ある日、私は何故か侵入者としてお縄についてしまった。たぶんこれだけだと意味が分からないのでもうちょい詳しく言おう。昨日まで社会人として普通に働いていたはずが、ベッドで寝て起きたら見知らぬ場所で縄で拘束され、どこぞの原住民の人たちに囲まれて侵入者め、と言われていた。
「いや、意味わからんわ」
「意味が分からんだと?それはこちらのセリフだ、侵入者め!何が目的だ!」
「いやー、目的も何もないんですけど」
「惚けたことを言いやがって…!」
原住民の兄さん〜おじさんたちがプンスカ怒って槍?みたいなのを向けてきてる。私が先端恐怖症だったら大人気なくドン引きされるぐらい泣き喚いたところだぞコノヤロー。あー、なんか現実味なさすぎて辛い。もしかして夢だろうか、という淡い期待は拘束された時にできたらしい膝の擦り傷の痛みで吹き飛んだ。あーあ、夏だからってTシャツと短パン寝るんじゃなかったな。もっとこう鎧的な服で寝てたら怪我しなかっただろうに…ってそんなの無理だって。あはは……ハァ。
「あのですね、私はあなた方に危害を加えたり喧嘩売りに来たんじゃなくてですね。私自身よく分からないうちにここにいたわけでして。つまり、家に帰らせてもらえません?」
「……おぬしはどこから来たのだ?」
おっ、ようやく話が通じそうな人が来た。犬の頭部みたいな帽子被ってるけど。見た感じ、この中の人たちで一番年齢が高い。族長的な人だろうか。まだ警戒した顔だけど、周りの人たちが武器を下ろしてくれた。
「どこからってのは地名の話ですか?都道府県?それとも市町村?」
「トドウ、フケン…?それは白々海のどの辺りにあるのだ?」
「はい?ハクハク?カイ?」
私とこの族長さん、お互いにポカンとした顔になってるんだろう。心底不思議そうな顔つきから、都道府県を知らないなんて意地悪でそんなことを言っているのではないのだろうが、なんか…嫌な予感がミシミシしてきた。顔立ち、体つき、服装が違うだけ…言葉は同じ、とても流暢な日本語。なのに。
「……失礼ですが、みなさんは日本の方でいらっしゃる?」
「……すまんが、二本とは何に対する数なのだ?」
「いえ、本数ではなく国の名前で…ニホン、ニッポン、ジャパン、ヤーパン、ジャポーネ、ハポン…ええと、あっ、やまとのくに、とか………色々、呼び方は……あるんです………けど」
指折り数えて知る限りの名前を挙げ連ねても、誰一人として聞いたことがあると声を上げない、顔色も変わらない。ああ、泣きそう。どこだよここ。
「そうだ…あの、ここはどこなんですか?」
「ここはスカイピアにある雲隠れの村だ」
とうとう私は地面に突っ伏してしまった。いや、スカイピアって…雲隠れの村って……聞いたことねえええ!!!