「ということなんだ」
「おかしい。なんだかデジャビュ」
テストも終わり、いよいよ体育祭間近という時期まで迫っていた見滝原中学。本日は職員会議の為教師陣は職員室にて会議中ということで今日は半日で学業は終了。現在男子一人、女子4人でファミレスの奥のボックス席にて陣取っている。何の前触れもなく巧人が切り出したことによりさやかがいつも通りツッコミを入れた次第である。
「わからないの?さやかちゃん」
「そうよ?わからないとだめよ美樹さん」
「マミ・・・・さん・・・・!?」
とうとう唯一の常識人だと思っていたマミでさえこんな感じ。ここまで毒されるとはもはや目の前の男はウイルスとしか思えない。しかもかなり感染率奴だ、たちが悪い。これはやはり自分が踏ん張らねばと意気揚々と決意新たにするさやかだが、
「だらしないわね。あなた、私に消火器投げつけてきた威勢はどこ行ったの?あ、思い出したわ。アレ結構痛かったのよ。こう、頭の骨が折れるかとおもったわ。血とか出てあなたのせいで貴重なグリーフシードのストックを使ってしまったじゃないの。おまけに巴マミにまで借りを作る始末。これも全てあなたのせいよ美樹さやか。あなたって、ホントバカね」
このほむらのマシンガンのような愚痴でトドメを指されたさやかはテーブルに立ったまま手をつき愕然とする。こいつら、人に気を使うということを知らないのかと心底疑う。
「ホントね。暁美さんの言うとおりにしたらきがらくになったわ。もう何も怖くない!」
「マミさん、それ死亡フラグの臭いが無茶苦茶するんでやめた方がいいですよ」
「あら、そう?ご忠告ありがとう鹿目さん。あなたもその幼児体型はよしたほがいいわよ?」
「よろしい、ならば戦争だ」
「返せよ・・・・アタシの知ってるマミさんを返せよォ!」
カオスだな~とこの空気に浸る巧人。もうこうまでなると収集つかないなと諦めてパフェを一口。フルーツ盛りだくさんで甘すぎなくおいしい。生クリームではなくヨーグルトベースのクリームを使っているのがいい。彩もよく量も丁度いい為甘味が苦手な巧人でもぺろりと平らげることができる。
さて、と一旦空気を入れ替える。泣いてるさやかは放置だ。
「今日から2週間以内に体育祭があるわけだが、ここで一つ、巴先輩はまあ仕方ないとして同じ穴のムジナ同士、仲良くやろうじゃないかと思ったわけですよ」
「嫌だ」
「無理」
「えっと・・・・・無理」
「ですよねー」
さやか、ほむら、悩んだ末NOと答えを何故か出したまどかにあはは~と気楽に返す巧人。それにやっぱり乗り切れないとため息をつくマミだ。飲んでいた紅茶のカップを置く。
「いい?私達はこれから一緒に頑張って行こうってさっき言ったでばかりでしょ。体育祭なんかで躓いたら魔女退治でなんて話にならないわよ?」
「マミさんが言うことも一理あるけど、でも此奴だけは嫌です」
キッパリとした拒絶の意志を示すさやかにオロオロとこれにはさすがに困るまどかと先ほどよりも大きなため息のマミ。ここに来てから30分あまりが経っているがさやかはネタのテンション以外ではほむらと目も合わせない。ほむらもほむらでさやかには目もくれず注文したスイーツを食べている。
どうしたものか。悩む巧人にマミは念話で言う。
『これ、本当にうまくいくの?どう考えても最悪の空気よ。ネタ以外は』
『此奴らネタで仲良くできるならもっと素でも仲良くしろっての・・・・』
『そもそもこの会合を持ちかけたのはあなたよ。何とかしなさい。でないと私は帰るわ』
空気が悪い。ここにいたくない。それは巧人も同じ。ボケようにもボケられないこの状況に巧人は汗を流す。
どうすることが最善か。選択肢がいくつも頭に浮かぶ。セーブできないなんてなんてクソゲーだ!これじゃCGの回収が困難だし一々最初からやり直さないといけないだろうがァ!
