ハイスクール感染×少女   作:只の暇人

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第三章:聖剣の禍罪
第18話:復讐の楔


パンッ!

 

雨の音に混じって乾いた音が響いた。

グレモリー眷属である祐斗が主人であるグレモリー先輩に叩かれたからだ。

 

今日は球技大会で、全力をかけて戦っている中、祐斗だけが1人だけ上の空のまま終始非協力的だった。

 

リアスに叩かれても祐斗は無表情。

見ただけで明らかに様子がおかしいことに気づく。

 

「もういいですか?球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね?少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」

「木場、お前マジで最近変だぞ?」

「君には関係ないよ」

 

イッセーの問いに祐斗は作り笑顔で冷たく返す。

なにやらわき立つ感情を抑え込んでいるような………

 

「俺だって心配しちまうよ」

「心配?誰が誰をだい?基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど?まあ、主に従わなかった僕が今回は悪かったと思っているよ」

 

どこまでも冷たい祐斗の返事にイッセーは眉間に皺を寄せる。

 

「……イッセーくん。僕はね、ここのところ、基本的な事を思い出していたんだよ」

「基本的な事?」

「ああ、そうさ。僕が何のために戦っているかを」

「部長のため、じゃ無いのか?」

「違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー―――――。それを破壊するのが僕の戦う意味だ」

 

この時、僕とイッセーは初めて、祐斗の本当の顔を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど………木場くんにそんな過去が」

 

部活動を終えた直後、グレモリー先輩から話を聞かされた僕はメンバー達と情報共有する。

 

曰く、聖剣計画というものがあり、数年前までキリスト教内で存在した、聖剣エクスカリバーが扱える者を育てる計画。

聖剣は対悪魔にとって最大の武器、悪魔が聖剣に斬られたら成す術なく消滅させられる。

神を信仰し、悪魔を敵視する使徒には究極とも言える兵器である。

 

そして、中にはイエス・キリストを殺した『黄昏の聖槍トゥルー・ロンギヌス』で『神滅具ロンギヌス』の代名詞となった神器セイクリッド・ギアがあるらしい。

 

話を聞いたアド達はエクスカリバーと聞いて興奮していたが、祐斗がその計画の失敗作であり、脱走者であることを話すと一気に白けてしまった。

 

「エクスカリバーを作るってのはロマンがあるけどさ。やっぱ伝説級の鍛冶師じゃなきゃだめだね。ちょいと腕がいい程度じゃ伝説級とも言えるエクスカリバーなんて劣化コピーでしかないし」

 

と、アドの談である。

 

………………ただ、僕は祐斗が失敗作だから捨てられたという内容にどこか苛立ちを覚える。

多分前世の出来事に関係するのだろうが、あまり思い出せなかった。

 

「ま、聖剣云々は後で考えよ。こういう時何かしらトラブルが起こるって漫画によくあることだし」

「僕はアドのセリフがフラグにしか聞こえんが」

「「「確かに」」」

 

祐斗のことは気になるができればすぐに解決できる内容がいいと僕は思う。

 

 

 

 

 

 

 

………………そう思っていた時期があったんだ。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

教会から派遣されてきた2人の少女がグレモリー先輩に告げる。

 

アド………お前にはフラグ建築士の二つ名がついたぞ。やったな。

 

「おい、やめろ」

 

と、冗談はさておいて。

 

彼女達はゼノヴィアとイリナと言い、盗まれたエクスカリバーを取り返すためにここにきたそうだ。

 

エクスカリバーは大昔、戦争で折れたが、その欠片を拾い集め、錬金術によって新しく8本のエクスカリバーが作られた。

 

因みに、ゼノヴィアが持っているのはカトリックが管理している『破壊の聖剣・エクスカリバー・デストラクション』、イリナの方はプロテスタントが管理しており、自由自在に形を変化出来る『擬態の聖剣・エクスカリバー・ミミック』と呼ばれる代物らしい。

 

………これは関係ない話だがアドが「エクスカリバー折れちゃったの?どんだけ脆いの?っていうかそれを折った時代が悪いの?」と頭を抱えていた。

 

それらを含む8本のエクスカリバーはカトリック、プロテスタント、正教会でそれぞれ管理されているのだが―――――その内の3本が盗まれ、犯人はこの地に持ち運んだらしい。

 

そのエクスカリバーを奪ったのは堕天使の幹部コカビエル。

いにしえの戦いから生き残っている猛者だった。

 

「私達の依頼――――――いや、注文とは私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこない事。――――――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

「つまりエクスカリバーは自分たちがなんとかするからお前達は何もするなということか」

 

礼音さんがまとめて言うが、好き勝手な言い分にグレモリー先輩の目は冷たい怒りを宿す。

 

「まさかとは思うけど、たった2人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪い返すつもり?無謀過ぎるわ。死ぬわよ?」

「そうよ」

「私もイリナと同意見だが、出来るだけ死にたくはないな」

「――――っ。死ぬ覚悟でこの日本に来たというの?相変わらず、あなた逹の信仰は常軌を逸しているのね」

 

理解し難いと言いたげなグレモリー先輩。

かく言う僕も語る見込みのない戦いにどうしてなんの疑問も無く赴くことができるのか全くわからない。

ちらっと横を見れば、への字の口をするアド、気に入らなさそうに睨むひさぎ、頭を抱える百喰、深く考えている礼音さん、我関せずな姫方とやちるちゃんがみえた。

 

