~優希side~
ー食堂→路地裏ー
「ほんと、お兄ちゃんのバカっ! 確かに自分で見ても胸は大きくなってるけどさ、他にも見るところあるよね!? 髪とか背とかさ!」
細かい変化に気がつくのって大事だと思うな。それがたとえ身内だったとしても、兄さんに会うのホントに楽しみにしてたのに、ちょっと舞い上がってた僕がバカみたい……。
「んー荒廃してるね……ここの鎮守府の治安が良くなかったのわかるなぁ……」
慌てて飛び出したのはいいけど、このあたりってほんとに人もいなさそうだね……。街の復興のことを考えながら、ここよりもさらに奥の方に歩いて行ってる僕。
考えごとや、頭に血が上ってたこともあって警戒心や道などがわからなくなって、こう呟く。
「あれ……ここは?」
一度足を止めた僕は、あたりを見回して「もしかしなくても、迷子になった?」と悟り、一呼吸してもう一度場所を確認してみる。
迷った先は、より治安の悪そうなうす暗い路地裏だった。そこに不審な笑い声と二人の影があった。
見た目の印象は、ガラの悪い盗賊みたいな人物っていえばわかりやすいのかな? 間違いなく関わり合いたくない人物だねっ。 だから名前なんて、ごろつきAとかBでいいんじゃないかな。
そう思っていたらこんなことを言いだしてきた。
「ぐへへ。上玉みつけたぜ!」
「その服は、ここの軍人さんか? それとも艦娘か? どちらにせよ、売りに出したら、高く付きそうだなこれは!」
不意に聞こえた声に、不快感を浮かべながらも僕は驚きの声が出てしまう。
「えっ!? 上玉? 売りに出すとか何を言って……」
男の頃だったら、こんな奴らに武器がなくっても負けることないと思うけど、今の状態って……どう見ても弱いよねっ?(丸腰&慣れないこの体って……。これってかなりピンチなんじゃ?)ってことを心の内で悟ってしまう。
「おいおい、バカだなお前、売る前に俺たちが遊んでからにするに決まってるだろ! 流石に弱ってたとはいえ艦娘に手が出せなかったからな、俺達も溜まってたんだよな!」
「それもそうだな! 遊んでからな! 嬢ちゃん、こんなとこに、一人だと危ないから、俺達が案内してあげようか?」(ぐへへ)
「お断りしますっ!」
溜まってるとか遊ぶとか言ってる、怪しいやつについていくほど、僕もバカじゃないし!
こんな光景を以前も見ていたが、まさかその状況に自分が陥るなんて思ってもいなかった。
(だからと言って抵抗もしないでやられるつもりはないけどね!)一応戦闘態勢を取ろうと構えるが……。「(今武器もってないじゃんっ!!)」って心の中で叫んでしまう。
『あの子』を呼べば、武器を準備できるけど、こんな状況じゃ流石に呼べないよね。巻き込みたくないしね。
「悪いようにはしないからさ!」
「っ!? もう一人はどこに!?」
(悪いように)てそれをすることしか頭にないんでしょ! って思う。そういえば、二人いたはずなのに、目の前には一人しかいなくて、もう一人の姿を完全に見失っていた。気がついたときには、男が僕の後ろ側から、こん棒を構え振りかぶろうとしている状況だった。
「隙きありってねっ!」
「しまっ――!?」
ふと以前に、助けた娘のことを思い出しながら、きっと、会うことはないんだろうけど……捕まったら何されるのかな? きっと決まってるよね……辱めを受けるって。
時は少し戻って。
~川内side~
「さすがにあれは、怒るよね!」
飛び出した彼女の様子が、心配になったからすぐに追いかけてきたんだけど、この辺りって今一番治安の悪い場所だよね。
提督を見つけたけど男たちに囲まれてるなぁ……相手は二人ね。不快なセリフを聞いてた私は思わず舌打ちをしながら呟く。
「ちっ……ゲスな奴らめ……これだから、頭の悪い男ってキライなんだよねっ!」
提督が上玉っていうのは分からなくもないけど、貴方たちが手を出していい相手じゃないの!
「私が助けなくっても……なんとかしそうな気がするんだよねっ」
だから見捨てることも出来るんだけど……ちょっと待って、そういえば提督って今武器持ってないよねっ?
