夢の果て いつかの約束   作:サルスベリ

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 色々と考えさせられる海戦だったわ。

 自分のできることや、仲間のできることを再確認できたし。

 けどね、どういったらいいか解らないけど。

 私たちって、アイドルじゃないのよ。






譲れないこと、譲れないもの

 

 

 中部海域の解放は、日本にとってはとても嬉しいニュースとして国内を駆け巡った。

 

 誰もが耐え忍び、いつか平和な世界が戻ってくると信じていた中、次第に悪化していく状況や、困窮していく物資に不安と絶望が蔓延していた時に、状況を一変させる話が流れると、人は今までの絶望などなかったかのように喜び叫んだ。

 

 一方、国民の感情が上がっていく中、政府関係者の感情は低下していく。

 

 まだ知られていない話だが、海軍の暴走は政府関係者を震え上がらせた。こんな状況で、まさかそんなバカな話がと否定したくとも、否定しきれない情報の数々が舞い込んできた。

 

 しかも、その関係者は自分達の中にもいた。

 

 事態を重く見た総理大臣は速やかに動いた。このままでは国民の感情は、一気に硬化する。今は何とか政府を信じていてくれるが、海軍の暴走が知れ渡り、陸軍も賛同していると知ったら、その反乱に政府関係者までいたと知られたら。

 

 考えるだけで政府上層部は顔面が蒼白になった。昔ならば憲兵隊などあったのだろうが、今は完全に民主主義だ。いくら強硬な権利を発揮しようとも、最終的に主権は民国民にある。

 

 もし、政治不信となってしまったら、間違いなく日本という国は崩壊する。

 

 最悪の状況を察した政府上層部は、最早なりふり構っていられないというように、一切の容赦もなく今回の一件に関わった全員を更迭。立場や組織、あるいは派閥など無関係に一切すべてを『犯罪者』として投獄、あるいは極刑にした。

 

 あまりの凄さに、それを知ったとある提督代行は、『あ、私みたいですね』と何だか無意識に呟いていたという。

 

 そして、最大の反乱者を出した組織のトップ、海軍軍令部総長は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東堂は、窓から外を眺めていた。かつての自分が何を考えていたのか、あるいは何をなそうとしていたのか、今では解らなくなってしまった。

 

 だというのに、自分は今も『軍令部総長』の役職にいる。

 

 どうしてだ、と疑問を感じる。何故、自分は更迭されていないのか、あの時に近場にいた誰もが極刑になっているというのに。一部ではもう死刑となって刑が執行されたとも話を聞いているのに。

 

「呆けた顔してんな」

 

 声に顔を上げると、入口のところに男が立っていた。

 

 思わず、東堂は立ち上がった。顔面を蒼白にし、全身を震わせながら、それでも何とか口を開いて彼の名を呼ぶ。

 

「相沢、先輩」

 

 名を呼ばれた『相沢・宗吾』元帥は、ニヤリと笑ってゆっくりと歩いてくる。

 

 東堂は、それに対して僅かに腰を引いてしまった。

 

 相手が何者かを思い出す、まだ深海棲艦がいなかった世界で、世界を相手に戦える海軍を作り上げた張本人。権謀術策どころではなく、謀略上等、裏側の裏を読み切って叩き潰す、あるいは一度でも敵対したものには容赦なく鉄槌を下す。それが身内でも関係ない。勝つためならば手段を選ぶなを実践してきた男。

 

 矜持に背いたものは誰であっても叩きのめしてきた海軍の鬼、彼の矜持を踏みにじった相手は例え総理大臣でも潰される、と当時は誰からも恐れられた海軍の重鎮。

 

 東堂も何度もお世話になり、何度も教えられた相手が、今は目の前にいる。穏やかな笑みを浮かべ、瞳に鋭い気配を浮かべながら。

 

「どうした、自分がここにいるのがおかしいか?」

 

「あ、いえ、それは。先輩はすでに海軍を辞められたのですから」

 

 自然と敬語になってしまう。彼が纏う雰囲気は圧倒的で、とても初老を超えたとは思えないほど充実している。

 

