爆発オチなんてサイテー!(2度目)
「い、生きてる……いま確信した。これは現実だ。痛ぇええ……」
爆発する拠点から逃れて真下にあった森林に突入し、体のあちこちに火傷を負った状態で地面に叩きつけられた――直前に抱えていたアイテムで〈
「アイテム……ボックスはどうやって開くんだ……?」
詐貌天が激痛に震える手を虚空に向かって伸ばすと、その手が何もない空間に向かって沈み込み、見えなくなった。消えた手にはアイテムの感触が伝わってくる。
「お? おお、便利だな……
虚空から引き抜かれた詐貌天の手には丸められた羊皮紙の巻物が握られていた。宙に放り投げられたそれはひとりでに開き、そのまま空中で燃え尽きる。次の瞬間、
光が収まるころには詐貌天のダメージは完全回復し、立ち上がり腕を回すなどして痛みが残っていないか確かめる。
「あー、治った治った。盗賊スキル様様だな」
本来、
「盗賊系のスキルも問題なく使えた。他には……あ、召喚系とかどうなってるんだ? どれ、まずは人間化解除。そしてスキル〈眷族召喚・
人間に変身した時と同様、どうすれば元の種族に戻れるのか、またどのように召喚スキルを発動するかは感覚で分かった。スキルが発動すると同時に虚空から成人男性より二回りほど大きい、白いヒキガエルのような体を持つモンスターが出現した。その頭部に当たる部分には顔らしきものは無く、代わりに血のような色のおぞましい触手が何本も、その手に持った槍の犠牲者を求めるかのように蠢いている。
(うえっ リアルで見るとかなり気持ち悪いな……でも便利な奴らだし我慢しよう。言う事は聞いてくれるかな? ……ものは試しだ。口頭で言ってみよう)
「俺の周囲を警戒しろ! 何か居ても俺が命じない限り攻撃するな。存在を俺に知らせるだけだ!」
「「「「「「ギギギギッギギギギッギギギィ!!!」」」」」」
詐貌天の声を聞くとすぐに6体の
(鳴き声もキモい! どこで喋ってるんだコイツら……まあ一応命令は聞いてくれるみたいだ)
「さて、突っ立ってても仕方ないし移動しなきゃな。抱えてきたアイテム達もボックスに突っ込んで……一応もう一回人間化しておこう」
詐貌天は再び人間に戻ると、アイテムボックスに両手を突っ込み、人間化して他のプレイヤーを襲撃しに行く際によく装備していたもの、つまり今の状態でも装備できるものを探す。わざわざまた人間化したのは、もしも他のプレイヤーと遭遇した場合、こちらが異形種だと問答無用で襲い掛かってくる可能性が高くなると踏んでの事だ。特に
「お、あったあった……けどどうやって装備するんだ?」
取り出したのは虫系モンスターの甲殻で造られた緑色の軽装鎧、レベルダウンをごまかして警戒させるためのステータス隠蔽効果のある暗緑色の外套、隠密系のスキルを少しだけ上昇させる革のブーツ、ブーツと同じ効果を持つ革手袋、インナーとして布の服、緊急離脱用に〈
ユグドラシルであればアイテムを選択して装備コマンドを実行すれば一瞬で装着できたが現実ではそうもいかない。ネックレスなどはそのまま首にかければいいのだが、鎧――プロテクターに近いが――の着方など、日本の一般市民である詐貌天が知るはずもなく、このままでは今後かなり難儀するのではないだろうかという事が容易に想像できる。
「これは練習しといた方がいいな」
試行錯誤しながら取り出したアイテム――主に軽鎧――を装着するのにたっぷり2時間かかった。
おかげで今後はこの装備なら問題なく脱着できそうだ。着替えを終えた詐貌天はアイテムボックスから鏡を取り出して今の姿を確認する。
鏡の中には黒髪を短く切りそろえた、端正な顔つきの男が軽装の鎧を着こなし、ボウガンを構えてドヤ顔で立っていた。元の姿であれば完全に気色の悪いバケモノだっただろうが、いまの姿はそれなりに様になっていた(本人の主観)。
「よし、今度こそ移動するか。待たせたなお前達」
「「「「「「ギィイ!」」」」」」
お気になさらず! というようなニュアンスが何となく伝わってきてほっとしつつ、詐貌天は森の中を歩き出す。
それから2時間。6体の
