やはり俺の現実逃避はまちがっている。 作:ソロ
3月末。
新しいお友達ができた次の日。
装備を直すために、わたしたちはアシュレイさんの元へ向かっています。アスナさんのSAO時代からの知り合いの人で、《裁縫》スキル完全取得だとか。ちなみにPvP推奨のこの《世界》で生産系スキルを上げるのは難しい。
アスナさんは私服をよく作ってもらっていたみたい。オーダーメイドなんて憧れるよね。
前回と同じメンバーで、シリカちゃん、リーファちゃん、リズさん、そしてルクスさん。
ひよりさんは新アバターを作成しました。SAOのデータを引き継いで彼女は生まれ変わったって言えばいいかな。キリトさん似だったクロさんと違って、フワッとした美人なルクスさんです。
着いたのは洋風な一軒家。
背が高くてスタイルがよくて、女の人っぽいけど男の人かも、という個性的なアシュレイさんです。
今はシリカちゃんが愛でられております。頬っぺたと耳をプニプニと。
「それでですね、私たちの服の修繕の件はあぁあぁ」
「あぁ、そのこと。悪いけど、しばらくはムリよ。今は予約で手いっぱいだし、明後日から素材探しに出ちゃうのよねぇ。そうね、それでもしてほしいのなら、100万ユルド。」
「「「たかっ!」」」
今のわたし達の服には防御力や魔法抵抗にマイナス補正がかかっていて、魔力解除効果を持った特殊な針と糸が必要、らしい。そうして高価な素材と手間賃を考慮した額。
伊月さんならなんとかなりそうな額だけど、ALO再開してからまだ日も経ってないからねぇ。SAOからのお金の引継ぎはなくなったみたいだし。
「そうね。これに出るってのはどう? 大会開始は1時間後。優勝賞金は100万ユルド。」
机の引き出しから出したチラシは、水着コンテストのもの。
賞金は100万ユルドぴったりだけど、その舞台で服を手がけたいと思えるほどの女の価値を見せてほしいらしい。
いくら現実が春でも、ALOではずっと夏の海岸があるんだよね。
それにしたって、やはり男というものは欲深いものですなー
***
会場のビーチに美女と美男子が集まった。
わたしは黄色のビキニに挑戦してみました。
とある部分をちらりと見る。
リズさんも十分大きいんだけど、リーファちゃんは巨大である。ルクスさんもパレオで隠しきれないものをお持ちで。シリカちゃんは雪ノ下さんみたいに励ましてあげたい。
でも女の子の価値はそこだけで決まらないんだからね!
気を取り直して、ルールを頭の中でもう一度確認する。
{みんなの視線を独り占め!ビーチの『英雄』は君だ!}
制限時間内にこのビーチにいる人たちから注目ポイントを集める。フォーカスの合った回数や視線の集中度に応じて勝手に集計される。
つまり目立てばいいってことだね!
お兄ちゃんを動揺させることのできるセクシーポーズを披露すると男たちの歓声があがる。
ちなみに必要以上の凝視や、同意を得ない日常生活レベル以上の接触はGM通報されるのです。何人かビーチから強制的に去っていったよ!
