ワールドトリガー偽典   作:プルタルコス

7 / 7
7話 突入

翌朝、俺たちは居間に集まり、出発前の最終確認をしていた。

「よし、最終確認だ。まず基本的な分担として、マオサがこの家を出てから王城内の保管庫までの道案内、そのマオサを真ん中にして、前衛は俺で後衛はバルカが荒事を担当する、でいいな?」

「おっけー。」「問題ないよ。」

「次に、基本的には見つからないようにして地上を目指す。そんで、いざ戦うことになったらトリガーを使って応戦する。後でトリオン切れになって戦うべき場面で戦えないとなったら大変だから、戦闘時の消費トリオンは極力節約で。」

「マオサは節約するほどのトリオンがそもそも無いかもね〜。」

「本当の事すぎて冗談になってないよバルカちゃん…。」

「最後に、保管庫まで行ったら積み込み先がマールスの強襲揚陸艇になってる荷物を見つけ出し、そこに上手く隠れてマールスに到着するまではやり過ごす。

計画できる範囲はこれで全部だ。向こうに到着してからは何が起こるか、どんな状況かもわからないからな。」

「あ、一つだけいいかな。2人とも忘れていそうだけど、王都ではトリガーを使うと位置が特定されるから、王城内の保管庫に行くまでは一切トリガーを使えないよ。特にバルカちゃん気を付けてね。」

「え、なんでアタシだけなのよ。」

「いや、トリガーが使えないから王城内の人には一切知られちゃいけないわけだけど、バルカちゃん静かにしてられないタイプでしょ?」

「なんですって⁉︎アタシだってやる時はやるわよ!」

「しかし、実際トリガーが使えないとかそんなレベルじゃないぞ。誰にも見られちゃいけないんだから、それ相応のルートがあるんだよな、マオサ?」

「うん、王城内の警備システムから警備担当の哨戒ルート情報を盗んで、そこから警備に会わないルートを見つけて上手く保管庫まで行こうと思ってるよ。」

「なんだか凄そうなことやろうとしてるな、まあよろしく頼むぜ。」

「もちろんさ、任せて!」

「さってと!もう確認することも無いんじゃない?さっさと出発しよ!」

「そうだな。よし、2人とも、荷物持ったら行こうぜ。」

買っておいたリュックサックのような背負いカバンを一つと、穴を開けたポーチを二つ、紐でベルトループに通す。

背負いカバンには水分や食料に衣類、ポーチには細かくした魚の干物と手鏡に、簡単な医療セットを入れておいた。

もし何かあって背負いカバンを失くしても、ポーチに入れた物でしばらくは平気だ。

次にズボンのホック部分に紐を結びつけて留めにし、そのまま腰回りにベルトの上から何周もグルグルと巻く。ざっと50メートルほど巻き、巻き終えた先端をクリップのような金具で固定しておく。

紐があれば洗濯物は干せるし魚も釣れる。実に便利な物だ。

最後に、腰の裏に付けた簡単な厚紙製の鞘にマオサの家の包丁を入れて準備完了。包丁は、もちろん無いよりマシだから持って行く。

他の2人もそれぞれカバンを持ち、いよいよ、この地下都市を脱出だ。

「じゃ、2人とも、せーので行くわよ?」

「うん。」「ああ。」

「せーの、

「「「しゅっぱーーつ!!!」」」

バルカの掛け声に合わせ、俺たちはまるでピクニックにでも行くかのように出発した。

 

雑然と賑わう大通り。マオサ曰く今はまだ外は日も昇っていない時間らしいが、この街は地下都市なのもあり完全に眠らない街となっているようだ。

地上につながる建物のすぐ近く、俺が昨日発見していた連絡通路のある建物に着いた。マオサもやはり連絡通路を通って行く計画のようだ。

「2人とも、この建物からつながる連絡通路で本命の方に行くから。」

「「はーい。」」

連絡通路までは建物の中ではなく、外階段と外通路で行けるようだ。

しかし、昨日見た鳥型のトリオン兵の存在が気になる。

外階段と通路を忍び足で抜け、連絡通路まで着く。

「いいかい、上を見るとわかると思うんだけど、鳥型の偵察用トリオン兵が飛んでいるだろう?あいつは建物の周りを周回しているから、完全に建物で死角になる方へ行った瞬間に、連絡通路を走って抜けるよ。」

そんなやり方で突破するのかよ…大丈夫なのか?

