ワイパーさんが武器を振ってるのが見えたから、見学しようと思って近付いてみた。途中で気付かれて無言のまま睨まれたから、この辺ぐらいまでなら近付いてもいいんだな、と判断する。どこもかしこもこころなしかふんわりしている雲の上に座って、ぶんぶん武器を振って軽やかに鋭く動くワイパーさんを眺めた。今日はみんないないんだな。ワイパーさんが一人でいるってなんか珍しい。
「みなさんは故郷だからあの島を取り返したいんですよね?」
「ーーーああ」
答えてくれないだろうな、と思ったのに、ワイパーさんは律儀に返してくれた。この人、結構真面目な人だ。
「あの島はどんな島なんですか?あまりよく分かっていなくって」
「…どういう意味だ?」
「例えば、ご先祖さんのお墓があるとか財産があるとか。移住したんじゃなくて、追い出される形で出てしまったなら、きっとご先祖さんたちの大切な思い出もあるだろうなって思って」
地面ってのが貴重なことは分かったけど、別にそれなら雲の上をやめて地上に行けばいいんじゃないか、と思う。それなのに固執してるってことは、つまり、何か大切なものがあるってことなんじゃないかなぁ。
「それを聞いてどうする」
「みなさんが故郷を取り戻したい気持ちを、上辺だけでなくもっとちゃんと知りたいと思って。…あ、部外者に言えないなら全然いいですよ!?」
「………シャンドラの灯だ」
「へ?」
ワイパーさんが語ったのは、昔々の先祖の話。それはある船長との約束の物語。突然の出来事に引き裂かれた二人の、そして故郷を奪われたことで約束を果たせなかったという、そんな物語だった。先祖代々の墓があるとか、そんな理由かなと思っていた私には、とんでもなくて…どうしても果たしてあげたい約束の物語がそこにはあって。気がつけば、涙が止まらなくなっていた。
「ぞ…ぞゔだっだんでずが……っ!ガルガラざん…っ…ノーランドざんにっ…約束……!ゔぅ…っ!」
「俺たちは必ずアッパーヤードを取り戻す。そして、大戦士カルガラの無念を…シャンドラの灯をともす!」
「ばい…っ!はい、絶対に…、絶対、絶対にっ、カルガラさんとノーランドさんの約束を、果たしましょうね…!」
ワイパーさんたちが命をかけてでも、と戦いを挑む理由がよくわかった。そりゃそうだよ。カルガラさんにできなかった約束を、せめて子孫がと願うことは何もおかしなことじゃない。ロマンだ。
「チッ…泣くんじゃねえ!」
「!…ずびっ…ゔ…ぅゔ…っ!ぅあい…!ぶふっ!」
「顔拭け!」
「…ん!」
投げつけられたタオルで顔を拭いたけど、後から後から涙と鼻水が出てきて止まらなかった。