やはり俺の現実逃避はまちがっている。   作:ソロ

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第4話 夜明け

真っ暗で最低な場所で仮眠をしていた俺は目を覚ます。

 

犯罪者プレイヤーにとって世間の風は冷たい。

そして、フィールドでもモンスターに襲われる。

 

自然とため息が出た。

あくびではないことに、虚無感を覚えた。

 

俺は今日も’仮面’を被る。

 

 

 

***

ボッチであるはずの俺がある集団に属している。

 

レッドギルド《ラフィン・コフィン》

この《世界》で’唯一’の殺人ギルドである。

 

殺人といっても、依頼を受けて動く奴と、快楽で動く奴がいる。

 

前者は、オレンジプレイヤーに復讐してほしいという依頼を受けるものだ。《殺し屋》といっていいだろうか。

偽善者の多い集団で俺は好かない。作成者なんだけども。

 

後者は、PvPを求めているやつらだ。

しかし、この世界においては、ただの《殺人鬼》である。罠を張り、殺人方法を編み出し、殺しを楽しむ集団だ。

いや、ほんと、まじで近づきたくない。

 

 

俺以外の幹部が快楽殺人派に所属していることに対して、ボスがなんだかんだ依頼派に力を貸しているのが、少しは救いだ。

 

 

 

そして、

俺がこの最悪な《場所》にいる理由が、《ラフィン・コフィン》を守ることだ。

 

攻略が進むにつれて、プレイヤーは極端に分かれた。

クリアを目指して《生きる》やつと、還ることを諦めたやつだ。

 

この《世界》には法がない。裁判がない。警察がいない。結果として、犯罪者プレイヤーが増え始めた。

 

この世界での犯罪が罪ではないと言っていて、

この世界がゲームなのだと認識している連中だ。

 

犯罪者ギルドの増加は中層プレイヤーに恐怖を与えた。

・・・攻略組を目指したプレイヤーの数を減らすこととなった。

多くの犯罪者ギルドができる無法地帯となった。

 

そんなとき、犯罪者ギルドの中でも《ラフィン・コフィン》が最大の犯罪者ギルドとなった。

 

'唯一’のレッドギルドとして、今も君臨している。

 

 

犯罪者を集めるためのギルドとして、俺は利用している。快楽殺人派の中で勝手に動く奴を《異端者》として処刑するような動きを、俺は作った。

・・・直接的にも間接的にも俺は手を汚した。

 

認めたくも考えたくもないが、殺しに秩序を与える’道’を選んだ。

狂っているって、人殺しって、罵るだろう。

 

 

それでも、

この《世界》が終われば、そんな秩序は《現実》に飲みこまれるはずだ。

 

俺は、この残酷な《世界》を終わらせるために、1人で《生きている》。

 

「・・・茅場ァ」

声が漏れた。

 

誰かにこのモヤモヤをぶつけたくなっただけだ。

 

俺は、お人好しにメッセージを打つ。

 

 

 

***

 

最大のレッドギルドといっても、100人を超えるわけではない。

《殺人鬼》が100人って世紀末かよ。

 

現在アジトにしている場所は、霧が深く意外とモンスターも少ない。

 

リーダーのプーさんって何者だよ。

こんな隠れ家見つけたり、何十人もの《殺人鬼》を纏めたりするのだ。さらにシステムの穴をついた殺人方法を次々と編み出す。

 

快楽殺人のためでもない、殺し屋のためでもない、《ラフィン・コフィン》の結成理由は彼しか知らない。

 

どこかの魔王みたいに、人を惹きつける奴であり、本心を見せない奴だ。今もフードの下でニヤニヤしている。

 

その姿を見て、俺の癖を治そうと思った。

 

 

「ショーグンさん。定例会議が始まりますよ。」

「・・・ふむ。」

依頼派の奴が話しかけてきた。

名前も知らないけど、復讐のために入ったって、言っていた奴だ。

 

 

 

俺は身に着けている仮面を被りなおす。

 

「諸君、今日は祭りの日だ。攻略組にいるスパイからの情報によると、俺たちの討伐作戦は実行してくれたらしい。しかし、攻略組は高レベルプレイヤーだ。だが憶することはない。我ら幹部がついている。地形と、麻痺毒を駆使すれば勝てる。奴らを返り討ちにしよう!」

 

「It's show time.」

 

 

「おお!」「夜戦だ夜戦だーッ!」「ヒャッハー!」「女も来るぜぇ!」

 

・・・騒いじゃって。

そんなんじゃ、場所がバレるぞ?

 

 

攻略組による《ラフィン・コフィン》攻略が始まった。

 

 

 

 

***

霧が’タイミングよく’消え、乱戦状態となる。

 

すでに囲まれていた。

奇襲しようと思っていたら、逆に奇襲されたわけだ。

 

多くの《殺人鬼》が麻痺毒に倒れた。

えぇ……自分で使う武器の対策をしていないのかよ。

 

 

俺は曲刀《災禍剣デモリッシュドゥーム》を肩に担いだのち、突進する。

曲刀ソードスキル単発技《リーバー》。

プーさんには《友切包丁》で逸らされる。

 

「Ohー、結構おもしれぇじゃねぇか」

 

「・・・余裕そうに見えるが?」

 

本当に底が見えない。

《ラフィン・コフィン》も、こいつも、そして俺も、

命の危機なのに、どうして平然としていられる。

 

 

「Let’s Dance.」

 

「……ダンスは苦手だな。」

 

流暢な英語にそう返す。

体育の授業で必修化されたダンスのトラウマが蘇った。

 

