ハイスクール感染×少女   作:只の暇人

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第6話:花はだしい事態

「オォォォォゥ………」

「………こんな世界にまでこいつらと対峙するなんてな」

 

神父ゾンビ達を見て懐かしさと嫌悪感を同時に出す太陽。

 

なぜ奴らがここにいるか知らないが少なくとも奴らを放っておいたら大変なことになるのはわかった。

 

「ケツパ!アーシアとついでにそこの羽女を助けなさい!」

「分かった。ひさぎも気をつけろよ」

「誰に向かって話してんだか!」

 

ひさぎは果敢にゾンビの群れに突っ込み、近くにいたゾンビの首を切り飛ばしながらウォッチャーの元へ向かう。

 

「私はあまり争い事は好まないが、少し君の力を見て見たくなったよ」

「あら?好きなだけ見ていいわよ。あんたが死んだ後にね!」

「それは御免被る」

 

ウォッチャーはイバラの鞭を盾にしてひさぎの攻撃を防ぐ。

 

「一誠!頭だ!ゾンビ共通の弱点である頭を潰すんだ!」

「わ、わかった!」

 

初めて見る一誠達は太陽のアドバイスによってゾンビの頭を殴ったり切ったりして無力化する。

 

「ゴゥゴゥ!」

「野郎はお断りだっての!」

 

一誠は迫り来る神父ゾンビをなぐりとばす。

 

「んしょ、んしょ、見た目より軽いのが幸いだな」

 

太陽はこっそりと腹部を貫かれたレイナーレを運ぶ。かすかにカヒューカヒューと呼吸をしているあたり生命力はある方だろう。

 

「ブォウヴ…」

「あ」

 

が、レイナーレを運ぶのに集中していたのか背後にゾンビがいたことに気がつかなかった。

 

バゴッ!

 

「ブォゲェッ!?」

 

その時大きなイバラがゾンビめがけて飛んで着た。

ひさぎがウォッチャーのイバラを切って投げ飛ばしたのだ。

 

「世話の焼ける!」

「ごめん!ありがとう!」

「戦闘中によそ見とは余裕のつもりかな?」

「そうだって言ってんのよ」

「うおおおおおおおおおお!!そこどけぇ!!」

 

一誠がアーシアを助けるべく駆け出した。

 

「む?いかんな。彼を止めろ」

 

バババッ!

 

「伏兵か!」

 

一誠の前に三体のミュータントが立ちふさがる。

 

「させないよ!」

「させません」

 

そこへ木場と小猫が2体のミュータントと対峙する。

 

「ありがとう!一体だけなら俺だって!」

 

一誠は2人に感謝しながら棍棒を持ったミュータントと対峙する。

ミュータントは棍棒を振り上げ一誠を殴り殺そうとしている。

が、明らかにその動きはトロく、隙だらけだ。

 

「プロモーション・ルーク!からの…ぶっ飛べ!」

 

一誠の一撃によりミュータントはぶっ飛び、ビクビク痙攣しながら地面に倒れる。

 

ミュータントが倒されたことを知ったウォッチャーはイバラを出そうと考えたが、ひさぎが邪魔をする。

 

「邪魔しないでほしいな。私は彼女を実験に使いたいのだ」

「はいそうですかと渡すと思う?ボサッとしてないで早く助けなさい変態!」

「ありがとう!それと変態言うな!」

 

一誠は急いでアーシアの元へ行き、手足の拘束具を解いて彼女を解放する。

 

「イッセーさん!」

「もう大丈夫だ、アーシア!一旦逃げるぞ!」

 

一誠はアーシアの手を引いて一緒に逃げる。

ウォッチャーは直ぐにイバラで一誠を突き刺そうとするが、ひさぎの刀が邪魔をする。

 

「ご自慢のお仲間はいなくなったみたいね?」

 

ひさぎはバカにする様な口調で言うが、何故かウォッチャーは悔しそうに見えない。

 

