はい、ってなわけで性懲りも無く中身スッカスカな内容でお送りします。カズめぐタグ付けてますが、うっすいですのであまり期待せずに。
ではでは〜
「……」
「……」
カズマと幸運の女神エリスは互いに椅子に座って無言で向かい合っていた。カズマは気まずそうに、エリスは困ったようで、しかし柔らかく微笑んでいる。
遂にカズマは段々と俯きながらも、申し訳なさそうな声で呟いた。
「……言い訳して良いっすか……」
「ええ、どうぞ……」
情けない姿を見せたからか、それとも『死んでしまった理由』があまりにも自分らしくなかったからか。カズマは羞恥心を露わにしつつも、今のこの現状の説明と言う名の言い訳を始めた。
ーーーー
「久しぶりのクエストだ……腕が鳴るな!」
「元気あんなぁ……」
カズマ率いるパーティーは、アクセルから少し離れた森林に足を運んでいた。
現在彼等はクエストのためにここに来ていた。裕福過ぎる暮らしを持つ彼等にとってはクエストなど小遣い稼ぎにもならないのだが、今回は別件でクエストを受けていたのだ。
というのも、ここ最近異常な暑さのせいで昆虫型のモンスターが湧き出しているのだという。特に厄介なのが、ハチ型のモンスター。当然日本にいたハチとは違い、こちらの世界のハチは成人男性の平均身長とほぼ同等の大きさらしい。カズマの世界のハチでも危険な個体は存在するが、こちらの世界のハチはどんな個体でも脅威になる。駆除しなければ農作物等に集まってしまい、冒険者ではない農家達は頭を抱えてしまう時期なのだ。このまま放置すると野菜の高騰化が始まってしまう可能性が高いため、魔王軍の幹部等を倒してきたカズマ一行に白羽の矢が立った、という訳だ。
カズマ自身は最初こそ乗り気ではなかった。というか今でも乗り気ではない。乗り気なのは、他三人だ。
「このクエストクリアできたら最高級のお酒がゲットできるのよ?! やらない手はないわ!」
「ここに湧き出るモンスターは群れをなして襲いかかってくるという話ではありませんか。こんな時こそ、我が爆裂魔法の出番であることは間違いありません!」
「今回のモンスターはまるで槍のようにとても太い針を使って戦うと言われている。そ、そのような太いので刺されればどうなってしまうのか……くぅう!! 楽しみで仕方がない!!」
「……」
問題児三人がめっちゃ乗り気なので、この三人の保護者であるカズマも付いていくしかないという訳なのだ。この三人に好き勝手やらせては、どんな厄介事を持ってくるかわかったものではない。
カズマは溜め息を吐きつつ、地図と今回の討伐対象であるハチ型モンスターの情報が載った紙を広げる。
「もう少しで目的地に着くな……えっと、今回のモンスターは『ジャイアント・キラービー』っていうのか。毒は無いけど、群れで行動する習性を持っていて、女王らしき奴を倒せば他のモンスターは散らばるようになるのか。ってことは、その女王蜂さえ倒せば、目標達成ってわけだ」
「わかりました。つまり、爆裂魔法で女王蜂ごと奴らを殲滅すれば良いんですね!」
「ちげーから! 撃ち漏らしたら他のモンスターも湧いちまうだろ!」
「私は一向に構わんぞ!」
「よっし、こいつここに捨てよう」
吐き捨てるように言ったのだが、ダクネスは体をクネクネと動かして喜んでいるようだった。
そんなやり取りをしている間に目標地点に辿り着く。既に虫の羽音のような音が響いており、背中からゾクゾクとする嫌な感覚がカズマを襲う。カズマは三人に少し離れた位置に居てもらい、カズマは潜伏スキルを使って気付かれないよう慎重に近づく。
開けた場所を発見し、木を背にして開けた場所を見回す。情報通り、デカイ蜂型のモンスター達がせわしなく動きまわっていた。しかしその中心に、一際デカイ蜂が何もせずにただユラユラと飛んでいる姿が確認できた。おそらくあれこそが女王蜂だろう。