「まさか本物の森の中を歩ける日が来るとは……お、この草は毒に使えるな。効果は大して強くないけど、一応とっとこう」
少しだけ取得していたレンジャーとポイズンメーカーのスキルをフル活用して、発見した薬草などをいくつかアイテムボックスに放り込んでいく。作業がひと段落したら思い切り深呼吸して自然を満喫する。
詐貌天がリアルで暮らしていた世界は環境汚染が深刻化し、特に大気の汚れっぷりと来たら、特殊なマスクが無ければ外など歩けたものではないほどで、このような自然探索は望めない状況だった。ユグドラシルであれば森のフィールドは確かにあったが、五感が制限されているのでどうしても”作り物の映像”の域を出ない。
それに対しこの森は素晴らしい。リアルではそれほど自然に関心のなかった詐貌天だったが、この森がどれだけ素晴らしい物なのかは分かった。自分が今、得難い経験をしているという高揚感が彼を小躍りさせる。
「しかし、ここってユグドラシルなのかな? それとも全く違う世界か……」
少なくともサービス終了直前に今は亡き拠点が浮遊していた辺りにここまで深い森は無かったはずだ。
「ま、誰かに会ったら聞いてみよう」
その辺りは疑問ではあるが、何の情報もない今の状態では答えなど出ないことは分かり切っているため、それ以上深く考えずにまずは自分以外の誰かを探すことにした。
そうしてさらに4時間ほど経過した頃。
「生命体といえばめっちゃ弱いモンスターが何匹か遠くに見えたくらいか……流石にここまで同じような木ばっかり続いてると薙ぎ倒したくなってくるな」
どれだけ歩けども、会話ができるレベルの知性を持った存在に会うことは未だできないでいた。最初こそこの美しい自然に感動し、景色や緑の匂いを楽しんでいた詐貌天だが、もともと自然愛好家という訳でも無かったため早々にその感動も薄れていき、もはや視界を遮る鬱陶しいものくらいにしか感じなくなってきていた。いっそアイテムで広範囲攻撃魔法でも発動して切り開いてやろうか。などという考えが一瞬頭をよぎるが、もしそこにプレイヤーでも居たら目も当てられないことになる。苦い顔になりながらも我慢して歩き続ける。
そうしてさらに2時間後。
「……こんなことしなくても〈
このことに気づくまで実に8時間を要した。早速、一日一回だけ〈
(あ、超あっさり見つかったわ。湖か……ん? ちょっと遠いがあの辺は木が枯れてるのか? 真ん中のやたらデカい木だけは枯れてない……あの辺は絶対ヤバいな。一人で行くのはやめとこう。とりあえずあの湖の方に行ってみるか)
このまま飛んでいくには〈
そして2時間後。
それまでと違い、とりあえずの目的地がはっきりしているため詐貌天の足取りは軽かった。
「さて、そろそろ着くな。誰か話のできるやつが居るといいけど……」
その呟きを合図としたかのように、進行方向を警戒していた
「この音……誰かが戦ってるのか?」
目立つ
「あれは……トロールと、
湖の傍では二本足で直立したトカゲのような亜人、
「グオオオオオオオオオオオオオオ!」
「くっ!」
トロールの中でひと際巨大な個体が力任せに振り下ろした剣を、飛びのいて躱す
剣を振り下ろしたトロールは凶悪な笑みを浮かべて
「中々素早いな、蜥蜴! 名はなんという? 東の地を統べる王であるこのグに名乗ることを許してやる!」
トロールの名を聞いた
「「……グ?」」
現地勢登場(人間とは言ってない)
ちなみに詐貌天のレベル構成は以下の通りになっております。
怪盗詐貌天
合計LV95(最後にPKされて下がった)
種族:合計30
二重の影〈ドッペルゲンガー〉LV15
上位二重の影〈グレータードッペルゲンガー〉LV10
這い寄る混沌〈ニャルラトホテプ〉LV5
職業:合計70→65
ローグLV10
アサシンLV5
マスターアサシンLV5
ポイズンメーカーLV5
レンジャーLV10
怪盗〈ファントムシーフ〉LV5
無限面相LV5
収集家〈コレクター〉LV5(PKにより10→5)
贋作師〈イミテイタ―〉LV5
ミニマムLV5
ガンナーLV5(大型アップデートの時にノリで取った。その結果、偶然にも怪盗への転職条件を満たした)