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」

「まぁね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私達の役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手からなくす事だ。そのためなら、私達は死んでもいいのさ。エクスカリバーに対抗出来るのはエクスカリバーだけだよ」

 

エクスカリバーを堕天使に利用されない為なら、自分達は死んでもいい

僕はその態度が気に入らず、怒りを覚える。

なぜ怒りたくなるのかはまだ理解できないのに。

 

その後、会話が途絶したところでイリナとゼノヴィアは帰ろうとしたが、アーシアに視線を集中させた。

 

「……兵藤一誠の家で見かけた時にもしやと思ったのだが……『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

ゼノヴィアの言葉に、アーシアは身を震わせ、ひさぎがジロリとゼノヴィアを睨む。

イリナもそれに気づいたのか、アーシアをまじまじと見てくる。

 

「ああ、あなたが一時期噂になっていた『元』聖女の『現』魔女さん?悪魔をも癒す力を持っていたらしいわね?追放されて、どこかに流れたとは聞いていたけど、まさか悪魔にまで堕ちていたとは思いもしなかったわ」

「……あ、あの、私は……」

 

狼狽するアーシア。

ひさぎの表情が不機嫌になっていく。

 

「大丈夫よ。あなたのことは上には伝えないから安心して。でも、『聖女アーシア』の周囲にいた者が貴方の現状を知ったら相当ショックを受けるでしょうね」

 

軽く口にするイリナ。

ひさぎが自分の袖を掴んでギリギリと音を立てている。

 

「しかし、転生悪魔か。『聖女』と祭り上げられていた者が、堕ちるところまで堕ちたな。まだ我らの神を信じているのか?」

「ゼノヴィア、悪魔になった彼女がまだ信仰を持っているわけがないでしょう?」

「いや、その者から信仰の匂い……いや、香りがする。抽象的な言い方だが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも、罪の意識を感じながら信仰心を捨てきれない者がいる。それと同じ匂いがするんだ」

「あら、そうなの?アーシアさんは悪魔に堕ちた今でも、主を本当に信じているのかしら?」

「……捨てきれない、だけです。ずっと、それしか知らなかったものですから……」

 

そのアーシアの震える声を聞いてゼノヴィアは破壊の聖剣を解き放ち、アーシアの眼前に突き出す。

 

「そうか、それならば今ここで私たちに斬られるといい。神の名のもとに断罪してやろう。今ならば主も、罪深いお前に慈悲を与えてくださるだろう」

 

なんとゼノヴィアがアーシアさんを断罪と称して殺すつもりだ。

流石に看過できない僕は止めようとするが、それより早く動いたものがいた。

 

「………なんのつもりだ?」

 

ゼノヴィアの首筋に刀が添えられている。

ひさぎの刀だ。

 

「難しい話はあまり頭に入らないけどね。アーシアを殺す前に私があんたらを殺してやる」

 

もはや殺気を隠す気はないひさぎ。

 

「そもそも、あんた達はアーシアをなんだと思っているの?癒したのが人では無く悪魔だから『魔女』だって言うの?」

「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

 

ゼノヴィアは真顔で答える。

ひさぎの殺気をまるでものともしていない。

 

それを聞いた一誠の怒りが爆発する。

 

「ふざけるなッ!救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろう!?アーシアの優しさを理解出来ない連中なんか、ただのバカ野郎だ!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違っている!」

「『聖女』に友人が必要だと思うか?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけた筈なんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格は無かったのだろう」

「だとしたら聖女じゃなくてよかったかもね」

 

と、今まで黙っていたアドが口を挟む。

 

「聞けば聞くほど聖女と言うシステムは善を癒し、悪は無視するって感じを作ってたんだよね?でもね、シーアちゃん含めて聖女は人間なんだよ?向こう側の都合は知らないけど、ちょっとでも綻びが出たら追放もしくは魔女として処分だなんて………あたしは嫌だね」

 

確かに聖女システムは聖女そのものを機械みたいに扱っている。

狂信者はどうかわからないが、アーシアさんみたいな純粋な心ある人たちは『誰であろうとも助けようとする』。

もちろん人間の中にも悪党はいるが、それでも彼女は助ける以外の選択肢は取らないだろう。

 

「ま、そのおかげかシーアちゃんはあたし達に出会ったわけだけど」

 

アーシアを慰めるように抱きつくアド。

ちなみにアドの言うシーアちゃんとはアーシアさんに対するあだ名だ。

 

「………アーシアのことだから「これも試練です」とか言いそうだけど、私からすればそんなアーシアを苦しめた神様に殴る………いえ、殺してやろうかしら?」

「なんですって!?今のは神に対して最大級の侮辱よ!」

「それは私達―――――我らの教会全てに対する挑戦と受け取って良いんだな?」

 

ひさぎの挑発にイリナとゼノヴィアがはげしく反応する。

 

ふとアドを見ると、アドはじっと三人をみて動く気はないらしい。

もしかしたらアドも彼女ら2人に腹を据えかねているのだろう。

 

「待ってくれ来栖崎君!僕が…!」

「悪いけどこれは私の喧嘩なの。部外者は引っ込んでなさい」

 

割り込んできた木場が出てくるが、ひさぎが引っ込ませる。

 

「私はあんた達が気に入らないのよ。何も考えずに行動するあんたらも、それを命令する教会も、そして………アーシアを不幸にさせた神様とやらもね!」

「貴様ッ!これ以上の愚弄は許せん!戦え!」

 

………ただの話し合いのはずがどうしてこうなったのか。

やはりアドはフラグを引き寄せる体質らしい。

 

「だからおいやめろ」

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