人理を修復した魔術師が異世界からくるそうですよ? 作:sloth.
マシュが、盾を構えると、十六夜くんは動きを止めたのだ。
「・・・・・そうだな。確かに、相手の提示した条件に則れないような奴は、三流だ」
十六夜くんは、そう言って、すこし残念そうに、臨戦態勢を解いた。
「助かりました、水神さん。あなたもそれでいいですよね?」
私は一応、水神さまに確認をとる。
『ああ・・・・そうだな。では、ゲームをクリアした貴様らに報酬をやろう』
そう言って、水神さまは十六夜くんに水樹の苗を渡した。
黒ウサギは、放心していた。
水神を圧倒する力を持った十六夜と、それを止めさせたマシュと立香。
そんなアホ面を晒していても美人に代わりないことを、己の顔で実現させている黒ウサギに、忍び寄る影が。
「おい、どうした?ボーッとしてると胸とか揉むぞ?」
「えっ、きゃあ!」
「ちょっと!十六夜くん!」
私は、十六夜くんの手を弾く。
それに気づいた黒ウサギは何処からともなく出したハリセンで頭を叩いていた。
「なっ、ばっ、このお馬鹿様!
二百年守ってきた黒ウサギの貞操にキズをつけるおつもりですか!?」
「二百年守った貞操?うわ、超傷つけたい。」
「このお馬鹿様ぁぁぁ!!」
黒ウサギは、ツッコミと同時にハリセンを振るった。
そんな黒ウサギとは対照的に、不機嫌そうになる十六夜くん。
「な、なんですか十六夜さん?怖い顔をされていますが、何か気に障りましたか?」
「……別にィ。なんかお2人に良いところ持ってかれたとか思ってないぜ。まあ、そんな事は置いておいてだな。黒ウサギ。」
一転、十六夜くんの表情から軽薄なものが消え、ひどく真剣なものになる。
「オマエ、何か決定的な事をずっと隠しているよな?」
「……なんのことです?箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームの事も」
「例えば、オマエのコミュニティのこととか、その現状とか」
彼女の言葉に黒ウサギは一瞬で青ざめる。
「な…何故、それを………」
「え?どういうこと?」
「まぁ俺はほぼ勘だが、黒ウサギのコミュニティは弱小チーム、もしくは故あって衰退している。だから俺達を呼んで、組織の強化を図ろうとした。………そう考えれば、黒ウサギがどこか必死になるのもさっきの喜びようも合点がいく」
「っつ!」
「そしてそれを隠してたってことはだ。俺達にはどのコミュニティに入るのかを自由に選ぶ権利があると判断できるんだが、その辺どうよ?」
「………」
「沈黙は是、だぜ。黒ウサギ?この状況で黙りこんでも状況は悪化するだけだ。俺達が他のコミュニティに入ってもいいのか?」
「や、だ、駄目です!いえ、待って下さい!」
「おう、待ってやるから、さっさと話せ」
その言葉を聞いて躊躇いがちにだが、黒ウサギは十六夜に決心した表情を向ける。
「………話せば、協力していただけますか?」
「ああ。面白ければな」
「…わかりました。この黒ウサギが精々オモシロオカシクコミュニティの惨状をお話ししましょう」
黒うさぎが話した内容は、このようなものだった。
・まず黒うさぎたちのコミュニティには、名乗るべき”名”と”旗印”が無い。
・”名”がないコミュニティはその他大勢、”ノーネーム”と呼ばれる。
・中核を成す仲間は一人も残っておらず、ゲームに参加できるだけのギフトを持つのは、一二二人中、黒うさぎとリーダーであるジン=ラッセルのみ。他は十歳以下の子供ばっかり。
・元々は、結構名の知れたコミュニティだったらしいが”魔王”と称される存在にギフトゲームを挑まれ、敗北し、全てを奪われたそうだ。
・”魔王”にギフトゲームを挑まれれば拒否するのは不可能らしい。
途中、魔王という単語に目を輝かせる十六夜くん。まるで新しい玩具をもらったようだ。
「と言うことでございますですよ…」
「ふーん………コミュニティは魔王により誇りもメンバーも何もかも奪われ衰退。しかも黒ウサギは仲間が戻ってくる場所を守りたいためにも、その"ノーネーム"という状態でのせいで仲間が集まらない。コミュニティでゲームができる存在は二人。その現状で復興させる……か。崖っぷちだな♪」
「ホントですねー♪」
「そこで俺達が呼ばれたってわけだ。俺達はコイツの仲間達を全員集めつつ、魔王様をぶっ飛ばそうすのが役目ってことだ。
シンプルで実にオモシロそうじゃねーか?」
十六夜はとても楽しそうに言い放った。それを聞いた黒ウサギは驚き声をあげて十六夜くんに聞き返した。
「い、十六夜さん!今、仲間を集めるのに協力してくれると言いましたか!?」
「ああ言ったぜ。それともなんだ、俺なんて別に要らねえってか?失礼な事言うと本気で余所行くぞ。」
「だ、ダメですダメです!十六夜さんは私たちに必要です!」
「おう、素直でよろしい。………ところでだが黒ウサギ。さっきまであんなバカみたいに喜んでいたが、それなら何で自分で倒しに来なかったんだ?お前の方がかなり強く見えるが。」
「ウキャーーって言ってたぞ、お前?」
そう十六夜が聞くと顔を赤くして反応してしまう黒ウサギ。
「わ、忘れてください!…そ、そうですね。それはウサギ達が"箱庭の貴族"と呼ばれる事に由来する、特権を持ってるからです。ウサギ達には"主催者権限"と同じく"審判権限《ジャッジマスター》"があり、ゲームの審判を勤める事ができるのです。」
えっへん!という音が黒ウサギから聞こえそうなほどに胸を張る彼女。
「………それでですね。ゲームの審判勤めた場合、主催者と参加者は絶対にギフトゲームのルールを破ることができなくなり……いえ、正しくは違反者がその場で敗北します。」
「ってことは、ウサギと共謀すればギフトゲームで無敗にできるのか?」
「違います。そこまでうまい話なんてありません。ルール違反=敗北なのです。ウサギの眼と耳は箱庭の中枢に繋がっており、違反者が出た瞬間、ウサギ達の意思無関係に敗北が決定してチップを取り立てることができるのです。それも無理に判定を揺るがすと……」
「揺るがすと?」
「盛大に爆死します。」
「まじか。爆死か。」
「それは…見たくないな…」
ウサミミ美少女の爆発死は、全うな人間ならトラウマものだろう。さらに、黒ウサギの説明により審判権限の代償による縛りが明かされていく。
・ギフトゲームの審判を務めた日より15日間はゲームに参加できない。
・主催者側から認可を取らねばゲームに参加できない。
・箱庭外にて行われるゲームに参加できない。
「・・・・・じゃあ、世界の果てを見に行こっか」
微妙な雰囲気が流れ、それを打ち消すかのように世界の果てに向かった。
今回ぐだ子ちゃん空気ですいません。