「理不尽だ」
教室に美樹さやかの呟きが落ちる。わかっていたことだがこれはいくらなんでも酷いと思うと頭を抱えてうな垂れる。目の前にはテストの解答用紙が並びその右端にはでかでかと点数が記されているのは所謂赤点というやつだ。
そうだ!これは夢に違いない!目を閉じる。そして開ける。点数は変わらない。あれおかしいな?今度は頬を抓る。痛い。
うん、現実。これリアル。リセットボタンを探そう。
「大分深刻だな彼奴」
「しょうがないよ。だってさやかちゃんだもん」
「そこ、慰めるとかする」
ホントに身内にたいして容赦ないとさやかはため息をついて机に突っ伏す。テストなんてものを作った人物にもげろだの爆ぜろだのわけのわからない、ましてやいるかどうかも分からない人間に念を飛ばす友人に哀れな視線を送りつつ話題は昨日の出来事へ。
「魔法少女、か・・・・」
仁美がいないことを確認し呟く。現実と格闘しているさやかはこの際無視してまどかと巧人のみで会話する。興味あるのか?と巧人。頷くまどかにうーんと頭をかく
これは困ったな・・・・
どこからともなく視線を感じちらりと窓の外・・・・といってもこの学校の作り、教室が全面ガラス張りで360°どこからでも外から中が透けて見えるというキチガイじみた設計になっているため常に視線にさらされているようなものだが、その中でも一際キツイものを巧人は辿る。黒髪の少女がこちらを見ていた。主に、なんとかしろという意味で。
「あんなバケモンと戦ってるんだぞ?俺はともかくまどかは女の子なんだしそういうのはやめといた方がいいんじゃないか」
「でもマミさんはかっこよく戦ってたよ?」
「あれは別。それに・・・・なんか信用ならないんだよ。魔法少女も、魔女もさ」
鞄の上で日向ぼっこする自称白いマスコットこと白饅頭を見る。こっちの苦労はいざ知らずいい顔で寝てやがる。穴だらけにしてゴミ箱にブチ込んでくれようかと思考しているとさやかが叫んだ。
「悩むのやめ!まどか、巧人、ごはん行こう!」
「あ、諦めた」
「さっすがさやかちゃん、諦めが早いね」
「だから慰めてください」
◆
見滝原中学においての食堂はかなりごった返すことで有名だ。ここの生徒の大半が食堂に駆け込むためかなりの混雑が予想される。それを考えたらゆっくりランチタイムなんてのはとんだ幻想に違いないと一向は一年の時からこの屋上を使っている。白饅頭ことQBに餌付けして満足そうに笑うまどかはやっぱり最近黒くなってきたと思うさやかはひとしきり弁当を食べ終えた後パック牛乳を飲む巧人に言う。
「巧人はさ、もし魔法少女になるとしたらどんな願いをする?」
「ん~。俺基本自分で叶えるがモットーだし」
「もし、の話なんだから答えてよ」
露骨にめんどくさそうな顔にメリっと手刀を入れる。うむ、今日も切れ味は絶好調だ。
「ごほ、仮にそうだとしても、だ。俺は絶対にごめんだね」
「なんで?」
「命の危機に晒されていてこれしか生き残る方法がないってんなら話は別だ。けどそんな状況でもないのにこんなウマい話が突然転がり込んで来たら普通裏があるって疑うのが相場だろ?そもそも此奴、肝心なこと話してなさそうで俺は信用できない。信頼はもっとだ」
「どう違うの?」
「信用ってのは信じて利用する。信頼は信じて頼る。命を預けられるか、そうでないか。はたまたそれにみあった代償を払うに値するかどうかということにも関わってくるな」
おお~と拍手。それに巧人は左足を右足の後ろに、右手を下腹部まで折り左手を肩の高さまで上げてお辞儀する。調子にのるなとさやか。たまにはいいカッコさせろとは巧人だ。
たしかにそうかもしれないとまどかは腕の中のQBを見下ろす。なんでも願いを一つだけ叶える。その代償として魔女と戦う使命を背負う。見合った代償のようにも見て取れるが実のところそうではないようにも感じる。
よく考えてみよう。願いの代償は命だ、それを危機に晒してまで自分の願いを叶えたいなどと普通の思考じゃない。そういう人間は恐らく言い方は悪いが大半がその前者で止まっている。つまりは願いを叶えることに躍起になっているからだ。そして後者を見落とし最後にその真相に気づく。そもそも魔法少女についての説明が薄すぎるとは巧人の談。自分は頭はいい方ではないけれどそういう考えくらいはできる。信用するに値しない。性質の悪いセールスマンと一緒でうまい口車に乗せて此方が乗ってくるのを待っているようにも見て取れる。
「三崎巧人、やっぱりキミは鋭いね。でもそれは間違いだ」
「弁解はあるのか白饅頭?」
「昨日もマミの家で言ったじゃないか。何でも願いを一つだけ叶えるって。それに比べたら命を懸けて魔女と戦うなんて等価交換もいいとこだとおもうけど」
「願いの大きい小さいに関わらず戦わされるんだろ。どう考えても話がウマすぎるしそもそもおまえにメリットがないこの町で魔法少女が巴先輩しかいないってのもなんか怪しい。縄張りなんてもんがある時点で魔女を狩るのに必死にならなければならないだけの理由が魔法少女にはある。たとえ他者と戦うことになってもな。これだけの不透明なことがあるにも関わらずそれを突かれると感じたらすぐに話を逸らす。弁解は?」
「ない」
「認めるってころでいいんだな」
「その辺はもう説明しただろう?魔法少女の力の源であるソウルジェムはグリーフシードで穢れを浄化しないと魔法が使えなくなる。そうなったら大変なことになるのは君ら自身だよ」
『ボロを出したな白饅頭。俺は自分が魔法少女だなんて言ってないぞ』
『でも君は僕との契約に成功した特異点だ。その異端存在は見過ごせない。興味が尽きないよ』
無言で睨みあう一人と一匹を見比べて首をかしげるまどかとさやかは聞こえてきた足音に振り返る。黒髪を風になびかせて歩いてくるのは暁美ほむらだ。さやかはまどかを庇うように彼女の前に立ちふさがる。
「・・・・忠告はしたはずだけれど」
「ああ、それについては今問答中だ。すまないが用事があるならあとにしてくれ。あ、告白なら喜んで聞くけど」
「残念ながらそんなことは微塵もないわ三崎巧人。アンタに好意をもったことなど一度もないもの」
「ざっくりだなぁ」
「これ以上会話する気はないわ。・・・・いえ、まだあったわね。今日の放課後、一緒に来てくれるかしら」
「やっぱデートの誘いじゃん」
「冗談は死んでから言ってちょうだい」
「死んだら言えない」
「そうね。・・・・では、また後で」
やっぱり彼奴好きじゃない。言葉いせず巧人はほむらが立ち去ったあとをじっと見つめたあとさやかとまどかの質問攻めにあったことは言うまでもない。
◆
「あら、ずいぶんと速いのね」
校門前で佇む巧人に話しかける。しかしきょろきょろと辺りを見回すだけでこちらに見向きもしない。
「あれおかしいな?今確かに声がしたと思ったんだけど・・・・」
「撃ち殺すわよ」
「スミマセンデシタ」
二人して歩く。行き交う生徒たち、おもに男子生徒からは恨みの眼差しで見られているのはこの際スルーだ。
これから向かうのは自分たちの“敵”が待つ場所。昨日目星をつけて置いた場所へと向かう。目指すは見滝原病院。
今日、巴マミが死ぬ。
さて次回は主人公が戦うところまで書けたらなと