放たれる矢は巨体を射抜き、爆発する。一つ、二つ、三つ、時には弓を剣に見立てて斬り伏せ、また射る。爆発に続く爆発が絶えることなく起こり室内を照らす。その光景はこの瘴気の満ちた空間ではあまりにも不釣り合いに美しく映っていた。
「綺麗・・・・」
それを言ったのはさやかかまどかか、はたまたマミか。QBはそれに内で呟く。わけがわからない、と。色々と規格外な人間だ。今の今まででまったくと言っていいほど堕ちる気配がない。それは暁美ほむらも予想外のことで“盤面にない駒”と称しているのを聞く限り彼女も知らないものらしい。まあ出逢った時がつい最近の出来事だしと考えることをやめる。
この少年に関しては、考えてもしかたないからだ。
「ん~、やっぱり固いな・・・・」
射ると同時に爆発が起き、その明かりを背にクルリと一回転して着地する。さて、と呟き足場になっている馬鹿でかいテーブルの端に立ち、魔力で強化した右脚で跳ぶと同士に思いっきり踏み込む。その箇所をへこませてクルリとテーブルが90°持ち上がり倒れる。そ陰に着地して思考する。
矢もダメ、斬ってもダメ。何度やっても同じことの繰り返し。魔女本体はあの蛇ではないとなると本体はまた別のところにあると考えるのが普通。しかし本体と思わしきぬいぐるみは先ほどマミの射撃により潰されて見る影もない。なら、考えられることは限られてくる。
魔女の本体は別にあるか、もしくは想像もつかない場所にあるか。テーブルの陰から顔をのぞかせればきょろきょろと辺りを見回している魔女。こちらに気が付いていないのを確認して後ろにいた三人を手招きしこちらに引き入れる。
「ちょっとちょっとちょっと、コレどういうことなのさ!?」
「それに答えてほしいならうまい棒よこしな」
「こんな時までシリアスになれないなんてさすがたっくん。そこに痺れても憧れない」
「できたら憧れてほしかったなぁ」
「いやだってたっくんだし」
「あなた達っていつもこんななの?」
そうですとまどかと巧人がサムズアップで答える。この二人、どこまで行ってもどこにいてもフリーダムだなとさやかはどうしようもないとため息。マミはQBを抱え唖然。
「いきなり稲荷、たっくんの魔女攻略コーナー」
「なんかヘンなの始まったし・・・・」
「さて、俺と巴先輩がさっきまで戦っていたあの魔女。いくら撃っても斬ってもまるで何事もなかったかのように復活するわけだけども。ここで疑問点がいくつか」
「せんせー」
「はい鹿目さん」
「このケーキ美味しいです!」
「よし、作戦はズバリこのピンク頭を彼奴に投げて俺達はその隙に逃げるに決定します」
「すみません、マジごめんなさい、許してください、なんでもしますから。この無礼は躰で――――」
「先生幼児体型に一ミクロンも興味ありませんのでご安心を」
「それはそれで解せないな」
「いいから早く解説しろ!」
さやかのどこからともなく出してきたハリセンで頭をドツカレてたんこぶをつくりつつ巧人が解説を再開する。
「疑問点その一。魔女に対しての攻撃は有効。疑問点その二。何度も再生し、その速度が恐ろしく速い。疑問その三、巴先輩の火力でも無理。異常がこの魔女にたいしての違和感であり、ヒントでもあると推理する」
「その一とその三がなんとなく矛盾しているような気も・・・・」
「さやかが答えた、きっと明日は雨だな」
「扱いが酷い」
攻撃は通る。だがダメージがまるでない。マミの攻撃は巧人よりも火力が高いからマミがダメで巧人が有効という通りはない。そもそもやって試した時点でそれは立証済みである為この問題点は解決されていると言っていい。
では次、と巧人が言う。
「二はやっぱり魔女の特性とか、かな?」
そう言うのはまどかだ。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「どういうことかしら?」
「まず初撃。俺が撃った矢は魔女を射抜いた。これだけの事実であれば、普通ならこれで魔女退治終了となる。だが巴先輩の時同様そうはならなかった。ということはつまりどういうことか。的確に攻撃し、貫通するほどのダメージを与えているにも関わらず相手は健在。ピンピンして今でもチーズを喰ってる。これは何故か」