俺はそう内心で思ったが、代案があるわけでもないので、首を縦に振り了承する。

「じゃあ鳥が向こうに行く…あ、もうすぐに行っちゃうな。よし、走るよ2人とも!」

「おっけー!」「了解!」

20メートルほどの連絡通路を身を屈めて走り抜ける。しかし、ドタドタと音は立てない。連絡通路の下には少しだが人がいるのだ。

本命の建物の3階部分に着く。扉があるので開けようとするが、開かない。鍵がかかっているようだが、鍵穴が無いぞ。

「おいマオサ、これ特殊な鍵がかかってるぜ。」

「うん、それも予想済みだよ。ちょっといいかい?」

そう言うとマオサは、カバンから黒板消し程の大きさの装置を取り出した。

扉の真ん中に装置を取り付けて操作すると、数秒で装置を取り外して今度は扉に手のひらを付けた。

パシュッという音とともに、扉は横にスライドして開く。

俺達はサッと建物内に潜入し、先を急いだ。

扉の先はすぐに十字路となっている。

「そこの十字路を右に行って。道なりに行くと昇降機があるはずだから。」

マオサの案内通り、十字路を右に曲がった後しばらく進むとエレベーターが現れた。

「こんな物使ってバレないのか?」

「普通ならバレるね。けど、この時間は17階まではまだ業務時間外で一切人はいないはずだから平気だよ。」

そう言うとマオサは操作盤のボタンを押し、この階にエレベーターを手配した。

数秒後にエレベーターが到着すると、3人で中に入りマオサの操作で上の階へ上がっていく。

「ところでマオサ、さっき建物に入る時の扉なんだが、どうして鍵穴が無かったんだ?」

バルカが口を挟んで答える。

「ミライ、アンタそんなことも知らないなんて、ホントに田舎出身なのね。あれは錠前トリガーが扉の中に仕込まれていて、個人ごとに違うトリオンの波長を利用して鍵を掛けているのよ。」

「ブラックトリガーが使用者を選ぶ性質を持っている事の応用だね。特定のトリオンの波長だけ登録しておけば、未登録の人が扉に触れても錠前トリガーは起動せずに扉が開かないって仕組みだよ。僕はさっきその構造に進入して、誰のトリオンにも反応して開くように変えたんだ。」

「なるほど、参考になったぜ。」

言い終わるとともに、エレベーターは止まる。

目的の階に着いたようだ。

「え?14階?何でこんな階で止まったんだ?僕は確かに17階に止まるようにボタンを押したはずなんだけどな。」

……どうやら違うらしい。

嫌な予感がする。

エレベーターの扉が開くと、そこには2人組の男がいた。

先手必勝、右にいる奴がこちらを向いていなかったので、両手を固めて思い切り後頭部を殴りつけて倒す。

この感触なら生身だろう。

左にいた男はかなり驚いた様子だったが、俺が右の男を殴り倒したことで、すぐに表情を変えて構えをとった。

俺は右足で下段蹴りを放つ。男はバックステップをとって避けるが、その動きは予想済みだ。

下段蹴りの勢いを男に向けて変え一気に間合いを詰めると、腰の鞘から包丁を逆手に抜き取り、アッパーカットで下から斬りつけにいく。

サイドエフェクトによって男の動きを見切っているので分かるが、男は下からの斬りつけに反応して背中を逸らして避けるだろう。

予想通りに背中を逸らして避けられるが、男がそうすると予め分かっているので、男の水月に全力でエルボーを叩き込む。

「ぐはっ!」

肘が完全に急所を抉り、悶絶した男は床に倒れ込んだ。

すぐに片腕を掴み、十字固めで抑え込む。

「ミライ君!大丈夫かい⁈」

「ああ、こっちが先手を取れたからな、何とかなったぜ。」

「アンタやるじゃない!アタシが前衛やるって途中で言おうと思ってたけど、続投を認めるわ!」

「ハイハイありがとう。そんなことより、早くこいつらを縛るぞ。」

俺は腰に巻き付けて持ってきていた紐を何メートルか出して、さらに包丁で何本かに切り分けてもらい、まずは意識がある十字固めで抑えている男の方を縛ることにする。

十字固めのまま身体を捻って男をうつ伏せにし、十字固めを解いてすぐに両手を後ろ手に回して縛ると、次に両脚をバタつかせているので股の間から金的を蹴って落ち着かせてから足も縛る。

