全面ギャグです。
本編に関係あるような、ないような的な。
裏方の方々の活躍です。
バッタ師団。
『サイレント騎士団』のサポート部隊、あるいは主兵力になりそうで、なろうとしない連中。
五感を実装し第六感を獲得しながらも、機械らしくデータをネットワークで共有して日々を進化していく。
今日も何処かで助けてと言われたならば、全身をかけてやり遂げる。
それがバッタ師団。
早朝五時、誰もが寝ている鎮守府で動く影がある。
『ピ では皆、よろしくお願いします』
『ピ!! よろしくお願いします!』
バッタ達による定例ミーティングである。
ネットワークを通じて全員が同じデータを共有しているとしても、彼は言葉を重んじていた。
即ち、最初は『対話』から。
『ピ 夜間帯業務バッタよりの報告は問題なし。今日の予定は?』
バッタ師団の師団長バッタから話は始まり、次々に議題が上がっていく。
『ピ 主計科開発大隊より、新型砲弾の試験の予定です』
『ピ ついでに海兵隊の耐久テストもやりたいです』
『ピ 許可する』
『ピ!!』
一つの議題が終わると、全員が『ピ』と電子音を鳴らすのは、何時も通りのこと。
『ピ 警戒態勢はどうだ?』
『ピ 航空科です、問題報告はありません。第二種警戒ラインにて、警戒続行中です』
『ピ 歩兵科です、沿岸部及び海中に敵影なしです』
『ピ!!』
本日の警戒任務の書類に、問題なしと師団長バッタがサインする。
彼らは機械だが、報告書は紙を好む。
理由は、『やはり、肌触りが違うから』だそうだ。
『ピ 備蓄については?』
『ピ 主計科です、現在特殊編成にて大隊活動中です』
『ピ 航空科より心よりの感謝を』
『ピ 主計科は航空科からの感謝を、形あるもので望む』
『ピ では次の機会に航空機による空撮を行いましょう』
『ピ?! 本当ですか?! ならば次の機会には夕張さんと川内さんを説得しておきます』
ジッと真剣に見つめ合い、どちらともなく二匹のバッタは頷き合った。
『ピ!!』
同じ時、夕張と川内は自室にて奇妙な悪寒がして飛び起き、周辺を見回していたという。
『ピ 機動科からです。艦艇の試験起動のため、『ヴァルハラ』の港を十分間閉鎖します』
『ピ? 十分もかかるのか? 五分で終われないか?』
『ピ 師団長、それは無理です。フィールド・システムも含めてのテストをやりますので』
『ピ やってやります、バッタ師団ではないか?』
『ピ~~』
いや、無理だから。と全員が見つめてくるので、師団長はこれが最速かと納得して見せた。
『ピ!!』
表面だけは。内心で、『いや、何とかできるだろ。次の時にやらせてみるか』と考えていたが。
『ピ 清掃科から報告します。テラ様達の戦闘の痕跡及び、移動航路の偽装完了しました。続いて、訓練場の偽装に入ります』
『ピ 整備科からです。訓練場が大破しているため、修理まで十五分ください』
『ピ そこも縮めてくれ』
『ピ 師団長、最速ですよ』
『ピ 仕方無いか』
絶対に何とかできるはずだ、と師団長が考え始めた。
『ピ!!』
この時、周囲の科長バッタ達も、『あ、あいつまた無謀なこと考えているな。短縮手段を考えておくか』とメモを取っていた。
『ピ 近衛兵からです。今日も皆様の寝顔は可愛かったです』
『ピ?』
最後の発言に、誰もが首を傾げていた。
『ピ おい、まさかおまえら、近衛兵なのをいいことに、寝室に侵入したのか?』
『ピ まさか、まさかそんな不埒なことしてませんよね?』
『ピ いやいや、まさかでしょう。我らはバッタ師団、誇り高きサポート集団ですよ。そんなことしませんよ』
『ピ そうでしょう。我らは皆様が快適に過ごしていただけるように、毎日を全力で頑張っているのですから』
全員が一斉に否定する中、近衛兵長バッタは前足を素早く天に向ける。
『ピ 寝室とリビングを隔てる壁はなし』
『ピ!! やりやがったこいつら!!』
戦闘システム起動、対物・対艦戦闘用意、殲滅戦準備。
