔も動きを止める。

 それが引き金になったのか、彼女の手はーーいや、正確には指をカズマの顔に滑らせている。何の挙動なんだと言い掛けたが、その前にめぐみんの人差し指がカズマの口に押し当てられる。

 

「ふふっ、カズマの膝は固いですが、口は意外と柔らかいですね」

 

 そんなことを口走るめぐみんに頬が一気に熱くなる。

 今の彼女の微笑みはどこか妖艶で、2歳年下にも関わらずどこか大人っぽくて、めぐみんの赤い双眸から目を離せなかった。

 まるでこれから恋人同士による夜の関係が始まってしまうのではないかと期待してしまいーー

 

「さて、二人を部屋に運びましょうか」

「めぐみん、俺はーーあれ」

 

 そんなカズマの考えをよそに、めぐみんはカズマの膝からいとも簡単に離れ、立ち上がっていた。カズマはこの滾ってしまった感情と理解が追いつかない今の状況に混乱してしまっている。

 次第に落ち着きを取り戻す。またもやめぐみんに弄ばれてしまったのだと自覚し、三度目の溜め息を吐くと同時に、

 

「さっ、カズマ。二人を部屋に運びましょう」

「ああ、うん……俺もちゃんとダクネス運ぶから、先にアクア運んどいてくれ……」

「? どうかしたんですか?」

「いや……まぁ、うん……ちょっと眠気が無くなったっていうか……」

「はぁ……わかりました。それじゃあ、先にアクアを運びますので、カズマも忘れずにダクネスを運んでくださいね」

 

 未だに首を傾げるめぐみんだが、カズマの様子を気にしつつも、未だにいびきを掻くアクアの肩を持ち上げ、特に苦労する様子もなくリビングを後にした。

 残ったカズマは、規則正しく寝息を立てるダクネスの呼吸を静かに聞きながらーー股間へと目を向ける。

 

「……ホント、あいつ魔性の女だろ……」

 

 この燃え滾る自分の息子はいつになったら収まるのだろうかと、頭を悩ませることになったのだった。

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