「俺のことじゃねぇよ。お前のことだろ? 違うか、東堂」

 

 鋭く見てくる彼に、東堂は今度こそ腰を引いてしまい、イスに崩れ落ちるように座る。

 

「衰えたな、東堂。若造どもの諫言に乗せられて、迂闊に動いた結果がこのざまだ。なんだ、このふぬけた海軍は? 俺たちが作った海軍は、あんな戯言で動くような軟弱じゃなかったぞ」

 

「そ、それは」

 

 東堂は言葉に詰まる。

 

 確かにと思ってしまった。昔の自分ならば、乗せられなかったのではないか。裏側を調べ上げ、信頼できる者達を近場において、理想を求めず淡々と敵を倒して行けたのではないか。

 

 今更でしかない。自分は乗せられ、踊ってしまった。そんなものが海軍のトップでいいはずがない。

 

「先輩、戻ってきてください。どうか、また海軍に」

 

 思わず縋るように東堂は呟いていた。彼ならば弱り切った海軍を立て直せる、それができる男のはずだ、と。

 

「・・・・・・俺は国民を護れなくなった。軍人は国民を護るもんだ。他の何を捨てでもな。けどな、俺には他に護りたいものができた」

 

「解っています。家族を貴方はとった。それは解っています。しかし!」

 

 東堂は思いこんでしまった。彼以外にはできない、不可能だ。彼しかできないのだから、戻ってきてもらいもう一度と。

 

「甘えんなよ、小僧」

 

 スッと目が細められ、冷たく吐き捨てられる。思わず東堂は顔を反らしてしまった。真っ直ぐに見られない、昔ならば睨み返せたのが、今はできない。

 

「おまえが何とかしろ。おまえらが引き起こしたことだ、どうにかするのはお前らだろうが」

 

 何処までも冷たく突き放すような相沢・宗吾の態度に、東堂は無理かと諦めかけて、嫌と内心で自分を鼓舞する。彼の助力が得られなければ、海軍が廃れてしまう、今の時代にそれは日本を危なくするだけだ。

 

 何とかしないと、と思考を回す東堂の耳に信じられない言葉が投げられた。

 

「俺の護りたいものを投げ出した海軍に、俺が協力することはない」

 

「な?!」

 

「あの時だ。赤城達を見捨てた時の民間人、あれに俺達一家がいたんだよ」

 

「そ、それは」

 

 嘘だ、信じられない、頭から否定する思考は粉々に砕かれる。

 

 まるで敵を見ているような冷たい殺気を浮かべた、かつて色々と教えてくれた先輩だった男の顔で。

 

「理解したな、東堂。まあ、俺がここに来たのは、そいつを伝えるためじゃない。俺は伝言を届けに来ただけだ」

 

「伝言、ですか?」

 

「テラからだ。『トップだから死んで逃げるなんて許さないから、どうにかしろ』だそうだ」

 

 ギュッと東堂は拳を握りこむ。だから、か。だから自分はまだここにいる、まだまだ楽にさせない、まだまだ苦しんでいろというのか。

 

「それとな、ルリからだ。『責任の取り方は色々ありますが、責任とって辞職なんてのは、楽な道ですよ。本当のプロなら自分が起こした失態をすべて取り返して、倍の利益を出すくらいしなさい』だとさ。俺もそう思うぜ、東堂。俺の恨み事はだからとっておく」

 

 突きつけるように言い放ち、宗吾は背中を向けて立ち去っていく。

 

 東堂は答えられず、視線を落としたまま動けなかった。

 

「もし、おまえがこのまま海軍を放っておくなら、その時はきっちりと落とし前をつけるからな。解ったな、小僧」

 

 扉が閉まる瞬間、宗吾はそう告げていた。

 

 東堂はその言葉を受けて顔を上げる。

 

 これから先の苦難は目に見えている。いずれ国民は真実を知るだろう、その時に自分だけが助かったと言われて暴言を浴びることになる。部下達も、陰口をくらいはあるだろうし、命令に背く者も出てくる。

 

 裏切り者だと言われても仕方がない。けれど、だ。逃げた先に待っているのがあの相沢・宗吾ならばどちらでも同じかもしれない。

 