「………仕方ないな。できれば“生きたまま”実験したかったのだが………」

 

ウォッチャーは両手からイバラを出し、先端が丸々と大きなバラの花が現れる。

花を開くと、中央には巨大なトゲが発進準備を控えていた。

 

「っ!?あんたまさか!」

「死体となっても有効活用させてあげよう」

「!!!逃げろ!!」

 

ドシュウンッ!薔薇が一誠に向けて巨大なトゲが発射された。

ひさぎの声に反応した一誠とアーシアだったが、トゲを避けられそうになかった。

 

「一誠エエエエエエエエエエ!!」

 

全てがスローモーションに見える中、太陽は2人に叫ぶ。

 

 

 

 

 

「ATシールド!!」

 

その時どこからか緑色の六つのナイフが飛んできてアーシアたちの前に半透明のシールドが展開。貫かんとしたトゲはシールドを前に勢いを失い、ぼとりと地面に落ちる。

 

「ふっふっふっ、さっすが私、ぶっつけ本番といえ神器を使いこなしてんね〜」

 

ある2人を除き唖然とする中1人の少女が姿をあらわす。

 

「………何者だね?」

「何者だねっと聞かれたら答えてあげるが世の情け…」

「こんな時に遊ぶなアド」

「出っぱな挫くのやめてくれるサンちゃん?」

 

宙に浮く六つのナイフを従え、太陽に対してため息を吐くアド。

 

「………君はそこのマフラー娘と似た力を感じるな。ではその神器もろとも調べさせてくれないかね?」

「はっはっはっ、私の体をタダで見せるほどいい体はしてないぜ!」

 

アドがナイフ型神器を飛ばすとウォッチャーはイバラを枝分かれさせてナイフをはたきまくる。

 

「あら?こっちとはもう遊ばないの?」

「む?」

 

反対方向からひさぎが切りかかってきたのでもう片方のイバラで対処するウォッチャー。

 

「…こんな話を知ってるかね?」

「?」

「何もない道路に一つのタネが飛んできて、数年間の月日を得て花がポツンと咲いた話だ」

「意味不明だし何の話よ」

「簡単な話だ。タネが芽吹くまでどこに花が咲くかわからないという意味だよ」

 

突然のウォッチャーの話にひさぎは戯言だと切り捨てるも太陽は違和感を覚えた。

そしてなんとなく一誠に振り返る太陽は見てしまった。

ひさぎに切られたイバラの一部が一誠に狙いを定めた。

 

「一誠っ!!」

 

太陽が叫ぶ。

叫びに気づいた一誠だが、イバラに反応できないでいた。

 

ドンッ!

 

その時イバラに気づいたアーシアが一誠を突き飛ばし、

 

その身を貫かれてしまった。

 

「「アーシアァァァァァァァァァァッ!!」」

 

倒れたアーシアの傷から血が溢れ出す。

アーシアが貫かれて唖然としたアドとひさぎにウォッチャーはイバラではたき倒す。

 

「アーシア!アーシア!」

「貫かれてる………早く治療しないと………」

 

残念ながら太陽に医療の心得があっても道具がなければ意味がない。

アーシアを助けるには一刻も早く、この場から脱出するしかなかった。

アーシアが一誠と太陽の手を握る。

弱々しい握りで体温も失われつつ、苦しい筈なのにアーシアは微笑みを2人に見せる。

 

「……私、少しの間だけでも……友達ができて……幸せでした……。もし……生まれ変わったら、また友達になってくれますか……?」

「な、何を言ってんだ!そんな事言うなよ!」

「生まれ変わったらなんて言わないでくれ!これから死ぬみたいに言うな!」

 

必死に呼び掛ける太陽と一誠。

だんだんアーシアの生命力が弱くなっていく。

 

「そうだ!これからいっぱい楽しい所に連れてくぞ!アーシアが嫌だって言っても連れてってやるさ!カラオケだろ!ゲーセンだろ!そうだ、ボウリングも行こうぜ!他にもそうだ、アレだよ、アレ!ほら!」

