魔法界と奇妙な世界の融合   作:穂月碧

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こんばんは!
第10話を迎える事が出来、感極まっている穂月碧です。
さて、今回はミラードの報告から始まります。ループを守るべく戦う決意をするマドレーヌ達。そこに強力な助っ人がやってきます。そうです、皆さまもご存知のあの魔法使いです。彼が信頼を寄せる闇祓いにもご注目ください。
それでは、第10話をどうぞ!


第10話 束の間の平穏

二分後、ミラードは大広間に駆け込むと「敵軍が侵入しようとしています、ミス・ペレグリン!やつらは入り口を見つけました!準備を整え、夜明けに侵入する予定です!」と重要な情報を教えた。

「今は午後四時過ぎです。あと七時間と少ししかありません!」

ミス・ペレグリンが言うと、誰もが「急がなきゃ!」と騒ぎ出した。その時、ニュートとエマがくたくたで大広間に入ってきた。疲れ果てた二人にわっと駆け寄ったこどもたちが、口々にミラードの教えてくれたことを伝えた。二人は蒼ざめる。

「このループは安全じゃない!」とホレース。

「ここから抜け出さなきゃいけない!」とジェイコブ。

「旅に出るの?」

期待を込めてオリーヴが言う。

「ここに残って戦うの?そして、ループを守るの?」とクレアが尋ねる。

「協力すれば敵を倒せる!」とニュートが言った。

「まずは、このループを協力して守りましょう。それが私たちの務めです。最悪の場合…このループが破壊された場合は…旅に出る他ありません」

ミス・ペレグリンが厳格にうなずきながら決断した。

「どうやって戦うんです?勝ち目はありませんよ?」

イーノックが嫌悪感を顕にして叫んだ。

「多勢に無勢かも」

マドレーヌは敵軍の人数を想像して言った。

「ダンブルドア先生がいる!」

突然、ニュートが大声を出した。マドレーヌはニュートの目に勝ち誇った光を見た。

「アルバスを呼ぶのですか?」

ミス・ペレグリンがニュートに尋ねた。

「ダンブルドアって誰?」とフィオナとヒューが聞く。

「アルバス・ダンブルドアは、イギリスにあるホグワーツ魔法魔術学校の変身術の教師です。彼は魔法に長けていて、とても頼りになる存在です」とミス・ペレグリン。彼女の顔には安堵の表情が浮かんでいる。

「ダンブルドア先生のお知り合いですか?」

ニュートは信じられないという顔だ。

「それで、ホグワーツって?」

エマの問いに、ニュートは笑いながら「ホグワーツは魔法使いの学校だ。世界一のね」と説明した。

「魔法使いの学校があるんですか?」

マドレーヌは興奮して飛び跳ねた。ミス・ペレグリンが厳格な表情を緩めて笑ったので、慌ててうつむく。もう幼い子供ではないのにもかかわらず、幼稚な行動をとってしまった自分がたまらなく恥ずかしい。

「もちろん。ティナとクイニーはイルヴァーモーニーという魔法学校に通っていた。僕はホグワーツ出身だ。色々とあって退学になったけれど、ダンブルドア先生は僕に良くしてくれた」とニュート。

「ニュート、退学になったの!?」

エマが目を丸くして大声で言った。

「その通りだ、エマ」

「なぜ!?あなたが何か悪さをしたの?」

「それには訳がある」

「なに?」

エマは異常なほど興味を示している。ミス・ペレグリンが「ミス・ブルーム、今は戦いの話をしているのです。個人的な質問はあとにしてください」ときっぱり中断した。

「話を戻します。ええ、ニュート。私はアルバスの親友です。過去にも何度か、彼に助けを求めたことがあります。彼ほど高潔な人はいません」

ミス・ペレグリンの言葉には懐かしさがこもっていた。

「ちょうど今頃、ダンブルドア先生はマクーザにいるはずです!ピキューリアに対する偏見をなくそうと、わざわざイギリスからアメリカまで足を運んだのです。急いで彼に伝えてきます」

ニュートが言うと、ミス・ペレグリンが微笑み「ニュート、あなたはとても頼りになりますね。宜しくお願いします」と頼んだ。彼はうなずき、姿を消した。エマの目が心配そうに動く。

「ミス・ブルーム、心配しなくてよろしい。ミスター・スキャマンダーはすぐに戻ってきますよ」

ミス・ペレグリンにはお見通しのようだ。エマは耳元を赤らめ、「心配なんかじゃありませんよ!あんな人のこと、好きでもなんでもない…」と意地を張った。しかし、オリーヴが「エマはニュートのこと好きなのよ、とても!エマったら、ニュートに抱きつこうとしてたの!気持ちわるーい!」とばらしてしまった。ヒュー、ミラード、ジェイクがはやす。エマはオリーヴを睨み「オリーヴのおしゃべり!」と言った。彼女の顔は真っ赤に染まっていた。

「ミス・ブルームがミスター・スキャマンダーに好意を抱いていることは、前から感づいていました」

ミス・ペレグリンはお茶目に言ったので、エマの顔がますます赤くなった。

「本当に違うんです!あれはたまたまで…」とエマは言いかけたが、「たまたまなわけない!エマったら、恍惚の表情だったもの!」と、またしてもオリーヴがばらした。エマは手から炎を出し、オリーヴに攻撃しようとしたが、仲介に入ったブロンウィンに止められた。

「さあ、作戦会議を始めま…」

エマが話題を変えようとしたが、その声は大きな音でかき消されてしまった。小さな子たちが悲鳴を上げ、エマは手から炎を出して戦おうとしている。だが、姿を現したのはニュートと見知らぬ男性だった。その男性は背が高く、少し顎髭を生やしている。まだそこまでの歳ではなさそうだが、知的で賢明な雰囲気だ。

「わしはアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア教授じゃ。初めまして」

男性がやさしく笑いかけた。

「なんとまあ、アルマ!またお会いできるとは、光栄じゃ」

「私もです、アルバス!」

ミス・ペレグリンが信頼している親友の肩をとんとんとたたく。

「さて、ミスター・スキャマンダーから聞いたところによれば、アルマがわしの助けを求めていると?」

ダンブルドア教授が落ち着いた声で本題に入る。

「ええ、その通りなのです、アルバス!私たちピキューリアは脅かされています。このループに敵軍が入り込むのは時間の問題です。あなたに味方に加わっていただければ、安全を強化できるのですが」

ミス・ペレグリンはダンブルドア教授をじっと見つめている。

「もちろんじゃ。親愛なるアルマの頼みならば、喜んで受け入れよう。はて、何をすればよいのじゃ?」

「アルバス、あなたは魔法がお得意ですね!戦いに加わっていただけますか?」

「わしの力の及ぶ限り」

ダンブルドア教授が重々しくうなずいた。

「わしだけでは大した頼りにならんじゃろう?よろしければ、わしの信頼しておる闇祓いを一人連れてこようかと思うのじゃが、どうじゃね?」

「アルバス、悪いわね。よろしく頼みます」

「もちろんじゃ。さっそく行って来よう。しかし、イギリスまで行き、その闇祓いと闇祓い局を説得せねばならんのじゃから、少し遅くなるかもしれん。そうじゃな…一時間後に、またここに戻ってくるとしよう」

ダンブルドア教授は素早くターンし、風煙と共に消えた。

「皆さん!戦いまで、残り五時間です!一時間だけ自由時間を与えます!好きなことをしてゆっくりと過ごしてください!」

ミス・ペレグリンは物わかりのいい人だ。みんなは大声で喜んだ。そして、思い思いに散らばっていった。

エマがさり気なくニュートに近づいていった。二人は階段を上がり、自分たちの寝室に入っていく。みんなはいたずらっぽく笑い合ったが、二人の幸福を邪魔しようと思う人はいなかった。

ベスはヒューに誘われ、彼の寝室に行った。階段を上がる途中で振り返ったベスは、マドレーヌに意味ありげに笑いかけた。マドレーヌも笑顔を返す。

あまり仲のいい印象のなかったティナとイーノックは庭に出ていき、オリーヴとクレア、ホレースとミラードはそれぞれくつろいでいる。フィオナはクイニーの魔法を見て感動し、早口のアイルランド訛りで話していた。

ジェイコブはブロンウィンと二人、真面目な顔をつき合わせて何やら真剣に話している。聞こえてきた言葉は「単純な攻撃って、意外とバレないものだよ」「確かに!それじゃブロンウィン、俺たちはその手で行こう」だった。もう戦法を決めているだなんて二人らしい。さすがだ。

マドレーヌは一人になってしまったので、こちらに歩いてきたジェイクを見た時は、心底ほっとした。

「マドレーヌ?良ければ僕の部屋に来ない?」

ジェイクが誘ってくれた。

「いいの?ありがとう!」

マドレーヌはジェイクについて階段を上り、彼の寝室にお邪魔した。ジェイクの部屋はシンプルできれいに整頓されている。

「座って」と、ジェイクが椅子をすすめてくれた。マドレーヌが座ると、ジェイクも向かい側に腰を下ろす。

「戦いのあと、君はどうするの?」

ジェイクがうつむきがちに質問した。マドレーヌは質問の真意が分からずに「えっ?」と聞き返す。

「戦いが終わったら、君は帰るの?」

ジェイクが顔を上げ、マドレーヌをまっすぐに見つめた。

「私が生きていなかったら?」

マドレーヌは冗談交じりに言ったが、ジェイクはまた下を向いてしまった。

「君が生きていないわけない!」とジェイクが否定する。

「でも、私はみんなが死ぬのを見ていられない。誰かが死んでしまうのを黙って見ているなら、自分が囮になるほうがましよ」

マドレーヌは真剣に考え、そう答えた。仲間達を見殺しにするなら死んだ方がまし、と本気で思う。

ジェイクが立ち上がり、マドレーヌを自分のベッドに誘った。マドレーヌは驚いたが、ジェイクの隣に腰を下ろした。

ジェイクがマドレーヌに近づいた。マドレーヌはジェイクと二人きりになるのに慣れていない。体中が熱くなり、急いで立ち上がる。

「戦いで戦死したらどうなるかなんて…」

マドレーヌの口から言葉が飛び出した。

「考えたこともない」

すると、ジェイクが大慌てで「君に戦死してほしくない!」と言いながら立ち上がった。

「私だって、ジェイクに死んでほしいわけないでしょ!?」

マドレーヌは大声で言った。ジェイクの気遣いが嬉しいのに、素直な態度を取れない。なぜだろう?

「もしも僕たちが戦いに勝ったら…」

ジェイクが静かに言った。

「ここで住み続けたら?」

マドレーヌはなぜだか無性に腹が立ち、声を張り上げて「そんなこと、あなたに決める権限なんてない!私が決めることよ!」と言った。ジェイクが「ごめん」と言ってきたので、マドレーヌはさすがに良心の呵責を感じた。ジェイクは何も悪くない。

「ごめんなさい。もう戻るね」

マドレーヌはそう言い残し、早足でジェイクの部屋をあとにした。彼の顔を見もせず、ドアを閉めて出ていく。頭の中では恥ずかしさと嬉しさが複雑に絡み合っているが、それが余計に腹立たしかった。

「ミス・ウェントワース?何があったのですか?」

下に下りると、ミス・ペレグリンが聞いてきた。

「何も」

マドレーヌは動揺し、短く答える。

「そんなはずはありませんよ、マドレーヌ。何を怒っているのです?」

ミス・ペレグリンはクイニーのような開心術士なのだろうか?

