萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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今日も二話連続です


灰少女

「久しぶりの我が家デース……」

「電気がついてない……もう詩織さん寝てるのかな、それともいないのかな……」

 

 ようやく一段落つき、切歌と調は約一ヶ月ぶりに自宅に帰ってきていた。

 しばらく帰っていなかった為、ほぼ詩織だけの自宅と化していたが、カリオストロに進入された件から切歌と調と同居状態なのは変わらないまま。

 

「私達が外で頑張ってる間、ずっと一人で日本で戦ってたらしいデスからね……ひょっとしたら疲れてるかもしれないデス」

「そうだね、静かにいこうね切ちゃん」

 

 カードキーを通してマンションのホールを抜け、自分達の部屋に辿り着く二人。

 

「ただいま……デス!」

「やっぱり寝て……え……?」

 

 部屋の電気はついていなかった、だが靴があった事で詩織が居るというのはわかった。

 だが靴が一組多い。

 

 しかも詩織のよりもサイズの小さな靴だ。

 

「……切ちゃん……!」

「……デス!」

 

 歴戦の装者二人、状況判断は完璧だ。

 足音を殺し、恐らく詩織が寝ているであろう部屋を開ける。

 

「デデッ……!?」

「そんな……!!」

 

 そこに居たのは詩織、だけではなかった。

 切歌と調よりも小さな少女が詩織と同じ布団で寝ていたのだ。

 

「……切歌ちゃん……調ちゃん……?おかえりなさい」

 

 正しくは詩織はまだ寝てはいなかった。

 

「そんな……詩織さんが女の子を連れ込んでるデス……」

「ロリコン……」

「色々勘違いされてますが、やっと寝付いたので説明はリビングでいいですか?」

 

 

 

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「とまあ……結社残党に人質にされてた子だったんですけど……記憶がなくて、検査したら「前のエルフナイン」ちゃんみたいな存在……「ホムンクルス」だって判って、当然ながら戸籍なんてなかったのでちょっと色々ぎぞ……用意して引き取ったんですよ、というか安全に保護できる所が他に浮かばなかったので」

「そ……そんなことがあったんデスか……」

「ロリコンって言ってごめんなさい……でも大丈夫なんですか……?」

「一応、八紘さん……翼さんのお父さんが親代わりになってくれる人を探してくれてるらしいけど、しばらくはウチで暮らす事になるので、事後承諾みたいな感じですみませんが」

「いいのデス!困ってる子を見過ごせないのは同じデスから!」

 

 詩織は「託された」少女を見捨てる事など当然出来なかった。

 ただの人間の少女ならどこかに居るであろう親元へ返すか最悪孤児院などで引き取って貰うだけで済んだだろうが、「彼女」はホムンクルスだった。

 残念な事に現在、ホムンクルスの人権を認める法はない。

 

 エルフナインの件ですら、S.O.N.G.だったからどうにかなった訳で今回のは完全に危険な橋渡りだ。

 厄介な訃堂の事なのでこの事は既に漏れている、と想定した上で取った手が「特異災害被災者としての保護」というもの。

 

「まあ護国災害派遣法とかいうガバ法のおかげですね、こればかりはあのジジイのおかげです」

「詩織さんって法律詳しかったんだ……」

「いえ、殆ど防衛省の人達に任せて私はあの子の世話をしてるだけですよ」

 

 悪知恵と力技と蛮勇の三つの力が一つになれば道理が引っ込む、この世はパワーだ。

 

「でそういえばあの子の名前をまだ聞いてなかったデス」

「……カメリア」

「デデッ!?」

 

 聞き覚えの無い声、予想外の方向からの回答に驚く切歌。

 三人の視線の先には灰色の髪の少女が居た。

 

「起こしちゃいましたか?カメリア」

「……お姉さまがいなかったから寂しくて」

 

「お姉さま……?」

 再び調の訝しげな視線が詩織に向く。

 

「うん……私がはじめて見た人だからお姉さま」

「そういうことです」

 

 雛鳥の刷り込み、最初に見た動く存在を親と認識する様なそれだが。

 どうやらこの「カメリア」というホムンクルスの少女にも近い特性があったらしく、詩織を「姉」と認識して離れたがらない。

 

 これもまた詩織がカメリアを引き取らざるを得なかった理由の一つだった。

 

「そうだ!自己紹介がまだだったデス!暁切歌デス!よろしくデス!」

「私は月読調……なにか困った事があったら何でも言ってね?」

「うん……お姉さまから話は聞いてた……よろしく暁お姉さま、月読お姉さま」

「私がお姉さんデスか!?」

「お姉さま……悪くないかも」

 

 とりあえず一先ずの所は二人とカメリアがうまくやれそうな事に詩織は安堵する。

 だが仲良くなりすぎるのもまた、正直な所心配でもあった。

 

『貴女のその気持ちは確かに尊いものでしょう、ですがもしもの時……貴女は覚悟は出来るのですか?』

『その時は、その時です』

 

 ありえてほしくは無い、だけどもしカメリアが悪意で……悪意が無くとも世界に、人に害をなすとなった時、詩織は彼女を止めなければいけない。

 蛇喰補佐官を始めとして何人かはカメリアを詩織が引き取る事に反対だった。

 

 素性も知れないホムンクルス、しかもアルカノイズを製造していたパヴァリア光明結社の残党が連れていた者だ、何か細工がされていてもおかしくは無い。

 加えて記憶を持たないというのもどの程度のものか、封印されているのか、削除されているのか。

 

 それでも、詩織は信じたかった。

 彼ら・彼女らが自分を犠牲にしてでも救いたかった少女がそんな邪悪な者ではないと。

 

 それに、だからこそ、もしもの時は自分自身の手で決着をつける。

 詩織は覚悟の上で彼女を側に置く事を決めた。

 

『裏切られる痛みは、辛いですよ』

『なら余計に他の人にはその痛みを背負って欲しくないと私は思います』

 

 蛇喰補佐官とのやり取りを思い出しながら、詩織は目の前で切歌達と戯れるカメリアを見つめる。

 無邪気で、ぽやっとした表情、それは詩織の庇護欲を強く刺激する。

 

『最後まで、私はこの子を信じます』

 

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 パヴァリア光明結社残党がアジトとしていた工場跡地に二人の男が居た。

 

「来て見れば……「ファントム」どもは工場もろとも全滅か」

「戦闘用ホムンクルス躯体と専用のファウストローブも送ってやったというのに……なんという体たらくだ」

「ホムンクルスとは言うがパナケイア流体検体だろう」

「失敗作共と比べるな、あれはそもそも躯体の製造段階からしてパナケイア流体に適合するように作ってある……出力も耐久度も桁違いの筈だったんだがな」

「まあいいさ、ファントムが全滅したのなら我々が代わりにアルカノイズの「儲け」を得る事が出来るんだからな」

 

 彼らも結社「元」構成員の錬金術師であり、現在はアルカノイズを売る事で利益を得る「闇の商人」だ。

 

「俺達がアルカノイズを売り、客が使う、そしてシンフォギアが退治する」

「そういう約束だ……風鳴訃堂とはな」

「国を裏で操る者のお墨付きとはな、つくづく同情するぜ」

 

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