冥界 結婚式場
一誠がライザーに勝利した。
今目の前に起きている事実が僕らの心を震わせた。
「ウオォォォォォ!!かっこいい〜〜!!」
「やるじゃねーか」
「見直したのです………ちょっと」
「本当に逆転するなんて………」
「ふふっ」
僕らが感動してる中、グレモリー先輩がすぐさま駆けつけて一誠を励ましているのが見えた。
「愛されているな」
「みたいですね。普段は変態のくせに」
「まあ………それは彼の個性なのだろうな」
礼音さんが言い淀んだのは多分洋服破壊の件ではなかろうか。
「さてと、そろそろかな」
「ですね」
僕らは闘技場に目を向ける。
そう、彼女達の戦いが始まるから。
「頑張れよ、ひさぎ」
レーティングステージ・闘技場
変態が焼き鳥をぶっ飛ばした。
字面的にあれだけどあの澄ました焼き鳥の顔をぶっ飛ばしたあいつにほんの少し見直したわ。
「………まさかライザーに勝つだなんて思わなかったな」
そういうのはあの焼き鳥のとこにいた………………えっと………たしか………トイレの紙の名前だった気が…。
「………まさかと思うけどまた間違った名前を覚えてるわけじゃないよな?」
と私に睨んできた。
………私って顔に出しやすいのかしら?
「そんなわけないでしょ………ウォシュレットちゃん」
「ググググ………いろいろ言いたいことはあるけど、お前を倒して、私が最強であることを知らしめてやる!」
青い槍を私に向けるウォシュ………中国女。
何だかただの槍じゃなさそうだけど、私にとっては関係ないね。
「そう?別に興味ないけど、もう一度土の味を覚えさせようかしら?」
自前の刀を抜き、中国女と対峙する。
「決闘に名乗りは不可欠。生存組合『メルター』のいちごちゃん親衛隊長・水面鳴音姫。いざ、尋常に勝負!」
「………生存組合『ポートラル』のエース。来栖崎ひさぎ。かかってきなさい」
私が名乗ったその後、中国女が一瞬にして間合いに詰め寄った。
「!」
これには驚いたが中国女の攻撃を難なくいなし捌いていく。
「流石、私の最強に土をつけた女」
「そりゃどうも。その槍、もしかして………」
「これか?これは私が最強を目指していた頃に赤い目の塔を見た後で顕現なされたものだ」
赤い目の塔。
ケツパが無意識で作った謎のやつ。
もしかするとそれを見たものはみんな私と同じ神器(セイクリッドギア)を手にするのかしらね」
「それと同時にかつての記憶も蘇った。お前のことも、あの参謀のことも。………正直失望しかないけどね」
もしかして前世のあの出来事の話だろうか?
ケツパが私達と共にあの島から脱出する作戦の………。
「まあそんなことはどうでもいい。私の目標は来栖崎ひさぎ。お前の打倒だ!!」
そういうと中国女は連続で槍を突き刺してくる。
所謂五月雨突きって奴を。
私は刀で捌きまくる。
「あれ以来私はお前を倒すために、そしてもっと最強を目指すために試行錯誤を繰り返した!」
「そんで?あんたはそん時にあの変態焼き鳥に目をつけられたってわけ?」
「ほとんどは私の容姿で選んだそうだがな。だが今になって思えばお前と戦う機会を得られたんだ。ちょっとは感謝するよ」
「ちょっと…ね!」
私のなぎ払いをバック中で避ける中国女。
「そしてあの男にもお礼を言おう。お前のおかげで私の最強になるためのヒントを得られた」
「?」
あの男ってもしかして変態のことなのかと思っていたら、中国女が何かしでかすつもりだ。
「我が最強の槍よ。圧倒的パワーを示せ!禁手化(バランスブレイカー)!!」
中国女が叫んだ瞬間私はいつの間にか風圧に飛ばされていた。
体制を立て直すと、青い槍と同じ青い鎧を身につけた中国女がいた。
「嘘でしょ…」
「バランスブレイカー。最強を望んだ私の力、今ここで証明しよう」
結婚式場 バルコニー
「バランスブレイカーだって!?」
僕は驚きを隠せない。
取引で制限付きとはいえライザーを倒した一誠とは違い、彼女は彼女自身の力でバランスブレイカーに至ったのだ。
それだけではない。バランスブレイカーは通常時よりも戦闘力は極端に変化するため、その差は歴然ともいえた。