 

 

隙の多いソードスキルはお互い知り尽くしている。

だから使わない。

今まで培ってきた経験で、互いに剣を振る。

 

俺の剣技はすべて逸らされ、

包丁が俺の身体に掠り、’痛み’を感じさせる。

 

 

この短時間で、経験の差を感じさせられた。

「つまらんな。これなら《黒の剣士》の所に行くんだったぜ。」

 

「…あいつも普通の日本人だぞ。」

 

PoHはSAOにログインする前から’戦い’をしてきたのだろう。その殺気はこの《世界》の誰よりも鋭く濃いものだった。

 

俺はその殺気の中で焦ってしまったのだろう。

ソードスキルを使ってしまう。

 

曲刀ソードスキル奥義《レギオン・デストロイヤー》

計8連撃の強力な一撃だが、すべて避けられる。

 

さらには側面から振り下ろされた包丁に、『剣』が両断される。

 

ポリゴンの粒子を見ながら、

いまだ剣を打ち合う音を聞きながら、

興味を失った顔を見ながら、

 

俺は意識を失った。

 

 

***

 

夢を見た。

あの『本物』と思えそうだった場所での日常。

 

1つの長机を囲む日々。

雪ノ下と由比ヶ浜に軽口を叩き合い、依頼を受けてきた『奉仕部』を。

 

そこには、’あいつ’の姿はないけれど、

それでもたまに、原稿を持ってきた。

 

なにかのパクりで、読みづらくて、面白くなくて。イラスト設定だとか、プロットだけを持ってくることもあった。

 

それでも、俺は、熱意が籠っていて、嫌いではなかった。

 

 

 

***

まだ暗い草原で、俺は目を覚ます。

傷だらけの全身鎧を身に着けた《狂戦士》。

 

珍しく兜を脱いだ彼は、

とても穏やかな顔をしていた。

 

「・・・勝てなかった。何度もあいつの『剣』を’視’てきたのに。あいつの殺気に慣れていたはずなのに。」

 

「最後まであいつのことが、分からなかった。手も足も出なかった。足掻くことすら、できなかった。」

 

 

「そうか。」

一言だけ、月村はそう言った。

 

その表情に俺は苛立つ。

「なんでだよ。お前はあいつが憎くないのかよ。あいつは材木座を殺したやつと同じレッドプレイヤーだぞ。・・・材木座を殺したやつなのかもしれないんだぞ。」

 

秩序を守るためだとか屁理屈を言っていたけど、やはり俺はいつも自分のために動く。

 

この《世界》の《殺人者》をすべて駆逐してやりたかった。そうすれば、材木座のように、殺されてきた中層プレイヤーが浮かばれるって思った。

 

 

でも、

何度も、何度も、月村には止められた。

剣を打ち合った。

 

その想いが、俺には分からない。

俺はよく観察力があるとか言われるし、自負している。

相手の考えていることを読むのが得意だ。

 

そうやってボッチとして生きてきた。

 

・・・それでも、俺は、人の感情が、分からない。

だから、2人の女の子を俺は泣かせてしまった。

 

俺はずっと過去に囚われてきた。

 

そして、この《世界》に、逃避した。

 

 

 

「八幡が生きていることが、俺は嬉しかった。」

その言葉に俺は顔を上げる。

 

「必死になって犯罪者プレイヤーを牢獄に送ってきたことも、いのちを捨てるような攻略をしてきたことも。自分の大切な相棒を守りたかったからだって気づいた。そういえば、義輝は相棒って、よく呼んでくれたよな。」

 

あの頃のような笑顔でそう言った。

材木座のことを懐かしむような顔を見せた。

 

 

俺は、

材木座が殺されたときは、心の底から泣いた。

今まで、怒りを糧に生きてきた。

 

そういえば、俺が『生きている』ことで、喜んでくれる2人のお人好しがいたな。

 

1人は、心の底からの喜びという感情を、目の前で向けてくれる。

 

 

俺は、人から向けられる感情を、ずっと怖がっていた。

俺は、材木座の気持ちからまでも、逃避していた。

 

(たとえ、君が痛みに慣れているのだとしてもだ。君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいることにそろそろ気づくべきだ、君は )

平塚先生から言われたことがある。

 

考える。

 

俺が、材木座の立場だったのなら・・・

俺が、それが偽善であっても、材木座の幸せを、考えるのなら・・・

 

 

「伊月、墓参りって、何持って行けばいいと思う?」

 

「うーん。義輝が書けなかった分、この『世界』のことでも書いてみるか?」

 

ああ、いいな、それ。

 

 

俺はメニュー画面を開き、メモを出す。

シンプルに、

 

《SAO記録全集》

~やはり俺たちの現実逃避はまちがっている。~

 

はじまりは、、、

 

 

 

そこで文字が打つのが止まる。

「まだ見ぬ層についても、書かないといけないよな。」

 

一度、筆を置いた。

 

'相棒'は頷いてくれた。

 

 

この《世界》は残酷だけど、美しい。

どこまでもパクりの多い小説家だったな。

 

この《世界》の終焉を、見せてやりたい。

 

 

 

 

誰もが過去に囚われている。

どんなに先に進んだつもりでも、ふと見上げればありし日のできごとが星の光の如く、降り注いでくる。笑い飛ばすことも消し去ることもできず、ただずっと心の片隅に持ち続け、ふとした瞬間に蘇る。

 

それでも・・・

 

「夜明け、だな。」

 

 

 

 

 

 

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