カズマは一旦三人の所に戻り、現状を説明する。
「カズマの言う通り、そいつこそが女王蜂だろうな。しかし、厄介なのはその取り巻きか……」
「ああ。望ましいならめぐみんの爆裂魔法が使えるなら使いたいが……周りは森だらけだ。火ダルマになっちまったら、今回の取り分はその被害だけで帳消しになっちまう可能性がある」
「……」
「泣きそうな目でこっち見んな。大丈夫、今回はめぐみんの活躍もあるさ」
カズマは今回思いついた作戦を三人に伝える。
まずはいつもの通りアクアはダクネスとカズマに身体強化の支援魔法を掛けて貰う。次に攻撃が絶望的に当たらないダクネスには、その無駄に高い防御能力を生かして『デコイ』を使って取り巻きを誘き寄せる。そして女王蜂が動きを見せようがその場に止まっていようが、カズマがその女王蜂目掛けて弓を放ち、誘き寄せる。そしてある程度地面から離れ、尚且つ周りに絶対被害が及ばないであろう場所まで移動したところを狙って、めぐみんが女王蜂目掛けて爆裂魔法を放つ。至ってシンプルで、いつも通りの自分達の動きだ。
内容を説明すると、三人は納得した表情で頷いた。それを確認したカズマは満足そうに、こう言った。
「作戦開始だ!」
ーーーー
「さぁ、こいモンスター共! そのぶっとい針で、私を刺せるものなら刺すがいい!!」
既に『デコイ』を発動しておいたダクネスは蜂達に聞こえるように挑発した。せっせと女王蜂のために働いていたであろう蜂達は、その大きすぎる双眸をギラリと輝かせダクネス目掛けて突っ込んでいく。既に何匹かは尻の針を突き出しながら向かっていく奴もいる。
だが、ダクネスは元々力がある上にアクアの支援魔法を受けているのだ。向かってきた蜂の針を全て鎧で受け止め、何匹かはその針を掴んで別の蜂へと力任せにぶん投げる。当然想定外のことだったのだろう、避けることもできずに当たり、しかし減速することなく背後の木に衝突し、地面にボトリと落ちる。
「どうしたどうした! お前達の実力はその程度か! もっと私を悦ばせてみろぉ!!」
(……やっぱあいつ、剣より素手の方が良いんじゃねぇか……?)
明らかにやり過ぎなのだが、役目は果たしているので放っておく。
次に木に登っていたカズマは、一本の矢を取り出し、弓矢にセットする。未だダクネスに群れる従者達を見据えるだけで動かない女王蜂へと矢を構え、
「……『狙撃』!」
矢を放つ。『狙撃』は自分の幸運が高ければ高いほど命中率が上がるスキルだ。幸運が桁外れに高いカズマの矢は、必然と女王蜂の脳天を打ち抜くーーのが理想的だが、カズマは最弱職の冒険者だ。攻撃力が低いため、弾かれる。だが、挑発には充分だ。
予想通り女王蜂は激昂し、攻撃してきたカズマを捕捉すると、尻の針を突き出しながら驚異的な速さで近づいてくる。
しかし、ここまでは想定通りだ。
「めぐみーん!!」
カズマの叫びに答えるように、目を閉じて魔力を練っていためぐみんはゆっくりと目を開けた。気が高まっているのか、その紅い双眸は一際輝いている。
いつもの中二病的な前台詞はない。長々としたあの台詞を口に出してしまうと、全てを唱える前にあの女王蜂の針が先にこちらの体を貫いてしまうからだ。
それでもめぐみんは、最強の魔法に手を抜かさないように、大きく口を開いた。
「エクスプーー?!」
魔法を唱えようとしたが、途中で中断せざるを得なかった。
カズマ目掛けて飛んで行った女王蜂が、急にめぐみんへと進路を変えたからだ。
「?!」
予想外の行動に、カズマも一瞬体を強張らせた。
(まさか、めぐみんの魔力に反応して……?!)