「もしも戦いに勝ったら、私たちはどうすればいいのですか?私とベスは?」

マドレーヌはミス・ペレグリンに尋ねた。

「あなたの好きに」

ミス・ペレグリンの意見はどうやら頼りにならないようだ。

「まずは戦いに備えなくてはなりません、マドレーヌ!勝てばミイナの仇を取ることにも繋がりますから」

ミス・ペレグリンは奇妙な笑みを浮かべ、パイプをふかした。そして立ち上がって歩き去り、大広間にはマドレーヌだけが残された。

少ししてジェイクが入ってきた。マドレーヌが暖炉の前に座っているのを見つけると、彼は驚いたように足を止めた。マドレーヌは気まずかったが、「さっきはごめんね」と声をかけた。ジェイクは暖炉の火を見つめながら「僕こそごめん」と言った。マドレーヌは安心し、隣に来たジェイクを迎えた。

「戦いのことなんだけど」

ジェイクは声をひそめ、暖炉側にかがみこんだ。ミス・ペレグリンに聞こえないよう、彼女を背にしている。

「なに?」とジェイクを促した。とても気になる。

「ミラードが、ミス・ペレグリンに内緒で敵軍の数を数えてきたんだ。何人いたと思う?」

マドレーヌは考えた。

「見たことはないから分からないけれど…私たちよりも多いんでしょう?うーんと…百人?」

ジェイクは重々しく首を振り、少し間を置いて口を開いた。

「軽く千人は超えていた」

マドレーヌは仰天し、思わず大声を上げそうになった。が、ジェイクに「しーっ!」と合図され、慌てて声を抑える。

「…千人以上!?」

「そう。僕たちに勝ち目があると思う?」

マドレーヌはとうてい勝てないと確信した。それを見越したように、ジェイクは「いくら偉大なるアルバス・ダンブルドア教授が加わったって、僕たちは多勢に無勢だ、イーノックの言う通り。そこで、僕たちも真剣に計画を練らなきゃならないと思う」と重々しく言った。

マドレーヌは事の重大さを思い知った。ジェイクにうなずく。

「遊んでいる場合じゃない」とジェイク。

「みんなを呼びましょう」

二人は立ち上がった。こどもたちと魔法使いたちを順番に呼び集める。だいたいは納得して素直に降りてきたが、何人か渋った人もいた。それは、ニュートとエマ、ベスとヒューだ。

「ほら!行くよ!」

ブロンウィンが力づくで引っ張ろうとすると、ようやく四人は降りてきた。怪力少女ブロンウィンに腕を引っこ抜かれてはたまらない!

「ミラード?どこかにいる?」

ジェイクが呼んだ。

「ここにいる」

小洒落たシルクハットが空中をヒョコヒョコと浮いて近づいてくる。

「さっきのことなんだけど…」

ジェイクがシルクハットに向かって語りかける。

「ああ、軽く千人は超えていた敵軍のことか?」

ミラードが言うと、こどもたちが顔を見合わせて騒ぎ出した。

「そんなに大人数の敵に攻められちゃ、私たちあっという間に皆殺しにされるわ!」

オリーヴが顔を覆い、しゃがみこんでしまった。

「もうおしまいだ!僕たちの勝ち目なんてない!」

ヒューも大声を上げている。

「そんなことない!みんなで計画を綿密に練ればいいだけだよ」と力強く口にするエマ。マドレーヌは救われた気持ちになり、すがるようにエマに近づく。

「どうすれば勝てると思う、エマ?」

エマは腕を組み、マドレーヌをじっと見た。燃えるような意思が伝わってくる。

「〝鳥〟に言わなきゃいけないと思う。敵軍の人数のことを」

エマが言う。

「そうしないと、ミス・ペレグリンの立てる計画にも差し支える」とブロンウィン。

「今すぐ伝えたほうがいい」

フィオナが切羽詰まったように早口で言った。

「行こう」

そう言ったベスはオリーヴを優しく立たせ、みんなのところに連れてきてくれた。こどもたちとマドレーヌ、ベスは連れ立ってぞろぞろと大広間に入っていく。

「まあ!皆さん勢揃いでどうしたのですか?まだ自由時間ですよ」

パイプをふかしているミス・ペレグリンは慌てて立ち上がった。みんながミラードを見る。彼は「なんで俺なんだよ?」と小声で訴えたが、「おまえが偵察してきたんだろ?」とイーノックに言われ、しぶしぶ進み出た。

