ようやくこのSSも5話に到達しました。初投稿で不安でしたが、私のSSを読んで下さる皆さまのおかげです。本当に感謝しかありません。
少しでもお楽しみいただけるよう全力を尽くしますので、これからも「魔法界と奇妙な世界の融合」を宜しくお願い致します♪( ´θ`)
さて、今回はエマとマドレーヌの会話から始まります。マドレーヌの祖母ミイナの過去も明らかになります。
それでは、第5話をどうぞ!
「私はミイナの親友。彼女も特殊能力を持っていて、戦争中にここに来たの。ミイナは快活で陽気な少女だった。私は同い年の少女、ミイナと打ち解けて、すぐに仲良くなった」
「おばあさんと…同い年?」
マドレーヌは目の前にいるかわいい女の子を見つめた。
「ええ、そうよ。私は八十七歳」
エマがこともなげに言ってのけた。マドレーヌは驚き、のけぞった。
「でも、あなたはまだ少女に見えるわ!」
「そうでしょうね。ここ、時間のループにいる限り、私は老けない」
エマが淡々と言う。
「ミイナは外の世界に出ていってしまい、少しずつ老けていった。そして…」
エマの瞳が涙で潤んだ。マドレーヌはエマの肩をぽんぽんと優しくたたく。
「あなたはミイナに生き写しよ。ミイナは美しく優しさに溢れ、親切な人だった。その孫にあたるあなたも特殊な能力を持つに違いないの」
エマは話を終えて立ち上がったが、ふと思い出したように付け加えた。
「初対面でひどい態度を取ってごめんなさい」
二人はエマの部屋から出た。下の階に降りて庭に向かうと、ベスが飛び跳ねてやってきて、「ねえ、マドレーヌ、すごいよ!来て来て!!」と急かした。庭に出ると、フィオナが芝生を見て立っている。
「やってみせてくれる?フィオナ」
ベスが頼むと、フィオナはうなずき、手を芝生の上にかざしてしゃがみこんだ。
信じられないことが起きた。フィオナが空気を引っ掻くような動作をすると、草がものすごいスピードで伸びてきたのだ!
「あらゆる植物を成長させる能力を持つの」
フィオナが言った。
「すごいわね!」
マドレーヌは感心して言った。が、フィオナは首を振り、「こんなの当たり前」と言ったので、マドレーヌはびっくりしてしまった。
こどもたちがこちらに駆け寄ってきた。マドレーヌの腕につかまったオリーヴは「ねえ、マドレーヌ、遊ぼう!」とせがんだ。エマは精一杯、「オリーヴ、あんまり走り回っちゃダメよ」とは言ったが、楽しそうに一緒に歩いてきた。
「能力を見せてくれる?」
マドレーヌが頼むと、オリーヴは一人の男の子に「ロープをお願い」と言った。その男の子はうなずき、オリーヴに手渡されたロープを彼女の腰に巻き付け、ロープの先をしっかりと握った。
「よく見てて」
エマがマドレーヌをつついた。オリーヴは銀色の重たそうな靴を脱いだ。すると、オリーヴは風船のようにふわふわ浮いて漂った!
「ロープをつけていないと、果てしなく浮かんでいっちゃうの。私は空気より軽いんだもの!」
オリーヴがマドレーヌたちを見下ろした。
「だから、普段は鉛の靴を履いてるの。さあ、ヒュー、降ろして」
ヒューと呼ばれたロープを持っている男の子は、ロープを引いてオリーヴを降ろした。
「レディース・アンド・ジェントルメン!」
いつの間にか隣に来ていたミラードが、誇らしげに宣言する。
「さあ、世紀一のショーが始まります!皆さん、お見逃しなく!ミス・トッカ、ミス・ウェントワース、どうぞこちらへ!」
ミラードがもったいぶり、透明の手がマドレーヌの片手を取るのを感じた。なんだか不気味だが、ミラードが存在している証拠だ。ミラードは黒革の高級そうなジャケットを身にまとい(他には何も着ていない)、マドレーヌとベスを観客席(芝生より小高い場所だ)に連れていく。フィオナが切り株を成長させて作った椅子だ、とミラードが説明する。ミラードはドタドタと奇妙なこどもたちの所に戻っていき、代わりにジェイコブが来てくれた。
「あなたはショーに参加しないの?」
マドレーヌは気になってそう聞く。
「僕の能力はショーでは使えないんだ」
ジェイコブは少し悲しげに、でも誇らしそうに説明した。
「どんな能力?」
ベスが尋ねると、ジェイコブは「僕にはホロウガストが見えるんだ」と教えた。