男のポケットの中にあったハンカチを持ち主の口に詰め込み、さらに紐で口を巻いて猿轡を噛ませて完成だ。

「よし、一丁上がり。そっちはどうだ?」

「気絶してるみたいだね、完全に伸びてる。」

先に殴り倒していた方の男も、同様に縛り上げる。

ついでに2人の足の拘束を紐で繋いで一括りにしておく。

これで自力での脱出は困難になっただろう。

「こんなもんでいいだろ。先に進もうぜ。」

「17階までは誰もいないって言ってたのに…ごめんよ、予想外だった。」

「気にしない気にしない!アタシもミライも計画通りに全部の事が進むなんて思ってないから、安心してこの先も道案内よろしくね!」

素直なバルカの言葉はウソでも気を遣ってるわけでも無いことがすぐに分かる。

「そ…そうかい?ありがとう、頑張るよ僕。」

「頼むぜ、お前が一番のキーパーソンだからな。」

「じゃあ取り敢えず…17階まで上がろうか。」

 

エレベーター内に戻り、17階まで上がる。今度は扉が開いても誰もいなかった。

「まず目の前の直線廊下を突き当たりまで行こう。」

マオサの案内で俺達は真っ直ぐに伸びる廊下を走る。

廊下の両壁はいくつかの部屋で仕切られていて、マンションのような印象だ。

「廊下の突き当たりまで行けば、左手側に中央昇降機があるはずだから、僕らはそれを使って最上階の29階まで一気に上がるよ。まあその先も階層はあるんだけど、30階と31階は地上を繋ぐ階層で構造が建物とは全く違う洞窟みたいな所になってるから、建物自体は29階までなんだ。

ここから上は一日中常に人がいるエリアだから、敵との遭遇率も上がる。けど、常に人がいるということはエレベーターを使っていても怪しまれないから、運さえ良ければ誰にも会わずに最上階まで行けるよ。」