 行くも地獄、退くも地獄。ならばせめて自分が納得できる地獄を行こう。

 

「そうか、挽回の機会を得たのか、テラも案外、優しいところがあるな」

 

 小さく東堂は笑った。

 

 あの馬鹿も、そんな気遣いができたのかと、小さく笑った。

 

 数年後、その話を東堂が当人にした時、『え、東堂さんは残そうと思っただけだよ。ギャグ要員として!』といい笑顔で答えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大海戦、お疲れ様でした。鎮守府に戻った一同に向けて、テラはとてもいい笑顔で告げていた。

 

「さて、総員、お見事でした。全員がよく働いたので、特別ボーナスを出そうと思います」

 

 ルリの言葉に誰もが歓声を上げたのだが、次の言葉で全員が表情を暗くすることになる。

 

「レポートの内容を加味して」

 

「て、提督代行! そ、それは今回の海戦のレポートということですか?」

 

 思わず長門が質問すると、相手は無情に頷いた。

 

「ええ、当たり前です。皆の技量はとても満足できるラインに到達しました、しかしです」

 

 小さくルリは首を振ってから、左手に数枚の紙束を持ち上げる。

 

「技量は、というしかない状況なわけです。いいですか? 私は提出書類の書式は統一したはずです。全員に報告書などを含めてマニュアルを渡してあります。ここまでいいですね?」

 

 質問の形をしているが、質問させない妙な圧力が彼女から流れてる。ふと横に顔を向ければ、大淀が『もう、どうしてなんですか』とちょっと黄昏ているので、この話はかなり前からあったようだ。

 

「それなのに、なんですか、このバラバラの報告書は? 今までは訓練が忙しそうだったので見逃してましたが、いい加減にイラついてきたので、今後は書式に不備があった場合は却下します」

 

 その言葉に、真っ先に膝を折って嘆いたのは誰だったか。書類仕事が最も苦手な子は誰だったのか、誰もが嘆きながら悲鳴を上げる一歩手前だった空間で、真っ先に膝を折って土下座したのは、意外な人物だった。

 

「提督代行!! どうかご容赦を!」

 

 必死に懇願する彼女を視界に入れたルリは、蔑むような目線でもなく、呆れたような目線でもなく、何故かとても慈愛に満ちた瞳を向けていた。

 

「ええ、そうですね。私もやれといって突き放すような冷たい人間ではない、つもりです」

 

 普段以上に優しく穏やかに語るルリに、全員が『光明だ』と祈りにも似た気持ちで見つめていた。

 

「だからこれから、『書類についての訓練』をしましょうね、吹雪」

 

「はぅあ?!」

 

 真っ先に土下座した総旗艦は、そんな悲鳴をあげて顔を再び床に下ろしたのでした。

 

「どうして、貴方は書類を『手伝う』ことはできても、自分で作成すると不備だらけになるんですか? 暁のほうが事務仕事がうまいって、どういうことですか? 貴方はこの鎮守府の最古参の自覚があるんですか? まさか艦娘だから戦闘力が高ければいいなんて思ってませんよね? 思ってるんですか? どういうつもりでそんなことを考えたのか、じっくりと聞いてあげますから、顔を上げてイスに座れ」

 

 慈愛に満ちた聖母のような笑みを浮かべながら、ルリの口からは辛辣を通り越したような言葉が淡々と流れていく。

 

 死刑執行を待つ囚人のように、吹雪は項垂れたまま立ち上がり、悲壮な覚悟を決めた顔つきでルリが示したイスに座った。

 

 何時からそこにイスがあったのか、艦娘全員が認識できなかったのだが、ここには人の認識をすり抜けて仕事をするバッタという、特殊を通り越して変態じゃないかって奇怪(誤字にあらず)がいるので、誰もがあまりに気にしなかった。

 

 椅子の前には机があって、一つ一つの机には名前が書かれていた。『吹雪』、『天龍』、『龍田』、『瑞鳳』、『長門』、『大和』と。

 