「みなさーん!リズベット武具店 特製焼きそばいかがですかー。」
これがわたしたちの作戦っ。海の家の売り子をして視線を集めてついでにお金を稼ぐ。さらにさらにリズさんの店の紹介もする。
NPCの子どもたちにも声をかけていると、すぐに完売してしまった。
屋台に戻っていく途中で、リズさんたちと合流する。
リーファちゃんのハミデルモノを使って客引きしてた。結果的にたくさんの男の人が強制的にいなくなった。
「ところで、あんた彼氏いたのね。」
「そですよー。」
焼きそば作りの手伝いにあたって呼んだのはミカヅキさん。わたしのレベリングによく付き合ってくれるんだけど、SAO引継ぎをした彼は《調理》スキルを上げ始めた。
完全取得な明日奈さんはまだリハビリで忙しいみたい。その夫が想い人であるリズさんやリーファちゃん、シリカちゃんは厳しい戦いになりそうだ。すでに愛娘もいるからねぇ。
「そういえばミカヅキさんはSAO生還者なんだよね?」
「え、まじ?」
リーファちゃんも世界樹攻略で先陣を切ったミカヅキさんを見たんだったね。わたしの合格発表日と重なったSAO生還者のパーティーには出なかったんだけどね。
「オーガスっていう名前だったらしいですよー。二つ名は《狂戦士》とかなんとか。」
「え、……マジ?」
昨日助けてくれた人だとは思わなかったみたいで、2人とも口を開いたまま。
その名はSAOの英雄の1人《狂戦士》。中層の職人プレイヤーだったリズさんは会ったことはないけど知っているんだろうね。
そういえば、なんで名前を変えたんだろう……
ふと思い立って、フレンドリストを開く。
お兄ちゃんは、……またGGOのほうかな?
最近なんだか生き生きしてるんだよね。
***
結果。
わたしは33位で、60位以内にみんな入って予選通過。
やっぱり、女の子の価値はある部分の大きさだけで決まらないってことだね!
「あ、あ、あれだけ見られて、こんな……?」
大胆な水着を着て、大胆な行動をさせられていたリーファちゃんは赤い顔を隠す。
「つまりもっと見られるためのアピールが必要か。」
「そうですね!」
「「えぇ…」」
シリカちゃんやルクスちゃんが気の進まないまま、リズさん主導の下、ラストスパートをかける。
ビーチバレーはリーファちゃんとリズさんの激しい戦いでした。
シリカちゃんのバニー姿と、ルクスさんの執事姿、わたしのウェイティングドレス姿で注目を集めた。そんな装備よく持っていましたね。
「マズい、マズいわ。全然順位が上がっていかない。」
「やっぱりお色気作戦に無理があったんじゃ…」
ポイントは少しずつ上がっているとはいえ、他の参加者の人のポイントの上昇に敵わない。特に上位陣が凄まじい勢いだ。リーファちゃんが考えこんでいる姿を見て、ルクスさんが声をかける。
「どうしたんだい、リーファ?」
「あれだけ注目を集めたのに、順位が上がらないのは変じゃない?そもそもコンテストなら普通に審査をすればいいだけ。なのに、わざわざハラスメントコードに抵触しそうな視線ポイント制のルール。」
「たしかに…」
「順位の推移にはパフォーマンス以外の条件がある?なにか裏の条件とか。」
ルールを見て、考え直そう。
{みんなの視線を独り占め!ビーチの『英雄』は君だ!}
制限時間内にこのビーチにいる人たちから注目ポイントを集める。フォーカスの合った回数や視線の集中度に応じて勝手に集計される。
「どうして『英雄』なんだろう?」
「ヒロインとかもっとそれっぽいのがありますよね。」
「キリト様も、ミカヅキさんも『英雄』、なんですよね。」
あのとき、世界樹の前で剣を掲げた3人もSAOでは『英雄』で、なんだか遠くにいってしまったようで……
近づいてきた彼がわたしの頭を撫でてくれると、そんな不安はたちまち消えていく。
「俺たちは『英雄』ってガラじゃないんだけどな。例えば、攻略組の中でもステータスが高かった、歴戦の戦士の中でよく活躍した。そうしていつのまにか『英雄』って呼ばれるようになった。俺からすれば、情報屋や職人クラスの人達に何人も英雄がいたぞ。」
わたしたちは聞き入っていた。
コンテストの優勝のためとはいえ『英雄』に無理になろうとした。きっと英雄には自然になるものなんだろう。
「ヒントを出すなら、いつも通りALOを楽しめってところかな。俺は'用事'の途中だから、また後でな。」
そう言い残して、砂の城を作る子どもたちのところへ向かっていった。