「俺、ループの外をこっそり見に行ってきたんです。敵は何人いたと思いますか?千人以上です、ミス・ペレグリン!」

ミラードが興奮気味に伝えると、ミス・ペレグリンは目を見開いた。

「ミスター・ナリングズ!ループの外に出たのですか?よりによって危ない時期に!」

ミス・ペレグリンは顔をひきつらせた。

「ごめんなさい」と言ったミラードに代わり、ベスが前に出て口を開く。

「私たち、勝てっこありませんよね?何しろ私たちは…二十人もいないんですよ!」

それを聞いたミス・ペレグリンはこめかみを押さえた。

「心配ありません、ミス・トッカ!私たちも順調に味方を増やしているのですから」

「老いぼれじいさんとその部下だろ?そんなの信頼してるのか?」

イーノックが半ば叫ぶように言った。すると、ミス・ペレグリンの顔から血の気が引いた。その瞬間、全ての音が消え、聞こえるのはイーノックの荒い息づかいだけだ。

「度が過ぎます、ミスター・オコナー!アルバスを侮辱することは、私を侮辱するのと同じです。今すぐこの部屋から出ていきなさい!」

ミス・ペレグリンが静かに言った。イーノックはさすがに蒼ざめ、よろよろと後ずさった。

「さて、この部屋から出ていく気がないようですね?それならば、二度とあのような口は聞かないように!そうでなければ、ミスター・オコナー、あなたを追放します」

「すみません」

つい先程まではふてぶてしい口調だったイーノックが、素直に下を向いて謝った。

「さて、話を戻しましょう!もうすぐ一時間が経ちます。間もなくアルバスが戻ってくるでしょう。それから皆で会議を始めましょう」

ミス・ペレグリンの指示に逆らう者は誰ひとりとしていない。みんなは大広間の椅子に腰掛け、アルバス・ダンブルドアと彼の信頼する闇祓いの到着を待った。

それから十五分後。屋敷の入り口に行ったエマとフィオナの悲鳴が聞こえてきて、マドレーヌたちは驚愕した。

「行こう!」

ベスが立ち上がり、マドレーヌの手を引いた。大慌てで腰を浮かせたマドレーヌは、ベスと共に玄関へ向かった。

そこにはアルバス・ダンブルドア教授が悠々と立ち、顔には微笑みをたたえていた。彼の隣には見知らぬ男性がいる。彼をじろりと見るエマと、不安そうにあたりを見回しているフィオナ。

「マドレーヌ」

エマが慎重に後ずさり、マドレーヌに小声で言った。

「さっき、なぜ叫んだの?不法侵入者かと思った!」とマドレーヌ。

「いきなり爆音がして、彼らが登場したのよ。驚くに決まってる!それで、マドレーヌ、彼、頼りになりそうだと思う?」

エマがささやき、男性を指した。マドレーヌはその闇祓いだと思われる人物を見る。

「申し訳ないけれど…うーん、あんまり…」

マドレーヌは正直に答えた。なにしろ、その男性は全くと言っていいほど頼りにならなさそうだ。茶褐色の瞳と髪。人懐こそうな顔立ちは、どことなく『あらいぐまラスカル』を思わせる。口元はカモノハシのようだ。足が短く背も低いその男性を見て、マドレーヌは笑い出しそうになるのをこらえた。

「なんだか、おもしろそうな人だね?」

ベスがニヤニヤ笑いながら言った。フィオナは肩をすくめてみせる。

「ほら」

エマがマドレーヌとベス、フィオナの背中をポンポンと軽くたたいた。顔を上げるのと同時に、ダンブルドアと男性が歩み寄ってくる。

「通してくれるかね?」

ダンブルドアが言った。マドレーヌたちはうなずき、通路の端に避けて道を譲る。ダンブルドアは悠々と大股で通り過ぎていき、男性はその後ろをヒョコヒョコとついていく。まるでアヒルの父子だ。マドレーヌはまた笑いそうになった。

「行こう」

フィオナが控え目に笑いかけた。四人はダンブルドアと男性の通っていった廊下を進み、明るい電気のともる大広間に入った。

「さて、ご紹介させていただこう。わしの信頼する闇祓い、レオナルド・ササッキファーじゃ」

ダンブルドアが朗らかに紹介した。

「何ともおかしな名前だね!」と小声でジェイクが言う。

「彼の名前は覚えづらい。彼のあだ名はササッキーじゃ。そう呼んで差し上げてくれるかね?」

ダンブルドアが話を続けた。

「ササッキー、自己紹介をどうぞ」

ダンブルドアはゆったりと後ろに下がり、代わりに色白の男性が前に出てきた。

「皆さんどうも、初めまして。ササッキーです。どうぞ、よろしクマ!」

オリーヴとクレアがこらえ切れずに笑い出した。

「ところで皆さん、学校は楽しいですかー?」

ササッキーの質問に、しかめっ面のエマが「私たちはピキューリアよ、学校に行くはずがないでしょ!」と答える。ササッキーは目を輝かせ「オー、皆さんはピキューリア!素晴らしい!ワンダフル!」と言った。そして、突然歌い出した。マドレーヌ達はその曲を知らないが、ティナとクイニーのはっとした表情から察するに、どうやら魔法界で有名な曲のようだ。しかし最初は聞き入っていた2人の魔女も、だんだん呆れ顔になった。それもそのはず、突然歌い出したかと思えば物凄く調子外れな音程なのだから。

ササッキーは声を張り上げ、抑揚をたっぷりつけてサビを歌った。おそろしく音痴だ。

「よっ!ササッキー!」

オリーヴが囃す。ササッキーは紳士風のお辞儀をして「というわけで、自己紹介を終わりまーす」と間延びした声を出した。

「ササッキー、ご苦労」

ダンブルドアが思わず笑いながら言った。

「さあ、会議を始めよう。アルマ!」

ダンブルドアがミス・ペレグリンを見た。みんなは向きを変えて座り直す。

「さて、ミスター・ナリングス…」

「言わなくても分かりますよ、ミス・ペレグリン。偵察してきます」

ミラードがみんなの前で洋服を脱ぎ、姿が見えないことを確認させた。

「行ってきます」

そうミラードが言うと、駆け出していく足音が遠ざかっていった。

「さて、あと二時間で敵軍が侵入してくるでしょう。そのためにはどうしたら良いか、意見がある人は手を挙げて教えてください」

「はい!」

エマが勢いよく挙手した。

「ミス・ブルーム!」とミス・ペレグリンが指す。

「私たちの中で二つの軍に分かれ、ループの中を守る軍と、ループの外で敵を食い止める軍をつくるのはどうですか?」

エマがてきぱきと意見を言った。

「はい!」

「ミス・ポーペンティナ・ゴールドスタイン!」

ティナがエマを見、「エマの意見は的確でとてもいいと思います」と同意を示す。

「はい!」

「ミスター・コワルスキー!」

「よっこらしょ」と声を上げ、ジェイコブが立ち上がった。

「ループの外で戦う軍は、最初どこに行くんだ?」

そうだそうだ、とイーノックが言う。エマとティナは小声で会話を交わしている。

「それは…」とエマ。

「私たちはループを守ることが最大の目的です。ですから、ループの外でわざと敵軍に見つかり、逃げて姿をくらましてもらいます。そうすれば敵軍は騙され、外の軍を追って行くでしょう」