「ホロウガストって?」
マドレーヌが聞いたが、ジェイコブは「また今度説明するよ」と言って、ショーが始まると身振りで示した。
まずは司会者のミラードから。ミラードは服を脱いできて、きれいなリボンを持って駆け回り、リボンが宙に浮いているように見せて喝采を浴びた。続いて出てきたのは小柄な少女で、興味がなさそうに無表情。「ブロンウィンだ」とジェイコブ。ブロンウィンは大きな岩を持ち上げてぐるぐると回し、放り投げてまた取った。小柄な外見からは想像できないほどの怪力の持ち主だ。ブロンウィンは重いものをたくさん担ぎ、軽々と放り投げる芸を見せた。
次に出てきたエマは自分で作った炎の渦に飛び込み、無傷で出てきた。水泳選手のようだ。マドレーヌは夢中で拍手した。
先ほどオリーヴのロープを持っていたヒューという男の子は、なんと口からハチを出した。マドレーヌは目を疑った。ジェイコブが「ヒューは体の中に無数のハチを飼っているんだ」と教えてくれる。フィオナは美しい花を咲かせてあっという間にブーケをつくり、マドレーヌとベスにプレゼントしてくれた。イーノックという最年長の少年は、クレアのクマの人形に命を吹き込み、しゃべらせたり動かしたりした。ただし、クレアは大好きな自分のお人形が低い声でボソボソとしゃべり出したのを見て「イーノック、やめて!気持ち悪いわ!」と怒ってしまった。
奇妙なこどもたちの芸が一通り終わり、マドレーヌとベスはこどもたちと遊び始めた。まずはオリーヴと手をつないで空中散歩を楽しんだ。オリーヴは「わーい!」と声を上げながら、みんなを空中に連れていってくれる。最初は怖かったが、何度も繰り返すうちにやみつきになった。次はフィオナが成長させた太い蔓に登って遊んだ。「ジャックと豆の木」ならぬ「フィオナとモモの木」だ。したこと全てが魅力的で、二人にとっては夢のような時間だった。ベスとマドレーヌは笑い、しゃべり、こどもたちと仲を深めた。ベスはフィオナと仲良くなり、内気でおとなしいフィオナは明るく優しいベスに心を開いたようで、二人で植物の冠を作ったり、動物たちとたわむれたりして楽しんでいた。エマは二人を見て微笑み、オリーヴに何かささやいた。オリーヴはうなずき、エマにロープを結んで繰り出してもらってから、近くにある木のそばに浮かんでいく。木の穴にはたくさんのリスや小鳥たちが住んでいたのだ。オリーヴは優しく手に乗せて降りてき、フィオナに引き渡した。
「ありがとう、オリーヴ!わたし、植物や動物がとても好き。落ち着くから」とフィオナ。エマとマドレーヌとオリーヴは顔を見合わせて笑い合った。
日が陰ってくると、二人はこどもたちと共に食堂に向かった。ミス・ペレグリンは編み物をしながらパイプをふかしていて、マドレーヌたちに気づくと「ミス・トッカ、ミス・ウェントワース。夕食をご一緒しましょう」と誘った。二人は大喜びで席につく。ローストビーフ、鮭のムニエル、七面鳥の丸焼き、熱々のステーキ、何種類ものサラダやスープなど、豪華な食事ばかりだ。目を奪われながらもたらふく食べ、満足するまでおしゃべりした。エマはひっきりなしに話しかけてきて、マドレーヌの祖母のミイナがどれほど素敵な人だったかを熱を込めてまくし立てた。それからエマは、クレアを見た。かわいい彼女はチキンをつかみ、恥じらっているようだ。
「ほら、食べろよ」
ヒューが口笛を吹く。
「もう、やめてあげてよ」
エマがヒューをたしなめた。クレアは顔を赤らめてチキンを後頭部に近づけ、体をのけぞらせた。マドレーヌは思わず叫んだ。はっきりと肉を噛む音が聞こえてきて気づいたのだが、金髪の巻き毛に覆われたクレアの後頭部には、鋭い歯の並ぶ口が隠れていたのだ!気味が悪いこと極まりない。
「クレアには後ろの口があるんだ」
ミラードが言い、デザートのプディングをクレアの目の前に置くと、彼女はその皿をイーノックに渡して目を閉じてしまった。クレアはずっと発言していない。金髪巻き毛の少女に申し訳なく思ったのか、こどもたちはまた、ガヤガヤとおしゃべりに戻る。
「また明日も来る?」
オリーヴが腰を浮かせて聞いてきた。
「うーん、まだ分からない」
