族長さんたちが外出許可をくれた。なんか、私があまりに常識はずれだからと気遣ってくれたらしい。優しい…。でもって、何かあった時に対処できるから、ということで人選の結果、ワイパーさんが一緒に行ってくれることになった。なんで私を一番警戒してる人を選ぶのか分からないんだけど。なんで?
「捕まっていろ」
「え、どこに?」
「………」
「……あっ。あー、ハイ。捕まってます。ハイ」
自分の体に、なんて言えないお年頃か。思春期か。なんてツッコミをこのワイパー様にするほど私はバカではない。高い位置にある肩に両手を置いて姿勢良くビシッと立ったら、横からラキさんに注意された。
「ミサオ、それじゃあ振り落とされるよ。しっかり捕まりな」
「あー、やっぱり肩じゃ不安定か…。んじゃ失礼しまーす」
手をワイパーさんの脇から回して腹を抱きしめた。ものすごく…硬いです…。テレビで見るボディビルダーぐらいでしかこんなガッチリとした筋肉持っている人は見たことがない。もちろん触るなんて初めてのことだ。引き締まった体、という言葉が驚くほどピッタリだ。昔ふれあい体験で馬の体に触った時の感覚を思い出した。皮下脂肪のほとんどない筋肉の塊ってこんな感じなんだ、と腕の中の感触に感動した。性的な意味なんて全くない。この間2秒ほどである。脇腹がくすぐったかったのか、ワイパーさんの体が一瞬動いた。私の筋肉に対する感動が伝わったわけではない、と信じたい。
「うん、それなら大丈夫だろう。ワイパー、ボードは久しぶりだからってミサオを落とさないでおくれよ」
「そんなヘマするか」
「え、待って何それどういうこと?久しぶり?え、私落とされるの?」
「黙ってろ」
「ハイ」
良い子のお口チャックをした私を見てラキさんがにっこりと微笑んだ。
「大丈夫。ワイパーならすぐ勘を取り戻すさ。それよりミサオ、あんまり興奮しすぎて落ちないこと。特に雲の境じゃしっかりワイパーにくっついてるんだよ」
「え、雲の境って?何そのメルヘンなの?」
「最悪白海に落ちてもワイパーが拾ってくれるだろうがね、雲の途切れた所で落ちちまうと青海まで真っ逆さま。まず命はないだろうからね」
「体だって細切れになっちゃうよ」
「えっ怖…分かった、しっかりくっついてる!離れない離さない絶対に!」
「行ってくる」
「あ、もう?えっと…いってきまーす」
「気をつけて」
「いってらっしゃーい」
頭にハテナを山ほど飛ばしながら、ワイパーさんの硬いお腹にギュッと抱きついた。