俺の軌跡   作:トッシー

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二話目です。



二話

第二話『セクシーコマンドー部』

 

 

「じゃあ約束通り、今日から此処はセクシーコマンドー部という事でよろしく!」

 

「……」

 

「みんなっ!改めてよろしく!オレが部長のアリオリハヴェリ・イマソガーリだ!長いからアリハ部長と呼ぶようにっ!」

 

あっさりとフリーデル部長を降したアリハは笑顔で部の発足を宣言した。

フリーデル元部長はニコニコしてはいるが口元は全く笑っていない。

ロギンスは物凄い目でアリハを睨んでいるが、フリーデルが敵わない相手をどうこう出来る訳もなく悔しそうに押し黙っている。

アランは自分が悪いわけでもないのに申し訳なさそうに俯いていた。

 

「くそっ、幼馴染として恥ずかしい」

 

「まぁまぁ…そう落ち込むなって」

 

「誰のせいだよっ!」

 

「私としたことが…、あの程度のことで隙を見せるなんて…」

 

「そういえばアランと話していて見ていなかったんだが…フリーデルお前、どうやって負けたんだ?」

 

「まさか…」

 

フリーデルはワナワナと肩を震わせる。

いつもの涼しげで優しい雰囲気は見る影もなくドンヨリとした暗い表情。

初めて見る尊敬する部長の姿にロギンスは後ずさった。

 

「おい、フリーデル?」

 

「まさか…、いきなりズボンのチャックを下ろし始めるなんて…」

 

「変態じゃねぇか」

 

アランの非難の声を聞き流しながら。

アリハはスルリとズボンを下ろした。

 

「って何やってんだっ……あれ?」

 

アリハのズボンの下には顕になった下着姿ではなく運動用の短パン姿だった。

唖然とする皆にアリハはニヤニヤとした視線を送った。

してやったりという顔だ。

悪戯が成功したあとは何時もこの顔だった。

 

「ま、まさか…」

 

「ふん…、これがパンツ二枚重ねだ」

 

「いや全然カッコよくないからね。みっともないだけだからね」

 

緑の制服の下には圧倒的に鍛えられた大腿筋によってパンパンに張り詰めた短パン姿。

フリーデルは改めて顔を赤くし、アランとロギンスは思わず顔をしかめてしまう。

 

「ふっ、武の世界において実力が上に上がれば上がるほど武術的駆け引きが重要になってくる」

 

アリハはアランの突っ込みを無視してフリーデル元部長の前に立つ。

 

「セクシーコマンドーとは超高度な武術的な駆け引きを取り入れた最強にして最高の武術。あの泰斗流をも上回る流派なのだ!」

 

「いやお前、ズボンを下ろしてアホな姿晒しただけじゃん」

 

「しかしフリーデル元部長は引っかかったぞ」

 

「くっ」

 

達人に成れば成る程、近づけば近づくほどに。

戦闘中。戦いに何の関係もない突拍子もない行動を取れば思考が一瞬停止する。

コイツは何をしているのか。こんな時に何の真似だ。

フリーデルの思考が停止したのは本当に刹那の間だ。

その刹那の間、瞬きの間にも満たない時間、アリハは動いた。

ズボンを下げて恥部を晒す…、実際には下を履いているので問題ないのだが。

しかし年頃の、それも貴族の子女がその光景を凝視できるだろうか。

まんまと引っかかったフリーデル元部長は致命的な隙を晒してしまったのだ。

持ち前の冷静さで一瞬直ぐに意識を戻したがもう遅かった。

その間に死角を取られ瞬間、激しい衝撃と共に吹き飛ばされていたのだった。

 

「まぁ残念だけど、元部長さんは駆け引きに負けたのさ」

 

「い、言われてみれば……私とした事が…」

 

「お、おい何を納得してるんだフリーデル!騙されてる!騙されてるからなっ!」

 

貴族子女ゆえの頭の硬さか、世俗知らず故なのか。

フリーデルは武を尊ぶ帝国貴族の思考が全面に押し出され納得してしまう。

余りにも間抜けな勝ち方をされた事は忘却して。

 

