やはり俺の現実逃避はまちがっている。   作:ソロ

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種族選択してから気づいたけど、アルンまでキリト組と関わらない。
つまり、オリジナルストーリーを書かなければ。



第8話 はじめての冒険

お母さんにもゲームをするって、ちゃんと話した。

 

受験生だから、もちろん反対もされた。

 

わたしは、想いを全部伝えた。

お兄ちゃんが知り合いのやつに家庭教師させるって言ってくれたこともあって、1ヶ月だけ許してくれたんだ。

 

 

アルヴヘイム・オンライン。

略して、ALO。

妖精の世界で、9つの種族が争っているとのこと。

 

魔法があったり、飛べたり、

なんだか女の子にも人気がありそうなのに、殺伐としていて恐ろしい世界のようだ。

 

わたしはベッドに横たわり、アミュスフィアを被る。

「リンク・スタート」

 

 

湾の中にある島に、西洋にあるようなお城がある。

その城下町に、わたしは立っていた。

水があふれていて、落ち着いた雰囲気がある。

 

水路に映る自分の姿を見てみる。

どこか現実の顔に似ているけど、水色の髪と瞳になっていて、耳はエルフのように長い。

わたしは回復魔法や水中活動が得意な種族《ウンディーネ》を選んだ。

 

「お嬢ちゃん、初心者かい?」

知らない男性に話しかけられる。

 

「そうですけど…?」

見た目はモデルさんのようにかっこいい。

でも、目がどこか怖かった。

 

「え、えと、知り合いと待ち合わせしてるんで。それではー。」

 

「じゃあ、その娘と一緒に冒険しないかい?」

 

うぅ、予想以上にしつこい。

いわゆるナンパだろう…

この場合どうすればいいんだろう。

 

 

誰かが、わたし達に近づいてくる。

お兄ちゃんは、相棒が迎えに来てくれるって言っていた。

 

全身鎧で、いいやつだ、って言っていたけど…

 

「あ、やっとみつけた。相棒の妹さんだよね?」

見た目に似合わない明るい声が兜の下から聞こえた。

 

どこかでモンスターをハントしているような人。海竜を模したような全身鎧を身に着けていた。

……ここって妖精の世界だよね?

 

「兄が何時もお世話になってます。」

頭をちょこんと下げる。

そう答えることしかできなかった。

 

 

***

わたしをナンパしてきた人は、ミカヅキさんの登場に興が冷めたようで、逃げるように去っていった。

 

装備も全部買ってもらったし、初心者なわたしに丁寧にレクチャーしてくれた。教え方がとても上手で、短剣の振り方や飛び方の基本はできるようになった。

 

「ミカヅキさん、これからどうするんですか?」

 

「そうだな。元SAOプレイヤーはゲーマーが多くてな。好き勝手に種族を選んだから、中心部にある央都《アルン》で合流することになってる。」

 

頬をかきながら苦い顔をする。

 

その言葉にわたしも苦笑いが浮かんだ。

お兄ちゃんと同じ種族にする話だったけど、スプリガンとウンディーネって別々になっちゃった。

 

 

ミカヅキさんは手際よくメニューを開き、地図を取り出す。中央にある《世界樹》を中心に世界が広がっている。

 

《世界樹》のある央都《アルン》は山岳地帯に囲まれていて、並みの人ではそこにすらたどり着けないとのこと。

 

わたしたちはまずは湿地地帯を越え、山岳地帯を目指す。

 

翅を広げ、飛び立った。

 

 

 

 

***

ウンディーネ領は、インプ領とスプリガン領に挟まれている。その2つは比較的人気のない種族であるため、湿地地帯には敵プレイヤーは少ないように思えるだろう。

 

しかし、最大勢力であるサラマンダー領が隣であるため、インプは湿地地帯に出向くことが多い。

 

 

俺は、背後を追いかけるように、必死に飛ぶ女の子に意識を向ける。

 

この世界に降り立った多くのプレイヤーはやはりゲームを楽しむために来ている。

 

俺たちSAOプレイヤーにあるような覇気がなかった。

 

 

でも、

マチは俺の教えに必死についてくる。

殺気を籠めた斬撃にも、恐怖しながらも、あがいて、立ち上がった。

 

たぶん相棒に追いつきたくて、相棒に近づきたいんだと思う。

 

その姿は、あのはじまりの日に決意した俺たちに似ていた。

 

その成長速度には目を見張るものがあった。

焦っていて、危うさがあった。

 

 

俺は、2つの意識を敵に向ける。

 