「落第点以下、もう書類仕事の『し』から学べといった痴れ者は以上です。後はレポートを制作して添削してあげます。八十点以下は再提出、三回の再提出者は減俸」

 

「鬼!!」

 

「悪魔!」

 

「人でなし!」

 

 もう我慢の限界だ、と艦娘達から抗議が上がる。他の鎮守府でならば提督に逆らうなんてと怒られるのだろうが、ここはエーテル鎮守府。大馬鹿鎮守府とも言われているこの場所は、拒否権や自分の考えをしっかり持ちましょうと教育しているので、こういった暴言は許されている。

 

 許されているが、怒られないとは言われていないが。

 

「三点、なんですか、そのいかにもといった暴言は? 知識が足りていない証拠ですね。この際ですから、学力も身につけてもらいましょう」

 

 ルリはとてつもなくいい笑顔で、右手に『書籍』を持ち上げた。分厚く大きく、まるで装甲板のような本を。

 

「今回から給料の査定に、『学力』も追加されます。通常任務以外にも定期的にテストを行いますから、そのつもりで」

 

「はい! 訓練以外のですか?!」

 

 咄嗟に由良が動いた。まさか、あの訓練以外に勉強の時間が作るのか、睡眠時間を削るつもりなのか、と不安を感じたためだ。

 

「いいえ、これからは演習、実技、座学と分けていきます。いくら私でも貴方隊の睡眠時間や自由時間を削ってでも勉強しろとは言いませんよ」

 

 その言葉に、全艦娘はホッと安堵した。まさか、あの高密度な訓練した後に机に座って勉強するなんて拷問に近い。限界まで体を行使して倒れる寸前まで動きまわるのだから。

 

「というわけで、スケジュールです」

 

 ルリは空中にモニターを展開して、今後のスケジュールを表示させる。しかし、それはほとんどが空白になっていた。

 

「せっかく、貴方達がこんなに自分の意見を言えるようになったので、一月のスケジュールは各自が組むようにしました。まあ、こちら側からの強制任務や指名任務がありますので、全員が自分が組んだスケジュール通りにいくとは言いませんが」

 

 スケジュールは一か月で編成、翌月の予定は前月の二十五日までに作成の上で提出。スケジュールの内容に不備がなければ、そのまま実行。不備がある場合は修正されて当人に戻すので、不満がなければ反論せずにその通りに予定をこなす。不満がある場合は書類にて理由を述べる。

 

 また月の途中での変更は、提督代行、あるいは大淀まで申告書にて報告。口頭での変更は認めない。

 

「こ、ここでも書類ですか?」

 

「もちろんです。楽させませんよ、吹雪」

 

 容赦なく告げるルリの顔は、冷たいものではなく『なんでそんなに書類が苦手なんですか』と呆れを含んでいた。

 

「全員、理解しましたね? では来月分のスケジュールを作成し、私まで提出しなさい。後、月末にテストを行います。演出と座学両方ですよ。その結果で給料の増減ありですからね」

 

「あ、あの通常の出撃とかはどうなるんですか?」

 

 赤城の質問に、誰もがそういえばと思い出したように見つめてくる。

 

「それも貴方達に丸投げします」

 

「提督代行!?」

 

「冗談ですよ。実技の部分がそれに当たります。なので、強制的に実技が入ることもある、と考えておいてください。とりあえず、まずは組んでみましょう」

 

 とりえずって。艦娘全員がそんなことを思った。いきなりそんなことを言われてもと誰もが顔を見合わせている中、ルリは大きく手を打った。

 

「はいはい、困惑するのも混乱するのも解ります。けれど、私は貴方達を『この程度で躓くような子』に育てた覚えはありません。戦闘訓練の合間とか、食事中とかに色々と教えています」

 

 そういえばと誰もが思い出す。書類仕事をしている間とか、訓練の合間の何気ない会話とか、そういったところで聞いた覚えはあったが、それを正確に思い出せるかどうかは自信がない。

 

「それに、私は一度も『質問を受け付けない』とは言っていません」

 

