萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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未来図

「それで、首尾はどうだフランク」

「ベルか……「いつもの」アルカノイズの製造ラインは確立した、だがこんなオモチャで満足すると思うか?」

「当たり前だ、失敗作のパナケイア流体の研究にただのアルカノイズ、それじゃつまらない……とびっきりのモンスターが作りたい。そうだろ?フランク」

「そうともよ、俺達が見たいのは俺達が作った最高のモンスターが大暴れする所だ」

 

 フランクとベル、二人の錬金術師はパヴァリア光明結社において「怪物研究部門」に居た50年来の友人だ。

 見た目こそ青年の様だが、その実年齢は不詳。

 

 風鳴訃堂の手引きでアジトを得て、こうして「依頼」の通りアルカノイズを作る為だけにこの日本にやってきたのではない。

 異端技術による「最強のモンスター」の製造、それこそが彼ら二人の夢だ。

 

 結社の中での派閥争いで僻地へと追いやられ、叶えられる事のなかった理想。

 

「それでフランク、今回は何にするんだ?頼めばあの爺さんなら大体のものを用意してくれるだろうが」

 

 だがそんな彼らの理想を風鳴訃堂は「良き」と拾った。

 当然、国防兵器・異端技術兵器として役立つであろうという算段からだ。

 

「こいつはお前も驚くぞベル、今回もホムンクルスを使った人型だ。だがその素材が特別でな」

「もったいぶるなよ」

「シンフォギア装者「風鳴翼」の血と、「イカロスの断片」を使った「人造融合症例」……プロジェクト名は「セイレーン」だ」

「確かに驚いたがまた、よくそんなものを手に入れたな……」

「ずっとやりたいとは思っててな、それを話したら訃堂の爺さんが面白いと二つ返事でくれた」

「マジかよ」

 

 加賀美詩織がもたらしたものは、良くも悪くも多い。

 その一つが「融合症例」の戦力化計画。

 かつて国連がシンフォギア再現プロジェクトの一環として提案したものだが、倫理的問題から否決となったもの。

 

 だが何処の国も勢力も、倫理問題さえクリアできれば是非ともやってみたい計画として内に秘めていたソレを訃堂は二人の錬金術師を使って実行しようというのだ。

 

「ただ完成品を最低でも2体は納品しろって条件はつけられたがな」

「フランク大丈夫なのかそれ」

「……はっきり言って微妙だ、なので……!もうちょっと予算と資材を手に入れる事から始めようと思う」

「だな!」

 

 アルカノイズ製造装置が起動し、赤く妖しい輝きを放つ。

 フランクとベル、この二人の錬金術師は狂っていた。

 

 

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「オーノーノーウ!イェー!」

 カメリアのシャウトがカラオケルーム内に響き渡る。

 画面には物騒な歌詞と飛び散る血飛沫の映像。

 

 調と切歌はあまりもの凄惨な画面とカメリアの声のミスマッチに頬を引き攣らせる。

 

「パワフル……デスね……!」

「見た目によらない……」

 

「……ご清聴ありがとうございました……どうですかお姉様」

「選曲センスにたまげましたが……クリスさんみたいなパワーを感じましたね」

 

 あまりものパワー溢れる歌声に詩織も思わず感心しかなかった。

 

 

 無事に検査を終え、血液の入れ替えを行った事でカメリアの「ひとまず」の問題は解決した。

 彼女が戦闘用ホムンクルスである事や血液中にある謎の物質、そして「ファウストローブ」などまだまだ問題はあるが……それでも今どうにか出来る事は済ませた。

 

 それによって、ここしばらく働き詰めだった詩織、さらには任務続きだった切歌と調はカメリアを連れて遊びに出かける事にした。

 

「それしても、たのしいです。こうやって歌ったり、遊んだりすることは」

 

 カメリアの普段着選び、生活用品の購入、そしてカラオケ。

 翼達の都合がつかなかった為、今日はこの4人での行動だったが。

 

「じゃあ明日はもっと楽しくなるでしょう」

「そうデス!明日は遊園地デス!」

「切ちゃんが一番はしゃいでる……」

 

 明日は「全員」が揃って遊園地に出かけられる、その前の肩慣らし、息抜きとしてのカラオケだ。

 

「……それは……たのしみです。お姉さま」

 

 カメリアに過去の記憶はない、詩織と出会ったその日までの過去全ての記憶は「消えてなくなった」。

 なら、これからそれ以上に作れば良い、昨日が無くても今日があるのだ。

 

 それが加賀美詩織の願いであり、カメリアへの祝福だ。

 

 

 

 4周、交代交代で歌を一通り歌って落ち着いた頃に、詩織が切り出す。

 

「さて、ちょうどいいぐらいに疲れましたし、お腹もすいてきたんじゃありませんかね?皆様?」

「確かに、随分と歌ったから」

「言われて見ればそうデスね……そろそろ帰って丁度ご飯の時間デスか?」

「……お姉さま何を隠してるのですか」

 

 カメリアが鋭い目線で詩織を見る、正確には詩織が後ろ手で隠していた何かだ。

 

「ふっふっふ……スシです。回らない方の……しかも高級スシ屋への紹介状と予約をとってもらったんですよ……!蛇喰補佐官に!」

 

 説明しよう、この時代でも一部の高級店では一見さんお断りというスタイルを続けている寿司屋がある。

 その名も「阿琵洲」、知る人ぞ知るその店は全品時価、そして会員制であり、規定回数以上通う常連となってようやく他人に紹介が可能な店である。

 もう一つ注目する点としては凄まじい機密性を誇る全席個室で、それは時に防諜対策として重要な会議の場として使われる事もある程。

 

 そして裏社会でもある程度以上のパワーを持つが為かあらゆる勢力が簡単に手出しできないという曰くもある。

 

 余談ではあるがかつて櫻井了子もまたこの店を利用しており、その際は取引や会議などではなく普通に食事目当ての客として来ていたそうだ。

 

 

 そんな格式の高さの権化の様な店を詩織に紹介したのは蛇喰補佐官の気遣いだった。

 一見、ガチガチのルールで縛られているが純粋に「おいしいもの」を食べたいと願うものにこそ、この店の真の力は発揮される。

 

 この店にはメニューがない、それはその日、最もおいしい状態で出せるものを出すからだ。

 故に事前予約ではアレルギーや好き嫌いなどの確認も必須。

 

 おいしいものを出す事に拘る余りに、結果として会員制になったが、それは同時に客の満足度の上昇に繋がっているのだ。

 

『とびっきり美味しいものを食べて!野球見て!寝る!女の鍛錬はそれで十分よ!』

 

 かくして、まるでどこかの司令を思わせる格言と共にこの紹介状は加賀美詩織に渡されたのだ。

 

「や……やべーデス!?回らないお寿司のお店デスか!?」

「ど……どうしよう切ちゃん……スーパーのお寿司じゃ満足できない体にされちゃう……」

「……?お二人はどうしてご飯に行くだけなのに怯えているのですか?」

「なんででしょうねぇ……へっへっへっへ……」

 

 この後、切歌と調は世にもすごいものを見る事となる。

 多くを此処で語る事はしない、だが「また行きたい、今度はマリアも連れて」とだけは言っていた。

 ちなみにカメリアは茶碗蒸しが気に入ったそうだ。

 

 四人分の支払いをした詩織は自分の金銭感覚が順調に破壊されている事に気付き、見ない振りをした。

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