ハイスクール感染×少女   作:只の暇人

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第16話:不死鳥の栄光

レーティングステージ・闘技場

 

魔王サーゼクス・ルシファーの計らいで急遽作られた空間。

 

その空間の中央で対峙するひさぎ&一誠組とライザー&音姫。

ちなみに太陽は観客席側だ。

 

一誠の手には既に『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が出現していた

 

「太陽君、よく来てくれたね」

「半端アドが無理やりだったけどね」

「当たり前だよ。こんな面白いイベントを見逃すなんて勿体ない」

「ここの料理をテイクアウトしようとしてんじゃねーよこの穀潰し供!」

 

意地汚い食べ方をするアド達にイラつきながらつっこんだ。

 

「ところで、前のゲームに出ていなかった彼女は何者だい?二人は知っているみたいだったけど」

「………彼女は前にあったことがあるんだ」

「自分が最強に誇りを持ってるからね。けどヒサギンに負けちゃって因縁つけられてんの」

 

音姫について簡潔に説明する太陽とアド。

流石に前世関係は憚られた。

 

「では『メルター』と言うのは?雰囲気的に何かの組織のようですわね」

「組織………て程でもないよ。言うなればチームかな?」

「チーム?チームといえば君達はどんな関係なんだい?」

「ふっ………男には…あいや違う。女には秘密を自分から明かしたりはしないのさ」

「かっこつけんじゃねーよ」

 

アドにツッコミつつ、太陽は思考にふける。

 

(僕らポートラルの他に転生した人が居たなんて思わなかったな。………もしも彼女だけでなく、あの渚和区で生きていた人達がみんな転生したとしたら………………って、流石に飛躍しすぎか)

 

詳しい事は彼女と話してから考えようと太陽はイッセー達を見る。

 

するとひさぎと音姫が壁際まで移動している。

どうやらイッセーとライザーの戦いを見てからになるようだ。

 

モニター越しに訝しげな顔をするリアスに向けて一誠が叫んだ。

 

『部長!プロモーションの許可をお願いしますッ!』

 

一誠の叫びにリアスが頷き、プロモーションの許可が下りた。

 

「『プロモーション』!『女王クイーン』!」

 

一誠が最強の駒に昇格し、一誠はブーステッド・ギアを頭上に掲げながら再び叫ぶ

 

「部長!俺は木場みたいな剣の才能はありません!朱乃さんみたいな魔力の天才でもありません!小猫ちゃんみたいなバカ力もないし、アーシアの治癒の力もありません!太陽みたいに頭は良くないし、アドみたいな悪知恵もありません!それでも最強の『兵士(ポーン)』になりますッ!」

 

一誠が現す誓いに一部の外野が「おいっ!」っと叫んだ気がした。

 

「あなたのためなら、俺は神様だってぶっ倒してみせます!このブーステッド・ギアで!俺の唯一の武器で!俺はあなたを守ってみせます!輝きやがれぇぇぇぇぇッッ!!オーバーブーストォッ!!」

 

『WelshDragonOverBooster(ウェルシュドラゴンオーバーブースター)!!!』

 

籠手の宝玉から赤い閃光が解き放たれ、一誠の体を包み込む。

そして、一誠の肉体に赤い鎧が纏っていく。

姿はまさにドラゴンその物だった。

 

『これが龍帝の力!禁手(バランス・ブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』――――――俺を止めたきゃ魔王さまに頼み込め!何しろ、『禁じられた忌々しい外法』らしいからな!』

「おおおおおお!!かっこいイィィ!!」

 

アドが身を乗り出して子供のように目を輝かせている。

アドだけでなく他のみんなも興味津々だ。

 

ふとひさぎ達の様子をら見てみると、二人は食い入るように一誠とライザーの戦いを見ていた。

 

『Ⅹ』

 

籠手からカウントダウンが開始され、一誠は両手の間に魔力の塊を生み出し、ライザーに向けて発射する。

 

ライザーは撃ち出された魔力を避ける。

 

『Ⅸ』

 

一誠の鎧の背部にあるロケット噴出口から魔力が噴き出し、猛スピードで攻撃しようとしたが、制御出来ずに壁へ激突してしまった。

 

『Ⅷ』

 

『赤龍帝……ッ!クソガキがッ!!悪いが手加減しないぜ!認めたくないが、今のお前達はバケモノだ!主であるリアスの前で散れ!火の鳥と鳳凰!そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火!その身で受けて燃え尽きろォォォッ!』

『てめぇのチンケな炎で俺が消える訳ねぇだろぉぉぉぉぉっ!』

 

『Ⅶ』

 

二人の拳が顔面にぶつかり合う。

 

その攻撃で、一誠は痛みと熱で吐血してしまう。

 

『赤龍帝!やはりお前は――――――ゴバッ!』

「ライザーにダメージを与えた?」

 

太陽が疑問の視線を一誠に向けると、その理由が判明した。

一誠の左手に悪魔の天敵アイテム、十字架だ。

 