ティナがはっきりとした声で説明した。

「はい!」

「ミスター・スキャマンダー!」

立ち上がったニュートは眠たそうだが、その視線はきっぱりとした強い意思を感じさせる。

「ティナの言った作戦が成功したとしましょう。その場合、外の軍は延々と敵軍に追われることになりませんか?外の軍が危険な目にあってしまいませんか?」

「ニュートの意見には一理あるわ」

エマが言う。

「はい!」

ベスが大声で意見を言おうとした。みんなはそちらに注目する。

「どうぞ、ミス・トッカ!」

「外の軍だけが不利な立場にならないよう、何かうまく作戦を立てたほうがいいと思います!内軍も外軍も命を粗末にせず、堂々と戦う必要があるのではないかと思います」

この意見にはクイニーをはじめ、フィオナ、イーノック、ジェイコブ、ニュートなど大勢が賛成した。マドレーヌは親友の立派な意見を聞き、涙が出そうになるほど感激した。

「そうね」

ティナとエマも言う。

「味方を危険な目に合わせるのはだめだと思う。そうなった場合、みんなで外軍の加勢に行くべき」

ブロンウィンが仲間思いの誠心を発揮した。

「状況を整理しましょう。外軍と内軍に分けるという意見が出ました。これについて、賛成の人は挙手をお願いします」とミス・ペレグリン。マドレーヌは手を挙げた。エマ、ティナ、ベス、クイニー、ニュートと挙手の数は増え、ついには部屋中のみんなが手を挙げた。

「結構。では、新しい問題提起に移ります。外軍を囮にするという意見が出ましたが…」とミス・ペレグリン。

ティナが挙手するのも忘れて立ち上がると「私は外軍を囮にするつもりはありません、ミス・ペレグリン!ただ、それ以外にループへの襲撃を防ぐ方法はないと思ったのです」と発言した。大広間中がざわめく。

「方法ならある!」

ジェイクが大声を上げた。ざわめきがやみ、ジェイクに視線が集まる。彼は咳払いをした。明らかに発言モードに切り替わっている。

「外軍と内軍に分けるというのは変えない。このループの中で戦えばいい。外軍はなるべく手前で敵軍を引き止めるようにして、内軍はループの中で戦う」

マドレーヌはいい案だと思ったが、否定的な声も少なくはない。まず、クレアが巻き毛を振りながら立ち上がり「それじゃあループが破壊されちゃう!」と最もなことを言った。しかし、クレアの隣で立ち上がったオリーヴは「このをループを守りたいけど、一部の人たちだけを危険にさらすのはだめよ!あたしたちはみんな一緒だもん!」と声を震わせた。幼いオリーヴがまともな意見を言ったことで活気づき、次々と意見が飛び出す。

「外軍がいくら敵軍を引き留めたって、狙いは外軍だけじゃない。やつらはループと内軍をも狙っている。だからこそ、外軍はできる限りの力を尽くして戦い、引き留めが効かなくなった時には内軍がループを守るために戦うのがいいと思う!」

ジェイクが叫ぶ。

「ループを守ることが俺たちの使命じゃないのか?」とジェイクに反対するイーノック。

「おい、俺たちは狙われている者達が集まり、互いを守るために戦うんじゃないのか?このループを守ることが優先なのは分かる。でも一番の目的は、俺たちの命を守ることじゃないのか?」とジェイコブ。それに合わせて部屋中のみんなが『ループを守るのが最優先派』と『自分たちの命を守るのが最優先派』に分かれ、言い争いを始めてしまった。

「静かに!」

ミス・ペレグリンが声を張り上げ、みんなを黙らせた。

「意見が二分してしまうのならば、ループを守るのを優先したい人は内軍、皆を守ることを使命としたい人は外軍に分かれるのはどうですか?もう言い争っている時間はありません!一刻も争う緊急事態です!」

ミス・ペレグリンの意見に逆らう者は誰一人としていない。

「では、内軍志望の人?」

イーノック、ジェイク、ホレース、ヒュー、クレアが手を挙げた。残りのニュート、ティナ、クイニー、ジェイコブ、エマ、オリーヴ、ブロンウィン、フィオナ、マドレーヌ、ベスは外軍志望である。これでは内軍が五人、外軍が十人と人数にばらつきが出てしまう。

その時、「誰か服を投げてくれるか?」というミラードの声がした。背後でドアが閉まる。やれやれと笑いながら、ミス・ペレグリンがミラードに服を渡した。服を着たミラードは空いている席に座り、「午前0時きっかりに敵軍は襲ってきます」と知らせた。ミス・ペレグリンはうなずきながらミラードに今の話を伝え、内軍か外軍どちらにするかと聞いた。

