やはり俺の現実逃避はまちがっている。   作:ソロ

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八幡もオリキャラも脇役なので短め。



第5話 俺が求めてきたモノ

第74層は、どこかの黒ずくめの剣士がソロで倒した。

50連撃?二刀流?

そんなん、チートや!

 

どこかの神聖剣の聖騎士は、黒ずくめの剣士を倒した。

もっと、チートや!

 

キリトとアスナは結婚したらしい。

・・・リア充爆発しろ。

 

俺は、いくらか想像してプロットを執筆することにした。

 

当時の惚気話を聞く気はない。

 

人相の悪い護衛騎士から、勇者は愛する姫を連れ出した。その後、お礼に姫の自宅で食事を作ってもらい、家に泊めてもらった。次の日、姫に恋する護衛騎士と勇者が姫を取り合い、決闘をする。その後、悪魔を討ち果たした勇者は、姫のお義父様と結婚をかけて決闘をする。

惜しくも負けたが、その実力を認められ、騎士として姫に就くことを許される。しかし、嫉妬する護衛騎士が勇者を襲った。そう、護衛騎士は悪の手先だったのだ。危機に陥るも、2人の旅の者に勇者は助けられた。

姫が駆けつけて、勇者と姫は抱き合い、そのまま・・・

 

 

「エイト、そろそろ着くぞ?」

「ああ、すまん。寝ながらプロット書いていた。」

オーガスの声で意識を取り戻す。

 

なんだこのプロットは?

いつからキリトは勇者になった?

 

 

第22層。

森林と湖で落ち着いた雰囲気の層だ。

フィールドモンスターも出ない場所で、俺たちも別荘として住みたい場所だが、如何せん家賃が高い。

・・・オーガスに至っては結婚祝いとして大量のコルを送った。

 

ちなみに俺とオーガスが住んでいるのは、第50層のラーメン屋の上だ。第50層はまさに街で、入り組んでいた場所にその店を見つけた瞬間に、上の部屋を即買いした。

しかし、ラーメンじゃないラーメンだったことに後悔しかなかった。

 

 

新婚さんは、こんないい場所に住んでいる。

2人とも有名人で、特にアスナの人気は凄まじい。なるほど、キリトが刺されないように、ヒト気のない場所を選んだのだろう。

 

まさに必要経費である。

 

このログハウスに向かいながら、寝ながら歩きながら執筆していた。フィールドモンスターが出ないことが安心感を与えてくれた。

 

 

「ノックして聞こえるのだろうか。」

どこか天然なオーガスが、ドアをノックしている。

この《世界》では防犯や防音性が高いので、中の様子は聞こえない。

 

俺がインターホンらしきものを鳴らすと、恐る恐るキリトが出てくる。

 

え、やっぱり《非公式アスナファンクラブ》に狙われてるの?

 

 

「…お前らならいいか。騒ぐなよ。」

何か隠し事があるようなキリトは俺たちを向かい入れる。俺たちは家に入っていった。

 

 

キリトはともかく、アスナが住んでいることもあって、内装は完ペキである。

 

ストレージに入れていればいいはずの食器すら飾ってある。来客用のイスまで用意されていて、気遣いを感じる。

 

しかし、今、一番、気になる、ことは、幼女。

 

 

「ごめん、出産祝いを狩ってくるよ。ウサギでいいかな?」

オーガスは混乱している。

 

 

とりあえず、俺は最大の目的を果たす。

「アスナ、ラーメンを作ってくれ。」

 

メニューを開き、素材を渡す。

 

 

 

***

アスナは、《料理》スキルMaxという貴重な存在である。

 

さらには、味覚のパラメータを解析し、醤油を作り出した。俺とアスナの関係は知り合い程度だが、俺はアスナがいないともうこの《世界》を生きていけない。

 

 

俺はラーメンをすすりながら事情を聞く。

森で倒れていた少女を保護しただけで、出産したわけではないようだ。

 

茅場ァ、出産システムはないのかー。

 

 

「・・・それで、《はじまりの街》に行くのか。あの無法地帯に。」

キリトもアスナも苦笑いする。

オーガスは向こうでユイちゃんとおはなしをしている。

 

 

現在、自称《軍》によって、下層は支配されている。治安を守る代わりに、納税を強いているのだ。

 