近衛兵以外のバッタがライフルやらバズーカやらを用意する中、問題の彼は小さく首を振った。
『ピ しかし、我らは護るための存在。心も護るため、悲鳴でも響かないかぎりは寝室に侵入しません』
『ピ おいこら、どういうことだ? あぁ?』
全員の銃口が向けられている中、近衛兵は『哀愁です』というシールを頭部にはって、項垂れた。
『ピ だってだって、訓練場から戻る途中の地面に寝てるんだもの』
『ピ え・・・・・えええええ?! ちょ?! おまえそれ何時の話だよ?!』
『ピ?! 何時の話なんですか?!』
『ピ! 警戒ラインの内側で問題発生!?』
『ピ! 事案?! 事案じゃないですか?!』
緊張感と殺気から一転、バッタ達は大騒ぎで大混乱。
普段から全員をよく見てよく観察し、体調に気を使っていたはずなのに。
身落としていた、現在の警戒システムでは問題があった。
色々と考えまわるバッタ達の中に、爆弾が落とされる。
『ピ 訓練で体力を使い果たして、我々も巻き込まれて吹き飛ばされていましたから』
『ピ! ああ! あの時か!』
瞬間、誰もが納得し原因を思い浮かべ、そして泣いた。
『ピ この話はこれで終わりだ。では、諸君、今日もよろしく』
『ピ~~~』
こうして、バッタ達の朝のミーティングは終わるのでした。
ちなみに、情報科は議事録係のため、必死にまとめていました。
鎮守府の中で、最もバッタ達が過酷に働く場所は何処か。
航空科、まったく違う。
歩兵科、攻めてこないし攻めて行かないから暇。
情報科、毎日がデータとにらめっこ。割と楽しそう。
清掃科、戦闘とか訓練がない時は縁側に並んで日向ぼっこしてます。
機動科、テストでもしてないと、一日が長いこと。
整備科、色々とやってはいるが、艦娘の数が多くないので。
海兵隊、特にやることなし、この前は全員のボディに草が生えていた。
近衛兵、変態とレッテルが貼られないように隠密中で暇。
答え、主計科。
『ピ! 吹雪様の朝食は朝からがっつり! 生姜焼き定食!』
『ピ! 所要時間五分設定! 豚肉はおまかせ! 味噌汁もおまかせ!』
『ピ! 次! 暁様がモーニングセットを注文!』
厨房にバッタ達が飛び交う。
時に止まってフライパンを振るい、時に空中から鍋をかきまぜる。
さらに、術式展開で時間操作。進めたり、遅くしたり、最悪は止めたり。
『ピ! おら野郎ども! ルリ様から『いつもの』注文だ!』
『ピ! ご褒美にありがとう! 全員、加速装置起動!』
パン、オムレツ、サラダ、コーンスープ。すべて材料の生産地から細かく決めているルリのため、バッタ達は光速を超える。
『ピ! 電様が甘めのココアを御所望!』
『ピ! 川内様が冷奴を注文された! 誰か取りに行け!』
まさに戦場。
数十匹のバッタが飛び交いながら、一人としてぶつかることはない。
『ピ! はい吹雪様!』
「ありがとうございます」
『ピ! はい暁様!』
「ありがとう」
宣言通り五分以内に料理を作り上げ、待っている方々に渡していく。
何故、そこまでをするのかを、以前に艦娘の一人がバッタに質問したことがあった。
確かに忙しい、毎日が戦場だ。
しかし、バッタ師団主計科料理大隊は、材料の選択を相手にさせることを、止めようとはしない。
選べる自由から味わってほしいから、とバッタ達は答える。
自分で選んだものを、きちんと調理して、おいしいと言って笑顔を見せてくれるならば、我らは例え地獄の底であろうとも向かってみせる。
彼らは今日も折れずに、おいしい料理のために全力を尽くす。
だが、彼らでも『否』という時がある。
『ピ』
「なんだよ?」
『ピ そんなの無理ですよ』
苦渋ですと書かれたシールを張ったバッタの言葉に、テラはそうかとだけ答えた。
『ピ 確かに答えたいです。我らはバッタ師団の誇りにかけて、希望をかなえたく思います』
「そっか。でも、無理なんだろ?」