「それで今日から皆さんは栄えあるセクシーコマンドー部の一員となったわけだけど」

 

「そ、それは…」

 

アリハの言葉にフリーデルは逡巡する。

フリーデルは決して弱くはない。

寧ろ、かなりの使い手であり間違いなく何れは達人の域に到達する程の才の持ち主だ。

相手の力量を見抜く目もある程度は有った。

しかし相手が悪かった。

アリハは己の気をコントロールして実力を上下させて隠す事も容易に出来るのだ。

だからこそフリーデルはアリハの実力を見抜けなかったのだろう。

 

「確かオレの記憶によると、試合を提案したのは元部長さんでしたよね?」

 

「……それは」

 

「仕掛けたのも元部長さんから…」

 

挑発的な態度を取りまくった自分の事は棚上げしフリーデルの顔を覗き込むウザい男子。

 

「お、おい…本当にここはセクシーコマンドー部になるのかよっ!フリーデル!俺ら、本気でセクシーコマンドー部に入らなきゃいけないのか…ひっ!?」

 

普段は温厚で心優しいお淑やかなフリーデルは肩をプルプルさせて顔を真赤にしている。

初めて見る部長の姿にロギンスは怯えた表情で後ずさった。

 

「な、何でもない」

 

ああ、またアリハの犠牲者が…。

アランは、その光景を見ながら頭を抱えた。

 

 

 

「こ、こんな事…、トワ会長がお認めになる筈がないわ」

 

「……あ、ああ…そ、そうだった!それだ!」

 

我が意を得たりとは正にこの事だった。

確かにアリハは凄まじく強い。

その武術の腕は驚異的でもしかすると、光の剣匠に匹敵するかもしれない。

しかし品性の欠片もない怪しい武術を部活動として正式に認めるなど、生徒会長も学校側も到底認めるとは思えない。

それに目の前のこのいい加減な男の事だ。

間違いなく生徒会への同好会および新部設立の申請も行っていない筈だ。

 

「はい、申請してないですね。面倒だし断られるのは分かってるし」

 

アリハ曰く、楽しくもない無駄な事はしない主義だ。

その主張にアランだけでなく元フェンシング部の部員たちは頭が痛くなった。

 

「しかし約束は約束です!生徒会が嗅ぎつけてくるまでは、ここはセクシーコマンドー部です!オレの暇つぶしに付き合っていただきましょうか」

 

ハッキリと暇つぶしと公言するアリハ。

最早隠す気など微塵もない。本音もパンツも。

その時のアリハの表情とくれば…。

最早言葉も無い。

この男は紛う事無き快楽主義者だ。

 

「すいません、すいません…ウチのバカが…」

 

ガックリと肩を落とす先輩たちにアランは涙を流しながら、只々謝るしかなかった。

 

 

 

 

「ちっがあああああああうぅっ!!!」

 

そして練武館から怒号が響く。

 

「そうじゃないっ!こうだっ!」

 

「は、はいっ!!」

 

授業が終わり放課後は生徒たちが各々の行動をする自由時間。

部活に勉強に友情に、または恋愛にと正に青春の時間。

ギムナジウムからも部活に精を出す若く力強い声が響く。

 

「ほう…、流石はトールズ士官学院…部活動が盛んだというのは事実のようだ」

 

練武館の扉の前。白い学生服に身を包んだ貴族生徒がいた。

執事を伴っている姿は正に生粋の貴族といった感じだった。

 

「…セレスタン、ここまでで良い。執事を連れたって部活動という事もないだろう」

 

「…はっ」

 

セレスタン執事は優雅に礼すると一歩下がる。

その様子に貴族生徒は満足そうに笑むと練武館の扉に手を掛ける。

 

「ふ、フェンシング部の連中の歓迎ぶりが目に浮かぶ。それも当然のことか。このパトリック・ハイアームズ自らがこの部に席を置くのだからな」

 

パトリックはそう言って扉を開いた。

 

「諸君、私の名はパトリック・ハイアームズ。今日からこのフェンシング部の部長を…」

 