「俺は内軍志望。いざと言うときに敵を倒せる」とミラード。これで内軍は一人増えた。

「魔法使いが皆外軍というのは、何とも不安じゃのう。はて、魔法使いが誰かひとりでも内軍に移動してはくれんかね?」

今まで成り行きを見守っていたダンブルドアが言った。

「確かに、内軍にも魔法使いがいたほうがいい」とヒュー。

「私が移動します。内軍に加わり、精一杯戦わせてもらうわ」

ティナが目を輝かせて申し出た。彼女は完璧な戦士だ。

「ジェイコブ、君は何か役に立てる?」

ニュートが言いにくそうに質問すると、ジェイコブは「あ、ああ…俺はみんなのように特別じゃない。内軍になるよ。悪者を突き飛ばしてやる!」と拳をかためた。そういうわけで、内軍が八人、外軍が八人と等しくなった。

「ここからは座席を各軍ごとに移動して作戦会議に致しましょう。ところで、私は内軍に加わりますが…アルバス、ササッキー、あなた方はどうなさるの?」とミス・ペレグリンが言った。

「私は内軍で」とササッキー。

「わしも内軍でいいかね?問題が発生した時は、いつでも外軍に加勢しよう」とダンブルドアが力強く言う。少し心細いが、外軍も力ぞろい。頑張ろうと心に誓う!

内軍は座席を詰め、外軍は暖炉の前に円になって座り、作戦を練ることにした。

マドレーヌはベス、ニュート、エマ、クイニー、ブロンウィン、フィオナ、オリーヴと共に暖炉の前に集まった。

「敵軍に追われ始めてしまったら、このメンバーでそろって逃げるわけにはいかないわ」とエマが言う。

「追われ始めたら二手に分かれ、後に敵の目から逃れるために四手に分かれるのはどうかしら」とクイニー。

「いいと思う!」

マドレーヌとベスが言った。

「どういう組み合わせにするか決めなくちゃ」とフィオナ。

「まずはそれぞれの能力を考え、それに合ったパートナーやグループメイトを探し出したらいいと思う。誰かさんみたいに好き嫌いで判断せずにね!」

ブロンウィンが言うと、エマは顔を赤らめた。

「エマは手から炎を出して戦える。僕とクイニーは魔法が武器だ。ブロンウィンは怪力で頼りになるし、フィオナは植物を育てることで助けに加われる。オリーヴは空中浮揚でき、ベスはありとあらゆる武器を跳ね返し、何の変哲もない物にその能力を授けることもできる。そして、マドレーヌは…窮地に陥ったとき、一番活躍を見せられる。瞬間移動で仲間を救える。また、戦いの最中に瞬間移動することで敵の裏をかくことができる」

ニュートが一人ひとりの特性を説明した。

「まず、ニュートと私はそれぞれ別で戦うべきだと思わない?魔法使いがかたまっていると助けにならないでしょう?」とクイニー。

「ベス!君は呪文も跳ね返せるの?」

ベスはいきなりニュートに名前を呼ばれ、戸惑ったように首を傾げた。

「うーん、やったことがないから分からない」

「やってみましょう!」とクイニー。

ベスは立ち上がり、まっすぐにニュートとクイニーと向かい合った。

「いくよ…一、二の三で呪詛をかける。君は跳ね返して!」

ニュートが指示し、ベスがうなずく。

「一、二の三…」

「タレントアレグラ!」

クイニーが放った閃光はベスに向かって一直線に伸びた。ベスは手をかざし、閃光に向ける。すると、閃光は屈折してベスからそれた!ニュートが横から杖を振り、閃光を消した。

「よくやったわ、ベス!素晴らしい!」とクイニーが褒める。ベスは満面の笑みだ。

「ベスは攻撃できないけど、武器も呪詛も跳ね返せる。彼女には魔法使いのペアは必要ないんじゃない?」

ブロンウィンが腕を組み、身を乗り出して言った。

「防御できるベスには、攻撃できる仲間が必要なんじゃない?」とオリーヴが飛び跳ねながら意見を言う。

「例えば…ブロンウィンや、フィオナや、エマ?」とマドレーヌが手を挙げて言う。

「ベスのペアについては、後でよく考えましょう!それよりも、他にもペアを決めなくては」

クイニーが微笑んだ。

「オリーヴはどうやって能力を生かすの?」

フィオナが尋ねた。

「空高くまで浮かんでいって、上空で気付かれないように待機しているわ!それで、上から攻撃するの!物を落としたりね。それと、私は空気を操れる。口から吐く息は人を壁に押さえつけられるほどだし、強風を起こして敵を困らせられる」とオリーヴ。自分の能力を生かしたいと願っているようだ。

