やはり俺の現実逃避はまちがっている。   作:ソロ

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最終回っぽいけど、まだまだ続きます。
俺たちのぼうけ(ry


第19話 やはり俺の現実逃避はまちがっている。

 

 

事件から早くも2日が経つ。

 

事情聴取で1日休んだ後、登校した。

私にとっては激動の日々だったとはいえ、いつも通り、変わらない日常が続いていた。

 

でも、ちょっとだけ変わったみたい。

 

放課後、校門までの道のりで久しぶりに遠藤たちが話しかけてくる。

染めていた髪も黒く、雰囲気も落ち着いていて、警戒する気が起きなかった。

 

「あ、えっと、その、今までごめんなさい。」

 

無愛想に謝罪を述べて、封筒に包まれたお金を渡すだけで、去っていった。

私は何も言えず、立ち尽くしていただけだった。

 

「あの人たち、学校休んでバイトしてたみたいだねー。」

小町さんがどこか満足そうな顔をして頷いている。

 

「えっと、どういうこと?」

 

「お兄ちゃんが依頼してきたの、詩乃ちゃんを救ってほしいって。……でもって、これからはわたしにも悩み事はちゃんと話してよね。あ、今の小町的にポイント高い!」

 

おそらく現実で助けてくれた時から……

いや、シノンが生まれたときから、ずっと側で……

 

「私、助けてもらってばかりだわ。」

 

「気にしなくていいと思うよ。お兄ちゃん、詩乃ちゃんのおかげで元気になったみたいだし。なんだか思い詰めてたの。それにようやく私と伊月さんのことも認めてくれたし!」

 

「そうなのね。私のおかげだと良いな。」

 

 

すると、

校門に女子が集まっていて賑やかなことに気づく。

ハヤハチ キター! って叫んでいる、眼鏡をかけている女子が特に目立っている。

 

 

「なんで校門の前までバイクで来てるのよ!」

校門前に挙動不審にキョロキョロする人物を見て、大きな声を発してしまう。

 

私に注目が集まる。

 

「まさか、朝田さんあの2人と知り合い?」

「ねぇねぇ、もしかして彼氏?」

「葉山先輩と彼って、どういう関係なんですかー!?」

同じクラスの比較的仲の良い女子が近づいてきた。

 

 

「え、えっと、また今度!」

彼氏さん!と今にも答えそうな小町さんの手を引き、彼の元へ急いで向かう。

 

明日説明しなさいよー!という声を聞いて、今から憂鬱になる。やはり女子たちは恋バナが好きなんだわ。

でも、心の準備はできてないし、まだ告白してくれないし。

 

 

入れ違うように校内へ戻っていく葉山先輩が、フッと笑みをこぼした気がした。

 

「なんで校門の前に停めてるのよ!」

シノンの声で、彼に問いただす。

小町さんは手慣れたように伊月さんのバイクにすでに乗り込んでいた。

 

 

「いや、俺だって恥ずかしいぞ。伊月が先に停めて、それで葉山が来て、騒ぎに……」

 

あれこれ言いながら手渡してくれたヘルメットを被り、彼の後ろへ素早く乗る。

祖父のバイクに乗ったこともあるため、私も要領は身についている。

 

彼の背中はとても大きくて、温もりを感じた。

顔の熱を隠すように、腰に手を回して彼にしがみつく。

エンジンバイクを発進させると、大きな音がなってくれる。

それでも、彼の心臓の鼓動は聞こえた。

 

 

 

 

心地よい風と、彼の心地よさを味わっていると、あっという間に到着してしまったようだ。

高級そうで、シックな雰囲気のある喫茶店であり、少し萎縮してしまう。

 

すでに小町さんと伊月さんはバイクから降りていて、どこかニヤニヤしている。

 

顔を合わせられないまま店内に入ろうとするが、同じく足早だった八幡と歩調が合ってしまう。

 

「お二人様ですか?」

 

「い、いえ、後ろの2人もです!」

ウェイターさんに尋ねられたことで、意識してしまう。

 

関心したような顔をされて、席に案内される。

店内も、高校生が訪れるには場違いのような空間で、熱が冷めないまま顔と心が固くなる。

 

「…何頼む?」

 

「ま、マッ缶で!」

急に聞こえた八幡の声に、飛び上がるような声が出てしまう。

 

「お、お、おちつけ。」

 

「今日はブラックコーヒーでいいや。」

「詩乃ちゃんかわいいなーもう。写真撮っておこ。」

2人の声もしたけれど、カシャって音がしたけれど、気にとめる余裕はない。

 

 

店内に響く男性の声がして、こちらに向かってくる人たちが目に入る。

「いやー、遅くなったよ。ごめんごめん。」

 

「おい、声のボリューム下げろ。」

 

「アハハ…」

 

待ち合わせていた3人が到着したことで、熱が引いてくれる。

同時に、さっきまでとは違う緊張感が湧いてくる。

 

「はじめましての人もいるかな。僕は総務省総合通信基盤局の菊岡と言います。」

名刺を受け取る頃には、完全に気が引き締まってくれた。

 

真実を知ることがどこか怖かった。

 

 

 

***

今日はデスガン事件に関しての話し合いである。

依頼した菊岡と依頼された俺と伊月と和人、そこに詩乃と小町と明日奈が加えられた7人である。いや、ユイちゃんを入れて8人だろうか。

 

 