『へ、へへ……っ。うちの『僧侶「ビショップ)』は元シスターでね。奥にしまっていた物を借りてきたんだ……!十字架の効果を神器で増大させて、あんたを殴った。高めに高めた聖なる攻撃は、たとえ不死身のフェニックスでも早々癒せないんじゃないか?』

 

『Ⅵ』

 

「何を考えているんだイッセー!悪魔になった君にとってそれは猛毒………………ってまさか」

『まさか貴様!左腕をドラゴンの腕に変えたのか!』

 

太陽と同じくライザーも一誠の左腕に気づいた。

 

『ああ、俺はこの力を一時的にでも得るために、左腕を代価にくれてやった。俺の左腕は本物のドラゴンの腕だ。だから、十字架は効かない』

『正気か貴様!?そんな事をすれば二度と元の腕には戻らない!お前はそれが分かっているのか!?』

 

『Ⅴ』

 

狼狽するライザーに一誠は迷いなく言い放つ。

 

『それがどうした。俺みたいな奴の腕一本で部長が戻ってこられるんだぜ?こんなに安い取り引きは無いだろう?』

 

その言葉を聞いた太陽は目を見開いた。

 

「イッセー、なんでそこまでして………」

「本当に彼はすごいな。状況次第では化ける可能性もあるぞ」

『Ⅳ』

 

一誠は手に握っている十字架に力を込め、そのまま最大の一撃を繰り出………そうとして、ドラゴンの鎧が解除されてしまった。

 

一誠に残ったのはドラゴンの腕と化した左腕のみ。

突然の禁手(バランス・ブレイカー)解除に一誠は焦りを交えて籠手に叫んでいる。

 

「………よく善戦していたようですが、不安定な力を把握せずに使用した結果がこれですよ。これでは敗北は確実ですね」

 

百喰が淡々と事務的に言い放つ。

 

(百喰、相変わらず硬い人だな。多分気付いてないだろうがグレモリー先輩がすごい形相で睨んでるぞ)

 

前世からもルール遵守な性格なため、よくメンバーからムッとされていることに気づいているのだろうか。

 

「それは流石に早計すぎるぞ百喰君」

 

その時百喰の言葉をバッサリと断ち切ったのは礼音だ。

 

「何故です?例え十字架という有効打があっても流石に無理ですよ。ほら、もう既にとどめを刺そうとしている」

 

モニターにはライザーが一誠を摘み上げ、とどめを刺そうとしていた。

 

「いいや、彼の目はまだ諦めていない」

 

そう礼音の言う通り、一誠の手に水入りの小瓶が握られていた。

 

『火を消すなら、水だよな……!』

 

「いや水で消せるなら別に苦労は………」

「いや違う!あの小瓶の形は………」

 

『ブーステッド・ギア・ギフト!』

『Transfer!』

 

太陽は一誠の持つ小瓶がアーシアが作っていた聖水の小瓶によく似ていた。

倍増した力が聖水に譲渡され、聖水がライザーの顔を被り、激しく痛めつける。

 

『うがぁぁぁぁぁあああああああああああッ!』

 

聖水で顔を焼かれのたうち回るライザー。

 

「百喰の言う通り、イッセーとライザーが普通に戦えばライザーの圧勝だ。けどこの状況は違う。イッセーがライザーに勝つために考えた発想がイッセーを有利に立たせたんだ!」

「発想の勝利だね!」

 

一誠は十字架を左手で拾い、二つ目の聖水を拳に振りかける

 

『アーシアが言っていた。十字架と聖水は悪魔が苦手だって。それを同時に強化して、同時に使ったら、悪魔には相当なダメージだよな』

 

一歩一歩足を進める一誠。

 

『木場が言っていた。視野を広げて相手と周囲も見ろと』

 

『Transfer!!』

 

自身が持っている十字架、聖水に力が譲渡される。

 

『朱乃さんが言っていた。魔力は体全体を覆うオーラから流れる様に集める。意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと。ああ、ダメな俺でも感じられましたよ、朱乃さん』

 

一誠は打撃を繰り出すために拳を構える。

 

『小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんだと!』

 

一誠が拳の照準をライザーに定めた。

 

『ま、待て!分かっているのか!この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なものなんだぞ!?お前らのような何も知らないガキがどうこうする様な事じゃないんだ!』

 

往生際悪くライザーは言い訳を述べるが、確固たる意志を掲げた一誠には無意味だった。

 

『難しい事は分からねぇよ。でもお前に負けて気絶した時、うっすらと覚えている事がある。――――部長が泣いてたんだよっ!俺がてめぇを殴る理由は!それだけで充分だァァーーーーッ!』

 

高められた一誠のパンチがライザーの腹に突き刺さった。

血を吐きながらライザーは床に倒れる。

 

「はぁ……はぁ……ああ、やった、ぜ……っ」

 

力を使い果たしたのか、一誠はガクンと崩れるように仰向けに倒れた。


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