早くアニメこのすば三期やらないかなー。
「『エクスプロージョン』!!」
紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみんはいつもの日課である一日一爆裂をしに、いつもの森奥でカズマを連れて爆裂魔法をぶちかました。
爆音と暴風をその身に感じながら、しかし爆裂ソムリエを名乗るカズマは首を傾げつつ、魔力を全て使い果たし地面にうつ伏せになるめぐみんに、今回の爆裂への感想を告げる。
「60点……かな?」
「くっ……! 厳しいですね、カズマ。ただ、今回の爆裂は私自身も不調だと感じました……」
悔しそうに、しかし納得のいく採点だったのだろう。文句一つも言わなかった。
「一体どうしたんだ?」
「何といいますか……朝から頭が痛いと言いますか......朝ごはんもほとんど喉を通りませんでしたし」
「......ちょっと失礼するぞ」
カズマはめぐみんに近づき、そっとめぐみんの額に手を当てた。急な行動にビックリするものの、ひたいに置かれたカズマの手はヒンヤリしており、とても心地よい。
(はふぅ......幸せです......)
「......なんか熱いな。もしかして風邪引いたんじゃないか?」
「えっ」
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めぐみんを背負って屋敷に戻る頃に、めぐみんの容態が悪化した。頬が赤くなっており、苦しそうな息遣いをしていた。ダクネスとアクアに事情を説明し、めぐみんを彼女達に任せることにする。パジャマに着替えさせなければならないのだ。自分が着替えさせる訳にはいかない。
(残念だって思ってないからな......本当だからな!)
誰に言い聞かせているわけでもなく心で念を押すカズマは、薬と風邪に効く食材を買いに町に出かけ、すぐに帰ってきた。
「ただいまー」
「おふぁえりー」
アクアはダラけながらソファーで菓子を貪りながら寛いでいた。
「めぐみんはどうだ?」
「部屋に寝かせたらすぐ寝ちゃったわ。今ダクネスがめぐみんの看病してるわよ」
「そっか。で、お前は何をしたんだ?」
「ひいえおふぉろきなふぁい!」
「食いながら喋んな」
菓子をゴクリと飲み込んだアクアは、行儀悪くソファーの上に立ち上がり、人差し指をカズマに向けて自信満々に言い放った。
「めぐみんを元気付けるために、私の芸を披露して--痛い痛い! カズマさん痛い!」
「余計悪化させるようなことするんじゃねぇ!」
アクアの頭を両拳でグリグリしたカズマは溜め息を吐きつつ台所に向かう。アクアは涙目になりつつ、
「あれ、カズマさん。まだお昼じゃないのに何で台所に? なんか作ってくれるならお酒のつまみとか作って欲しいんですけど」
「なんでお前のために作んなきゃならないんだ。ちげーよ、めぐみんに消化の良い物作るんだよ」
カズマは食材を並べつつ腕捲りをする。そんな姿を見て、アクアは台所の入り口でチラリとその様子を見ながら、
「こんなのカズマさんじゃない......誰かのために働くなんてカズマさんじゃない! 偽物ね、偽物なのね?!」
「なんでだよ! そんなに珍しいかよ?! 俺だって良いことだってたくさんやってるだろうが!」
「......そうだったかしら? 確か昨日あんたの金髪の友達と一緒にあの受付嬢にセクハラ紛いをしてたような」
「誠にすいませんでした」
即座に土下座ポーズをするカズマに、アクアは侮蔑の目でカズマを見据えている。
悪友のダストと一緒だとつい悪ノリしてしまうのが自分の悪い癖だとは自覚しているが、あれだけ大きなメロンが目の前にあれば誰でも見てしまう。ガン見してしまう。それが男の性というものだ。ちなみにそれを力説すると、めぐみんからも侮蔑の目で見られ、ダクネスに至っては『くぅう! そんな、そんな目で見ているとは!』と興奮気味に喋っていた。
カズマは気を取り直し、料理を始める。
「昨日は昨日、今日は今日だ。風邪って魔法じゃ治せないんだろ? だったら、少しでも早く治すためにも、ちゃんと飯を食べさせないとな」
スムーズに食材を切り分けていく。趣味で料理スキルを取ったがもしかしたらこの日のためだったのかもしれない。
喉を通りやすいお粥にでもしようと考えて、ふと不自然な視線が突き刺さっている感覚を覚える。その視線を追うと、アクアがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「カズマさんってなんだかんだめぐみんに甘いところあるわよねぇー」
「べべべ、別に甘くねぇよ!! 仲間の心配をするのは当然のことだろ!! ほら、気が散るからあっちいってろ!!」
動揺を隠しきれていないが、未だニヤニヤしているアクアを追っ払うことに成功。だが顔が熱くなっているのを感じている。多分他人が見ても顔が真っ赤になっているのは明白だろう。
(俺はただめぐみんの風邪が治ってほしいだけだ! それだけだ!! やましい気持ちなんてこれっぽっちもないからな!!)
