ここはグレモリー先輩の所有する別荘へ続く山の中。
「ひー……ひー………」
「ほらイッセー、早くなさい。彼女たちは私達よりずっと先にいるのよ」
一誠は巨大なリュックを背負わされ、両肩に荷物をかけて山を登っていた。
「ついたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「うるせぇアド!」
「子供なのです」
「ったく、なんで私が………」
「まぁまぁ」
アド達ポートラルはすでに到着しており、各々勝手に寛いでいた。
「山登りとは、なかなか楽しいものだな」
そんなとき一誠の隣には少しワクワクした様子の礼音がいた。
彼女はアドから「一緒に山登りしようぜ!」と一方的な提案をされたが、特に用事もなかったので参加することにしたのだ。
結果グレモリー達の修行の付き合いと気づいたがこれはこれで問題ないと判断した。
道中色々とあったが、午後のはじめごろには目的地であるグレモリー家所有の別荘に到着していた。
もともと人気がないところだが、周囲一帯に特殊な結界が張り巡らされているおかげで一般人にその存在を気取られる心配はない。よって派手な事をしても人目につく心配がない修行にはもってこいの場所である。
木造の大きな建物は木材の匂いで満たされ、豪華な造りながらもここが山の中であることを思い出させてくれる。一行は一旦大きな荷物をリビングに置き、それぞれの部屋に行って一応の休憩と修行の準備をしている。男子三人は同じ部屋で寝泊まりすることが決まっており、今は汗の処理と動きやすい服装に着替えて太陽と一誠はベットに突っ伏していた。
「……すごい、ふかふかだ。さすがお金持ちだ」
「……あ゛ー、疲れて寝そう」
太陽は部屋の豪華さに感動と尊敬を覚え、一誠は体力切れで既にグロッキー状態である。到着したばかりだが、すぐに鍛錬を始めることになっているので今のうちに体力の回復を図らねばならなかった。
「じゃ、僕も着替えようかな」
粗方の荷物の整理を終えた木場が学校指定のジャージを持って部屋付きのバスルームへ向かう。
「……二人共覗かないでね?」
「「誰が覗くか!!」」
余裕が無いイッセーは半分本気の殺意が籠った視線を向け、太陽は力任せに木場が消えた扉に枕を投げる。
ただでさえ最近、学園のBL好きの女子たちが「イッセー×木場×太陽」などといって騒いでいるのだ。変な噂が流れているのに、当の真ん中に挟まっている本人が冗談でそのテの素振りを見せるのだから堪ったものではない。どうも野獣×王子×優等生という組み合わせが受けているらしい。
その中でオレンジ髪の知り合いが出入りしているという情報があったのだが、今の彼には預かり知らぬ話だ。
このささやかな休息の間にコンデションを整えてると、気づかない内にいい時間になっていた。約束の時間の五分前には全員がリビングに集合していて、いつでも始めていい状態になっている。
「さあ、修行開始よ!!」
文化系に似つかわしくないリアスの掛け声がリビングに響いた。
【太陽の場合】
レッスン1、木場祐斗との剣術修行
バシィバシィッ!ガッ!バシィンッ!