「・・・・それじゃ、私はこれで」
鞄を手に席を立つほむら。そそくさと店内を出て行く彼女の後を追って巧人は店の外へと出る。
「おい!少しは考えろよ。俺達の目的はなんだ?鹿目まどかの契約の阻止だろ。だったら戦力は多い方がお前も得するんじゃないのか?」
「それは彼方が決めたことでしょ。私はもう誰も頼らないって決めてるの」
「でも、俺のことは信用してくれた」
歩き出そうと踏み出した足が地面に着いた時点で止まる。
もう何も信じないと決めた。その筈なのに、彼には信用を置いた。それは何故か。
「不器用なくせに器用なフリするからこんな風に自分で自分の周りに壁作っちまうんだろ?そーいうとこよくないぜ」
「余計なお世話よ」
「その余計なお世話をする奴が居なきゃおまえ絶対歪みそうだ。特にヤンデレとか似合いすぎ」
「・・・・あなた少しは真面目にモノを話せないの?」
「無理。俺シリアス嫌い」
これだ。こんな風にペースを握られて最後には彼の波長に強引に引っ張られて自分のペースを保持できないまま乗せられていいように転がされるからこんな感じになる。おまけにこんな内面なのに観察眼が鋭いのだから対応に困るしおまけに図りかねない。何を考えてるのかさっぱりわからないし本性を見せない。
要するに、苦手なタイプだということ。
暁美ほむらは思考する。この男からどうやって会話の主導権を握ろうかと。暁美ほむらは思考する。どうやってこの男のペースを乱してやろうかと。
「・・・・そうね、そこまで言うなら考えてもいいわ」
「マジか!?」
「ただし条件があるのだけれど」
「やる!なんでもやる!」
「・・・・言ったわね?」
ニヤリ、と口角をあげたのを見て巧人は思う。
やっちまった、と。そして呟く。
「やっぱヤンデレ似合うわ」
「何か言ったかしら?」
「イイエナニモ」
「ふん・・・・まあいいわ。安心しなさい、あなたでもできるくらいに簡単なことよ」
どう考えても、どう見ても此奴よからぬことを考えてるなと苦笑いを浮かべる。どっちにしても口にしてしまった以上今更逃げることなど不可能なので割り切って言葉を待つ。
「そうね、彼方たしか選手宣誓だったわよね?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「そこでこう言いなさい“俺は上条恭介が好きだ、愛している”とね」
「な・・・・ッ!?」
「明日は彼も来るのでしょ?まどかと話しているのを聞いていたの。“私の希望”となるのであれば、それくらいやってもらわないと困るわね。ま、できないでしょうけど」
手の甲で長く黒い髪を払い踵を返す。去りゆく背中を、巧人はただ見送るばかりだった。
◆
そして、当日。見滝原中学運動祭。天気晴天雲一つなしの絶好の体育祭日和となっていた。空玉がボンボンと鳴り響く中、アナウンスの声で選手宣誓が始まる。
「センセー、僕たちはー」
「スポーツマンシップを乗っ取り・・・・・って、あ、違った。スポーツマンシップに乗っ取りー・・・・ところでスポーツマンシップって乗っ取るものなの?」
「ボケてないで早くしなさい!」
担任の教師のゲキが飛ぶ。渋々まどかと巧人が宣誓を行い、最後――――それは起こった。
それまで高をくくっていた暁美ほむらは直後、驚愕すると同時に自分の考えを改めることとなる。この男は――――三崎巧人はとにかく“やる”男だ、と。
「突然ですが、この場を借りてお話したいことがあります」
「あのバカ、こんな時にまでなにを――――」
「俺は!上条恭介が大好きだ!愛してるぞおおおおおおおお!!!!!」
巻き上がる悲鳴、歓声、そして怒号。「ヒューヒュー」「ホモォ」「BLキタああああ!!!」など様々だが、暁美ほむらはこう呟く。
「マジでか」
と