「「めぐみん!!」」
アクアとダクネスが予想外の自体にめぐみんに心配の声を上げた。しかしどちらも距離が遠く、ダクネスに至ってはまだ蜂の駆除に手間取っていた。
動けるのは、めぐみんの近くにある木の真上にいるカズマだけだ。
考えるよりも体が先に動いていた。
カズマは木から飛び降りる。足から嫌な音と若干の痛みを感じるが、今はそれどころではない。
めぐみんを真横に突き飛ばし、前を見据える。だが、目の前には女王蜂の針が眼前に迫っておりーー
ーーーー
「……そして貴方はあの蜂によって頭を貫通され、それはもう無残な死に方をーー」
「すんません、思い出すとホンット気が狂いそうなんでやめてもらって良いっすか……」
既に何回か死んでしまった経験があるカズマだからこそ、ある意味ここまで冷静になれているのかもしれない。ただ、死に際を説明されてからは身もゾッとするような感覚がカズマを襲い、思わず耳を両手で塞いでしまっている。
エリスは苦笑を交えつつ、
「ですが、今回もアクア先輩がまた復活呪文を掛けてくれています。本当はダメなのですが、まぁアクア先輩には何を言っても無駄でしょうし……」
「そうっすか……あ、そうだ! めぐみんは?!」
「カズマさんが身代わりになってくれたおかげで、傷一つありませんよ。まぁその後めぐみんさん、怒ってしまいまして……結局、彼女の爆裂魔法によって女王蜂は倒されましたが、あそこの森は火の海に……」
「……あんのバカ……」
生き返ればまた事後処理をしなければならないだろうが、それ以上にめぐみんが無事だったことに安堵する。
そんな様子を見てエリスはクスクスと笑い、
「最近めぐみんさんと仲が良いですね。少し妬いちゃいます」
「マジっすか。じゃあ今度クリスの時にでもお茶に誘いますね」
「引っ叩きますよ」
笑顔でそんなことを言っているが、目が全く笑っていなかった。そもそもカズマがこんな軽口を叩いたのはちょっとした羞恥からでもある。
最近めぐみんと仲が良い。
まさかこの言葉だけでこんなにも動揺するとは思っていなかったのだろう。耳が熱くなるのを感じていた。
(くっそ、最近アイツと良い感じだから、妙に意識しちまうな……俺が好きなのはナイスバディなお姉さんのはずなのに……)
『カズマー。聞こえるー? 蘇生終わったから帰ってきなさーい。めぐみんが泣いてて大変なんだからー』
「はぁ?! なんでだよ! ちょっ、エリス様! お願いします!」
焦るカズマの様子にクスクスと微笑むエリスは指を鳴らした。瞬間、カズマの足元に白い魔法陣が浮かび上がる。見たことのある魔法陣に、カズマは椅子から立ち上がった。
「今回もありがとうございます、エリス様」
「いえいえ、大丈夫ですよ。めぐみんさんをあまり泣かせないようにしてくださいね」
目を閉じてしまいそうな程に眩い光が身を包む中、最後に見たのはウインクをするエリスの姿だった。
ーーーー
「……んっ」
「あ、カズマ。お帰りなさい」
目を覚ますと、曇り一つない青空と今まで見たこともない優しい笑顔のアクアの顔が真っ先に目の前に映っていた。状況からするに、今自分はアクアに膝枕されているのだろう。
「悪い、アクア……今起きーー」
「カズマーー!!」
「ぶへぇ!!」
急に腹部に大きな衝撃を感じ、腹から何か出るんじゃないかと言われる程の声を出してしまう。
必死で耐えた後に下を見ると、涙目でカズマに抱き着くめぐみんの姿だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 私のせいでカズマが、かじゅまがぁ……」
「……気にすんなって。それよりも、怪我ないか?」
コクリと頷くめぐみんに、カズマは彼女の頭を撫でる。安堵したのか、めぐみんは次第に笑顔を取り戻していく。
「ねぇねぇロリマさん」
「はっ倒すぞ」
「めぐみん乗っかってるから、私の膝が悲鳴を上げてるんですけど」
「あ、ごめんなさい……すぐ退きます」
めぐみんがカズマから離れるのを確認し、カズマも起き上がる。涙を拭うめぐみんに、彼女の頭にまたポンっと手を置いた。
「んな泣くなって。女が泣いてんの見るのは、流石のカズマさんもどうしたら良いかわかんねぇからさ」
「……はい」
徐々に笑顔を取り戻すめぐみんに、カズマは安堵する。直後、軽い貧血を感じてカズマは体をフラフラとした。その様子を見てハッとしためぐみんは、カズマの体を支える。
「すまん、めぐみん……」
「大丈夫ですよ。それよりも、カズマは?」