そんな事を考えつつ、カズマは料理をする手を早める。
ーーーー
お粥を作り終えたカズマは、薬と一緒に持ちめぐみんの部屋へと足早で向かっていた。
別段急ぐ必要はない。ダクネスがきちんと診ていてくれているため、めぐみんの風邪がこれ以上悪化することはまず無いだろう。
なのに、何故こうも焦りを感じるのか、カズマは理解できないでいた。
(......風邪が魔法じゃ治せないからか? それとも、病気で死んだら生き返れないからか?)
ネガティブな考えが駆け巡るが、しかししっくりとこない。もっと別の何かだろうか。
考えが纏まらない状態でめぐみんの部屋へと辿り着くところで、部屋のドアが開く。洗面器を持ったダクネスだ。
「ん? カズマか」
「ダクネス、めぐみんは?」
「熱が下がらないんだ.....薬は?」
「買ってきてある。消化に良いお粥も作っておいたぞ」
「それはありがたい。まだ目を覚まさないが、起きたら上げると良いだろう。それと、カズマ......すまないが、私はこれから家の事情で出掛けなければならない。私の代わりに面倒を見てやってくれないか?」
申し訳なさそうに顔を俯かせるダクネスに、カズマは、
「しょうがねぇなぁ。家の事情なら仕方ない。めぐみんの面倒は俺が見るよ」
「助かる......言っておくが、病で気が弱っているめぐみんを襲うなどとは」
「しねぇよ!! 俺もそこまで節操なしじゃねぇから!!」
「わからんぞ!! カズマのことだ、病で動けないめぐみんに覆い被さり、まるで獣の如きいやらしい目でめぐみんを見つつ、あの小さな身体を弄ぼうと服に手を掛け......!! んくぅ!! カズマ!! やるなら私にしろ!! 安心しろ、私も手も足も出ない状況で襲われてやる!!」
「しねぇっつってんだろ!! いいからとっとと出掛けてこい!!」
手に持ったお粥をダクネスにぶち撒けようかと思ったが、逆にダクネスにとってのご褒美になる上にこれはめぐみんのための料理だ。そんなことに使う訳にはいかない。
めぐみんの部屋に入り、両手が塞がっているため足を使ってドアを閉める。外からダクネスが何か言っている気がするが、全て無視する。
と、ここで少し冷静を取り戻したカズマは、めぐみんが寝ているであろうベッドを見る。今の騒ぎで起こしてしまったかもしれない。
しかし杞憂に終わる。頭に冷えたタオルを乗せているめぐみんは、少し息を荒げなからも静かに寝ていた。ダクネスも既にその場を去ったのか、ドア越しに聞こえていた声はいつの間にか消えていた。
安堵したカズマは手に持つお粥と薬を近くのテーブルに置き、椅子をめぐみんのベッドの近くまで持って行き、椅子に腰掛ける。
本当はこの苦しさから解放してやりたい。すぐにでも薬を飲ませたいが、寝ている彼女を起こす訳にもいかない。
(......早く良くなれよ)
言いつつ頭に手を伸ばすが、起こすかもしれないので思いとどまる。
と、ここまで自分の行動を振り返ってみると、自分らしくないことに気付く。
確かにめぐみんは自分にとってかけがえのない仲間だが、ここまで必死に彼女のために動いたのはある意味初めてかもしれない。彼女のストレートな告白を受けすぎておかしくなってしまったのだろうか。
「んぅ......かず、ま......」
「ぅおっと......めぐみん、起きたか?」
急にめぐみんが喋りだしたので若干驚いてしまうが、すぐに取り繕って彼女の顔を覗き込む。めぐみんはうっすらと目を開けカズマを見るが、朝の爆裂散歩からは想像出来ないほどに弱っているのが見てわかる。
「大丈夫か?」
「......けほ......ちょっと苦しいです......」
「そっか。ちょっと起きれるか? お粥作ったんだ。薬も買ったから、飲めば多少は楽になるぞ」
「はい、起きます......それにしても......けほ、カズマがいつも以上に優しくて、ちょっと戸惑ってます」
めぐみんは濡れタオルをカズマに渡す。カズマは濡れタオルをテーブルに置き、お粥を手に取る。
「うるせー。お前は今病人なんだ。黙って看病されてろ」