「オリーヴは最年少。彼女には頼りになる人がついたほうがいい。例えば…魔法使い?」

ブロンウィンは幼い仲間を気遣う優しさを発揮した。

「私かニュートがオリーヴとペアを組みましょう」

クイニーが素早く言う。

「次にフィオナ。植物を操り、敵を蔓で縛ったり、通路を塞いだりできるよね?」

ベスがやる気満々でフィオナに話しかける。

「うん!ただ、攻撃も防御もあまりできないの」と言うフィオナは少し悲しげだ。

「フィオナにも頼りになる人をつけたらいいと思う」

マドレーヌはフィオナに笑いかけながら提案した。

「その通り!それで、マドレーヌ」とオリーヴ。厳格なリーダーぶる様子はかわいらしくお茶目だ。

「私は攻撃できないけれど、攻撃を避けられる。つまり、防御できるの」とマドレーヌは言った。

「じゃあ、マドレーヌには攻撃できる人がついたらいいね」とベスが言う。

「一旦、すでに候補が出ている人から決めない?オリーヴとフィオナは僕たち魔法使いと組むのがいいんだね?僕はオリーヴと組んで戦おうかと思っているんだ」

ニュートが順序立てて状況を整理してくれた。

「私はフィオナと組んで戦うわ」とクイニー。これで二つのペアが確定した。

「本当はマドレーヌと組みたいところだけど、もしそうしたら二人とも攻撃できないから、すぐに負けちゃうよね?それなら…」

ベスはブロンウィンに視線を送っている。

「私も同じこと考えてた。わたしたちで敵軍を木っ端微塵に吹き飛ばそう!」

ブロンウィンが物を投げ飛ばすポーズをとってみせる。

「マドレーヌ」

エマに名前を呼ばれた。

「私はかつてミイナとタッグを組んで戦った。今度はマドレーヌと組める!せっかくだから、お互いに助け合いながらベストを尽くそうね!」

エマは晴れ晴れと笑いかけてくれた。

「私こそ!よろしくね、エマ!」

マドレーヌは見惚れるほどの美しい少女に微笑みかけた。

次に決めるのは、敵に追われ始めてすぐに分かれる四人組のメンバーだ。先ほどつくった二人組を二つくっつけ、四人組にする。簡単そうだと思っていたが、それが意外と大変なのだ。

「魔女・魔法使いは各組に一人ずつ」ということに決まった。そのため、マドレーヌとエマはニュートたちかクイニーたちと組むことになった。つまり、ベスたちとは一緒になれない。

「魔法と浮遊を有する二人組か、魔法と植物を思いのままに操る二人組。どちらを取る?」

ベスがおどけて聞いた。マドレーヌはエマと顔を見合わせ、無言で相談する。マドレーヌはベスたちに決断を委ねたかった。

「ブロンウィンたちが先に決めて。あなたちと相性のいい組を選んで」

エマが言った。

「私たちは…」

ベスはブロンウィンと小声で相談している。相性のいい組を選ぶことは、ループの安全にも、そして自分たちの命や勝利にもつながるのだ。

「私はオリーヴが心配。幼くて世界を分かってないオリーヴが、他人の安全を慮れるか分からないニュートと二人で敵に立ち向かえるのか不安。最高のチームワークの四人組になれるなら、私は命を惜しまないで戦う」

最年少であるオリーヴを擁護してあげたいというブロンウィンの親切な心。仲間のためなら命を厭わない彼女の並外れた勇気に、七人は感服して拍手を送った。ただしニュートは複雑そうな表情だ。無理もない。ブロンウィンはそんなニュートの背中を力強くたたき(怪力少女のパワフルな力に、ニュートは少し顔をしかめた)、「私は本当のことを言ったに過ぎないよ、ニュート。でも、あんたが信用できる仲間だってことは分かってるからね!」と笑いかけた。

「じゃあ、ブロンウィンとベス、オリーヴ、ニュートの四人組でいい?」とエマ。

「うん!」

四人の明るい声が重なる。

「よし!じゃあ、私たちはこの四人で頑張ろうね!」

フィオナが太陽のように明るい笑顔で言った。

「もちろん!」とマドレーヌ。

「敵を倒すぞ!」と意気込むエマ。

「頑張りましょう!」とクイニーも言う。そういうわけで、四人ずつの組も決まった。あとは作戦を立てるだけだ。だんだん戦いまでの道のりが開けてきた。

「目的は僕たちの命とループを守ること。まずはループを守るために戦おう!」とニュートが力強く宣言する。

「敵軍はループ目がけてやってくるはず。石垣の外には大勢が待ち構えている。午前0時になったのと同時に敵はループに侵入してくる。そうなったら、ループが危険にさらされちゃう!だから、私たちは午前0時になる前に外に出て、敵軍を一人でも多く倒すようにすればいいんじゃない?」

ブロンウィンが提案する。

「よし、じゃあ午前0時の五分前に、私たちはループの外に出て戦わない?」

エマの目はらんらんと輝いている。

「いいわね!」とクイニー。オリーヴは近くにあった紙とペンを引き寄せ、『外軍 午前0時五分前より戦いスタート』と書いた。

「戦いの練習をしようよ!私とマドレーヌは初めての戦いだから、一瞬で負けちゃう!」と不安そうにベスが言う。

「そうね!じゃあ、練習しましょうか?せっかく八人いるのだから、先ほど決めた四人ずつの組で対戦したらいいんじゃないかしら」

さすがクイニーは大人だ。和ませるように穏やかに微笑みつつも、しっかりとみんなをまとめてくれる。

外軍メンバーはミス・ペレグリンに「庭で戦いの練習をしてきます」と伝え、ぞろぞろと庭に出た。マドレーヌはエマ、フィオナ、クイニーと共に、ニュート、ベス、オリーヴ、ブロンウィンと向かい合う。

「練習だからって、手加減はなし!」とオリーヴ。ニュートの号令に合わせ、みんなは構えた。なんだかどきどきする。

「スタート!」

ニュートが言うと同時に彼の杖から爆竹が飛び出し、始まりを告げてくれた。マドレーヌは何をすればいいのか分からなかったが、エマに引っ張られ「何をぼやぼやしてるのよ!」と怒られた。

フィオナはポケットから植物の種を出し、それを持ってどこに投げようか見定めている。ニュートがマドレーヌに向かって杖を振り、閃光が飛び出した。マドレーヌは思わずしゃがみこむ。その時、フィオナが種をマドレーヌの前に投げた。種は一瞬で蔓の壁になり、マドレーヌの前に立ちはだかる。閃光は蔓に当たり、跳ね返った!ニュートが目を見張る。

