なるべくハイペースで投稿しようと思っています。
???「危ねえッ!!」
8月8日、日曜日。
人々が蔓延る千葉県内のとある交差点。
陽射しの眩しい今日この頃、天気は快晴、袖の短い服を着た中高校生や大学生の煩い喋り声を掻き消すかの如き大声量で、目の腐ったアホ毛が目立つ青年ーーーーー
ーー比企谷八幡は叫んでいた。
彼の目線の先には、人波に揉まれて赤信号の交差点へと
ーー
ーーすぐ近くに車が来ている交差点へと押し出されてしまった、由比ヶ浜結衣の姿があった。
比企谷八幡は、考えるよりも先に身体が動いていた。
由比ヶ浜結衣と車の距離は15メートルほど、走ればすぐ逃げられるが、腰が抜けたのか由比ヶ浜結衣は底にヘタリと座り込んでいた。
対して比企谷八幡との距離は5メートルほど、だが人混みを掻き分けながらの為に全速力が出せないでいる。
もどかしさと苛立ちで、彼は何時もよりも荒々しくなっていた。
八幡「クッ…ソ!退けっつってんだろがァァァ!!」
巨大な怒号にビクリと反応したその場の人達は、ずざっと後退るように道を開けた。
前列の、由比ヶ浜結衣を助けられる位置に居るはずの者達も、自己防衛のためか踏み出そうとはしていなかった。
そんな彼等も身を退き、自分任せにした所に腹が立つなどといった事は無かった。
間に合わせなければーー
それだけが、彼の心の内側、そして、この行動の動力源でもあった。
八幡「由比ヶ浜ァ!!」
そうして叫びと同時に手を伸ばした。
彼女はこちらを振り向き、手を差し伸べた。
八幡「早く立てぇ!」
そして、その手を掴み、力強く、引き上げた。
ーーーしかし、現実は無情にも、残酷にも、冷酷にも、彼女の肉体を、胴を、足を、そして、比企谷八幡の腕を、屠り去ったー
飛び散った赤い鮮血が、彼の頬と服を濡らした。
生暖かいその感覚が、彼の止まった思考を蘇らせた。
八幡「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
比企谷八幡は泣き叫んだ。
自分の腕の激痛にでは無く、助けられなかった無力感、目の前の親しい人物の死、そして、己へのどうしようもない怒りに向けた涙であった。
血が出過ぎたのだろう、すぐに朦朧としてきた。
そして、比企谷八幡はその場に倒れ込んだ。
周りがやれ救急車だ警察だと喚いてはいるが、どれも彼の耳には一切届いていなかった。
薄れゆく意識の中でも、彼は先程の彼女の言葉が頭から離れなかった。
それは、自分にしか聞こえない程の小さく、か細く、二度と聴くことのできない声ーー
ーーヒッキー、助けてー
涙ながらに呟かれたその言葉は、比企谷八幡から忘れられることは無い。
そして、意識が途絶えたー
ーーー比企谷Side
「……ちゃん!お……!」
八幡(呼ばれてる……この声は小町か。
なんだ、夢だったのか……)
八幡「はいはい、今起きるってーー……っ!?」
むくりと身体を起こし、瞼を上げた先に広がっていたのはーーー
八幡「……病院?」
八幡(見回すと、真っ白い部屋の中にいた。
ピッ、ピッ、と一定のリズムを刻むあのドラマでよく見るやつと、輸血パックのようなものや、点滴が俺の体に繋がれていた。
すぐ横には涙と鼻水で顔をグチャグチャにして、目を腫らしてこっちを見ている小町の姿があった。)
小町「お兄ちゃん!!大丈夫!?痛くないの!?」
煩い煩い、お兄ちゃん鼓膜破れちゃう。
しかし何故だろう、なぜ俺は病院へ来ているのだろう。
それに痛くないのとはなんの事だろうか。
そりゃあ病院に来ているのだから何かあったのだとは思うが……
八幡(小町に聞くか)
八幡「なあ、俺は一体、どうしちまってここにいるんだ?」
俺が問うと、小町は信じられ無さそうな顔をしてこっちを見てきた。
小町「何言ってるのお兄ちゃん!?お兄ちゃん、車に手首から吹き飛ばされたんだよ!?覚えてないの!?」
八幡「はは、小町何言ってーー…ッ!」
まさか、そんな筈がない。
あれは、夢なんだ。
あんな事、起きるはずがない。
起きてたまるか。
色々な思いがグチャグチャになりながら、俺は恐る恐る自分の布団から右腕を出した。
「あ…」
その瞬間、あのときの記憶が鮮明に蘇ってきた。
人混み掻き分けた感触。
これまで出したことの無いくらいの大声。
由比ヶ浜の手を握った感覚。
泣きそうな、崩れてしまいそうなほど恐怖に怯えた彼女の表情。
自分右手が吹き飛ばされた激痛。
彼女の身体が音を立てて吹き飛ぶ瞬間。
顔にかかった生暖かい鮮血。
そしてーー
ーーヒッキー、助けて
八幡「う、う、うぁ…」
小町「お、お兄ちゃん?」
八幡「あぁ、あぁぁ、あぁぁぁぁ……」
一瞬、心の中に抱えていた『ナニカ』が、崩壊したような感覚に襲われた。
そしてーーー
八幡「うあぁぁぁぁぁぁ!!、うあぁぁぁ!!うわぁぁぁーー!!ッ、フ、フッ、ヒック、
う、うぁ、うぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
小町「お、お兄ちゃん!?どうしたの!?お兄ちゃん!?お兄ちゃん!?」
八幡「あぁぁぁぁぁぁー!!!」
由比ヶ浜結衣が死んだ。
助けられる手前で、あとほんの少しのところで。
しかしそれを受け止められるほど、彼の心は頑丈では無かったのだ。
幾ら捻くれようと、幾ら強かろうと、自分が求めた『本物』が失われた時、それは意味を為さないのであった。
こうして彼の心はーー
ーーーまた色を失ってしまった。
くしくも彼の誕生日、三年生の夏、彼等の日常は、大きく狂い始めた。
どうでしたでしょうか?
初心者なもので、至らぬところ、おかしいところなどありましたらコメントでご指摘お待ちしております。
感想、評価もお待ちしております。
では、今後ともご贔屓に。