ひさぎと木場が互いの木刀で打ち合っている。
木場は元々剣の才能に秀でているみたいで、ひさぎと同じで剣道の心得を持っている。
一誠は彼らとの実力差に唖然としていた。
「やっぱり凄いね、来栖崎さん!」
「そりゃどうも」
何度も打ち合いをしていると、
「参りました」
悔しくてもにこやかに木刀を下ろし、頭を下げる木場。
…うん、身を引いた彼の対応はイケメンだ。(眩しさに錯覚)
「………思えばあんたと打ち合ったのってどっかのファンが焚きつけて以来だっけ?」
「そうだね。君と僕、どっちが強いかって騒ぎになってたね」
この二人の会話は前に木場のファンの女子とひさぎのファンの女子が木場が強いひさぎが強いと若干暴動まがいな方が起こりかけたことが発端となり、それを沈静化させるため二人は打ち合ったことがある。
勝負の結果どちらも一歩も譲らない戦いだったが、最後にひさぎが勝った。
僕はそんなことを考え、ひさぎがドリンクを飲み干す中、一誠は木場に何度も打ちのめされていたのが目に見えた。
レッスン2、姫島朱乃との魔力修行
「そうじゃないのよ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのです」
姫島先輩の丁寧な説明を受けているが、一誠の手には全く魔力が集まらない。
作り出せるとしても米粒程度だった。
「出来ました!」
隣のアーシアは緑色の魔力を手のひらに出現させていた。
「あらあら、アーシアちゃんは才能があるかもしれませんねぇ」
姫島先輩はニコニコ笑いながら賞賛する。
「それに…」
「〜〜♪〜〜〜♪」
アーシアさんの隣には魔力の塊をジャグリングで遊んでいる我らが盟主アド。
あのナイフを飛ばす神器を操っていたあたりその辺も得意なのだろう。
さらにその隣に礼音さんが魔力の塊を完全に制御していた。
が、集中しているのか僕が呼びかけるまでずっと魔力を凝視していたのは別の話。
この後も一誠だけが魔力をうまく作れなかったが、途中で何やら凄い事を思い付き、姫島先輩に耳打ちしていた。
僕はその様子を見ながら怪しんでいたが、僕はアドにちょっかいを出されて魔力を落としてしまい、爆発に巻き込まれる羽目にあった。
レッスン3、塔城小猫との組手
「ぬががあああああ!」
ドンッ!ズルズルズル………
一誠が本日10回目の巨木に対して抱きついた。
組手を見ていた僕達は皆大爆笑していた。
「………弱っ」
「はい!小猫ちゃんからキツい一言がイッセーちゃんに放たれました〜っ!」
「あはははははは!キタコレ〜!!」
「無様だなぁおい」
「おいおい、そんなに笑ってはイッセー君が可哀想だろう………ふふっ」
フォローを入れる礼音さんだが、琴線に触れたらしく笑みがこぼれる。
小猫は見掛けによらず、立ち技、寝技、色んな格闘技を使いこなす。
当然素人の一誠では、まず当てるだけでも難しい。
更に小柄な体格を活かした俊敏性も備わっているので、普通に強い。
ただ本人は小柄であることをコンプレックスに思ってるようだが…。
「………打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんです」
小猫との組手は更に続き、一誠は組手途中で三回ほど死にかけたとか。
レッスン4、リアス・グレモリーとの修行
「イッセー!気張るのよー!」
「おおっス!ハヒー……ハヒー……」
一誠は背中に岩を括り付け、険しい山道を何度も往復していた。
「『おおイッセーよ。ここでへばるとは情けない』」
「それ言ってみたかっただけだろ」
「背中に岩を背負って往復………樽神名君の漫画の中に似たものがあったような………」
「『ドラグ・ソボールの龍仙人の修行』」
「ああ、それだ」
イッセーの修行を見てどこか考え込む礼音さんにアドが答えを言った。
「お?戻ってきたぞ」
栗子の視線の先にはイッセーの倍は大きい大岩を背負って猛ダッシュで戻ってきたひさぎがいた。
