「魔法少女、はじめました」
「冷やし中華始めました的なノリで言うな」
いつもはこういう役目はしないのに、と愚痴をこぼしながらハリセンでさやかの頭を叩く巧人。それを見ながら後ろで溜息をつくほむらという図になっている。なぜこうなったかと言えば詳細はこうだ。巧人達がパトロールを開始したその夜。何故か街中を歩いていたまどかが魔女の刻印を付けた仁美を発見し後をつける。その先で見たのは集団自殺を図ろうとする人達でまどかはそれを止めようと奔走、しかし魔女が現れ絶体絶命のピンチに魔法少女となったさやかが駆けつけ事なきをえたということだ。
「で、そうなったからには覚悟はあるんだろうな?」
「もちろん!この見滝原の平和はこのさやかちゃんが守るのだ!」
こいつ、絶対わかってないと再び溜息。ほむらに至ってはもう諦めたように知らぬ存ぜぬといった感じで会話に入ってこようとはしない。これはまた面倒なことになったと頭を抱える巧人にまどかがどうかしたのか、と問う。いつもならここでボケの一つや二つかますところだが今はもうその気力さえなくなっている為「平気」の一言で返す。
「まあなにはともあれ、まどかと巻き込まれた人達も無事だったんだ。結果オーライってことで今回はいいとしよう」
「・・・・そうね」
そっけない返事を返し踵を返すほむら。明らかに機嫌が悪い。だがフォローしようにもできないので「また明日」とまどかの声で別れることにする。外は当たり前だがすっかり夜で学生が出歩くにはもういい時間帯まで差し迫っている。それでも、三人の足取りは並んでいつも通りだった。
「それにしてもさやかちゃんも魔法少女になるなんて、何だか私だけ置いてけぼり喰らってる気分だよ」
「契約したっていいことなんてないんだ。願い叶えてもらったってだけで、その後はあんなのと戦わなくちゃいけなくなるんだぞ?」
「それはそうだけど・・・・こう、ちょっと寂しいなって」
「ん~?まどかは寂しんぼなのかなぁ?」
いい鴨を見つけたとばかりにまどかに寄るさやか。
「いや別に。というかさやかちゃん、あの際どい衣装もう一回着て・・・・」
なにやらは鼻息を荒くするまどか。しかもなぜか手にはカメラが握られている。さっきまでのまどかはいったいどこへ消えたとキャラの急変に戸惑うもやっぱりこれが通常運転だなと思う。
「待てまどか!その写真俺にもくれ!」
「いい値で売ろう」
「いくらだ・・・・!?」
「ズバリ、1m――――」
「人の魔法少女衣装でなにアブナイ商売してんのよアンタは!?」
「ナズェニオデガ!?」
振りぬかれた鞄はまどかがしゃがんで回避したことにより隣にいた巧人に直撃する。ものの見事に顔面にクリーンヒットしたことにより地面に倒れる。
「願いといえば、さやかちゃんはどんな願いごとして魔法少女になったの?」
「え、ええっと、それは・・・・」
おおかた、恭介絡みだろうなとめぼしをつける。そもそもさやかが一大決心を、しかも魔法少女になるなんてことする根源にいるのは間違いなく上条恭介だろう。さて、これでまた面倒なことになったぞと起き上がりながら内心溜息をついてほこりを払う。
「他人には言いたくない秘密なんて誰でも持っているものですぜ奥さん」
「あらやだ、もしかして美樹さんちのさやかちゃんてば、まさかそんな…?」
「最近の若い子はすることが早いのね~」
「なに勘違いしてんのか知らないけど一応言っておくわ。そんなことは微塵もない。というかどっから持ってきたんだそのアフロの鬘」
「乙女の秘密」
「おまえ男だろ」
「そうだった・・・・」
そんないつものテンションで会話しながらそれぞれの帰路につく。一人になったところで、さやかは自分の指に収まっている指輪を見つめてみる。鮮やかなマリンブルーの色が自分の髪の色と同じでそこを見るとああ、本当になったんだなと実感する。
「・・・・さて、これから頑張りますよ~!」
この見滝原を守る魔法少女の一人として。ヒーローのように――――正義の味方のように。たとえ、それが歪んだ願いのもとに得た力だとしても。