萌え声クソザコ装者の話   作:青川トーン

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不死鳥の血

 灰の砂漠、かつて見た事のある景色。

 前に見た時はそう……奏さんの居た世界に繋がっていた景色だ。

 ただ前と違うのは空が青と赤に分かれている事、灰の中から生える7色の結晶がある事。

 

 

『ハハハ……これは驚いた、君はつくづく私達と縁があるようだ』

 

 女の人の声、目の前にはいつの間にか大きな赤い鳥が居た。

 その姿は……「彼」とはまた違った。

 

「あなたもフェニックス?」

『そうとも、君がこっそり持ち帰った「ファウストローブ」の中の羽根に宿った意識だよ、私は』

「……前の彼は結構すごい声をしてましたけど、あなたは違うんですね」

『ああ、私達にも違いがあるのさ……君達が他者の影響で形作られる様に、私達もそれぞれ出会ってきた者によって形を変える』

 

 そう、私はあの時戦った錬金術師の女の子の灰の山に埋もれた羽根を見つけた。

 だけど「その力」を知ってるから、引き渡す事無く「横領」した。

 それが正しいと信じた。

 

『とはいっても意識しかない私達は見守る事しかしない、いや……出来ないのだけど、君達人間がファウストローブやシンフォギアといったものに加工した時にだけ力を与えられる。そして意識をこうして共有できるのは……君が特別だからだ』

「特別……まあちょっと変わってるけどそれほどでもないですよ。人は誰だって特別だと思いますから」

『まあその辺りは話すと無限に時間を食ってしまうから、置いておくけど。今の君はフェニックスに近い存在だ、君に判りやすく説明すると「哲学兵装」と同じ現象が起きている』

 

 哲学兵装、エルフナインちゃん曰く「コトバノチカラ、人の想いの積層によって存在が曲げられたもの」でしたっけ。

 ソードブレイカーや神殺しとされたガングニール、他にも色々あるらしいですけど……そうですか、私もついに概念の世界に突入するのですか。

 

『君は何度も死と再生を繰り返してきた、彼が……君が最初に出会ったフェニックスが与えた力による肉体的な再生もあるが……多くの者が君は死なないと信じてる結果だろう。そうなる前に私が君に忠告できる事を嬉しくおもう』

 

「まあ大体……予想はついてますが、一応聞いておきましょう」

 

『私もまた彼の様に君が死に瀕した時、再生させる事が出来る。だがその時、君は完全にフェニックスになる。生と死の循環を超越し、永遠の存在となる。完全なる不死になる訳ではないが……余程の手段でもない限り死ぬ事が出来なくなる。そして君の心が人間でなくなる訳ではない、遅かれ早かれ君は狂ってしまう。それを覚えておくといい』

 

「なるほど、覚えておきます。死にそうな時は是非とも力を借りると思いますので」

 

『随分とタフだね、君は』

 

「守りたいものが出来た、勝ち取りたいものが出来た……それが私を強くしてくれました。迷う事も躊躇う事もあるけど……その時に覚悟出来る様に生きたい。私を生かしてくれた者達の為に、私自身に恥じない為に」

 

『困った、私からアドバイス出来る事がないな……結構多くの者にアドバイスをしてきたのだが、君は随分と芯が強い……君がどんな道を歩んでいくのか、楽しみになってきたよ』

 

 そうです、なんら問題は無い、今の私なら背負える重さです。

 

『でも一つだけあったよ、君自身が強くなっても……君の周りはそうとは限らない、それは覚えておいて欲しい……君が人を愛するのならなおの事ね』

 

 ……ッ!

 

「それはカメリアの……」

 

『彼女だけじゃない、君に関わる人々全てに言える事だ。むしろ君が強くなりすぎた事で周りの者達に害が及ぶ事になる事もありえる。それは覚えておくべきだ』

 

 私以外の人、そっか……私は大事な事を忘れていた。

 

「守ります、誰も……傷つけさせはしません」

 

 そうだ、私は誰かを守る為に強くなりたいと願った。

 忘れてはいけない、失う前に知れて本当によかった。

 

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「それであの子を保護したのか」

「そうなんですよ、厄介な立場になってしまいましたが……こうやって誰かを救えるというのはいいですね」

 

 S.O.N.G.の本部へ来たのも随分久しぶりですし、翼さんとこうして二人で話すのもまた久しぶりです。

 カメリアの体を詳しく検査する為には「錬金術」に詳しい人を選ぶ必要がありました、となると現在私が知る限りはエルフナインちゃんただ一人。

 

「それでそっちはどうだったんですか?」

「ああ、知っての通り結社残党を追う中、シンフォギアの再現を試みている米国の研究機関に立ち寄る事になってな」

「シンフォギアの再現……それはまた……」

「確かに再現の困難さもあるが、聖遺物の力を解析する事は人類の発展や歴史を見直す事にも繋がる。それにいい出会いもあった」

 

 聖遺物、その存在は多くの人に知れ渡っている。

 新たなエネルギー資源や、技術革新の可能性も秘めたソレは争いも起こす……けど人類の明日を作るかもしれない。

 

 シンフォギアやファウストローブを研究するのは間違いではない筈。

 

「それでいい出会いとは?」

「向こうの研究員の娘である「シャロン」という少女、彼女が随分と立花を気に入ってな。ずっとひっつきぱなしだったよ」

「ああ……響さんは人に好かれますからね……」

「小日向と一緒に彼女に色々教えていた、これがその時の写真だ」

 

 そういって翼さんが見せてくれたのは一枚の写真のデータ。

 端末の撮影機能でとったもの。

 

「へえ、この子ですか。響さんと並ぶとまるで姉妹ですね」

「妹分が出来て立花も随分喜んでいた……こういう縁もあるものだな」

 

 またS.O.N.G.の隊員として、シンフォギア装者として世界の為に戦ってくる事が無ければ、これもありえなかった出会いかもしれないですね。

 

 っと、どうやら検査も終わったようです。

 先にエルフナインちゃんが出てきましたね、カメリアはまだ寝ているのでしょうか?

 

「……詩織さんにお伝えしないといけないことがあります」

 

 ……いい話ではなさそうですね。

 エルフナインちゃんの表情から想像するに……。

 

「カメリアさん、彼女は「ファウストローブ」の操作用に調整されたホムンクルスです。活性化していなかった為に「前の検査」では見過ごされてたのでしょう……血中から毒性を持った未知の成分が検出されました」

「それで……どうするのですか?」

「……ボクは引き続き成分の解析を行います、それと即座にという訳ではないのですが彼女の為にRhソイル式の血液が必要となりますので司令に報告を」

「それもありますけど、私はカメリアの側にいてあげてもいいのですか」

 

 たとえホムンクルスだとしても、彼女の心があるのなら、彼女が求めるのなら私は隣に居てあげたい。

 

「はい、記憶をなくしているカメリアさんはきっと心細いはずです。だから、詩織さんが側に居てあげてください」

「……わかりました」

「まだ完全に安心できるわけではないが……一先ずはよかったな詩織」

 

 検査次第では、カメリアは引き離される可能性もあった。

 だけど、一旦はそういうことにならなくてよかったです。

 

 一人は、寂しいですからね。

 


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