萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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本日は二回更新です


舞い降りる災厄

 天には星空。

 七つのシンフォギア、七つの聖詠、七人の戦姫。

 

 七つの音階と七つの惑星の調和により生まれる力、それこそが錬金術師キャロル・マールス・ディーンハイムが辿り着いた答えだ。

 

 

 それは間違いなく、正しかった。

 

『聖詠だけでこれほどのフォニックゲイン……!失われた統一言語に代わって心を繋ぐ為に人々が求めた「歌」と「錬金術」の調和……それが、今目の前に……!』

 

 キャロルと共にエルフナインもまたそれを見ていた。

 興奮と感動が押し寄せる、これが、これこそが父が、多くの錬金術師達が求めてきた「命題」の答え。

 

「ああ、そうだ……パパがオレ達に託した世界を識る事だ」

 

 思わずその美しい歌に涙が勝手に流れる、だがこれはあくまで始まりでしかない。

 

『美しいな、見ているかエンキ。お前が守ったものだぞこれは』

 

 そしてそれはネットワークに繋がったシェム・ハもまた同じだった、人間が自分達の設計を超えていった事に喜びが隠せない。

 

 聖詠からノータイムで繋がる7人の絶唱が始まる、余分な機能を全て切除した為にシャトー起動の為のエネルギーはかなり減らしてある、だがそれでもエネルギーの充填が予想以上に早かった。

 

 それは皆の心が一つだったからだ、一人の少女を助けたいという気持ちが繋がっているが故だ。

 

「シャトーを起動、「バベル」シーケンス……太平洋上に転移術式を起動」

 

 キャロルは手動で発射の為の制御を行い、砲口の上空に空間転移の術式を展開する。

 

 モニターに映るのはハワイからの映像、座標は問題なく雲の真下に出口。

 

「キャロルちゃん!」

 

 絶唱のエネルギーが解放され、共振現象によって聖遺物が連鎖して起動、ジェネレーターに「分解」の為の光が満ちる。

 

「消し飛べッ!!」

 

 そして最終ロックを解除、光は天に向けて放たれた。

 

 

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 太平洋の海面から光の柱が伸びる、それは真っ直ぐに雲に突き刺さった。

 暗黒の闇が段々と赤熱し、膨張を始める。

 

「効いているというのか!?」

「これならいけるかもしれん!」

 

 ハワイの観測所からもその光景は見えていた、これまであらゆる攻撃を無効にしてきたソレがあきらかに状態を変えている。

 

 だがオズワルドは何かが警鐘を鳴らしている様な感覚に襲われる。

 

 

 ハワイのすぐ側まで迫っていた雲が中央に集まり、球状に変形し、赤く……まるで太陽の様に姿を変える。

 

 

「まずい……伏せろ!!」

 

 その叫びと共に観測所地下に凄まじい衝撃が走った。

 

 モニターは全てダウンし、照明も停止、凄まじい熱と共に地下に光が射す。

 

「誰か!?生きてる者はいないか!?」

「はい!なんとか!」

「状況報告!地上班!誰か!誰か応答しろ!」

 

 錬金術による防護手段が取られていたおかげでその場に居た者達は無事だった。

 だが基地内の通信が途絶、混乱の中にあった。

 

「風……?地下だというのに風だと……?」

 

 その中で一人が気付き、天井を見上げる。

 視線の先には星空が広がっていた。

 

 

「まさか……」

 

 

 オズワルドは最悪の想像をする。

 

「一部通信復旧!暗雲は消滅!しかしシャトーが攻撃を受け損壊!」

「海上に空間の歪みを検知!」

 

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 パラパラと落ちて来た破片が頭に当たり、キャロルは目を覚ます。

 

「何が……何があった!」

 

『……だ……誰か返事をして!』

 

 聞こえるあおいの声に気付き、痛む体を動かしてキャロルは端末を手に取る。

 そして現状に気付く、瓦礫に埋まり、気絶している装者達の姿、幸いにも誰一人死んでも欠けてもないが、防御機能を削ったシャトーにこれ程のダメージを与えたのは一体なんだ?