「運が悪ければ、さっきみたいに途中階で人が乗るためにエレベーターが止まるってことか。」

「そういうことだね。僕らの幸運を祈ろう。」

突き当たりまで到着し、左を向くと五基のエレベーターがあった。

「五つあるから運試しって感じね。アタシは真ん中に賭けるわ!」

「まあどれを選んでも乗ってくる時は乗ってくるし、バルカちゃんの幸運を信じて真ん中で行こうか。」

俺達は真ん中のエレベーターを選び、この階に到着するのを待つ。

数秒でエレベーターは到着。

扉が開くとそこには——先客が5人ほど乗っていた。

一発目でアタリを引くとは、めちゃくちゃツイてるぜ。

「うお!ナニモンだてめーらは!」

「ここが俺達ニーネのアジトって知って入って来てんのか⁉︎」

「知っていようが知るまいが、ここにいる時点で抹殺決定だ!いくぞ野郎ども!」

こいつらのセリフの小物臭ハンパないな。

けど状況的には、ヤバイ。完全に補足された上に人数がそこそこ多い。

「アタシらでやるよ!ミライ!」

バルカが俺の横に並ぶ。

「おう、足引っ張んなよバルカ!」

ズボンのポケットに入れっぱなしのトリガーを掴む。

「「「「「「「トリガー、起動(オン)!」」」」」」」

マオサ以外の全員がほとんど一斉にトリガーを起動する。

戦闘体に換装が完了すると同時に、俺は今いる廊下を塞ぎきるほどのサイズの特大シールドを薄めに張る。

だが、これは防御用ではない。

敵の5人中4人は、換装を終えると同時に俺達との間にある僅かな間合いを詰めようと突進してくるが、換装前には無かった特大シールドにぶつかり、面食らって倒れた。

「今だ!バルカ!」

特大シールドを消してバルカにスイッチする。

バルカは既に、倒れた4人の上の空間に向かい跳んでいた。

青龍偃月刀が空中で真一文字に振るわれ、敵は胴から身体を両断される。

しかし敵の最後の1人は、バルカが着地しようとする瞬間を銃型トリガーで狙っていた。

敵の銃型トリガーの狙いがバルカに合う、その刹那、俺の方を完全に見なくなり動きも止まる一瞬の隙に合わせて、スコーピオンで最後の1人を貫く。

これで、全員仕留めた。

「ナイスミライ!」

「お前もな。」

拳を軽く突き合わせ、互いに勝利を喜ぶ。

かなりヤバイと思ったがなんとかなるもんだな。

ほぼ同時に5人の敵の変身は解けて生身に戻った。

「よっ!と!は!えい!そりゃ!」

バルカが5人の後頭部を青龍偃月刀の石突で殴り、即座に意識を刈り取る。

「お…終わったのかい?すごいなぁ、僕はまるで事態に追いつけてなかったよ。」

マオサの声が聞こえたので後ろを振り返ると、少し遠くにまで下がって戦いを見ていたようだ。

「だいじょーぶ!アンタが戦える方だとは思ってないから、この先も安心して後ろで見てて!」

「けど、戦闘体には換装しといた方がいいぜ。流れ弾でも危ないからな。

さて、気を取り直して29階まで上がろうぜ。」

 

俺達は改めてエレベーターに乗る。ここからは発見されてる可能性も考えて警戒しなきゃな。

だがエレベーターは目的の29階までノンストップで上昇した。

「もう29階に着くよ…何事も無く……。」

「ああ…何か罠があると見て間違いないと思うな俺は。」

「2人とも疑ぐり深いなあ。アタシみたいにラッキー!って思いなよ。」

念のためにトリガーを起動させておこう。

もし俺が相手の立場なら、エレベーターが開くか到着した瞬間に侵入者に対して攻撃を開始するからな。

エレベーターが止まり、扉が開く。

そこには…エレベーターの前の直線廊下を陣取る敵の射撃列があった。

「来たぞ!撃てぇ!」

——っ!特大シールド!

俺は咄嗟にさっきも使った特大シールドを、今度は防御用の厚みを持たせて張る。

ガガガガガッと大量の弾丸が特大シールドで防がれるが、すぐにシールドにヒビが入る。

クソッこれでもまだ薄いか!

2枚目の特大シールドを、厚みを増して張り直す。

1枚目が破られ、裏に新しく張った2枚目の特大シールドが弾丸を防ぎだすが、これではジリ貧だ。

ならば、俺も攻撃だ!

「うおおおおおおお!!!」

特大シールドごと廊下を突進し、敵の射撃列との間合いを詰めにいく。

「なに!お前ら撃つのをやめろ!この距離なら全員で近接でかかるぞ!」

「了解だぜアニキ!」

アニキと呼ばれた、敵のちょっとだけ偉そうなやつがそう言うと、射撃列を組んでいた10人ほどのチンピラが近接武器に持ち替えて襲ってくる。

俺はスコーピオンを両手から出し、迎え撃とうと構えた時——後ろから、バルカの声が聞こえた。

「その場で()()()()()!ミライ!」

なに?

しゃがめ?

俺は取り敢えず言われた通りにその場で膝を曲げてしゃがむ。

すると、俺の頭上を2つの弾が通過した。

敵が反応して真っ二つに切り割ると、次の瞬間その場で大爆発が起こった。

ドドオォォォーーン!!

爆発の跡地の敵は吹っ飛んでいたが、まだ後方に敵は残っていた。

「ほらほらマオサ!まだ後ろの方に残りがいるよ!次投げて次!」

「う、うん。まさかこんなに使い勝手が良い場面が訪れるとはなあ。」

そうか、今のはマオサが持ってたトリオンパフォーマンスの良い爆発物トリガーか!

