萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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父と子と

 4日が経過した。

 太平洋上に現れた黒い雲は広がり続けた、光を遮り、紫電を走らせる不吉なソレの動向を多くの者が監視する。

 

 既にハワイに住まう住人は避難を終え、残るのは監視の為に来た米軍と国連の調査団だけ。

 

「超常というのは、やはり恐ろしいものですね」

「そうだな……いざというときは反応兵器を叩き込む許可こそ降りたものの……アレ相手に果たして通用するものか……」

 

 既に何度かミサイルや艦砲射撃などの攻撃は幾度か試されている、だがそのいずれも効果は上げていない。

 まさに「無意味」だった。

 

「S.O.N.G.は対策があるとは言っていたものの……それは本当に使えるのですかね?」

「チフォージュ・シャトー……「魔法少女事変」の際に地球を滅ぼしかけた力。はっきりいって最初は米国政府も信用していなかった、だが……あの子と「シンフォギア」が見せてくれた可能性に力を貸す事を決めた」

「それはまさか……」

 

 米国から来た男は不敵に笑った。

 

「うちの娘さ、あの「炎上案件娘」の影響でシンフォギアが欲しいなんて駄々をこねてな。旧F.I.S.に残っていたデータとパヴァリア光明結社から司法取引で免罪された錬金術師の協力でなんとか形にはした。後はあの子次第だ」

「心配ではありませんか、人類防衛の最前線に娘を送るのは」

「私は心配はしてないさ、彼女が……立花響がきちんとあの子の面倒を見てくれるだろうからな」

 

 

 

 男の名はオズワルド、櫻井了子を除けば初めて「シンフォギア」を再現する事に成功した組織に所属する者だった。

 

 

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「翼御姉様、父上、カメリアちゃん、お茶をどうぞ」

「どうぞなのです」

 

 アオとルリ、翼によく似ているが少しばかり幼く、なおかつおっとりとした性格の二人の少女が茶を運んでくる。

 

「悪いな翼、加賀美カメリアくん、突然に呼び出す事になって」

「いえ、お父様。私は特に気にしておりません……しかし、何故カメリアも?」

 

 未来とガングニールの最終調整を行う中、翼とカメリアは八紘によって呼び出されていた。

 決して時間があるとはいえないこの状況であるなら多少の用事であれば普通に通話で済ませるであろうし、重要な事であるならなおさら司令である弦十郎を経由するであろう。

 

 そして「家族」として会いたいというのなら、何故カメリアがここにいるのかが謎である。

 しかし当のカメリアはここに来た時点でその理由を察する、いや「感じる」事が出来た。

 

「本来は私から出向くべきだとは思った、だがその場合……彼女から預かった「コレ」を持ち運びせねばならない。となると警備の都合上かなり不備が出るので二人を呼び出させてもらった」

 

 八紘が机の上に置いたのは黒いケース、小型の「聖遺物」を保管する為のモノ。

 認証により開かれたソレの中には小さな「赤い羽根」が入っていた。

 

 翼は息を呑んだ、直接見た事はないのにこの羽根の存在を知っていた。

 

「フェニックスの……羽根……」

「そうだ、そのファウストローブ……詩織くんがかつて戦った結社残党が使用したものを私個人に預けたのだ」

 

 翼にとってそれは完全に初耳だった、確かにカメリアを保護した際に結社残党と戦う事となり、ファウストローブを纏った者と戦ったとだけは聞いていたがそのファウストローブが「フェニックス」であり、それを詩織が取得していた事も聞かされていなかった。

 

「彼女は言っていた、これは自分には必要のないものだから好きに役立てて欲しいと……だから私はこれを君達に託す。それが私が考えた中で恐らく最善の選択だ」

「お父様、聞かせてくれますか、何故詩織がこれを防衛省やS.O.N.G.ではなく貴方個人に預けたのか」

 

 当然だが個人で聖遺物を保有するのは現状、護国災害派遣法に抵触する可能性がある。

 故にファウストローブも認可されない場合は政府の管轄となるが、それを態々認可を得てまで八紘個人に預ける事にしたのか、それを翼は知りたかった。

 

 

「もう一度、フェニックスの力を使えば彼女は、加賀美詩織は別の存在になってしまう。そしてその可能性の先に世界を滅ぼしかねない「怪物」に成り果てる可能性があると。故にその可能性を消す為に私に預けたかったそうだ」

 

 それを聞いた翼は、寂しそうに笑う。

 

「いつもそうだ……詩織は私にはそういった事を話してくれない」

 

「不器用なのだ、彼女もまた」

 

 愛するが故に、不安を悟られたくない。

 わかっていた筈だった。

 加賀美詩織がそういう人間なのは。

 

 

「でも、フェニックスは来る。おねえさまを消したがってる怪物が」

「それはどういうことだね」

「その羽根を見て私ははっきりわかりました、太平洋の空に浮かんでいるあの雲は「煙」で、中にいるのは間違いなく「フェニックス」だって」

 

 カメリアはフェニックスのファウストローブに手に取り、「赤い瞳」を光らせる。

 

「……それにこれは、怪物として作られた私のもう半身……やっと手にとれた」

「カメリア、怪物というのは……」

「ノーブルレッドの三人と同じ、パナケイア流体を使った怪物、違うのは……私は人間じゃなくて最初から怪物として作られた、それだけ」

 

 カメリアの灰色の髪が先端から赤く色を「取り戻していく」、それが本来の姿の姿なのだろうと翼と八紘は気付いた。

 だからカメリアの言葉の説得力も感じる事が出来た。

 

「だとして、その詩織に敵意を持ったフェニックスは一体どこから……そいつもまた結社が作った怪物なのか?それともまた別の存在なのか?」

「……そこまではわからない、でも……この力は必要。皆がシャトーを起動しに行っている間、おねえさまを守るためにも」

 

 幼き赤い瞳は、もうすぐやってくる敵を見据え、戦う意志を宿していた。

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