 

一誠の目から涙が止めどなく溢れる。

 

「俺らダチじゃねぇか!ずっとダチだ!ああ、そうさ!松田や元浜にも紹介するよ!あいつら、ちょっとスケベだけどさ、すっげぇイイ奴らなんだぜ?絶対にアーシアの友達になってくれる!絶対だぜ!」

「……きっと、この国で生まれて……イッセーさんと同じ学校に行けたら……」

「行こうぜ!俺達の学校に来いよ!」

「僕もイッセーと同じ学校に通ってるよ!アーシア!だから――――――」

 

アーシアの手が太陽と一誠の頬を静かに撫でる。

 

「……私のために泣いてくれる……もう、何も……ありがとう……」

 

頬を触れていた手がゆっくりと落ち――――――アーシアは2人の目の前で逝った。

 

「……何で?………なんで彼女が………なんで彼女が死ななきゃいけなかったんだよぉおおおおお!!!」

 

太陽が涙を流しながら天に向かって叫ぶ。

祐斗も小猫も、ひさぎもアドも苦い表情をしていた。

 

「なあ、神様!神様、いるんだろう!?悪魔や天使がいるんだ!神様だっているんだよな!?見てるんだろう!?この子を連れて行かないでくれよ!頼む!頼みます!この子は何もしてないんだよ!ただ、友達が欲しかっただけなんだよ!ずっと俺達が友達でいます!だから、頼むよ!この子にもっと笑って欲しいんだ!なあ、頼むよ!神様!」

 

一誠は天へ訴えかけるが勿論応じてはくれない。

 

「悪魔が神頼みとは世も末だな」

 

一誠と死体となったアーシアを見ながら淡白に言うウォッチャー。

 

「一つ教えてやろう。力を持つと言うことはいつも何かに狙われているのだよ。自らの脅威を排除する。ただ気に入らないから殺す。………私の場合は好奇心かな?」

 

枯れかけた花を持ちながら近づいてくるウォッチャー。

太陽と一誠はアーシアを後ろに優しく置き、近づいてくる化け物を睨む。

 

「その薄汚い口を閉じろ」

「む?」

「……アーシアは………彼女は優しい娘なんだ。たとえ自分が傷ついても彼女は他人を癒す以外の選択はしない!たとえ力があったって静かに暮らせたはずだ。普通に暮らせたはずだった!」

 

太陽の言葉にウォッチャーは淡白に答えた。

 

「それは無理だ。神器に選ばれた人間は様々な組織から爪弾きにされ、一生異物として後ろ指を指される。だから我々は彼女の苦しみを解放させるのだよ。ミュータントとして」

「解放………ですって?」

「そうとも。あの方のために余計な感情…いや、心を取り除き、我々の癒し手として利用する。一生道具としてな」

「っ!!」

 

ウォッチャーの言葉と不意によぎったアーシアの涙を思い出してひさぎは無意識にウォッチャーを殴り飛ばした。

 

「ぐっ…」

「………あんた、頭に蛆湧いてんの?誰が誰を道具にするですって?」

 

そう言うひさぎは頭を傾かせながらウォッチャーに近づく。

その時左目が赤黒く変化していった。

 

「もういいわ。あんたがたとえ泣いて謝ろうが赦しをこおうが私はあんたを許さない。シスター………アーシアを殺したことを後悔しながら死になさい」

「ああ、そうだな。許せないよな」

 

2人はアーシアを殺したウォッチャーを許せなかった。

そしてアーシアを利用しようとしたあの方という人物も許せなかった。

 

「返せよ………………アーシアを返せよォォォォォォォッ!」

 

『boost!』

 

一誠の叫びに応えるように、神器が動き、宝玉が眩い輝きを放つ。

 

「このフード野郎!私たちを殺し損ねたことを後悔しながら死になさい!!」

 

ひさぎから赤い血のような激しいオーラが解き放たれた。


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