 

「オレだ……キャロルだ、気絶しているが死人は出てない、何が起きた」

『無事ね!!暗雲は消えたけど!敵よ!敵が来たの!』

「なんだと、転移は片道の筈……」

『敵は空から飛んできた!司令もカメリアちゃんもオートスコアラーも全員で応戦しています!援護をお願いできますか!』

 

 続けて聞こえてくる藤尭の声、それで目が覚めたのか最初に身を起こしたのは翼だった。

 

「これは……一体何が……皆は……詩織は……!?」

 

 衝撃で気を失っていた為に混乱があったがそれどころではない、キャロルは少なくないダメージを受けていた、逆に翼はぱっと見る限りは問題ないと判断する。

 

「おい、風鳴翼!急げ!お前の愛する者を救いに行け!!ここは俺がなんとかする!」

 

 だから、今動ける者を動かすしかない。

 

「……わかった!」

 

 しかし翼も戦士だ、一瞬の混乱こそあれど、すぐに切り替え、崩壊したシャトーの天井から飛び出す。

 

「おい起きろ!歌女ども!敵だぞ!」

 

 

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 天に伸びるシャトーには大穴が開いていた。

 それは太平洋上から現れた「少女」の反撃たる蹴りで出来たもの。

 

 そして何よりも異様な光景は星空が「赤く」染まっていた事。

 

 地上から弾幕の様に放たれるカーボンロッド、かまいたち、コイン、そしてミサイル。

 それを縫うように「敵」は飛ぶ。

 

「ふぅん!!」

 

 ビルを蹴り、弦十郎が跳躍し、宙で正拳突きが放たれる。

 その衝撃波が「真紅」の少女に直撃する、がその防御を突破するには至らない。

 

「風鳴弦十郎、あなたは本当に規格外……私にダメージを与えれるのですから……」

「そういう事はもっと効いているそぶりを見せて言ってもらいたいものだな!」

 

 位相差障壁や神の力による攻撃の無効化に類するソレを纏う少女相手に弦十郎は有効な手を打てていない。

 それは地上に居る他の者達も同じだ、オートスコアラー達はそれぞれエネルギーを節約しながらも援護射撃、ヴァネッサも同じ様に弦十郎と敵の距離が開いた時に支援攻撃を行っていた。

 

 だがその全てがまるで効いていない。

 

「地味どころでは無く!派手に窮地だ!」

「せめて剣であってくれればこちらもへし折れるというのに!」

「それよりもマスター達を助けにいきたいゾ!」

「そっちはガリィに任せたであろう!我々は我々の任務を全うするだけだ!」

 

 復活したオートスコアラーとはいえ、本来の性能の6割も力は出せていない、それに相手が悪い、オートスコアラーに位相差障壁を調律する力はない。

 

「ヴァネッサ……いくらあの人外司令でもあれは分が悪いぜ!」

「そうね、でも「ダイダロス・エンド」はまだ温存するのよ」

「一瞬の足止めにしかならない上に、後一度しか使えないでありますから」

 

 一方ノーブルレッドの三人は既にダイダロス・エンドを一度放っていた。

 というのも最初の「反撃」からシャトーへの直撃と衝撃を防いだのは彼女らだった。

 

 哲学の迷宮を盾としたが、それはあくまで「逸らす」程度にしかならなかった、一瞬の後に迷宮は粉砕され、シャトーへの攻撃を許してしまった。

 

「こちらを見ろ!!」

 

 弦十郎は超越的な技量と力量を持つとはいえ人間だ、となると空中落下中などは無防備になる。

 だからその隙を守るためにフェニックスのファウストローブを纏ったカメリアが体当たりを仕掛ける。

 

 大したダメージにはならない、だが一瞬の時間を稼ぐには役立っている。

 

「私と同じロードフェニックスでありながら……あなたは弱い」

「だとしてもっ!おねえさまを消させはしない!」

「ならば貴女が最初に消えなさい……この世界にロード(支配者)は二人も要らない」

「おねえさまの声で……おねえさまの顔でそんな言葉を吐くなッ!!」

 

 怒りに任せ、カメリアがクローを突き立てる、だが目の前の敵の姿が掻き消える。

 空振りとなった攻撃、カメリアの真上に敵は姿を現す。

 

「無に……還りなさい」

 

「いかん!!前に飛べ!カメリアくん!!!」

 

 弦十郎が叫ぶと同時に敵は、「ロードフェニックス」は真紅の光を放った。

 カメリアは即座に「炎」を爆発させ、強引にその場を脱する。

 

 掠めたファウストローブの真紅の羽根が跡形もなく分解され、大地に穴があく。

 

 

「炎じゃ……ない……!」

 

 炎であればフェニックスのファウストローブで防げる、だがそうではなかった。

 

 周囲に舞い散る赤い塵はプリマ・マテリア。

 つまり錬金術による分解だ。

 

「そうとも……これこそが全てを終わらせる力……加賀美詩織が存在してはいけない理由です!!」

 

 ロードフェニックスは憎しみに満ちた声で叫んだ。

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