マドレーヌがそう答えると、こどもたちが「えーっ!」と口々に言った。中にはため息をつく子までいる。
「今日起きたことも理解できていないから、明日どうなるかなんて考えられないよ!」とベス。すると、ミス・ペレグリンが厳格にうなずき、「来られる時はいつでもいらしてください。能力探しをしなくてはならないでしょう?」と言った。その途端、三十分間黙っていたクレアが顔を輝かせて、「ベスとマドレーヌもピキューリアなの?」と言った。
「そうに決まってるって、分かってたわ。ミイナが特別なピキューリアだったんですもの。ね、マドレーヌ」
エマが自分のことのように誇らしげに言う。
「うーん、そうなの?」
マドレーヌが曖昧な返事をすると、エマは「はあ!?そうもこうもないでしょ!」と怒り出した。ジェイコブがエマをなだめる。
「ごめん。彼女、こういう人なんだ。怒りっぽくて…」とジェイコブは呆れている。
「大丈夫、分かってるから!」
ベスがおどけると、エマは「なによ!」とむきになった。奇妙なこどもたちとミス・ペレグリン、マドレーヌとベスは笑い転げる。
「私の祖母は、どんな能力を持っていたの?」
マドレーヌが聞くと、こどもたちがシーンと黙ってしまった。エマはうつむき、オリーヴとクレアは泣き出す。
「聞いちゃだめだった?ごめんね」
マドレーヌは慌てて謝った。
ミス・ペレグリンが慎重に「ミス・ウェントワースはいずれ知らなければなりません。誰か彼女に教えてくれる人?」とみんなを見回した。ミス・ペレグリンは定まったと言わんばかりに両手を広げ、「ミス・ブルーム!」と指名した。エマはミス・ペレグリンを不服そうに見たが、ミス・ペレグリンは意にも介さずにうなずいた。そのため、エマはしぶしぶうなずき、こう言った。
「好きなところに姿を消し、また現れるという能力」
マドレーヌとベスは目を見交わした。ベスは尊敬の意を示す明るい笑顔を見せる。
「えーっ!マドレーヌのおばあさま、すごーい!」
ベスが言ったが、オリーヴが泣きわめく声でかき消されてしまった。クレアは上品にタオルを目に当てているが、すすり泣く声がはっきりと聞こえる。二人が泣いたことでみんな集中できなくなり、エマまで泣き出した。エマは立ち上がり、オリーヴとクレアと共に部屋を出ていってしまった。
マドレーヌの隣の空いた席にブロンウィンが座り、怒ったようにフンと鼻を鳴らした。
「あの、なにかあったの?祖母の…能力のせいで?」
「ミイナの持つ能力はとても役立った。ミイナは悪者との戦いの時も、わたしたちを連れて姿をくらましてくれた。そのおかげで、わたしたちの大半は生き延びて、ここにいる」
ブロンウィンが言った。
「ある時ミイナは、人間界に戻りたいと言い出した。ホロウガストは滅び、もう安全だと言った。みんなはミイナに、ここにいるようさとした。でも、ミイナは…」
ブロンウィンは辛そうに下を向いた。
「…ミイナは特殊能力を利用して、勝手に出ていってしまった。
最初は良かったんだと思う。自分の家にたどり着き、全てを知っている両親に冒険からの帰りを告げ、人間界で普通の男性と知り合って愛し合い、結婚した。ミイナは結婚相手をループの近くまで連れてきて、私たちに会わせてくれた。私たちは長時間外の世界にいることはできないから、わざわざすぐ近くまで訪ねてきてくれた。ミイナの夫となった男、リチャードは思いやりがあって仕事熱心だから、わたしたちもリチャードを受け入れた。すべては順調のようだった。マドレーヌのお母さんが産まれ、その後すぐにアンナさんが産まれた。ミイナは幸せの絶頂だった。アンナさんもマドレーヌのお母さんも結婚し、子供を産んだ。アンナさんは子供が産まれてすぐに引っ越した。ミイナは孫のマドレーヌをかわいがった。よく家にも遊びに行った」
ブロンウィンは少しずつ核心に迫る。ちなみに、リチャードというのはマドレーヌの祖父であり、マドレーヌの亡き祖母ミイナの夫だ。
「あくる日、ホロウガストがミイナを襲いにきた。ミイナをうらんでいたワイトの命令だった」
「ホロウガストとワイトって?」
その質問をブロンウィンは無視した。