「......ふふ、ありがとうございます」
カズマは椅子に再び座り、お粥に乗せているトレイをめぐみんに渡そうとする。
「待って下さい、カズマ」
「ん? どうした? 食欲無いってのは受け付けねーぞ。お前朝ほとんど食ってなかったし、今はもう昼前なんだ。しっかり食って薬飲んで、早めに寝ないといけないんだからな」
「普段以上にカズマが優しくて、けほ......私は物凄く嬉しいんですが、ワガママ言っても良いですか......?」
「おれができること事なら受け付ける。口移しなら大歓迎だ」
「すいません、訂正します......けほ、いつものカズマでしたね......それにそんなことをしたら、カズマにも風邪が移ってしまいますので、それはまた次の機会に......」
「え、やってくれんの」
「ふふ、どうでしょうか」
風邪を引いているにも関わらず余裕の表情を見せるめぐみんに、どこか負けた気分になっているカズマ。
めぐみんは改めてカズマの方に向き直ると、
「口移しはダメですが......食べさせてもらえませんか?」
風邪のせいか、それとも別の何かのせいか、めぐみんは頬を赤く染めながら爆弾発言をかました。
カズマは一瞬動きが止まるが、トレイを自分の膝に乗せ、頭を乱雑に掻いてからレンゲでお粥を掬い、めぐみんの口元までレンゲを伸ばした。
「ほれ」
「......あの、今日のカズマは本当にどうしたんですか? いつもだったら、こんな事絶対にやらないのに......」
「文句あるならやめるぞ」
「あ、すいません......い、頂きます」
このような行動に出るとは思わなかったのだろう。めぐみんは戸惑いつつお粥を頬張る。緊張で味がほとんどわからなかったが、優しい味で体が芯まで温まるような感覚に、本気で自分のこと心配してくれていると確信する。
「どうだ?」
「......美味しいです」
「そいつは良かった......な、なぁ。まだしなくちゃダメか?」
「完食するまでお願いします」
紅い瞳をウルウルとさせながら懇願するめぐみんに、カズマは少々狼狽えていた。
(目が潤んでるのは風邪のせいだ、きっとそうだ!)
カズマは自分に言い聞かせつつ、お粥をめぐみんに次々と運ぶ。お腹が空いていたのか予想以上よりも早く完食してしまった。
カズマはトレイを再びテーブルに置き、
「飯ちゃんと喉通るなら問題ねぇな。時間置いてから薬飲めよ。その後は、またゆっくり寝とけ」
「はい、そうします......けほ」
めぐみんは軽く咳払いをしつつ布団の中に潜り込む。頭だけを出した状態でカズマの方へと目線を向ける。
「あの、カズマ……けほ、もう一つワガママ……良いですか?」
「おう、なんだ?」
「ふふふ……あの、薬を飲んだら、私が眠るまで手を握ってもらっても良いですか?」
少々微笑みながら、しかしどこか不安そうな表情を見せるめぐみんに、カズマは突然の申し出に若干ドギマギしてしまう。頬をポリポリと指で掻いた後、
「お、おう……良いけど、俺なんかで良いのか? 多分緊張で汗出るぞ」
「カズマじゃなきゃ、ダメです」
「お前、また……まぁ、別に良いけどさ。ほれ、薬飲め」
カズマは魔法を使ってコップに水を溜め、薬をめぐみんに差し出す。めぐみんはまた布団から出て、薬と水を受け取る。
「なんだか、今日のカズマは優しいです。ふふ、風邪というのも悪くないですね」
薬を飲み干しつつ言う彼女に、カズマは照れ臭そうに視線を逸らす。
確かに今日の自分はどこかおかしいと自覚はある。たかが風邪とはいえ、ここまで誰かのために甲斐性したのは初めてだ。生まれてこの方、自分の世界にいた頃はただのヒキニートだった。この世界に転生してからは、借金背負うわ、女性にスティールを使えばほぼ下着を取ってしまうわ、果ては問題児である三人を置き去りにし、自分は楽な道を選ぶわ、自分でもわかるほどのクズだと自覚している。なのに何故こんなにもめぐみんを心配してしまっているのかがわからなかった。
ふと考える。これがもしダクネスやアクアなら自分はどうしていたか。
(……多分ここまでしないだろうな)
