萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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RE:BUILD

「ふむ、そろそろ時間か」

 

 訃堂は情報から反応兵器使用が否決に向かっている事を知る。

 中継により人々に「国防兵器」の存在が知られている以上、米国以外はとてもではないが最初から反応兵器を使えない事は予想していた。

 

 さらに正直に言えば撃ってくれた方が訃堂にとっては都合が良かった、反応兵器をも超える超兵器をコントロールする、それは日本をより強固な国へと変えると信じて疑っていなかった。

 仮に失敗したとしても世論は米国を再び敵として非難する様になるだろうと予測していた。

 

「さて……撃つにしろ撃たないにしろ、神の力の前に「犠牲」が出た方が説得力があるというもの」

 

 神の力の示威として、相応しい相手を考える。

 ディバインウェポンは少し強大であったが装者の手によりあっけなく葬られ脅威としてはいまひとつ。

 

「勝手な行動をした者に、相応しい罰を与えるのもよいな」

 

 人柱の杖を起動し、ロードフェニックスを再び「攻撃形態」に移行させる。

 

「軍備の更新にも丁度良い、この脅威の前に兵器開発を進める様に提言させようではないか」

 

 防衛省が自衛隊を動かした事は既に知れている、S.O.N.G.と違い自衛隊の戦力は今となってはあまり優位性を持たない。

 捨て駒にしようと問題は無い。

 

 

 創造は破壊無くしてならず、痛みを伴わない改革はない。

 

 

 

「それに、あやつがアレを調伏したのならそれはそれでよい……真の防人となるならば、老いたワシの思惑ぐらいは踏み越えて貰わねば安心して隠居もできぬわ」

 

 日本の国防こそを第一とする防人の心中を察する者はまだ居ない。

 

 

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 夕焼けの赤い空の下、ロードフェニックスがその身を起こす。

 既に周囲には戦車部隊が配置されていた、その主砲は換装されミサイルランチャーに変更されている。

 

『救助対象が行動を開始!「イタクァ」発射用意!』

『いいか!撃ったらすぐに下がるんだぞ!』

 

 自衛隊が用意してきたものは異端技術研究の中で生まれた「冷凍兵器」の試作品だった。

 対ノイズにも効果はなく、兵器にも効果が低く、救助対象を窒息させてしまう為に火災鎮圧にも使えない、どこにも使い道の無かった無用の長物、あるいは倉庫の肥やしとしかいえない道具の一つだったがロードフェニックスには効果があった。

 

 撃ち出されたミサイルは空中で破裂し、白く輝くダイアモンドダスト混じりのガスが降り注ぐ。

 腐っても異端技術由来、それはロードフェニックスの巨体から熱エネルギーを奪い、その表面を凍結させる。

 

『効果あり!対象表面が凍結しています!』

『よし!第一班は後退!第二班射撃用意!』

 

『入間基地航空部隊到着、指示を待つ』

『現在目標は凍結中、そちらの判断で武装の使用を許可する!』

『了解、目標が動き次第行動を開始する』

 

 S.O.N.G.の特殊車両部隊は現場に向かっているが、先の戦闘でかなりの悪路となっており到着が遅れている。

 これは「誰一人として犠牲を出さない為の作戦」故に、特に防御力の無い特殊車両は退路も含めた運用をしなければならないが為の遅れだった。

 

『周辺温度上昇!氷が溶解していきます!』

『第二射発射!』

 

 再び白い煙がロードフェニックスの全身を覆い隠し、光が反射する。

 

『ダメです!温度上昇止まりません!!』

『下がるぞ!』

 

 煙の中でロードフェニックスがその姿を変えていく、レイラインからエネルギーを吸い上げているのだ。

 

 晴れた煙の中から現れたのは二本の腕、二本の足、二本の角、そして背には羽根。

 石の鎧は赤く輝く甲殻となり、無感情に輝く目が虚空を見つめている。

 

 その姿は既存のあらゆる生物種にも似て、あらゆる生物種に当てはまらない「合成獣(キメラ)」だった。

 

『各機武装の使用を許可、目標の行動を阻害しろ!』

 

 ミサイルが一斉にロードフェニックスへ向けて発射される、前の戦闘からダメージにすらならないとは予測されていたが足止めにはなる筈だった。

 だが命中するよりも早く「何か」に干渉した事に同時に全て「迎撃」された。

 

 そして不運にも「それ」に接触した機体の主翼がもげた。

 

『脱出する!』

 

 幸いな事にぶつかったのが「エースパイロット」だったおかげで即座に機体を捨てて脱出する判断が出来た。

 

『触手だ!触手が高速で伸びている!もっと距離を取れ!』

 

 その様子を陸上部隊が確認していた事で更なる被害が出る前に航空部隊は退避を始める、だがそれを許さない。

 触手が次々と戦闘機に向けて飛ぶ。

 

『第三班間に合わせろ!』

 

 既に多少の距離があったおかげで機体こそ失ったがパイロットは脱出できた、だがその触手が次に攻撃目標として選んだのは地上部隊だ。

 

『無人車両を盾にしながら後退!後退だああ!始末書だけで済ませろ!』

 

 触手が次々と地上を突き刺し、前進する無人車両を破壊していく、残りは有人車両だけ。

 

『南無三!』

 

 さすがに犠牲無しは無理だったか、覚悟を決めて指揮車両を守る為にその身を盾にしようとする。

 

 

「その手を血には染めさせない!」

 

 青き剣が舞い降りて、防った。

 

「待たせたわね!ここからは私達が引き受けるわ!」

 

『助かった!一時退却!立て直しつつ支援に徹しろ!』

 

