萌え声クソザコ装者の話   作:青川トーン

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愛している

 もしも、世界の全てがキミが生まれた事を罪だと言っても。

 私だけはキミの味方でいたい。

 キミを守りたい。

 

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 ノートパッド型の大型端末で一課のデータベースを閲覧する詩織の隣にカメリアが座る。

 

「カメリア、どうかしました?」

「……お姉さまにもやるべき事があるというのは承知の上ですが……ここの所少しお姉さまと一緒に居られなくて寂しいのです」

「ごめんなさいカメリア、でもこれは必要な事だから」

 

 事件から6日、まだ敵の足取りはつかめていない。

 時は早いものでアダムとの決着が響の誕生日たる9月13日、それから直ぐに結社残党との戦いが始まり、10月の9日にカメリアと出会い、今日で11月が始まる。

 

 例のティキ、響によって粉砕されたオートスコアラーからサルベージしたデータからどうやら南極に先史文明関係……特にアダムがなにやら探していたものがあるらしく調査隊が派遣されている。

 更にリビルドシンフォギア、アマルガムモードの調整と装者達の訓練も合わさり、猫の手も犬の手も借りたい程に忙しい。

 

 そんな中で日本国内での結社残党の起こした事件、はっきり言って詩織は過労で誰か倒れるんじゃないかと心配でならない。

 

 故に自分に出来る事をやって少しでも手間と時間を減らそうとこうして、家の中でも可能な仕事はしている。

 それがカメリアとの時間をすり減らしていることも。

 

 だが、それが必要な事だと、共にある為に必要な事だとカメリアも理解している。

 だから何か手伝える事はないかと考えた。

 

 詩織と共に居られず一課やS.O.N.G.の本部などに預けられている時には自分から積極的に色々な事を学んでいる。

 そしてその中で、自分自身の事も少しだけ理解した。

 

「お姉さま、私は戦闘用ホムンクルスです。必要ならば一緒に……」

「それは、それはダメ。貴女にはファウストローブも、シンフォギアもない」

 

 自身が作られた存在であり、定期的に整備しなければ死ぬ存在である戦闘用ホムンクルスである事も生きていく為に必要であるから知らされた。

 それが役に立つと考えて、カメリアは詩織に提案したのだが、それを詩織は拒んだ。

 

 たとえ「ウソ」をついてでも。

 詩織はファウストローブを隠し持っている、そしてカメリアはその存在に気付いている。

 それがカメリアの心を締め付けたが、同時に嬉しさも湧き上がってきた。

 

-お前は使い捨ての道具、ファウストローブを動かす為のパーツにすぎな……

-フェニックスのファウストローブが最優先だ、消耗品など

 

 カメリアにも詩織に黙っている事があった。

 少しだけ、少しだけだが自分自身の記憶が蘇っている事を。

 

-今日から貴女は私達の……

 

 消耗品として作られた自分は何故か使われる事無く、大事に扱われた。

 そしてそれは今も続いている。

 

 顔の思い出せない誰かが、目の前に居る彼女が自分を大切にしてくれている。

 それが嬉しくて、残酷だった。

 

 道具として生まれたのに、決して本来の役目を果たせない事、自分は守られる側として見られている事も。

 

「……お姉さま、私は貴女を……」

 

 

 その先の言葉を告げようとした時、端末の呼び出し音が鳴る。

 相手は蛇喰補佐官だ。

 

「はい、加賀美です」

『事態が動きました、アルカノイズの反応が複数個所で同時に発生したので対処してください』

「わかりました、すぐに」

 

 運命は決して詩織を放っておいてくれないし、詩織は誰かが犠牲になるのを放ってはおけない。

 だから戦う。

 

「カメリア、ごめんね。でも私も貴女の事を大事な存在だと思っている。居なくなって欲しくない、傷ついて欲しくない……ワガママでごめん」

「……いいのです、伝わっているなら……」

 

 詩織にもカメリアにも「本当の家族」というものがよくはわからない、だけどもしも通じ合えているのなら、それはきっと家族なのかもしれない。

 

「いってらっしゃい、お姉さま」

「いってくるよ、カメリア」

 

 玄関を飛び出し、ギアを纏い空へと翔け出す詩織をカメリアは見送る。

 

「どうか、お姉さまが無事に帰ってきますように」

 

 祈りと共に。

 

 

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「クソ!あっちはただの強盗かよ!」

「強盗ごときの為にアルカノイズなんて!随分と贅沢な使い方ね!」

「それでこっちは何だよ!?」

 

 マリアとクリス、銀の煌きと銃弾の雨がアルカノイズを浄化する。

 現在同時に三箇所でアルカノイズが発生している、最初は二箇所であったが途中で一箇所増えた。

 そこへ切歌と調が向かった結果、なんと犯人はただの強盗だったのである。

 

 犯人自体は確保されたが最後っ屁と出したアルカノイズの処理に手間取っているというのが現状。

 響と翼が向かった先は発電施設だった為か、まだ相手の目的がなんとなくであるがわかる。

 

 だがこの「工業跡地」だけは謎だった。

 

 現在、一課が付近を捜索しているが未だ目的が不明、しかしアルカノイズの存在から何か意図がある筈であった。

 

「っとおおい!何してんだアンタ!」

 

 ノイズを片付けるクリスの視界に映ったのは一人の黒服、一課の隊員だろう、何故かまだアルカノイズのいるクリス達の方へと歩いてくる。

 

「待ちなさい、様子がおかしいわ」

 

 よくみるとその顔は明らかに生気がなく、異常である事が伺えた。

 そして隊員だったものは突然膨張し、肉の怪物へと変異した。

 

「ウソ……だろ!?」

「そんなバカなこと!?」

 

 触手を蠢かし、骨が変形した牙と爪を揺らす、赤い肉の冒涜的な姿、そしてそれは一体ではない。

 複数の人影が次々と現れては変異して肉塊となり、合体していく。

 

 そしてそのおぞましい光景には似合わない「可憐な歌」が聞こえる。

 

「今度はばっちり、できた」

 

 上を見上げれば、穴の開いた屋根から同じ赤い肉の触手を垂らし、灰色のギアを纏った少女「テレーヌ」が居た。

 

「てめぇか……てめぇがやったのか!!!」

 

 前に見た姿より「妖美さ」を兼ね備えた肉と機械の融合した姿の少女にクリスは怒りの叫びを上げる。

 

「うん、お友達になった。先生とパパに教えてもらった通りに」

 

 テレーヌの言うお友達とは当然、自分がコントロールする「眷属」の事だ。

 先日に得た薬物を使って生成したエキスと精神制御・肉体制御、そして錬金術による融合によって生み出したのは原始的な「キメラ」だ。

 

 それに対してマリアは沸きあがる怖気を抑えながら、どうするかの対策を考える。

 

 残酷だが、素材にされた人々はとてもではないが元には戻せないだろう。

 それぐらいの不可逆は見て判る。

 

 だからその残酷に手をかけるのは自分が背負うべきだ。

 

「クリス、あなたはあの子を程ほどに相手をして……私はあっちの化け物をなんとかする」

 

「……悪い」

 

 翼によく似た顔をしているのに、どこまでも残虐で、怪物的な少女にクリスは銃を向けた。


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