オーバーロード 詐貌の棘怪盗   作:景名院こけし

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ひっさしぶりの更新になりますね。読んでくださっていた方々、お待たせしました。
短いけどスランプ気味なのでさっさと投稿しちゃおう

前回のあらすじ
装甲蜥蜴&小悪魔「実験おわり。帰る!」


第十一話 カルネ村・戦闘開始

「ファンタジー世界でいまさら死体が起き上がったくらいで驚かないけど、この数はなぁ……ただひたすらキモいな、リアルのゾンビって」

(アンデッドの協力者を目の前にしてそれ言いますか?)

(モモンガさんは腐ってるわけじゃないからセーフ。それに話も通じる)

「そうですか……ところで、やばいと言ってましたが、何を見たんですか?」

「ギルド武器パクったところのNPC。もう〈転移門(ゲート)〉でどっか行っちゃいましたけど」

「えー……えぇ!?」

「なぜNPCが動いてるのかって疑問は……俺たちも自分のキャラになってるわけなので、この際置いとくとして……俺の正体がバレたらギルド総出で潰しに来る可能性が……偽名考えとかなきゃ」

「うわぁ……やっぱりこの人といたらマズイのでは」

「みすてないで」

 

さっきまで青ざめていたわりには微妙に緊張感のない調子で――おそらくスキルで沈静化されたのだろう――割と深刻なことをさらりと宣う詐貌天(さぼうてん)にモモンガが軽く引いていると、二人(?)の後ろで窓の外を見ていた少女がか細い悲鳴を上げる。モモンガがアンデッドである云々は小声で言ったこともあり聞こえていなかったようだ。

 

「外にいるの、全部アンデッド……? こんなのどうすれば……」

「大丈夫。そこにいる魔法詠唱者(マジックキャスター)のお兄さんが守ってくれるよ」

「お前も戦え」

 

暗黒色のドームが消え去った時、窓の外に広がる景色は一変していた。たった今まるで無力な村娘のように絶望に震えているエンリ・エモットによってなぎ倒されたはずのおびただしい数の死体が、モモンガと詐貌天にとっては見覚えのある毒々しい紫色のオーラを纏って一斉に立ち上がり、彼らの立てこもっている家屋に押し寄せてきたのだ。詐貌天はその集団をスキルも使用しながら観察し始める。

 

「あー、あのオーラ……ということは例のナーガはあいつらの犠牲者か。俺のアイテムのせいじゃなかったんだな。まあ魔法完全無効なんてえげつない物は流石に持ってなかったはずだし」

あのナーガと同じ(魔法が効かない)という事は、この姿に戻った意味は……」

「ないですね」

「……〈完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉」

「あ、鎧に戻った……なんだったの?」

「魔法ってすごいよねー」

 

目の前の人間(と、エンリは思っている)が一瞬で仮面とローブとガントレットの怪しい姿になったり漆黒の全身鎧になったりする珍事に、エンリは一瞬今の状況を忘れて鎧をまじまじと見つめてしまう。光沢を放つ分厚い漆黒の金属塊は、どう見ても幻の類ではなさそうだ。もちろん彼女には幻術を見破る術など無いが。

 

ちなみにこの鎧は詐貌天が拠点脱出の際に辛うじてアイテムボックスに放り込むのに成功した物の見た目を、モモンガの魔法で作った鎧に似せたものである。〈完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉の発動中は〈上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)〉を含む他の魔法が使えず、実物の装備品が必要となったために用意された。一瞬で装備が変更されるのは早着替えのデータクリスタルのおかげであり、鎧が出現するのは厳密にいうと魔法ではないのだが、エンリにいきなりそこまで話しても混乱させるだけなので黙っておく。

 

「さてあのアンデッドども、全部こっちに来てるわけじゃないな……戦士のおっさん達の方に何割か……あと、残りがまた違う方向に……もしかしてあっちに誰かいるのか?」

(最初にこの村を襲った騎士の仲間かもしれませんね)

(あー、ありえそう……エンリには騎士云々は黙っときましょう。襲い掛かりかねない)

(もう大人しくなってるし大丈夫だとは思いますけど、一応そうした方が……)

「ッ! 二人とも! 来てます! 前! 前向いて!」

 

またも小声で話し始めた二人に焦ったエンリの声が飛ぶ。しかし当の二人に焦った様子は全くない。次の瞬間、詐貌天はおもむろにボウガンを抜き放つと、窓の近くにいた動死体(ゾンビ)めがけて発射する。飛んでいった矢は寸分たがわず動死体(ゾンビ)の頭を射抜くと同時に発火、近くのアンデッド達も巻き込んで激しく炎上させる。しかし不思議と周囲の建物などには燃え移らない。詐貌天はさらに窓から飛び出し、屋根の上まで登るとそこからすさまじい速度でボウガンを連射する。炎属性の付与された矢が雨のように降り注ぎ、なおかつそのすべてがアンデッド達に命中していく。

降り注ぐ炎の雨と、それにうたれて燃え盛る動死体(ゾンビ)に気を取られていたエンリだったが、ふとモモンガの姿が無くなっていることに気づいた。慌てて見渡すと、別の方向にある窓の外で、モンスターの死体から生まれた巨大な肉の塊のようなアンデッドをグレートソードで真っ二つにする漆黒の全身鎧を見つけた。その足元には同様に斬られたのだろうアンデッドの残骸が既にいくつも横たわっている。つまり騎士やモンスターを葬ってレベルの上がったエンリでさえ気づけないほどの超スピードで家から飛び出し、一瞬のうちに足元の残骸の数だけあの巨大な剣を振ったという事になる。魔法で無理やり取得したものとはいえ、100レベルの戦士職のステータスは伊達ではない。まるで十三英雄などの物語からそのまま出てきたかのような現実離れした戦闘力を誇る二人を見たエンリは、恐怖とはまた違う何かにただ圧倒され、その場から動けずにいた。

 

「すごい……」

 

つい先日まで戦いとは無縁の暮らしを送っていた彼女の語彙では、それ以外の表現を見つけられなかった。

 




魔法効かない軍団=某聖典の皆さんガチギレ
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