本来はイッセーの修行なのになぜが彼女も参加してイッセーの倍の負荷をかけて修行しているのだ。
「ハァハァハァ…」
「おつかれひさぎ。ドリンク…」
「いいわ。まだいける」
「いけるって………」
「そうでなきゃ、あのマッド野郎を叩っ斬れないのよ」
「………もしかしてあの時の?」
ひさぎが頑張る理由はおそらくアーシアさんのことだろう。
ウォッチャーの攻撃を許し、生き返ったといえアーシアさんは一度死んだのだ。
捻くれているようで、実は心優しい持ち主である彼女はアーシアさんを守れなかったことを後悔している。だからひさぎは積極的に修行をしているのだ。
「………分かった。ひさぎが納得するまで僕らも付き合うよ」
「………ふん」
ひさぎはそっぽ向いた。
それが彼女の照れ隠しだということを僕は知っている。
しかし、ちいさく「………ありがと」と口にしたことは聞こえなかった。
修行を開始してから約一週間過ぎたある夜、
『グレモリー………いや、赤龍帝はだいぶ強くなったみたいだな』
とある一室でポートラルが集まった中、ブラッドが呟く。
「そうだね、イッセー少し見違えるくらいだよ」
「確かに。まだまだ荒削りだが彼は伸び代があるよ」
弓道の心得をもつ礼音さんはイッセーの成長っぷりに感服の声を漏らす。
ひさぎは相変わらず何も語らないが、イッセーが強くなったことに少なからず興味を示しているだろう。
「ヌッフッフー。イッセーちゃん将来は大物になれるぜ」
「おっぱい大魔王にでもなるとか?」
「リツコ、それ悪い子です…」
「はぁ………」
アド達もイッセーに対してそれぞれの反応を示す。
「…ところで、今度戦うフェニックスのチームなのだが、参考までにサン君何か案はあるだろうか?」
礼音さんがレーティングゲームに向けて意見を述べてきた。
「そうですね。グレモリー先輩から聞いた話を交えて言うならライザーは間違いなく一番厄介です。フェニックスとは不死鳥の名の通り切っても殴っても復活してしまいます。なので普通に戦っても勝ち目はないでしょう」
「詰みゲーじゃん!?」
「確かにアドの言う通り普通に戦えばつんでしまいます。でも不死身には不死身故に弱点が存在するんです」
「ふむ、その心は?」
「肉体的ダメージは無理でも精神的ダメージならいけるんじゃないかと。特に自尊心の強いライザーなら効果は抜群ですし」
「つまり徹底的に追い詰めて敗北を認めさせると言うことか」
僕の説明に礼音さんがまとめた。
「ヌッフッフー。そう言うことなら私の出番ってわけだね?ワトサン君?」
「誰だよワトサンって………ひさぎ?」
おふざけのアドを尻目にひさぎがさっきから窓の外をじっと見ているのが気になった。
「来栖崎君何を見て………!」
礼音さんが尋ねようとして何かに気づいた。
「………いつから気がついたのだ?」
「走っている間にちょくちょくと」
「えっと礼音さん?ひさぎ?」
「すまないサン君。どうも外で招かれざる客が来たようだ」
招かれざる客と聞いて僕らは緊張した表情をする。
装備を整え、別荘を出た太陽達は林の中を進む。
少し離れた場所で足を止め、辺りを見回す。
「出てきなさい。いるのは分かってるのよ」
ひさぎがそう言うと、木の陰から複数の暗視ゴーグルをつけた怪人達と初めて見る牛頭と馬頭の怪物が現れた。
「我々に気づくとはな」
「上手く隠れてたつもりでしょうけど丸わかりなのよあんたらは」
「んダァテメェ。この俺様に文句でもつける気かぁ?」
短気っぽい牛頭が威圧的に話す。
「まぁまてゴズー。奴らは知りたがりなのだ。今はまだ動くな」
「だがヨォメズー。俺は舐められるのが大っ嫌いなんだ!早く殺させろよ!この生意気な女をすり潰してストレス発散しないと!」
「………お前達は一体?」
「ふむ?自己紹介が必要か?私はメズー。こっちは相棒のゴズー。あの方の手により生まれしミュータントだ」
この2体はウォッチャーと同じく作られし生命体ミュータントのようだ。
どうやら日本の妖怪である牛頭と馬頭をベースにしているようだが。