『ピ はい・・・・・だって! アイリス様の手料理ってなんですか?! 本人を連れて来いってことですか?!』
「いや、食べたくなったから言ってみただけなんだけどな」
『ピ!! テラ様は毎回毎回、私達の心をえぐるのがそんなに好きなんですか?!』
「そんなことない」
『ピ! じゃ今回は?』
「あ、うん、そこの飯と味噌汁を混ぜて」
『ピ そういうと思ったよ! コンチクショウ!!』
『ピ! はい目玉焼き定食です!!』
半ばヤケクソのように料理を突き出すのは、バッタ達にとって何時ものことだった。
整備科は修理・補修専門に行う部署。
しかし、時には開発もする。
けれど、主計科にも開発部門があるため、共同作業を行うこともある。
同じ目標に向かって進むべき仲間。
けれど、時にそれは同じ目標を掲げる敵でも有る。
『ピ? あ、なんて言ったてめぇ』
『ピ 何度でも言ってやるぞ、コラ』
室内に火花が散った。
当初、二つの科のバッタ達は和気あいあいと設計をしていた。
どうすれば喜んでくれるか、どうすれば楽しんでもらえるか。
色々と意見を出し、意見に対して反対意見を述べて、さらに自分の意見を伝えて説明する。
誰かのために何かができる喜びを、お互いにかみしめていたバッタ達は、唐突に殺気に目覚めた。
『ピ おっと、汚い言葉を使ってしまった、許してくれ』
『ピ いえいえ、こちらこそ』
ケンカ腰の雰囲気を消して、彼らは笑い合う。
『ピ おまえら三流には、そっちのほうがいいだろうがな』
『ピ 低俗な馬鹿にはお似合いの言葉でしたよ』
『ピ あぁ?』
『ピ フン』
そしてすぐに一触即発な空気になった。
お互いに十匹ずつの参加。火力ではどちらも後方支援のため、重火器などは搭載していない。
しかし、バッタはバッタ。基本装備に差はない。
『ピ 解ってないな。いいか、大切なのは色彩だ。見て楽しい、やって楽しいがいいに決まっている』
『ピ こりないバッタだな、貴方も。大切なのは、内容です。解いて悩んで、悩んだ後に溶けた喜びが解らないのですか?』
『ピ 話にならねぇな』
『ピ まったくです』
どちらかともなくため息をついて、次の瞬間には全機がアサルト・ライフルとマシンガンを構えた。
『ピ!! 次のゲームはアクションRPGだって言ってんだろうが!!』
『ピ!! 何を言っている! 次のゲームはアドベンチャーでしょうが!!』
『ピ! やるかてめぇ!!』
『ピ! 上等だこの野郎!』
そして、盛大な銃撃戦が室内で行われた。
どちらが優れているか、あるいはどちらが最初に艦娘達に楽しんでもらうか。
たかが、その程度の話で銃撃戦を行うのはバッタ達くらいなもの。
後日、清掃科による隠ぺい工作を行った報告を受け取ったルリは、かなり盛大な溜息をついて、師団長バッタを呼び出した。
「騒ぐなとは言いません」
『ピ 申し訳ない、ルリ様。私からきつく言っておきます』
一礼して退出した師団長は、主計科と清掃科の担当達を呼びつけて、最初にこう言ったという。
『ピ 馬鹿なことを言っているな、次のゲームはシミュレーションだ』
『ピ あ? なんて言ったタコ』
『ピ 低俗な馬鹿が何を言った?』
『ピ おい、おまえらやるってのか?』
『ピ! ケンカ売ってるんだな?』
『ピ いい値で買ってあげますよ』
『ピ!!!』
こうして、再び銃撃戦は行われ、ルリは本当に盛大に溜息をついて、頭を抱えたのでした。
水平線に日が沈む、19時。
バッタ達は再び集まって、ミーティングを行っていた。
『ピ 今日も色々あったがお疲れ様』
『ピ!』
ボディが傷だらけな師団長バッタに対して、誰もが見て見ぬふりをしながらミーティングを進めていく。
これがバッタ達の一日。
何事にも全力で、誰かのためなら世界さえ敵に回す。
馬鹿もの達の中でも特に馬鹿なサポート集団の、ある一日。
というわけで、番外編でした。
バッタ達は今日も何処かで、銃撃戦や砲撃戦しながら、誰かの笑顔のために頑張っています。