「ありがとう!」とマドレーヌはフィオナにお礼を言った。

「危なかったね」とフィオナ。

間髪入れずに、エマが手から炎を放った。ニュートの前髪が巻き上げられ、熱い炎が彼を覆う。

「行くわよ!」

マドレーヌはまた、エマに引っ張られた。

ニュートがエマへのお返しで放った炎の壁が、マドレーヌ、エマ、フィオナ、クイニーに向かって飛んでくる。広い面積なので逃れられない…。

マドレーヌは慌ててエマとフィオナの手を握った。フィオナがクイニーを引き寄せる。マドレーヌは「大きなトピアリーの後ろ、大きなトピアリーの後ろ」と祈った。次の瞬間、地面が揺れ動いたような不思議な心地がしたかと思うと、マドレーヌたちは大きなアダムのトピアリーの後ろにうずくまっていた。

「ありがとう!」

クイニーがささやき、後ろからニュートに呪詛を放った。ニュートとクイニーの一騎打ちが始まる。フィオナはまた、植物の種をニュートに向けて放った。

オリーヴがかがんで閃光が当たらないように歩いてきた。ニュートの足元に落ちた種を拾い、ふわふわと浮かんでいく。小さなオリーヴはその体を生かせるのだ。

「もう!」とフィオナがいらついたが、その仇を取るかのように、エマはマドレーヌに「ニュートの真後ろに連れて行って」と小声で言った。

「なぜ?」

「お願い!それと、あなたは一歩も動かないで黙っていてね」とエマ。マドレーヌは何が何だか分からないが、エマの言う通りに瞬間移動した。ニュートはクイニーと呪文を放って戦っているため、後ろには気を取られていない。オリーヴは空高く浮かび上がり、少し離れた位置ではベスが、オリーヴの腰に巻きついているロープの端を握っている。

エマは足をしのばせてニュートに近寄った。クイニーは状況を把握しているようだが、ニュートに感づかれないように戦い続けている。

「ニュート」

エマがささやき、ニュートの肩に手を回した。どうやら、無邪気でお茶目なオリーヴの真似をしているようだ。

ニュートが振り向かずに、「オリーヴ?なに?」と言った。

「ニュート、あのね…」

エマがオリーヴの声音を真似て言い、いきなりニュートに飛びついた。ニュートは驚き、そのまま芝生に倒れ込む。

「エマ!?」

ニュートはエマが敵であることを忘れ、素っ頓狂な声を出した。ニュートがクイニーから目を離すのと同時に、クイニーが放った閃光がニュートにまっすぐ飛んでいく。マドレーヌはエマの手を取り、急いで庭の反対側に連れていく。

「ありがとう!」

エマが息を切らしながら言った。

「圧巻の演技だったよ!」とマドレーヌ。エマは勝ち誇ったように微笑みながら、「どうにかしてニュートの気をそらそうとしたのよ!この技、戦いでも使えるかしらね?」と言った。

背後で鈍い音が聞こえて振り返ると、ニュートが力なく芝生の上に倒れ込んでいた。

「ニュート!!」

エマが目を見開いて叫び、ニュートに駆け寄った。マドレーヌも後ろから駆けつける。フィオナも、ベスも、ブロンウィンも、宙に浮いていたオリーヴも鉛の靴を履いて走ってくる。戦いの練習は中断された。

「彼に何をしたのよ!?」

エマがに怒鳴った。クイニーは少したじろいだが、気を取り直して微笑む。

「私の呪文が命中したの。ニュートは失神しただけで、数分後には意識を取り戻すわ」とクイニー。しかし、エマは落ち着くどころか目をつり上げ「本当なの?ニュートが意識を取り戻さなかったら、一生あなたを責め続けるからね!」とクイニーを指した。

「そんなことにはならないわ」とクイニー。エマはクイニーを睨み、「証明して!できなかったら、あなたをここから追い出してやる!」と石垣を指した。

「あんたは追い出せる立場じゃない」とブロンウィンが冷静にエマに言う。だが、エマはその言葉を無視し、クイニーをじっと観察している。

「そうね」

クイニーはやれやれと杖をニュートに向けて振った。すると、ニュートの目が開いた。

「ニュート!」

「エマ?」

エマはニュートを見て大喜びしているが、ニュートにはこの展開が呑み込めていないようだ。

エマは一転、クイニーに「良かった!」と笑顔を見せた。クイニーは肩をすくめたが、エマの変わりやすい気分には慣れてきたらしく、魅力的な美しい微笑みを返した。

ニュートは何事もなかったように立ち上がり、エマに「君の声真似はすばらしかった!」とぎこちなく褒めた。エマは顔を赤らめたが、「さあ、怪我がないみたいだから、練習を再開しようよ」と仕切った。ニュートはそんなエマから目を離せずにいたが、ふと「『失神の呪文』なんて慣れっこだから心配要らないのにね」と独り言を言った。マドレーヌはニュートを見つめる。彼の後ろには、美しい星空が広がっていた。

 




ついにアルバス・ダンブルドアが登場!!
今は校長ではなく、まだ変身術の教師です。偉大な賢者ダンブルドアが味方に加わったとなれば、人数の差こそありますがかなり有利になりました。
あと、マドレーヌとジェイクが何だかいい雰囲気になっています。穏やかな性格のマドレーヌと落ち着いた物腰のジェイクは平和そうな組み合わせで、ほのぼのします。マドレーヌはまだ自分の恋心に気づいていません。エマ&ニュートと同様初々しい2人の関係は、これからどのように発展していくのでしょう。
そして今回、初めて戦いのシーンを取り入れてみました。(練習ですが^^;)いかがでしたか?次話は戦いが更に鮮やかになりますのでお楽しみに!
戦前の、束の間の平穏でした。戦いが始まったらのんびりしていられないので、せめて今はほんわかさせてあげよう、というミス・ペレグリンの気遣いは素晴らしい。
それでは第11話でお会いしましょう!
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