 装者六人、そして錬金術師三人がようやく戦場へと到着した。

 

 

『作戦を開始する!!』

 

 現場の指揮がS.O.N.G.へと移る、一度は否決されたレイライン遮断作戦が再決議され、ロードフェニックスのエネルギー供給源と見られる周囲のレイラインが封鎖される。

 

 常に周囲を陽炎の様に揺らめかせていた輝きが収まり、ロードフェニックスの真紅は乾いた血の様にどす黒く濁る。

 

「やはりレイラインからエネルギーを奪い取ってその身を常に強化していたワケか!」

 

 神の力を作り出す為には種類は問わないが莫大なエネルギーが必要だ、あれだけの巨体の維持、さらには幾度にも及ぶ再生と変化、当然どこかからエネルギーを「補充」している。

 プレラーティはそれに気付き再度のレイラインの遮断を提案したのだ。

 

「しかし補給を断ったからといって油断してはいけない、既にアレは世界を滅ぼすのに十分以上にエネルギーを得ている!」

 サンジェルマンの分析の通り、出現から48時間以上常にエネルギーを吸収しつづけたソレは無闇に爆発させるのならフロンティア事変の際の「ネフィリム・ノヴァ」の再現となる。

 

「だからちゃんと手順通りにちゃんと解体するわーけ!!」

 

 神の力を「纏う」事が出来るなら、「引き離す」事もできる筈。

 

「まずは動きを止める!」

「アタシ様に任せなぁ!」

 

-MEGA DETH FUGA FRAME-

 

 クリスが二基のミサイルを放つ、それは空中で分裂して無数の「フレア」となる。

 ロードフェニックスの触手はその全てに反応し、叩き落とそうとするがフレアはぶつかる事でさらに細かく分裂し、数を増やす。

 

「動きを縛る!」

 そして翼が飛び、巨大な剣を形成して地に向けて突き刺す。

 

-大・影縫い-

 

 しかし、影とはいえ「神の影」だ巨大な力がすぐにでも地面に突き立てられた剣を引き抜こうとする。

 

「勝機を逃しはしない!」

 

 マリアがアガートラームの短剣から光の帯を作り出し、動きの止まったロードフェニックスの触手を足場に「拘束具」を作り出す。

 

「綱引き優勝候補行きます!」

 

 そして響がマリアと共に

 

 だが同時に影縫いをする為に地面に突きたてられた大剣が砕け散り、その巨体と触手が動き出して、マリアと響を狙う。

 

「させないデス!!」

「ザババの刃で守る!」

 

 切歌と調は伸びてきた触手を迎撃する、だがその強度は想像よりも遥かに硬く強化されたギアでも切り裂くのにはギリギリであった。

 

「よくばりが過ぎるだろ!」

 

 クリスが追加で弾幕を加えていくが、ロードフェニックスは最初の位置から一歩も動いていない、それどころか腕さえも使っていない。

 触手だけで向かってくるもの全てを無力化しているのだ。

 

「本気ではないようね……出さずにこれだったら出されてはとてもではないけど!」

「だとしてもですッ!!」

 

 響とマリアの二人が縛り、踏みとどまらせていた。

 

「おまたせ!お薬の到着よ!」

 

 ようやく到着した特殊車両、道中なにやら「不具合」があったようでサンジェルマン達が迎えにいっていた。

 

 錬金術で舗装した地面に次々と車両が揃い、ついに「アンチリンカー」の注入が開始される。

 それに対してロードフェニックスは凶悪の牙が並び、上下に加え左右にも開く口を開いた。

 

 全てを焼く尽くす炎を吐き出す為の予備動作であった。

 

「やはりこれはマズイと気付いたわね!」

「つまりは良薬なワケだ!」

「これを貫き通す!」

 

 動きを鈍らせながらも確実な破壊を行おうとするロードフェニックスの口に向けてサンジェルマンは「必勝」の一撃を放つ。

 穢れなき純白の閃光が走り、一瞬のうちにロードフェニックスの口を凍りつかせる。

 

 同時に先ほどまで全てを薙ぎ払わんとしていた触手が動きを止める。

 

 それは間違いなく作戦が上手く行っていたという証だった。

 

『翼さん!詩織さんに呼びかけを!!』

 

 エルフナインからの合図、それは作戦の最終段階であり、最後の仕事。

 

 

「いけよセンパイ!あのバカを連れ戻しに!」

「ああ!連れ戻すさ!大事な友を!」

 

 クリスの放つミサイルに乗り、翼はロードフェニックスの胸に最短で、一直線に羽ばたいた。

 

―アマルガム 練成!

 

 イグナイトと同様にマイクユニットを操作し、起動するシステム。

 翼の剣とプロテクターが分解・理解・再構築され黄金に輝く「花」となる。

 

 突貫工事で完成させたそれは「リビルドギア」

 

 本来ギアの中になかった「異物」である「ラピス・ファウストローブ」「ダインスレイフ」そして「愚者の石」を融合させた故に安定して運用できる時間はイグナイトよりも遥かに短い上に多くの機能が制限され、同時に形成できるアームドギアは一種のみ。

 

 だが「全てを一つに束ねる力」は、エクスドライブにも負けない程の出力を生み出す。

 

「お前が、皆がくれたこの絆で!!お前を救う!」

 

 天羽々斬の剣は翼の名の通りの飛行ユニットへと形を変える。

 

 目の前に現れたそれを『脅威』として認識したロードフェニックスが慌ててエネルギーを放出しようとするがソレよりも早く「繋ぐ手」が胸の結晶へと「突き立つ」。

 

「詩織!!」

 

 




フライングアマルガム!

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