喫茶店でするような話ではないため、周囲に気を遣って話す必要がある。

やはり場所がまちがっている。

ちなみに断じて、ダブルデートではないトリプルデートでもない。

 

 

「それで?何人だった?」

 

犠牲者及び犯人の人数を尋ねていることは簡単に理解できるだろう。

数千円もする、ほろ苦いケーキを食べながら聞く。

 

「まずは本戦前に2人、……そして本戦で1人だ。」

 

「……そうか。」

 

たった1人で食い止められたと言うべきなのか、1人が犠牲となってしまったと言うべきなのか。

SAO事件の犠牲者の数と比べれば決して多くはない。それでも俺が直接手にかけた数と同じなのだ。間接的に手をかけた数を数えたことはない。

 

事実に対して出た言葉は、とても短いものだった。

 

「…続けるよ。首謀者は新川晶一。新川恭二の兄であり、《SAO生還者》でもある。加えて、共犯者5名のうち4名も《SAO生還者》だった。」

 

現実での実行犯は2人だったんだな。そして合計5人、予想以上にラフコフの残党がいる。確かにやつらは牢獄エリアに送られたので死んだわけではない。もしあのとき全員を殺していれば、この事件は起こらなかったのだろうか。そして詩乃が危険に晒されることはなかったのだろうか。

 

 

「クラディール……」

明日奈はどこか顔が暗い。血盟騎士団の副団長として、メンバー1人が誤った道を進んだことを悔やんでいるのだろうか。

和人は彼女の手を優しく包みこむ。

 

 

詩乃がおそるおそる質問をする。

「新川君、……恭二君はどんな様子ですか?」

 

「現状としては、完全な黙秘をしている。」

 

「そうですか…。」

 

一昨日の彼の、感情の激しい起伏。

現実への拒絶、いや現実逃避の姿を思い出してしまう。

おそらく今も変わらないままなのだろう。

 

 

菊岡はタブレット端末を操作して、話を戻す。

「手口としては、メタマテリアル光歪曲迷彩のマントを用いて、BoB参加登録においての、計16名の本名や住所を手に入れたということだ。……その中には、朝田詩乃さんと、比企谷八幡君のものが。」

 

おそらく、新川恭二は《シノン》の家にも行ったのだろう。

しかしいなかったため、焦った彼は、《エイト》の元へ、、

 

「肝心の他殺については、新川兄弟の父親が医師であることが関係してくる。電子ロックのマスターコード、高圧注射器、そして劇薬のサクシニルコリンを父親の病院から盗み出した。」

 

「……筋弛緩剤。それが心不全を起こしたんだな。本戦前の2人は発見されるまで時間がかかったから、ほぼ分解されてしまったか。」

 

サクなんとかに一早く反応した伊月に菊岡は頷いて、話をまとめる。

「そうだね。まさかセキュリティの高い病院から盗み出された凶器だとは、警察も予想できなかったのだろう。ともかく、そうやって計画は進められた。その過程すら《ゲーム》のつもりだったと新川晶一は述べたらしい。」

 

「額面通りに受け取らないほうがいいぜ。《ザザ》はSAOを現実だと認識していたと思うぞ。仮想世界でも現実世界でも、自分にとって都合の悪い部分だけは、リアルじゃないと考える。―――現実が薄くなっていく。」

キリトはいつもの皮肉そうな笑みを浮かべたが、少しずつ真剣な顔となっていった。

 

 

たしかに、《ザザ》は現実逃避してSAOにログインしたのだろう。

結局、現実逃避っていうのは、求めてきたモノを探して、悩みあがいていただけなのではないだろうか。ザザの場合、心の底から熱くなれるモノをずっと求めてきた。SAOでの《殺人》であり、この事件の《殺人》だったのだろう。あいつにとって、《殺人》は《ゲーム》で快楽をくれるモノだったのだ。

 

しかし、『別のモノ』が見つかったわけで、次に再会する頃にはつよくなって、来る。

認めたくないのだが、嫌いなだけに、分かってしまう。

 

 

「戻りたい、と思うかね?」

菊岡の質問は、SAOへの未練があるかどうかということだろう。

 

不安になっている小町に伊月は声をかけているが、相棒もそういう悩みを持っていたわけで。

 

明日奈も、そして俺も、答えることを躊躇していた。

もっと、《世界》を変えられたのではないか。

 

「聞くなよ、悪趣味だぜ。そうだな。……シノンは、詩乃はどう思う?」

和人が答える。固い表情を崩して苦笑いしたのち、詩乃に視線を向ける。

 

 

「そうね。私がいる場所が『本物』だと思うわよ。それがどこの《世界》であっても、『大切なモノ』があるのなら。」

そう言って彼女(詩乃とシノン)は俺を見つめて、微笑む。

 

 

―――過去を乗り越え、彼女が見つけ出した答えは『心』に響く。

 

 

俺たちはそれぞれ手を繋ぐ。ユイちゃんが伸ばした両手もちゃんと届いていた。

痛くないようにそうっと。だけど離すまいと離したくないと、今の気持ちを籠めるように握った。

 

『大切なモノ』を俺たちは見つけることができたんだろうな。

その繋がりが、ここにいることを実感させてくれる。

 

 

 

次に会うときは、あいつに教えてやろう。

 

俺がずっと空欄にしてきた答えを。

 

やはり俺の現実逃避はまちがっていた。

―――それでも、無駄じゃなかった。

 

かけがえのない今を、『生きる』。

 

 

 

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