 誰もがその言葉に、呆けたように先ほどの会話を思い出していた。確かに彼女は質問するなとは言っていない。何時もこうしなさい、ああしなさいというような話し方だったから、質問することを忘れていたらしい。

 

「自分の意見を言えるようになった貴方達に、今度は『誰かに質問して自分の考えを補正する』ことを学んでもらいます。さあ、自室に戻って考えなさい。それで煮詰まったら私のところに来るように。何時でも待っていますよ」

 

 穏やかに微笑み全員を見回したルリは、もう一度と手を打った。

 

「では解散。で、落第以下はこっちに来なさい。貴方達はまずお説教から質問の意味を教えてあげます」

 

「は、はい」

 

 今までとは一変した鬼気迫る彼女の雰囲気に、逃れることができた艦娘達は一斉に自室へ退避した。 

 

 その後、大会議室から悲鳴が響いたとか、うめき声がしたとか噂になったらしいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は悩む、日本という国のトップである総理大臣は、盛大に悩んでいた。

 

 エーテル鎮守府、大馬鹿鎮守府と呼ばれる場所、あるいは超えてはいけない一線を越えた者達『デッド・ライン』鎮守府。

 

 強力で圧倒的、その所属艦娘の強さは駆逐艦でさえ、他の鎮守府の戦艦を一蹴する。

 

 扱いに困る、と思えてしまう。しかし、誠実に向き合うならば誠実を返すくらいの常識はあるらしい。

 

「しかし、な」

 

 総理は盛大に溜息をついた。

 

 彼の机の上には嘆願書の山。これは各地の提督からではない、その配下の艦娘達からの嘆願書だ。

 

「強さに憧れる気持ちは解るが、どうにも」

 

 深くため息をつく。

 

 意を決して総理は嘆願書の山から一つを選び、目を通す。

 

 『どうか吹雪さんの写真集を出してください』。

 

 クリティカル・ダメージが、総理の胃を直撃した。なんだこの嘆願書は、相手はただの艦娘だ。救国の英雄かもしれないが、それでも写真集を出してくださいなんて、そんなバカは話があってたまるものか。

 

 次はと手に取ったものには、『扶桑お姉様とお茶会がしたいです』と書いてあった。再び胃を直撃する極大魔法に似た衝撃に、総理は腹部を抑えてうめき声をあげる。

 

 他には、『瑞鳳さん、可愛いかっこいい』、『赤城様とお食事会したい』、『レディー暁のお茶会はいつですか?』、『川内さんと夜戦したい(通常)』、『陽炎様のお見足』等など。

 

 頭が痛い、本当に胃が痛い。これが艦娘だけからきたならば、即座に各地の提督たちに『なだめてください』といえるのだが、提督たちからも着ているものだから、対処の仕方が解らない。

 

 もういっそのこと、あの鎮守府に丸投げするか。いいや、その前に相談してみるか。

 

 待った、と総理は思いなす。あの鎮守府が、内地にあるのは問題じゃないか。ここまでファンが増えたならば無断侵入する連中は必ずいる、今は鎮守府関係者だけだが、いずれ国民にも知れ渡ったらどうなるか。

 

 膨大に膨れ上がったファンのために、鎮守府が機能不全を起こさないだろうか、いや間違いなくする。

 

 総理はこの時、自分の思考が妙な方向に流れていくことを自覚していなかった。思いついた考えは、『これが正しく他はない』と確信してしまい、他の意見など求める余裕はなくなっていた。

 

「・・・・何処か他の地に、内地より遠く、遠すぎない場所」

 

 地図を広げた総理は、日本の領海をぐるりと見回して、一つの場所を見つけた。深海棲艦に侵攻されて、今は誰も住んでいない場所。日本の玄関口から先にあって、敵の侵攻に対して真っ先に対処できる島。

 

「八丈島、ここでいいだろう」

 

 見つけた場所の名を呟き、総理は安堵の息を吐いたのでした。

 

 

 

 

 

 





 写真集って、必要なの。語録って誰が欲しがるの。

 え? 今、一万部が完売?

 そう、吹雪のよね?

 私の? 世の中には暇人が多いのね。

 いいわ、レディーらしく優雅に語って上げるから。




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