「ちがうっ!!!そこはこうだ!ウォンチュウッ!!!」

 

「う、ゥォンチュウ…」

 

「違うっ!照れが抜けきってないぞっ!腕はもっとえぐり込むようにっ!」

 

「こ、こうか?」

 

「そこっ!フリーデル元部長は、この付け髭をっ!」

 

「そ、それだけは…」

 

「額に肉と書かれるのと」「直ぐに付けますっ!」

 

四大名門の大貴族の一つ。

ハイアームズ公爵家の三男。パトリック・T・ハイアームズ。

大貴族の子息としての高貴な雰囲気をまとった少年が見たものは…。

 

「あ…、あぁ…」

 

そこはフェンシングの部活ではなかった。

 

男子部員は残らずズボンをずり下げられ上は制服、下は短パン姿という何とも遺憾しがたい醜態を晒しており、女子は青い付け髭を付けた状態で、黒髪の男子生徒に怒鳴られていた。

 

-バタン!

 

パトリックが思わず扉を閉めてしまっても仕方のない事だろう。

あれ?オカシイな?ここフェンシング部の筈だよな。

僕の脳内シュミレーションだと、僕の入部をこれでもかというくらい歓迎。

僕は直ぐにでも部長という大任を任せられる事になるはずなのに…。

 

「新入部員か!?」

 

次の瞬間、勢い良く開かれアリハが嬉しそうに顔を出した。

 

「ようこそっ!セクシーコマンドー部へっ!僕が部長を務めるアリオリハヴェリ・イマソガーリだっ!」

 

「な、な…、何だ貴様はっ!この僕が誰か知って…は?セ、セクシー?何を言ってるんだ!?」

 

「皆!新入部員だ!創立初日に新入部員が来てくれたぞ!」

 

アリハはパトリックの腕をむんずと掴むと練武館へと引き入れていく。

 

「ぶ、無礼なっ!この下郎がっ!この僕をハイアームズとしっての狼藉かっ!離せっ!」

 

「まぁまぁ、照れるなって!」

 

「ええいっ!誰が照れているものかっ!セレスタンッ!セレスタンッ!?」

 

しまったっ!セレスタンは先に帰していたんだっ!

 

いくら呼んでも来ない万能執事。

パトリックは助けが来ないことを悟り、一縷の望みを掛けてセクシーコマンドー部の部員に目を向けた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

「また犠牲者…いや新しい仲間か…」

 

「ふふ…、この私が…」

 

アランは手を合わせて必死に謝っており、ロギンスは遠い目をして現実逃避。

元部長は付け髭を撫でながら自分の世界に入り込んでいる。

この場にパトリックに味方は居なかった。

 

「止せっ!離せっ!力強っ!びくともしないだとっ!?離せぇっ!!」

 

必死で抵抗を試みるも地力の差が有り過ぎた。

 

「はっはっは!新入部員ご案内だ!」

 

パトリック・T・ハイアームズは為す術もなく練武館に引きこまれ、気づかない内に入部届にサインさせられてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

次回予告

 

遂にフェンシング部の廃部とセクシーコマンドー部の設立を嗅ぎつけた生徒会。

生徒会長はセクシーコマンドー部にリィンを送り込む。

『依頼』によって訪れたリィンが見たものは…。

 

次回っ!

 

第三話『生徒会』にご期待ください。

 




ATTACK Rankについての指摘について確かにやり過ぎだとは思いました。
しかし一人で複数の攻撃属性を持つものが居ます。
そして魔導杖は低ランクとはいえ全属性対応です。

アリハは手刀や足刀によって斬撃を繰り出すことが可能です。
あと気弾や指弾なども放つ事が出来ます。これは一応【射】に分類されます。
貫手は【突】肘打ちや正拳は【剛】。
そんな訳で全属性を【S】にしてしまいました。
コロコロ直したり設定を変えたりするのも何なので…。
それにアリハは余り本編に関わらずにその力を発揮する事は本当に少ないので、ステータスについては気にしないでくれると嬉しいです。

実はLV135の状態も所謂、手加減の状態で実力を自ら落としています。
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