やはり俺の現実逃避はまちがっている。 作:ソロ
あえてケロロと同時投稿してみた
新年を迎えたとしても、一般家庭の息子の俺の日常は特に変わることはない。お雑煮とおせち料理を食べて、初詣と墓参りに行ったくらいである。
……詩乃の実家へ行ったことについては『通常検索でヒットするこの作品では』語らないでおこう。詩乃がお義母様に自信をつけられたとだけ言っておく。
お嬢様な明日奈や雪ノ下は挨拶回りや集会で忙しかったようだ。奉仕部部員一同の、雪ノ下への誕生日プレゼントは郵送しておいた。明日奈は京都に年末から滞在していたらしいが、いろいろあったみたいで顔は暗い。
すでに1月6日。
3日という残された貴重な冬休みをどう過ごそうかと考えている。年末も同じようなことをしていた気がする。しかし今はALOのキリト宅にいて、勉強会……宿題会を横目で見るだけである。
家庭的な用事があったことから、アスナもまだ残っているようだが悠々と取り組んでいるご様子。マチやシノンはミカヅキによって、もはや3学期の予習会を行っている。宿題を終わらせたばかりの俺は、今日のところは乗り気ではない。
シリカ、リーファはそれぞれ唸りながらも、苦手科目に立ち向かっている。グウェンはルクスに、ユイユイはユキノンに発破をかけられて涙目で、勉強そのものに立ち向かっている。よく総武高校受かったよな、ほんと。
だがキリトとリズベット、てめーらはダメだ。
キリトは暖炉の前でユイちゃんやピナとスヤスヤ、リズベットは読書タイムである。宿題という現実から逃避したのである。
戦犯キリトによって、睡眠欲が湧きだしてきているメンバーもいる。眠気覚ましにお茶を飲みながら、雑談をし始める俺たち。
「そういえば、さ。あんたらは聞いた?《絶剣》の話。」
東北へ行っていたり、親父やお袋も珍しく家にいたりして、年始年末はログインしていない。そしてアスナも含まれるだろう。
第24層主街区付近に現れるプレイヤーが、自身の持つ《オリジナル・ソードスキル》を賭けて、1vs1の決闘を申し込んでいるらしい。挑戦したリズベットやリーファは完敗したとのこと。リズベットはともかく、攻略組レベルはあるだろうキリト妹が手も足も出ないとは。
ちなみに、《オリジナル・ソードスキル》――OSSは、SAO時代からある《ソードスキル》の実装と同時に導入された。簡単に言うなれば、『ぼくのかんがえたさいきょうのひっさつわざ』である。名前の通り《ソードスキル》の開発であり、継承すらできる。しかし、連撃技として登録することは難易度が高い。
古傷に刻まれた中二心をくすぶり、俺もいくつか作ってみたとはいえ、なんというか《手札》が増えただけである。キリトはSAO時代のソードスキルを用いた《剣技連携》のほうを好んでいるし、ミカヅキも相変わらず《単発技》で隙をついていく戦闘法を好んでいる。
「ところで、そこで寝ているブラッキーこと戦闘狂は戦ったのか?」
「そうね。キリト君はどうだったの?」
「ふふふ。お兄ちゃん、そりゃもう、かっこよく負けました。」
「俺も実家に帰ってるときに戦ったけど、負けたな。」
「ほんとですか⁉」
リーファが答えたあと、ミカヅキの自白、そしてルクスは声を上げる。初耳なメンバーは呆然としているし、もちろん俺も例外ではない。
1vs1の決闘ならば、キリトやミカヅキは最強クラスである。そして、俺やアスナにも注目が集まるわけで、
「俺はしないぞ?ギャラリー多そうだし。」
「ヒッキー…」
「はー、これだからお兄ちゃんは……」
「対人戦闘ならトップクラスでしょうに。」
「あなたは相変わらずね。」
シノン以外の女性陣全員に呆れられた。
フィールドが平地だろうし、搦め手使いづらし。
そもそもシノンに強要されないのなら大会とか出ないし。独占欲たっぷりな彼女はファンができると嫌みたいだし。
ほら、良い笑顔である。
「アスナは?」
「え、えっと、キリト君は本気だったの?」
自分が決闘に参加するかどうかより、愛するキリトが負けたことが気になるようである。
ちゃんとアスナも戦闘狂たちの一員だからな?
実際に決闘を見たリズベットやリーファ、シリカは腕を組み、考え込む。
「あの次元の戦闘となると、私では本気なのかどうか。二刀流や《聖剣》は使っていなかったけれども。」
「俺らの『本気』は、あまり使いたくないな。……それでもキリトは『真剣』だったぞ?」
ミカヅキが渋々答える。
俺は意味を理解しているが、首を傾げるメンバーが多い。アスナは薄っすらと分かってきたみたいだ。
「俺らの『本気』っていうのは、命をかけることだからな。『死闘』はやりたくねぇんだよ。……その、お前らを心配させたくないしな。あ、ちがう、シノンと妹のためだけだ。」
―――最悪の場合、『殺し』になり得る
それでも、必要な時には使うだろう。
俺に支えてくれる女性がいるから、もう道を踏み外さないと断言できる。
「お、いつもの捻デレだ!」
ユイユイの空気読めない発言のおかげで、空気は重くならなかったようだ。
「あ、確信はないんですが、勝負がちょっと決まる前、お兄ちゃん、絶剣さんと何か喋ってたような気がするんですよね。聞いてみても教えてくれないんですけど。」
「ふうん。」
「それで?アスナさんはどうするんですか?」
「うーん、キリト君のリベンジってことでやってみようかな。」
「あ、もうこんな時間なんですね。」
「そうね。予定空いていたら見に行ってやるわよ。」
ログアウトのため、各自が席を立つ中、アスナはリズベットに話しかけていた。
ミカヅキを外に連れ出した俺も
詳細をこっそりと尋ねる。
「それで、どうだったんだ?」
「’彼女’のことか。SAO生還者ではないな、《剣技》の癖がまったくない。それに、決闘を純粋に楽しんでいた。でも、攻略組トップクラスの実力は確かだ。」
「で、お前ともあろうものが、なんで負けたんだ?」
―――抜刀術を出していれば負けないはずだ。
「笑顔の裏に『焦り』があった。向こうから『死闘』をしかけてきたけど、わざとじゃないんだろうな。それでも、どこか命をかけるような『本気』の剣技だった。」
もし、《本気》を求めてくるそいつの『死闘』に応じるならば、あの世界で命をかけてきた俺たちならば、殺し合い一歩手前になるだろう。保険をかけておくに越したことはないから、2人とも『真剣』にやって敗けたのだろう。そのとき、マチやアスナもその場にいなかったみたいだし。
そして、今のアスナの精神状態を考えるのなら、
「危ないな。」
早急に何か手を打つ必要がある。
そして和人にもそろそろ発破をかけておかないとな。
未来への不安によって、明日奈の現状から目を背けてしまっている。