翅に力を込め『加速』し、剣を抜きながら上昇する。

落下するスピードを載せ、両手剣ですれ違いざまに、斬る。

 

インプのプレイヤーはリメインライト化する。

 

殺すという感覚には、まだ慣れない。

 

 

 

***

湿地地帯を数時間で抜け、《虹の谷》のふもとまでたどり着く。

 

そこで、今日のところはログアウトすることになった。

 

わたしは《現実》に戻ると、アミュスフィアを外し、身体を起こす。

 

手に汗をかいている。

 

はじめての《仮想世界》は、とてもワクワクした。旅行に行ったような気分を味わえたし、妖精になれる体験もできた。

 

お兄ちゃんに、近づけた気がした。

 

でも、ミカヅキさんには、追いつけなかった。

ほんとうにつよかった。

 

たぶんわたしに合わせて、飛んでくれていたんだろうな。

 

わたし、足手まといなのかな・・・

 

 

首を振る。

お兄ちゃんにご飯作らなきゃね。

 

キッチンに向かった。

 

 

 

***

スプリガン領の近くの洞窟まで、’1人’でたどりついた俺はログアウトする。

 

携帯のメールを開くと、俺と同じスプリガンのキリトはシルフ領の近くの森に落ちたらしい。

どういうことだってばよ。

 

 

リビングに降りると、小町はそろそろ料理ができるというところだった。受験生な妹に代わって、俺がやるべきところなのだろうが、家事をしていると落ち着くとのこと。

 

親が共働きで、昔から家事は俺たち兄妹で分担していた。俺も料理をしていた時期があったが、小町の料理スキルは俺をすぐに超えた。

 

俺たちは今日も2人で食卓を囲む。

「いただきます。」

「…いただきます。」

 

作り置きされていたカレーはいつも通り、とても美味しい。

 

昔2人でよく失敗していたことを思い出して、心の中で笑みがこぼれた。

 

 

食事中、

小町の表情は暗い。

それは胸の奥からの焦燥感。

 

 

俺は小町に尋ねる。

「なぁ、どうだった?」

 

「え、うん、楽しかったよ。ウンディーネの領ってさ、カリオ〇トロの城みたいなのがあるんだよ。」

 

スプリガン領は古代遺跡だったよ。

俺は歴史マニアじゃないから良さがわからなかった。

 

「そうか。俺も行ってみたいけど、一応敵対種族だからなぁ。」

 

「近づいただけでも斬られるかもね。」

いつもの明るい声になってきた。

 

「あいつ、どうだった?」

 

「ああ、ミカヅキさんのこと? 素顔は分かんないけど、とってもいい人だったよ。飛んでいる間に、一瞬で近づいてズバーンとやってたよ。とっても強くて優しくて…」

声が尻すぼみになっていく。

 

「1日で飛べたんだな、お前。」

 

「…そうだけど?」

 

「俺なんか、最初の日はスライムポジの猪狩りだったぜ? それに比べればすげぇよ。」

 

「えへへ。そうかな。」

 

俺に褒められたことが素直に嬉しそうだ。

 

「あんま気にすんなよ。あいつも俺も年季が違うんだ。」

 

「そうかな? 私も、変われるかな。」

 

「俺は変わってないぞ。今も昔もこれからも、お前の兄貴だよ。 あ、今のお兄ちゃん的にポイント高くね?」

 

「ふふっ、小町的には全然ダメダメだよ、お兄ちゃん。」

 

八重歯を見せた笑顔は、昔のままだった。

 

 

 

 

***

次の日の放課後すぐに家に戻って、アミュスフィアを被り、あの《世界》に行く。

 

すでに彼はログインしていた。

 

「お待たせしましたー。」

 

「だいじょうぶ、今来たとこ。」

 

なんだかデートの待ち合わせみたいで、笑みがこぼれた。

 

「なにかいいことあった?」

兄のようで兄じゃない優しさを、この人はくれる。

 

「ミカヅキさんやお兄ちゃんがみんなのために頑張るから、わたしももっと頑張らなくちゃと思って!」

 

「そうか。」

 

兜で隠されていても、なんとなく表情がわかってきた気がする。

 

声と雰囲気で、笑顔だと感じ取れる。

 

 

私は、《短剣》ではなく、この冒険で手に入れた《杖》を装備する。

今、私がやれることをする。

 

「みんなを《解放》したときには、もっといろいろ教えてくださいね!」

 

わたしも、心の底からの笑顔をちゃんと見せれたかな。

 

 

 

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