オーバーロード 詐貌の棘怪盗   作:景名院こけし

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前回のあらすじ
ガゼフ「貴族が変に協力的で気味が悪い」
???「なんでガゼフの装備剥がれてないの? 工作員仕事しろ」

その後「「村のところに変なドームが……」」


第十話 魔の手を伸ばす者たち

「ほぉ、対象の数が多いとこうなるのか。中々面白い光景じゃないか」

 

崩壊したカルネ村の敷地を覆う巨大な闇色のドーム。それを眺めながらひとり呟く()()。その姿は棘々しいデザインの紅い鎧をまとった人間のようにも見える。しかしよく見ればそうではないとすぐに分かることだろう。その何か――ややしわがれた重い声からして、性別があるなら男のようだ――の呟きに合わせて口に当たる部分が開閉し、内部には人間の物にしては広すぎる口腔に鋭い牙が並んでいる。目の部分はスリットなどがあるわけではなく緑色に発光する目が外側に二つ、貼りつくように並んでおり、面付き兜のように見えるその顔こそが素顔であることを示している。

首から下の鎧に見える部分も同様だ。男は蟲系モンスター等が持つ物と同じ外皮装甲を備えた異形種なのだ。それ以外で身に着けている物は、全身に巻き付いた、先端に刃物のついた鎖、右手に持った、外皮装甲と同じ色の足腰の悪い老人がついて歩くような杖、そして左手に持った、村を覆うドームと同じ色のオーラを纏う禍々しい銀の懐中時計。

 

「そういえば、さっき俺に気づいたのが一人いたな……こいつらの飼い主か?」

 

異形種の男の足元には焼け焦げ、切り裂かれ、凍り付いた無残な肉塊が転がっている。詐貌天(さぼうてん)が召喚した月棲獣(ムーン・ビースト)の死体だ。

 

「ここいらの連中は弱すぎて、これほどのモンスターはそうそう見かけねえんだが……やはり()()()()()か?」

 

プレイヤーにしてはずいぶん弱そうだったが……と続けようとして、思いとどまる。

 

「いや、俺が知ってるプレイヤーなんてボス達くらいだ。あの程度の奴がいても別に変じゃねえ。少なくともここいらの連中に比べればずっと強い。それに一人ってことは無いだろう。仲間の数と強さ次第では……油断したらこっちが殺られるかもな」

「うわぁ、一人でぶつぶつ言っちゃって。やだやだ、老人は独り言が多くって」

 

 

背後から聞こえた、甘ったるい高い声に男が振り向くと、薄っぺらだがしかしどこまでも続いていそうな深い闇が扉のような形を描いていた。〈転移門(ゲート)〉の魔法によって作られた、その名の通り二つの場所をつなぐ門だ。そのど真ん中から、声の主がひょっこりと顔だけをのぞかせていた。

人間の幼い少女のように見えるその顔は辛辣な言葉とは裏腹に友好的な笑みを浮かべている。それを見た男は軽くため息を吐きながら村の方へ視線を戻した。

 

「アーフィか。ったく、お前の方が年上だろうがよ……」

「やっほー、ドラーグ。ボスに言われて様子見に来たよ~」

 

異形種の男、ドラーグの年齢に関する台詞は華麗にスルーして、アーフィと呼ばれた少女は手をひらひらと振りながら全身を〈転移門(ゲート)〉から出す。顔だけであれば人間に見えていたアーフィも、全身を見ればやはり異形種だという事が分かる。ドラーグのように全身のいたるところが露骨に人間離れしているわけではないが、身に纏ったローブから覗く肌は雪のように白く、紫色の瞳をよく見ればその瞳孔は爬虫類のよう上下に伸びており、背中まである流れるような金の髪はそれ自体がキラキラと微かな光を放っている。そして最も人間離れした特徴として、背中に蝙蝠の羽が生えていた。

 

「あん? 様子見るだけなら〈遠隔視(リモート・ビューイング)〉でも使えばいいだろう。なんでわざわざ来た?」

「それが、情報系に対して防壁張ってるやつがいるみたいでさ~」

「なるほど。無理に探ろうとすれば拠点がドカン、ってこともあるのか」

「そうそう、最悪なのはモンスター放ってくる系ね。()()()来る前の襲撃みたいにゴキちゃんなんて放たれた日には……」

 

あー恐ろしい、とオーバーに自分の肩を抱いて震え始めるアーフィからまた視線を外し、ドラーグは村を覆うドームを観察する。早くも相手するのが面倒になったな~? と口を尖らせながらアーフィも隣に移動して観察を始めた。

そうしているうちにドームは徐々に膨張を始め、やがて限界を迎えたかのように破裂した。

そのあとに現れた光景を見て、アーフィは尖らせていた口を綻ばせ、そして満足そうに嗤う。ドラーグもその顔の構造上表情は変わらないが、もし表情があるならアーフィと同じ顔をしていることだろう。

 

「さっすが世界級(ワールド)アイテム。あたしたちがあそこに飛び込んだら死んじゃうんじゃない?」

「まあ、俺たち魔法詠唱者(マジックキャスター)はな。と言ってもやりようはあるが……さて、アイテムは問題なく起動できてる。俺の仕事は終わりだ、あとの観察はシモベに任せて帰るぞ」

「あれ、もう? あたしが様子見に来た意味は?」

「無い。まぁ、間が悪かったな」

「むぅ、せめて何かしたい」

「……なら帰りの〈転移門(ゲート)〉はお前に頼むか」

「おお、それだ! ではドラーグおじさま、お帰りはこちらになりま~す」

 

アーフィは再び〈転移門(ゲート)〉を発動させると、優雅にお辞儀をしながら手で自分の作り出した門を指し示す。口を閉じてさえいれば非常に様になる所作だ。

 

「だから、お前の方が年上だろうがよ……」

「悪魔だから永遠の少女だもん」

「そうかい……あ、プレイヤーはお前みたいなのをロリババアとか言うらしいぞ」

「ババっ……もしボスに言われたら立ち直れないわ」

「……ボスなら大丈夫だろ」

「だよね!? ははっ、あはははは……」

 

背後の村跡地に広がる、自分たちの引き起こした惨状に対してあまりにも緊張感のない会話をしながら、二体の異形は〈転移門(ゲート)〉の奥へ消えていった。

 

 

 

 




余所のギルド登場!(やばいのは帰ったけど) グの時みたいにはいかないぞサボテンよ……

サボテン「正体バレたら死ぬ」
ガイコツ「何やったんだろう……いや聞くまでもないか」
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