『条件付きの赤龍帝と違って、あの女は自らの力でバランスブレイカーに至ったようだな』
「ブラッド!」
『バランスブレイカーは強力だ。このままじゃあの嬢ちゃんは負けるぜ』
「そうは言っても、僕らに何ができるんだよ」
目の前にひさぎが頑張っているのに何もできない自分がもどかしい。
『できることはある。相棒、あの嬢ちゃんと繋げ。力は送らなくていい』
「コネクトのことか?分かった。やってみる」
僕はすぐさまひさぎとコネクトを試みた。
『全く、相棒はあの嬢ちゃんのことになると躊躇いがないな』
何か言ってた気がするが今は集中することにした。
闘技場
『おい嬢ちゃん、俺だ。ブラッドだ』
「え?」
突然頭にケツパの神器にいたあいつの声が聞こえた。
『少しばかりアドバイスをしようと思ってな。相棒に頼って声だけを送っている。ああ、別に口に出さなくていい。頭の中で俺と会話するイメージで話せ』
『そう?だとしてもいらないわ驚きはしたけどこんな奴…』
『最後まで聞け。バランスブレイカーは強力だ。物によっちゃ巨大生物から何万もの軍隊と渡り合える力を秘めている。目の前にいるあの女も相当だからな』
『そこまでなの?』
『だからこそ、あの女と対等にするために嬢ちゃんにはバランスブレイカーを至らせようと思ってな』
バランスブレイカー。
そのワードは確かに魅力的だ。
「けど、そんなものに頼らなくても私だけでやってやるわ」
『………ならバランスブレイカーとの差を味わうといいさ』
そう言ってブラッドは喋らなくなった。
「こないなら、こちらからいくぞ」
中国女が攻撃態勢に入ったので私は臨戦態勢に…
ドォっ!
「ガァッ!?」
…入ろうとしていつの間にかなぎ払いでぶっ飛ばされた。
「か………かは………!」
攻撃を受けた痛みが体全体に行き渡っていく。
大男の一撃(受けたこともないが)よりも確実に鋭さと力強さがあった。
「………たった一撃でこれとは………だが、これがバランスブレイカー。正に最強の力!これさえあれば、何でもできる気がする!」
私に一撃与えただけで喜びを隠せないあの中国女。
これがバランスブレイカーとの差なの?
『単なる一端に過ぎないぞ。戦闘系の神器のバランスブレイカーは一騎当千、無双待ったなしだからな』
ブラッドからの声が聞こえた。
『アドバイスを贈るっつったろ。嬢ちゃんもバランスブレイカーになるためのな』
『………前にも言ったわね。私にもその力が手に入るの?」
『条件を満たせばバランスブレイカーは現れる。俺はこんななりだが、バランスブレイカーを研究していたからな。そんでバランスブレイカーに至る方法は一つ。心の爆発だ』
心の爆発?
『感情が振り切った場合、誰かを守りたい欲求、過去の克服………ようは自分の心が望んでいることを表に出すことこそが、バランスブレイカーへのカギとなる』
『………………』
それは、私にとっては難しいものだった。
幼き頃にいじめを受けて、もう心を閉ざした私がバランスブレイカーに至るなんて………。
『ひさぎ!!』
と、頭にケツパの声が聞こえた。
『け、ケツパ?』
『おい相棒。先に言っておくが嬢ちゃんはまだ生きてるよ』
『あんなぶっ飛ばされ方をされたら誰だって心配になるだろ!僕はひさぎの所有物なんだから』
僕はひさぎの所有物。
………そういえば前世の契約(しばり)まだ覚えていたんだ。
『ひさぎ、大丈夫か?』
『大丈夫に決まってるでしょ?驚きはしたものの次は私が驚かせる番なんだから』
嘘だ。
本当は受けた傷と痛みで泣き出したいところだ。
でも変なプライドがやせ我慢をする。
『そうか…。なら今の僕にできるのはこれくらいしかないけど…』
ケツパは間を開けてこう言った。
『負けるなよ、ひさぎ』
たった一言の声援。
聞く人によってはそれだけ?って思うだろうけど…
「当然よ。私は負けない」
何故か不思議と力が湧いてくるから嫌になれない。
そして、もしあんたが許すなら、その時はケツパじゃなくて………
サン………って呼んでいいかな?
ドクンッ!
