やはり俺の現実逃避はまちがっている。 作:ソロ
過去は、今に繋がっている。
―――SAO
ここは第22層の森。
キリトとアスナが《夜空》を見上げる。
「アインクラッドは星が見えなくて残念だね。」
「この景色も悪くないけどな。」
「わたし、流星群ってみたことないの。現実世界で住んでるところは夜空が明るくて。」
「へぇ、アスナは都会っ子なんだな。」
「もうちゃかさないでよ。」
「俺の地元にそこそこ有名な観測スポットがあるんだ。いつか行くか?」
「うん。そのためにも必ず生きてこのゲームをクリアしないとね。」
「ああ、そしたら向こうでも指輪をプレゼントするよ。」
―――ALO
ここはウンディーネ領首都。
ミカヅキとマチは夜の街を歩く。
「何度も思うんだけど、ここってディスティニーシーみたいですよねー。」
「たしかに。ミッキーとかいそうだよな。」
「えっと…」
「あー、ミスった。なんでそこは『前世』と違うんだろうな…」
「ミカヅキさんって、その、故郷には…」
「行ったことはないな。遠いし。」
「じゃあ、いつか案内してくださいよ!」
「……ああ、いっぱい紹介したい場所がある。」
―――GGO
ここは機械的な首都。
シノンはエイトのマフラーを掴んで引きずる。
「そういえば、エイトも高校生よね?」
「ああ、そうだな。」
「へー。エイトがいれば学校も楽しいのに。」
「リアルで会ってみるか?あー、あれだ、オフ会ってやつだ。」
「いいわね。でも、具体的には何をするのかしら?」
「ふつうに晩飯食って、朝までカラオケでもするんじゃね、俺は知らんけど。それに、やるともいってな……ピギュッ」
『2022年11月30日。フルダイブ型仮想現実ゲーム機《ナーヴギア》専用ソフト《ソードアート・オンライン》のユーザー1万人は茅場晶彦の手によって、ログアウト不能及び『ゲームオーバー=現実の死』という過酷なデスゲームに追いやられた。圧倒的絶望のなか、ゲームクリアを目指し剣を取る者、恐怖に負け他者との接触を断つ者、さらにはプレイヤー同士で命を奪い合う者さえもいた……。そして、永遠とも思われる時間が過ぎ、約2年後の2024年8月31日、1人の英雄的行動により、ゲームはクリアされ、人々は解放された。最終的に4000人もの人々が犠牲となり、首謀者たる茅場晶彦の死によって事件は幕を閉じた。生き残ったプレイヤーたちは『SAO生還者』と呼ばれ、今は現実世界で普通の生活を取り戻している。そしてそれは、《英雄》たちも例外ではない。』
《SAO記録全集》~やはり俺たちの現実逃避はまちがっている。~
***
次世代型ウェアラブル・マルテデバイス《オーグマー》。
フルダイブ機能はなく、高度なAR機能を持つ。小型化され、耳にかけることができるほどだ。覚醒状態の人間に視覚、聴覚といった感覚情報を送ることが可能で、現実世界にいながら仮想現実のような体験ができる。
―――現実を拡張する
どこでもマップを見れるし、いつでも誰かと連絡が取れる。電子マネーをチャージできるし、健康管理のアシストもやってくれて、翻訳しながらの英会話だってお手の物。それには『便利』という言葉がもっとも当てはまるだろう。
常に情報に囲まれた、『超情報社会』とでも言うべきだろうか。
「「だから’会いたい’なんてナンセンス♪」」
2人の美声が《世界》に広がる。もしかしたら、声優の道を歩んでいたかもしれないな。そしてCDを出せるレベルの歌唱力である。
自宅のリビングに広がる《カラオケセット》。家でカラオケをする時代が来ようとは。《マイク》を通した音さえも、このデバイスを通して与えられる情報であるから、近所迷惑にはならない。ガラスの防音性能も発展していて、せいぜい大きな声で歌っている程度だろうか。照明などエフェクトもつけている。
歌っている曲は、世界初のARアイドル《ユナ》の曲。彼女の曲の中でも、人気のある明るめの曲だ。バーチャルYouTuberたちと違っていて、彼女はAIであることが特徴的だ。彼女の《美声》はボーカロイドの進化の先で、《歌姫》と呼ばれている。
そういえば帰還者学校の行事で彼女のファーストライブに行くこととなっていたな。
「あっ、もう18時だ!」
「そろそろ出なきゃいけないわね。」
クラインこと壺井さんから俺たちに、あるゲームの呼び出しがあった。
《オーグマー》専用のARMMORPG《オーディナル・スケール》。
‘現実世界をフィールド’として、各所に出現するアイテム、モンスター討伐などで《ランク》を上げていく。ポケモンG〇みたいなものだ。全プレイヤーたちの間で競い合う《ランキング》によってステータスが決定される。つまり、上位にランクインすればするほど高ステータスが付与されることとなる。
……すでに廃プレイヤーも続出していて、深夜でも徘徊する人が多くなった。交通規制をかけてイベントをすることはまだ多くはなく、交通事故も増えているらしい。
俺たちの上にも《吹き出し》があって、順位が書かれている。小町が3810、詩乃が50808、俺が2018。この《ランキング》は戦いの実力も関わってくるので、長時間遊んだプレイヤーが一概に強いとは言えない。逆もしかりで、八幡に至っては123456。
俺や小町は、よく明日奈たちとプレイしているため、準高ランクプレイヤーである。
「八幡はどうする?」
「あー、今日はいい。」
「今日もでしょ?お兄ちゃん。まっ、いいや、わたしたち行ってくるよー。」
「君たちもほんと気をつけなさいよ、車とか。」
「気をつけてね。」
「2人も、根を詰めすぎないようにな。」
そうして、部屋まで戻って行く八幡のもとへ詩乃はついていった。