《はじまりの街》にはまだレベル10にも満たない者が多く残っている。《軍》は弱者の上に立って、良い気になっているという最悪なやつらだ。

 

そして、《はじまりの街》には、多くの子どもたちがいる。対象年齢が中学生以上なこの《世界》に、小学生でログインした者もいるのだ。

 

ともかく、ユイちゃんのことを知っているやつがいないか確かめに行くということだ。

 

 

「まあ、護衛騎士ならオーガスがいるし、大丈夫だろう。」

キリトもアスナも、俺の発言に引いていた。

 

 

 

***

ユイちゃんはキリトとアスナに両手を繋がれ、ピクニックに来たような気分で歩いている。

その少し離れたところを俺たちがついていく。

いやぁ、《狂戦士》は怖いなぁ。

 

《軍》のやつらは’俺たち’を見て、逃げ出す。

 

いや、ここは圏内エリアだ。

徴税できる弱者を見つけて、徴税しにいく。

 

お人好しな《狂戦士》は我慢できないみたいだ。

「ごめん。後で合流する。」

「ん。」

 

鬼が走り出した。

 

‘相棒’のお人好しが、俺は嫌いじゃない。

今だって、弱者に勇気を与えに行った。

 

俺は、’相棒’が苦労人だって知っている。

 

 

 

***

多くの子どもがいるらしい教会に着いた。

しかし、手掛かりはなさそうだ。

 

 

3人の子どもたちが入ってくる。

「先生、サーシャ先生、ただいま!」

「僕たち、たくさんイノシシやっつけてきたよ!」

 

「まさかフィールドに3人だけで出たの?」

教会でたった1人の大人サーシャが尋ねる。

 

「黒騎士の兄ちゃんが手伝ってくれたんだ。」

「…かっこよかったなぁ。」

「ねぇねぇ、おはなし聞かせてよ!」

「いいよ!」

 

詳しい説明もなく、子どもたちだけで盛り上がり始めた。

 

相棒が光の’道’を歩んでいることに俺は安心した。

 

キリトにしか分からないであろう《隠蔽》スキルを使って、俺は壁にもたれたままだった。

 

 

 

***

いつぞやのイガグリ頭のせいで、

閉じ込められたという《軍》のリーダーを助けるために、《はじまりの街》の地下に向かうこととなった。

リーダーは騙され、丸腰で安全地帯に取り残された状態らしい。

巻き込まれたくないため話を聞いていなかったのだが、ラーメンを引き合いに出すのは卑怯である。

 

 

しかし、60層クラスの隠しダンジョンとは良い稼ぎ場ではないか。 《軍》は独占しようとしたらしいが、レベル不足だったらしい。

 

キリトとアスナも呆れて何も言えなかった。

 

そんな新婚さんのうち、二刀流剣士は無双に忙しい。

俺たちの出番はまだない。

…休暇中は意外と暇だったらしい。

 

さらにドロップしたカエルの肉で、嫁と漫才を始める。

 

 

仲良いな、ほんと。

俺が求めてきたモノを、2人は得ている気がした。

 

 

***

《軍》のリーダーを見つけたはいいが、死神がいた。

ようやく出番か。

 

「ここは俺たちに任せて、脱出しろ。」

 

俺は銀色の曲刀《プロトカーテナ》と銀色の盾《イゾルデ》を構える。

オーガスは銀色の両手剣《アロンダイト》を構える。

 

 

「そいつは90層クラスだ!やばいぞ!」

俺たちの中で最大のレベルを持つキリトが叫ぶ。

 

・・・え、嘘、帰っていい?

 

 

2メートルを超える巨大な死神は鎌を振り上げる。

その一撃をオーガスがソードスキルで相殺しようとするも、吹き飛ぶ。

次の一撃を俺が盾で逸らそうとするも、吹き飛ぶ。

加勢に来たキリトとアスナさえも、吹き飛ぶ。

 

 

「だいじょうぶだよ、パパ、ママ。」

そんなヤバい死神を倒したのはユイちゃんだった。

 

炎を纏った巨大な大剣が死神を消した。

 

「パパ…ママ…。ぜんぶ思い出したよ。」

涙を流しながら、そう言った。

 

 

 

***

彼女の最期を俺たちは見届けていない。

 

3人にしてあげたかった。

 

3人の’家族’の生活を、俺が執筆することはなかった。

 

俺には、とてもまぶしいモノだったから。

 

 

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