突然私の刀が眩く光だした。
バルコニー
「あれは…」
ひさぎが光って………いや、ひさぎの持つ刀が光っている!
『喜べ相棒。どうやら嬢ちゃんはいたったようだぞ』
「まさか、ひさぎは!?」
『そのまさかさ。嬢ちゃんは、ひさぎ嬢ちゃんはバランスブレイカーを手に入れたのさ!』
闘技場
大きな光が収まった時、ある変化が起こった。
最初に目に映った私の刀は黒く大きくなり、両手足に黒い防具が追加されていた。
そんで額に二本角の鬼のアクセサリーも追加されていた。
『よくやったな嬢ちゃん。感じるかい?それがバランスブレイカーさ』
「これがバランスブレイカー………」
手に持つ刀型神器を見る。
「………これが、私の半身ということね」
これを見ても『武器として』ではなく『私の一部』という感じがする。
もしかして神器とは自分自身の表れではないだろうか。そう思えるの。
「お前も最強の力へいたったと言うのか」
ふとあの中国女が恨めしいとも言えるような表情で私を見ていた。
が、それは一瞬だけでまるで一人の戦士のような顔をする。
「だが、むしろこれがいいと言う私がいる。人の理から外れた者同士の戦いに、邪魔者は無粋だ」
最強と最強………違う。これは戦士と戦士の戦い。
私は思わず、バランスブレイカーで変化した刀型神器を構える。
太陽の場合
いっときの沈黙が流れる。
この状況を見ている者達は嵐の前の静けさを感じていた。
だが、剥がれかけた壁の一部が落下し、
「「っ!!」」
ガギャァアンッ!!
その均衡が破られた。
それは常人ではまずなにが起こっているのか理解できない現象だった。
闘技場の一部に暴風雨が発生しているかのように。
その中身を視認することができるのは、戦いあっている最強達に近しいもしくはそれ以上の実力者達だろう。
「これが、バランスブレイカー同士の戦い………」
『あいつらはまだ生まれたてみたいなもんだからな。神器………特にロンギヌスクラスだと世界そのものが飲み込まれる』
「………イッセーの赤龍帝の籠手もロンギヌスだったよね?」
『そうだ。今の使い手は未熟だが、歴代の使い手達はもう一対の存在と戦って色々巻き込んでいたからな』
「もう一対?」
『白龍皇、赤龍帝と対になる存在。所詮ライバルというものさ』
「………」
もしイッセーがその白龍皇の使い手と戦いあったらどうなるのだろう?
太陽は不安になった。
『お?そろそろ終わりそうだ』
どうやら戦いが終わりそうなので容姿を見てみる。
お互いボロボロだが、闘志を衰えさせない二人の最強達。
やがて二人は構えを取る。
次の一撃で決着をつけるように。
そして同時に駆け抜け、互いの武器がぶつかろうとした瞬間、
『ちょっと待てやああああああああああ!!!』
ドスを効かせた怒号が響き渡った。
僕ら含めひさぎ達も怒号が響いたところへ振り向く。
「らいらいらい。全く、お偉いさんと取り引きしていたところをこんなところで出くわすとは、いったいこんなところでなに遊んでいるんだ?音姫ぃ?」
「い、いちごちゃんっ!?」
音姫さんがおっかなびっくりの様子で怒号を響かせた女性。その者は前世で生存組合『メルター』の盟主にして音姫さんがつかえる主人『蚊焼いちご』さんだ。
「音姫ぃ。これから大事な取り引きがあるんだが、手伝ってくれるよな?」
「はい!!ただいま!」
音姫さんは電光石火の如く近づき、その場に傅く。
前世でも彼女はいちごさんの命令は絶対遵守な性格なのを覚えている。
ふと音姫さんはひさぎに振り向き、
「勝負はお預けだ!次に機会があったら今度こそ最強を証明してやるからな!覚えてろ!」
と小悪党がいいそうな捨て台詞を吐いて去っていった。
ひさぎは白けてしまい、闘技場を後にした。
『やれやれ。こういうのを結果オーライというんだっけか?』
「僕としては微妙だけど」
『まあいいさ。ひさぎ嬢ちゃんはバランスブレイカーを身につけた。きっとこれから先もっと忙しくなるぞ』
それすなわち、困難と脅威が再びやってくることとは思いもよらなかった僕であった。
さて、次は聖剣編。
新キャラあのキャラ達を出さないと。