『隙きありーー』『しまっーー!?』
そんな声が聞こえた時、考えるよりも先に体が動いていて、クナイを手にし私は大きな声でこう言う。
「提督っ伏せてっ!」
「!?」
「させないよっ!」(しゅっ!)
私が同時に投げた四本のクナイが男達の腕と足にあたり、持っていたこん棒とロープが地面に落ちると同時に地面に崩れ落ちる二人を見てから、一息ついてこう言った。
「ふぅ……間に合ってよかったっ!」
一人は提督の後ろで倒れ、もう一人は前に倒れていた。流石に急所は外してるよっ!
「ぐぇ……」
「仲間がいたのか……」
「提督、ちょっと待っててね」
私は彼女に少し待つように伝えて、二人をキツく拘束して憲兵たちに差し出してる。
「すまない。我々の不手際で危険な目に合わせることになってしまい」
「今後はこんなことが起こらないに、厳重に警戒を続けます」
「うん、そうしたほうがいいよ! 提督の身になにか起こったら、佐世保鎮守府のお兄さんが黙っておかないからね?」
(そうならないように、私が全力で守るんだけどさ!)って心に誓いながら、二人の憲兵のやり取りを見ていた。
「それって、『四ノ宮 桂』中将!? りょ、了解しました! おい、相棒全力で取り組むぞ!」
「ああ! もちろんだ!!」
「今度の提督は女の子だから、ほんとに気をつけてよ!」
私は憲兵の二人を、睨むように見つめながら、彼女のお兄さんってほんとに有名なんだなって……名前出しただけでこんなにも動揺する姿を目にするなんて。(一度演習でもいいから手合わせしてみたいなっ)て思う私だった。
『はぃ!! それではこの二人連行しておきます!』
「それじゃ、提督を待たせているので、私は行くね! それと、今後サボったらどうなるかは、わ・か・るよねっ?」
『サボらずにやりますっ!!』
少し脅すような形だったけど、これで大丈夫かなって思いながら、敬礼をし悪人二人を引きずりながら連れて行く憲兵の姿を見てからこう思うのだった。
「う〜ん、警備は艦娘にしたほうがいいかもしれないけど、警備に回せるだけの人数はいないからどうしようかな……」
みんなと相談して決めないとね、もちろん彼女の意見がいちばん大事なんだけど。そう決めて彼女のもとに戻る。
~優希side~
「川内さん、憲兵さんと何話してるんだろう?」
ちょっと遠くて聞こえてないけど……僕もお礼言ってこようかなって思ってると、彼女から声をかけられる。
「おまたせ! 提督っ怪我はない?」
「川内さん、ありがとうございます……」
地面にへなへなと座り込む。あの頃と違って弱くなってるなぁ……僕。これが女の子になっているってことの実感の一つだとこの時思うのであった。
「ほんと、無事でよかったよ! どう、立てる??」
差し伸ばされた手を取ろうと返事をするが。
「は、はぃ……たてましゅ」
っぅ!? 思い切り噛んでる!? あと腰が抜けて立てないかも。う……恥ずかしい///。
「よっと、それじゃこうするしかないね♪」
「え? こうするって?」
疑問に感じてると、本日二回目のお姫様抱っこされる形で、今度は意識があるので顔が真っ赤になっていることを実感してる僕だった。
「ふぇぇ/// 川内さん顔近いです///」
「にしし♪ それにしても、提督って本当に可愛い顔してるね」
か、可愛い顔? 僕が?? なにかの間違いじゃないかなっ。まだちゃんと自分の顔見てないからそんなことないと思うけど……じーっと見つめられると照れますよ。そしてこの状況がより恥ずかしくなったので慌てて僕はこう言った。
「も、もう、降ろしてください///」
「ふふっ、だ~めぇ♪ 腰抜けてる状態で、歩けるなら降ろしてあげるけどね!」
いたずらっぽく笑う彼女に言われて、考えた末にもう少しこのままでいたいと思ったので素直に答えた。
「う……歩けなさそうなので、このままで///」
「ふふ♪ 素直でよろしっ! それじゃ帰ろうか」
嬉しそうな表情を浮かべる彼女に僕は頷き、抱っこされたまま鎮守府に戻るのであった。
前のお話部分は、キャラ名「セリフ」をつけて投稿してたのでどっちが良かったのか迷ってるところです……。8話投稿もこの形で行くと思います。