「貴様らのことはウォッチャー殿の報告で聞いている。故に我らに排除の命令が下された」
「てめーらみたいなチビどもは俺様たちだけで充分だってことだよ!ブフゥ〜」
メズーは見た目に反して知的な印象がある。
対してゴズーは威圧的に僕らを見下している。
「チビ?だとしたらあんたはデクの木な何かかしら?」
「んだトォ!?」
ひさぎが煽りがえすとゴズーがブチ切れた。
「コケにしやがって!死ねぇ!!」
そう言ってゴズーは頭を下げ、まるで闘牛の牛の突進のごとくツノを突き出してひさぎに襲いかかる。
「ひさぎ!」
『bloody conect!』
僕が神器を発動させひさぎに力を与えると、ひさぎはゴズーのツノを受け止める。
が、パワーの違いでひさぎはゴズーのツノを掴んだまま後ろに後退させられる。
それでもひさぎは踏ん張り、背後の巨木にぶつかって止まった。
「やるじゃねぇかチビ人間!このまま串刺しにしてやる!」
ゴズーのツノがひさぎに迫る。
「おいおい、焦らしプレイだなんて水クセェな」
声が聞こえたゴズーは気配を感じひさぎを振りほどく。
ゴズーの首があった場所に鎌が振り下ろされた。
「あたしにも誘ってくれよ」
身の丈ほどありそうな大鎌を構えている栗子。
いつからあんな武器を?と思ったが大鎌には何か力を感じ、それが神器だと分かった。
「テメェも神器持ちか。ならテメェも………あ?誰だ俺様の背中でひっついてるやつは!?」
突如ゴズーが背中あたりを弄り、捕まえたそれを投げ飛ばす。
がそれは体制を整え綺麗に着地した。
「テメェがチビガキが!!」
「………チビでもガキじゃないです」
ひっついていた相手はなんとやちるちゃんだった。
「こいつ私一人で充分なんだけど?」
「んなこと言うなよ来栖崎。あたしらを差し置いて一人だけ楽しもうなんてそうはいかねーぞ」
「…今夜は牛肉が食べれるです故」
「お?いいね〜。あたし一度高級肉食べてみたかったんだ」
「言っとくけどあの肉は私のだからね」
「独り占めは許さぬです!」
ゴズーそっちのけで喧嘩し始める3人。
その時ゴズーの持っていた斧が力強く振り下ろされ、3人はすんでのところで避けた。
「俺様を無視して喧嘩とはいい度胸だナァ?」
もはや顔面のほとんどに青筋が埋まるくらい怒りをあらわにするゴズー。
「モー許さん!テメェらをぐちゃぐちゃのミンチにして骨ごと食ってやる!!」
「うわこわぁ。あたしらをハンバーグにするつもりだぜ?」
「ふーん?そっちの肉も興味あるけど、むしろミンチになるのはどっちかしらね?」
ゴズーは「ブモォオオオ!!」と雄叫びをあげてひさぎ達と対決した。
「全くあのバカめ。暴走を止める俺のみにもなってみろといいたい」
ゴズーを見ながら呆れ混じりにいうメズー。
「まぁいい。みたところ貴様らの中に接近を得意とするものはいないようだな」
僕らを見て観察するメズー。
メズーと戦うことになったのはアド、礼音さん、百喰、そして僕だ。
「力が自慢のゴズーと渡り合えるパワーの持ち主は向こうへ行ったなら、私の勝機は確実だ」
「うわ、サンちゃんあたしら舐められてるよ」
よほど自信があるメズー。
ゴズーほどではないといえ、僕らを見下していた。
「ゴズーの武器はあの通りご自慢のパワーだ。そして私の武器は………スピードだ!」
メズーはトゲトゲした棍棒を持って、アスリート選手顔負けのスピードを見せつけた。
「どれだけ魔法を扱えようと、私を捉えることなど出来まい!」
メズーは背後に回り棍棒を振り下ろそうとした。
が、それよりも早くメズーの顔めがけて弓が放たれた。
メズーはギョッとしてギリギリ避け、後ろに下がる。
「すまないな。神器に目覚めた影響か私の目が貴様の動きを読めたぞ」
礼音さんが弓を構えて言う。
「私のスピードを捉えるとは………貴様は一体?」
「私はポートラルの三静寂礼音だ!」
「まさか貴様のような強者と会えるとはな。ならば全力を持って貴様を叩きのめしてくれる!」
そしてメズーは礼音さんと対峙した。