「生き返らせたばっかだからねー。結構な出血量だったから、しばらくは家で休んでた方が良いかも。ダクネスはギルドに報告に行ったし、今日はもう帰りましょ」
いつの間にか立ち上がり、比較的まともな意見を言うアクアに言われ、カズマは静かに頷いた。このような状態では軽口も叩けないのだろう。
アクアが先行して前に出る。よくよく見渡せば、既にアクセルの街並みが見える位置まで移動していたことに今更ながらに気付いた。
(……これならすぐに帰れるな)
「あの……カズマ」
少々安堵していたところに、めぐみんのか弱い声が聞こえる。未だに肩を貸しながら歩いている状態だが、本調子ではないので甘えることにする。
「どうした?」
「……ごめんなさい。結局森を燃やしてしまいました……カズマが死んでしまったのが、許せなくて……」
申し訳なさそうに俯くめぐみんに、カズマは慌てる。
「き、気にすんなって! あいつがあんな行動するなんて思わなかったんだ。今回は誰のせいでもねぇよ。それよりも、お前の方こそ大丈夫か? 魔法使ったってことは、体が……」
「あれから結構時間が経っていますので、今は歩けるくらいには回復してます。それに、カズマが死んでしまったのは私が原因みたいなものですから、これくらいはやらせて下さい」
普段は頭がおかしい爆裂娘で通ってはいるが、カズマが死んでしまった責任を感じているのだろう。力無く笑うめぐみんを見て、胸が苦しくなる。
(……らしくねぇよな)
いつもの彼女は爆裂しか頭になく、それでいていつの間にかカズマに好意をぶつけてくる、元気という言葉が似合う人間だ。こんなにも弱っているめぐみんは、本当にらしくない。
だからカズマは、めぐみんの頭にデコピンする。
「いった! ちょ、カズマ! 何するんですか!」
「落ち込んでるめぐみんなんか似合わなねぇから、無防備なそのデコに悪戯したくなっただけだ」
「なっ! 人が真剣に落ち込んでるのに、カズマはどうしてそんなに無神経なんですか!」
「おー、おー。俺はどうせkyですよーだ。悔しかったら、とっとといつもみたいに頭がおかしいロリっ子に戻りやがれ」
「け、けーわ……? 相変わらず変な言葉を使いますね! それに、私は紅魔族随一の天才です! 頭はおかしくないし、私のどこがロリっ子なのか聞かせてもらおうか!」
「えーっ? 自覚ないんですかぁ? おっかしいなぁ、ここまで体が密着してるはずなのに、胸が体に当たらないっておかしいよなー」
「せ、セクハラです! このセクハラ魔人!」
「今更気づいたのかよ? ほれほれ、そのセクハラ魔人様がお前に『スティール』でも喰らわせてやろうかなー?」
「こ、この男は……!!」
カズマは悪人のような面構えで、めぐみんは紅い双眸を煌々としながら睨み付けた。互いに見合っていたが、
「……ぷっ」
めぐみんが、突如吹き出した。カズマは一瞬呆気に取られる。
「あははは! か、カズマ、人の励まし方がヘタクソ過ぎますよ!」
「んな?! お、お前なぁ!」
「ふふふ……わかってますよ。ありがとうございます、カズマ。励ましてくれて」
優しく微笑むめぐみんに、カズマの心臓が一瞬高鳴るのを感じる。見てくれは美少女なのだ。微笑む姿に照れてしまい、視線を逸らす。
「ま、まぁ、いつものお前に戻ってくれたんなら、それで良いよ。落ち込んでるめぐみんなんて、隕石でも落ちてくるんじゃねぇかっていうくらい似合わねーし」
「それもそうですね……カズマ」
「んー?」
照れてしまうためあまり顔を見たくはないのだが、返事をしてしまった以上は視線をめぐみんに向ける。
「私の事を守ってくれて、ありがとうございます。あなたの事、もっともっと好きになっちゃいました」
過去最高の笑顔といつもの口説き文句に、耳どころか顔まで熱くなるのを感じたカズマは、再び目線を逸らす。
「ま、まぁ男ならあれくらい当然だし……」
「おや? 照れてるんですか? 照れてるんですね? 顔逸らさないで、私の方見てくださいよー」
「うっせぇ、近づくなよ! 歩きにくいだろ!
「ちょっと、二人ともー! ささっと歩きなさいよー。家に帰ったら、手に入れたこの高級酒でパーティーしなくちゃ!」
「ちょっ、お前いつの間に?!」
先行していたアクアがこれ見よがしに酒瓶を胸に抱いていた。
抗議しようかとも思ったが、カズマはすぐに口を閉ざしつつ微笑む。
(こんくらい騒がしいのが、俺たちらしいだろ……)
後でダクネスにも礼をしようと考え、三人は屋敷へと足早で戻ることにした。
これからも、この騒がしいパーティーで楽しい日々を。カズマは心の奥底から、そう願った。