確かに、この狭い廊下で大人数を相手にするならベストチョイスと言えるトリガーだ。

次の弾が投げ込まれるが、指示をしていたちょっと偉そうなチンピラが、爆発物だというのに両手で包んでキャッチした。

しかし、マオサのトリガーは爆発しない。

「あれ?キャッチされちゃった。マオサ、トリガーの使い方わかってる?」

「失礼な!僕だって流石にトリガーの使い方くらいわかってるよ!」

「ハハハハハ!どうだ驚いたか!俺様のブラックトリガー『靄の袋(ネブラ)』は触れたトリオンを霧散させる!そんなヘナチョコ爆弾なんざ効かねえぜ!」

このアニキとかいうちょっと偉そうなチンピラ、他の雑魚より小物臭が強いセリフを言うとは凄い奴だな。

だけどブラックトリガーだし、わざわざ喋ってくれた能力も強力だ。油断はならない。

……まあ、こういう単発系の能力のブラックトリガーは知ってれば怖くないんだけどな。

俺はスッと立ち上がり、出来るだけ俺自身に注目を集められるようにチンピラのアニキに向かって歩く。

「なんだ?次は貴様が相手をするのか?まあ誰が来ようが『靄の袋(ネブラ)』の前には塵芥にも等しいがな!ハハハハハ!」

「自分のブラックトリガーの強さに酔いしれてるようだけどなオッサン、俺はそう甘くねえぞ。」

そう言うと俺は右手から槍状にスコーピオンを出し、いかにも俺のトリガーが槍であるように見せる。

同時に、左手側のスコーピオンは俺の身体で隠しながら廊下の床の中を潜らせてブラックトリガー使いの足元まで忍ばせておく。

「ハハハ!やってみろ小童が!」

「いくぞぉ!オッサン!」

なるべく俺だけに注意がいくように、過剰に返す。

俺は槍スコーピオンを敵の右足に向けて刺突しにいく。

刺突は敵の右手の平で平然と防がれる。防がれた瞬間からスコーピオンは煙のようになって消えていくが、気にせず槍スコーピオンで追撃を加えていく。

小手先で槍スコーピオンを回して反対の穂先で顔面を狙う。

だがチンピラアニキは首を逸らしただけで避けると、左手で俺の脇腹を掴もうとする。

俺は予想できていたが、敢えてそれを避けずに攻撃を受けにいった。

脇腹を掴まれた瞬間、地面に潜ませておいた左手側のスコーピオンを槍状にし、チンピラアニキの足元から複数に分けて天井まで貫通させる。

「ぐぅわっ!な、なんだと!」

完璧にチンピラアニキの不意を突けた。戦闘体のトリオン供給器官を貫いているので俺の勝ちだ。

「オッサン、アンタはブラックトリガーに頼りすぎなんだよ。だから俺みたいな小僧に不意を突かれんだぜ。」

「くっ…クソォ!」

目の前でチンピラアニキが生身に戻る。

「そ、そんな!アニキが負けるなんて!」

「アニキィ!しっかりしてください!」

ブレない小物臭だな。あと何人か残ってるから、まだ気は緩められない。

そう思った瞬間、俺の目の前をバルカが駆け抜ける。

バルカはチンピラアニキを跳び越え、凄まじい速度で残りのチンピラの前まで距離を詰めると、駆ける勢いを青龍偃月刀に乗せた豪快な回転斬りで残りをまとめて斬り裂いた。

バルカ…こいつは敵に回したくないな。

様子を伺っていたチンピラアニキが、バルカが回転斬りをしたのと同時にエレベーターに向かい走って逃げだした。

「わっわっわ!なんでこっちに来るんだよぉ!」

「そこをどけ!根暗野郎!」

「マオサ!止めろ!」

「ええぇ〜⁉︎僕が⁉︎」

「ミライ!マオサ!そこどけぇ!」

反射的に少し下がると、俺の目の前を青龍偃月刀が高速で飛び去った。

青龍偃月刀は真っ直ぐチンピラアニキの足元まで飛んでいき、左膝を貫通する。

「ぐああ!」

叫びをあげてチンピラアニキが転んだ。

……おっかねえ、ホントにバルカだけは敵に回したくない。

ひとまず痛がるチンピラアニキから、ブラックトリガー『靄の袋(ネブラ)』を取り上げる。

「お、おい!それを返せ!」

「誰が返すかこんな危険なもん。おい、他の手下はこの階にいるのか?」

「そんなこと誰が言うか!」

「あっそーですか。えい。」

バルカが横から身を乗り出して、チンピラアニキの膝から青龍偃月刀を引き抜く。

「ぐあああ!」

「「「アニキ!」」」

廊下の端で身を小さくしていたチンピラ達がチンピラアニキの元に駆け寄る。

「もう地上までちょっとだけなんでしょ?こんな奴置いてさっさと先に行こ。」

「そう…だな。そうする方が賢明か。」

俺とバルカは踵を返して歩き出す。

「ちょ、ちょっと待ってよミライ君バルカちゃん!」

マオサが慌てて追いつき、3人で地上へ向けて最後の廊下を進んだ。

 




お読みいただきありがとうございます。
私用もありましたが、今回は戦闘描写が多く更新まで時間がかかってしまいました。
長らくやってらっしゃられる他作品の作家さんが毎日更新できるのは本当に凄いと実感しました。私ももっと早く書けるように頑張ります。
戦闘描写はまだまだ下手で読みにくいと思いますが、イメージを膨らませて読んでいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。