うーんと考える仕草をする一同。そこでこの4人+αとは違う声が巧人の問いに答える為の言葉を紡いだ。
「考えられるとしたらただ一つ。あの魔女の再生の瞬間は明らかに口から次の躯体が出てきている。ということは、体内に核となる部分が存在すると仮定した方がいい・・・・そんなところかしら」
現れたのは黒い髪に黒い衣服。左腕に盾のようなモノを着けている見滝原でもう一人の魔法少女、暁美ほむらだ。
「転校生・・・・!」
さやかが前へ出る。仲は未だに最悪かと内心ため息をついて掴みかかろうとするさやかを止める。
「手はださないんじゃなかったのか?」
「あなたがもたもたしてるからよ。で、答えはどうなの三崎先生?」
まるでバカにしたような口調で相変わらずの無表情のままほむらは言う。それに口角を釣り上げ、巧人が言った。
「正解だ」
◆
テーブルから、黄、紫、橙の軌跡が飛び出す。一人は弓矢を、もう一人はマスケット銃を、そしてもう一人は左腕を胸の前で構えいつでも自身の魔法を使えるよう準備する。
まず、トップを三崎巧人が務める。魔力消費の一番少ない彼が囮となり、無理のない程度に巴マミが援護する。手数では一番多い彼女が巧人をサポートし、魔女の注意を常にこの二人へと向けて置く。本命は、暁美ほむら。彼女の魔法は時間干渉。この中でもっとも決め手となる一手を撃てる駒の為彼女はバックにまわっている。
巧人が躍るように跳躍し、マミが銃で近づきすぎた魔女をけん制、進路を補正する。魔女の注意は常にこの二人に向けられており。ほむらはその陰でせっせと爆弾を並べていく。やがて充分に時が満ちたのをほむらからの合図で二人が進路を変更し、ほむらが仕掛けた爆弾の位置へと誘い込む。円を描くように設置された爆弾は遠隔操作で起爆する仕掛けになっており、そこに入った瞬間にスイッチを押す。同時に爆発した衝撃はかなりのもので、その中心点にいる魔女はたまったものではないだろう。
爆発による煙幕。それを抜け、魔女が口を開けて再生行動をしようとした、まさにその時。巧人の声が響く。
「巴先輩!」
直後、リボンの束が口につまり、身体を拘束する。そして、眼前には弓を構え、矢を生成する巧人の姿が。
「これでフィナーレだ」
射る。空いたわずかな隙間を矢が抜け、奥にある核に突き刺さる。それと同時に大きな爆発が起こり、魔女が爆死した。着地すると同時に、グリーフシードが落ちてくる。それをキャッチしてブイサインで戦闘が終わったことを二人に示す。
「やった・・・・勝った!」
「さっすがたっくん!濡れる!」
「コラ」
シリアスが続かないのはもういいけど下ネタはやめてほしいと心底思うさやかだがこの娘のフリーダムはもはや自分ではどうしようもないと元凶となった少年に駆け寄る。
「本体が見当たらないなら、隠す場所として最適なところはなにか。そう考えて導き出した答えが魔女自身の体内だなんて・・・・思い切ったこと考えるのね」
「巴先輩に褒められるとぬr――――」
「そいや!」
「キュピラッパ!?」
再びハリセンに、今度は顔面をいい具合の角度で振り抜かれてクルクルと回転しながら吹っ飛ぶ巧人。その衝撃に再び唖然とするマミに、ガクガクと震える手をあげて、
「先輩、グリーフシード使ってください…」
「え、いいの?」
「これは三人で取ったもんです。俺と暁美は消費が少ないから巴先輩が使ってください・・・・これが俺の形見です」
「えっと・・・・それじゃあ、お言葉に甘えて」
どうしていいかわからずにとりあえず巧人から受け取りソウルジェムを浄化する。
「たっくん!」
「ま、どか・・・・」
「たっくん、死んじゃやだよ!たっくん!」
「まどか・・・・俺はもう無理だ・・・・最後に、さやかに伝えてくれ・・・・」
「なに?」
「・・・・おまえ、体重増えたな――――」
「そォい!」
「プリプ~!」
再びさやかに吹っ飛ばされる。なんだか血が見えた気がするがこれはスルーした方がいいのだろうかと悩むマミの肩にほむらが手を置く。
「・・・・まあ、あれね。慣れろとしか言いようがないわ」
「・・・・あの子、ホントに魔法少女なの?」
「いいえ・・・・魔法使いよ、それもとびっきり性質の悪い」
ほむらの言葉を聞いてマミはもう一度ミニコントを続ける三人を見て思う。
・・・・後輩選び、間違えたかしら?