料理をしたり薬を買ったり等はするだろうが、先程のように食べさせたり手を繋いでほしいと頼まれても、軽口を叩いて飄々と避けていただろう。
めぐみんのワガママだからこそ、受け入れているのかもしれない。
(……こりゃ重症だな……)
「けほ……カズマ?」
めぐみんの声に我に返り、目線を彼女に向ける。薬を飲み干しためぐみんは再び布団に潜り、布団の隙間から手を伸ばしていた。
「ああ、悪い。これでいいか?」
壊れ物でも触るかのように恐る恐るめぐみんの手を片手で握る。めぐみんはホッとしたように安堵した表情で、優しく微笑む。
「ありがとうございます、カズマ……カズマの手、落ち着きます」
風邪で気が弱っているのか、そんなことを呟くめぐみんの手を両手で包み込む。
「早く良くなれよ。お前の本気の爆裂聞かないと、こっちも気が狂うからさ」
「そうですか……けほ、わかりました……良くなったら……次は、私の……本気の……爆裂を……」
言い終わる前に、めぐみんは完全に目を閉ざし寝息を立てる。薬が効いてきたのだろう。
安心しきって寝ているめぐみんを、カズマはまだ手を離さずジッと見つめていた。いつものようなスケベ心からではなく、彼女の傍にいたいと思っているからだ。
(……これじゃあ俺、めぐみんにガチで惚れてるみてぇじゃねぇか)
そんなことを考えると、カズマは自分の頬が若干熱くなるのを感じる。
風邪でも移ったのだろうか、と若干皮肉気味に思いながら、カズマはめぐみんの手を握りしめている両手に僅かに力を込める。
「ったく、結局翻弄されっぱなしじゃねぇか」
そんなことを呟きながらも満更でもなく微笑むカズマは、しばらくの間めぐみんの手を握っていた。
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「紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法を操りし者、めぐみん! 完全復活です!!」
あれから三日が経ち、めぐみんはローブを翻しながら元気いっぱいに名乗りをあげる。その様子を見て、ダクネスとアクアは安堵の表情でめぐみんの復活に拍手を送っていた。
「ふふ、やはりめぐみんはそうでなくてはな」
「私の芸で元気になるのも当たり前よね。よーし、それじゃあめぐみん復活祝いに、飲むわよー!」
「お前は毎日のように飲んだくれてんじゃねーか」
ポリポリとカズマは頭を掻きながらアクアの後頭部に軽くチョップする。アクアが睨みながらカズマを見ているが、最早気にも止めていない。
「それじゃあカズマ! 早速爆裂散歩に行きましょう!!」
「おいおい、治ったばっかりなんだから、無茶なことしない方が良いぞ?」
「何を言うんですか。この三日間、私は爆裂魔法を撃ちたくて撃ちたくてしょうがなかったんですよ! もう我慢の限界です! 撃たせてくれないなら、今ここで撃ちます!!」
「撃つな!! わかった、わかったから! 行くならすぐ行くぞ」
カズマは溜め息を吐きつつ席を立つ。めぐみんは嬉しそうな表情で駆け足で玄関のドアを開ける。
(やっぱめぐみんはこうじゃなきゃな)
「カズマカズマ!」
「ん?」
元気いっぱいなめぐみんに微笑んでいると、声を掛けられる。彼女へと顔を向けると、めぐみんが満面の笑みでカズマを見つめていた。
そして、
「看病してくれて、ありがとうございます!」
本当に心の底からの感謝の気持ちと笑顔を見せられ、カズマは照れ臭そうに目線を外す。
それを狙っていたのか、めぐみんはからかうように笑いながらカズマの隣に立ち、
「おや、照れてるんですか? 照れてるんですね? 可愛いですよ、カズマ」
「ててて、照れてねーし!! ほら、とっとと行くぞ!」
「ふふふ、はい!」
頬が熱くなるのを感じるカズマは逃げるように外に出る。めぐみんは嬉しそうにカズマを追いかけ、隣に並んで歩き始めた。
まだ仲間以上恋人未満の関係だが、いつかそれ以上になる日は近いかもしれない。
その時は、ちゃんと自分からしっかり伝えようと、カズマは思った。