「ホロウガストは家の中まで入ってきた。ミイナはパニックに陥って、夫を連れて姿をくらまし、安全ないとこの家に夫を預けた。そして自分は、家に戻り、ホロウガストと戦う覚悟だった。愛する家族と過ごした家を、怪物にぶち壊されるのを防ぐつもりだった。年老いていたミイナは、勇敢さを失ってはいなかったんだ」
ブロンウィンの顔が暗くなる。マドレーヌは、彼女が悲しい結末を言おうとしているのだと悟った。
「家では、ホロウガストが血眼でミイナを探していた。ミイナに気づいたホロウガストは、舌を彼女の腰に巻き付けた。ミイナは姿をくらました。でも…」
ブロンウィンの目には涙が光っている。
「怪物の舌がミイナの腰に巻きついていたんだ。だから、怪物はミイナが現れた広い平野までついてきてしまい、ミイナは死んでしまった」
ブロンウィンは話を終え、我慢できずに泣いた。マドレーヌも泣いた。祖母の勇猛果敢な最期に心を打たれ、何も言えなかった。
エマが赤い顔で戻ってきて、ブロンウィンとマドレーヌの手を取り、「来て」と部屋から連れ出した。マドレーヌは瞬きして涙を堪えたが、ブロンウィンは悲しみに打ちのめされている。マドレーヌは、祖母の話は『禁句』であったのだと思った。
「マドレーヌ」
エマが言った。
「私はミイナを誇りに思うわ」
そう言ったエマの顔は晴れ晴れとしていた。
「勇敢に怪物に立ち向かったミイナは、とても格好よくて素敵よ。あなたは彼女の血を継ぐピキューリア。あなたも勇敢に違いないわ」
エマはマドレーヌの背中を優しくたたく。
「私…そんな、おばあさんのように勇気のある人じゃない。むしろベスのほうが勇敢で優しい」
マドレーヌはそう言った。自分は勇敢さのかけらもなく、臆病で、頼りにならないと思った。反対に、ベスは行動的で優しく勇敢だ。
「そんなことないわ。さあ、みんなのところに戻りましょう。ブロンウィン?」
エマがブロンウィンを呼ぶ。彼女は部屋の隅に隠れるようにしてしゃがみこみ、涙を流している。
「ブロンウィン?行きましょう」とエマ。
「先に行ってて」
ブロンウィンがきっぱりと言った。
エマはオリーヴとクレアを連れてきた。四人はブロンウィンを残して空き部屋から出て、食堂に戻った。食堂ではベスが心配そうにこちらを見ていて、マドレーヌが戻ると駆け寄ってきた。
「そろそろ帰る?」
ベスが名残惜しそうに言った。優しいベスは、きっとマドレーヌが悲しみに打ちのめされていると分かっているのだろう。
「また来ます」
マドレーヌは聞き耳を立てているミス・ペレグリンに約束した。ベスも「もちろん、また来ます」と言ったので、ミス・ペレグリンは「そうね。あなたがたのお母さまに、二人の口から事情を説明したらいいわ。そうすれば、きっと許してくださるでしょうから。あなたがた二人の部屋を作っておきましょう」
ミス・ペレグリンがそう言ったので、二人は「やった!」と大喜びした。そして二人は、奇妙なこどもたちとミス・ペレグリンに一時的な別れを告げた。フィオナは花の冠を頭に乗せてくれ、オリーヴはかわいいリスを一匹ずつ渡してくれた。エマは「必ず戻ってきてね」と約束させ、ジェイコブは握手して「また会おう」と挨拶してくれた。ブロンウィンはというと、二人が空き部屋の外の廊下を歩いていくと、後ろから駆けてきて、力強い腕で抱きしめた。
「また来てね!!」
みんなに見送られ、二人は屋敷から出たのだった。
第5話、いかがでしたか?
進行スピードは遅めですが、楽しんでいただければ何よりです。
搭載開始したのは一昨日の夜なのですが、どんどん増えていくUAを見て信じられない気持ちです。ありがとうございます!
今の段階では夢のまた夢ですが、もしUAが1000を超える事があれば、その記念として新しいSSの投稿を開始しようかと考えております。実の所、少し前から新しいSSの事を妄想していたので、もう大まかなあらすじは決まっています。私はあらすじを考えず思いつくままに書き連ねるタイプなので、今まできちんとあらすじを決めてから本編を書いた事がほとんどありません。ですが、投稿する場合は何としてでも完結まで導きたいので、安全第一!で詳細設定をすることに決めました。これからはこのSSだけでなく、新SSの投稿にも力を入れていきたいです。
それでは第6話でお会いしましょう!