萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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幸せな日

「おねえさま、おねえさま、これは大丈夫な奴なのですか?」

「信じて!」

「大丈夫かって聞いているのですよ!?ウワーッ!!!!」

 

 明らかにヤバイ速度で落下するカメリア、だが命の危機はありません。

 これはただのバンジージャンプなのですから。

 

「酷いですよ!おねえさま!信じてじゃありませんよ!」

「そういう遊びなんですから仕方ありませんよカメリア!次からは何のアトラクションかちゃんと確認してから並ぶ、いい勉強になりましたね」

 

 ここは遊園地、遊び、思い出を作るには最適な場所。

 

「ヒワアアアー!!」

 

 エルフナインの悲鳴が聞こえる、あちらもどうやらマリアによってバンジージャンプで無事↓↑したようです。

 

「アタシらは絶叫アトラクションで叫べねえからなぁ……しょっちゅうそれ以上の無茶をするし」

「そうは言うが雪音もお化け屋敷で叫んでたではないか」

「それはまた違うだろ!?」

 

 皆好き好きにアトラクションを堪能していて誘った私も嬉しいです。

 カメリアの思い出作りもありますが、皆さんと私自身の息抜きという面でもやはりこういったものは必要と考えた次第です。

 というか特にエルフナインちゃんがまるで部屋から出ないので、こういった場面で連れ出さないとキノコ生えてきそうだったので……。

 

 昔の私からは考えられない行動力です、むしろこういうのは率先して不参加表明をしていた様なものですが。

 

 

「どうですか、カメリア?」

「……たのしいです!」

「くっ!負けたっ!」

「運転には自身があったというのに負けたデス!」

 

 ゴーカートで切歌と調のコンビと大差をつけて勝利してご満悦なカメリアに私も笑みが抑えられません。

 親バカ……?シスコン?どっちが近いのかはわかりませんが溺愛というのはこういう事なんでしょうか。

 

 響さんと未来さんは観覧車二周目ですし……最近イチャつく時間が少なかったからでしょうか?

 

 ……っと、電話ですか……仕事の。

 

「すみません調ちゃん、カメリアの事をお願いしていいですか?」

「……?わかったよ」

 

 楽しくても、やっぱり仕事は大事だ。

 やらなければならない事は、やる。

 

『すみません准尉、お休みの所でしたでしょうに』

 

 相手は蛇喰補佐官だった、訃堂のジジイでなくてよかったです。

 

「いえ、休みとはいえ私達の仕事は急を要する事もありましょうですね」

『つい先ほど摘発した組織からアルカノイズを押収しました』

「それは……」

『どうやら……また残党がこの国に紛れ込んでいるようです。また忙しくなりそうなので、今日はしっかり楽しんで、休んでくださいね』

 

 ……さすがに簡単には解決しない問題ですね、パヴァリア光明結社。

 もしも纏める存在が残っていたなら、いえ……残っていたとしてもですかね。

 

 叶わない「もしも」なんて無駄でしかありません。

 

「すみません、戻りました……っとあれクリスさん?カメリアは何処へ?」

「翼と一緒にジェットコースターに行ったよ」

「大丈夫かな……」

「大丈夫じゃねえと思うけど大丈夫だろう」

 

 身長問題はどうにかなりそうですけど、あれって側から見てる分にはそんなに早くないけど主観だとすごいスピードなんですよね。

 

「ホアアアアアアアアア!!!」

 

 っと噂をすればなんとやら……カメリアのすごい悲鳴が聞こえてきました。

 

「エンジョイしてますね」

「そういうお前は楽しんでるのかよ」

「十分に」

「そうかよ、で……さっきの電話は?」

「まあお仕事ですよ、まだアルカノイズの国内での流通が潰せてなかったというだけの話です」

 

 それこそ皆は世界を駆け回ってる分、私の方がまだ楽かもしれませんね……一緒に肩を並べて戦うという事こそありませんが、仲間だっていますし。

 

 ……ってなんかふんわり?

 

 ああ、クリスさんに抱きしめられてる?

 なんか少し安心しますね。

 

「お前はいつも一人で背負い込みやがって……まあアタシらも人の事は言えないか……」

「皆背負うものは何かしらあります、それが何かの違いだけで……私のはまあ、こうしてクリスさんに抱きしめられただけで随分と軽くなるタイプのものですよ」

 

 というか思えばしょっちゅうクリスさんに癒されていますね……次点でマリアさんと翼さんですが翼さんの場合密着されると私がザコになってしまってそれ所ではありませんが。

 

「たまに思うんですがどうしてクリスさんは私を甘やかすんです?」

「そりゃお前が甘えれる相手がアタシしかいねえからだろ?絶対センパイの前だったら見栄は張るだろうし」

「そういうものでしょうか」

「そういうもんだろ、お前だってカメリアやチビ二人を甘やかしてるだろ」

「……ですね」

 

 こうして誰かに甘える事、それもまた私に与えられた祝福。

 

「もしクリスさんが辛い時があったら、その時は私がクリスさんを甘やかしますよ」

「だな、っと今回はこのぐらいにしておくか」

 

 いつまでもくっついているわけにはいけません、見られようものなら恥ずかしさで爆発しそうです。

 クリスさんの方が。

 

「ただいまーデース!」

「ただいまです、お姉さま」

 

 っと翼さんとカメリア、切歌・調コンビが戻ってきたと思いきや響さんに未来さん、マリアさんにエルフナインちゃんも一気に帰ってきましたね……っていうか一人なんかスタッフさんが居ますが……。

 

「あの……何故スタッフさんが?」

「お姉さまや皆さんに今日はたくさん楽しませて貰ったから、私からも何かしたくて相談したら記念撮影がいいって事になったのでお願いしたのです!」

「そういう事です、写真撮影もスタッフのお仕事ですから」

 

 あれ、なんか……。

 もう何か喉が熱いし顔が痺れる。

 

「あーあー詩織泣いちまったよ、どうすんだよ切歌よぉ」

「でででデース!?なんでアタシのせいデス!?」

「冗談だよ、泣くほど嬉しいのか詩織」

「あたりまえじゃないですか!!!!!」

「ほら、詩織これで顔を拭きなさい。せっかくの記念撮影なんだから笑って」

 

 マリアさんからハンカチを受け取って涙を拭く、そうです……こういう時こそ笑顔です。

 

「調と私は隣同士デース」

「なかよし……」

「カメリアさんは詩織さんの前に、それでボクは……何処に?」

「私の前に来なさいエルフナイン」

「マリアさん!ありがとうございます!」

「響の隣は当然私で、クリスはどっち側がいい?」

「雪音は小日向側で、私はマリア側、そして詩織を挟む事になるな」

「え、私なんかが真ん中に……いえカメリアが真ん中ですね」

 

「えーそれでは、1+1は幸せの!」

 

 

 2、それは一人では知れない幸せ。


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