萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
「死にに来ましたかっ!!」
「止めに来たんだよ!!」
ロードフェニックスの腹を後ろから詩織の左手が貫いていた。
詩織がこの場に突然現れたのは神の力を使った強引な空間転移、一歩間違えば永遠に「虚無」の世界に追放される様な危険なやり方も知ったものではない。
こいつは叩きのめす、翼さんは守る、それだけが全て。
神の力と神殺しの力をフェニックスギアの力で「焼却」して全て力へと変換、力技で位相差障壁を「調律」してロードフェニックスをこちら側に引きずり出す。
「これがぁっ!!お前の力かぁっ!!!加賀美詩織っ!!」
「そうですッ!!世界もッ!祝福もッ!!呪いも!!運命も知ったものかッ!!翼さんを傷つける奴はぶっ飛ばす!!それだけだぁあぁあっ!!!」
取り繕う事も隠す事も無い、ただ一つの愛だけが詩織を突き動かす。
「なにするものぞ、神の力!!!なにするものぞ、神殺し!!なにするものぞ我が力!そりゃあ!!翼さんを守るためにあるんだろうがぁっ!!」
そのまま強引に突き刺した左手でロードフェニックスを体を縦に引き裂き心臓を掴む、だがそこまでだ。
詩織の左腕は肘まで「蝋」に覆われて「同化」される。
これ以上侵食されてはいかんと、肩もろともに腕を焼却切断し、距離を取ろうとするが、動きを縛っていたロードフェニックスを自由にしてしまう。
「消えろっ!加賀美詩織ィッ!!!」
その瞬間にもロードはカメリアに放ったものと同じ「分解」の赤い光を放つ。
「詩織ッ!!」
天羽々斬を纏った翼が跳躍し、ロードの背に刃を突き立てた。
「ぐあぁっ!?」
白刃はこちら側に引きずり出されたロードの胸を貫通、狙いがぶれて詩織への攻撃がそれる。
「翼さん!無理をしますねッ!!」
詩織はその場でアームドギアを生成する要領で腕を再生させ、同化対策に「シェム・ハの腕輪」をつけた右手でロードの左胸「心臓」の位置の手を突き立てる。
「ぐぅぁああっ!!」
「これがお前の心臓かぁっ!!」
神の力を宿す手は確実に怪物の心臓を捉え放さない、詩織はそのまま腕を引き抜き、心臓を握りつぶす。
「これで……終わりだとでも思ったのですかっ!?」
だが痛みに顔を歪めているもののロードは「死なない」。
「私はロードフェニックス!フェニックスの支配者!殺せるという思い上がりを踏みにじるッ!!」
「まずい……!翼さん!」
ロードを中心として赤い閃光が走る、詩織が翼を抱きしめ、その場から距離を取る。
空間を「抉り取る」ように赤い光の球体が生まれ、収束、そして再びロードフェニックスの姿を形作る。
「再生したッ!?」
「面倒ですねっ!」
「私を殺すだなんて、できやしないんですよ!!私は不滅となってしまった!望んでもいないのに!」
状況は一気に不利に傾く、空を飛べない翼を抱えたままの詩織、相手は強大な力に「不死」そして飛行能力に飛び道具まである。
すぐにでも詩織達の敗北という形で決着はつくのは明白、だが。
「考えがあります」
「どうするつもりだ詩織」
「ユナイトです」
ここには「フェニックスギア」がある、だとするのなら可能なのは「ユナイト」。
唯一の懸念は詩織が「人間」に戻っている事だが、これ以外に策はない。
「本当に、やるのか」
「やりますよ、それが私の思いつく限りの手段です!」
翼を抱きかかえたまま、詩織は空高く舞い上がり、加速していく。
『全く、お前はとんでもない事を考え付く!ならば我の知らない光でやり遂げて見せろ!』
体の主導権を奪還され、一瞬精神の奥底に押しやられていたシェム・ハが目を覚ます。
だがこれ以上、シェム・ハが手を貸す事はない、もうその必要はない。
腕輪とフェニックスギアが「輝き」に変わり、赤く染められた空を「純白」が覆いつくす。
空はまた塗り替えられた。
今度はどこまでも広がる「蒼穹」に。
そこに浮かぶのは一人の少女、青と赤の「エクスドライブ・ユナイトギア」を纏った翼だった。
「力づくでエクスドライブしましたか!だが!たった二人で……勝てるとでも思っているのですか!」
「やれるさ……私と詩織の二人なら!」
『さあ、行きましょう翼さん!』
「たかが「シンフォギア」でッ!!私に勝てるとでも!!」
ロードフェニックスは周囲に赤い光の玉をばら撒く、それは形を変え黒い「カルマノイズ」に姿を変える。
それは一体でも装者が全力で当たらなければ敵わない強敵、だが今の「二人」の前では敵ではない。
翼は一振りの剣を構え、横薙ぎに振るう。
それだけで青い雷を纏う竜巻が発生し、飲み込んだカルマノイズを塵へと還していく。
―BLUE STORM―
もう一度振るえば、今度は炎を纏った竜巻が発生し、同じ様にカルマノイズを消炭へと変えていく。
―RED STORM―
だがそれでもまだ殲滅には程遠い。
翼達からすれば問題は無いが、臨時本部にいる者達にとっては別だ。
おそらくカルマノイズの一体を通すだけで致命的な犠牲が出る。
『ここは任せろ』
シェム・ハの声と共に柱が次々と大地を貫き現れ、本部の周囲を囲い「シールド」となる。
そして次の瞬間に降り注いだのは無数のミサイル、それが次々とカルマノイズへと着弾し、火の玉となる。
「待たせたなぁっ!先輩!」
「雪音か!?」
そこには既に「エクスドライブ」を発動したクリス、そして5人の装者達、そしてキャロルが居た。
「翼さん!ノイズは私達で蹴散らします!だから!」
「立花……わかった!」
その場を任せ、天高く舞い上がる翼と詩織、そしてロードフェニックス。
『そうです、私達は一人でも二人だけでもない……皆が居る、皆が居るから……私は!この選択肢を選ぶ事が出来た!』
加賀美詩織は、神にならない、神殺しにもならない、フェニックスにもならない、怪物にもならない。
どこまで行っても「加賀美詩織」である。
ただただ翼の事が好き過ぎるだけの人間である事を望む。
翼の事を好きでいる為に、神の力も、世界を滅ぼす為の力もいらない。
心の中に熱く燃えるこの炎だけあればいい。
いらないものは全てフェニックスギアによって燃やして力へと変えてしまえばいい。
「なんですか!!その力は!!私はそんなもの!!知らないっ!!」
ロードフェニックスは半ば狂乱と恐怖の中にあった、あのカルマノイズを出現させたのも「勝てる」と踏んだからだ。
それでも戦う事を諦めていない、詩織を消す為に無数の赤い光線を放ち、その距離を詰めさせない。
だが翼は光線を切り払い、炎が壁となる。
「あなた達が纏うそれは何!!何なのですか!?」
新たに作り出すのは「神の力」で作った怪物、だがそれも一瞬のうちに詩織の炎に焼かれて再生さえ許さずに消滅する。
「それはフェニックスでしかない筈!天羽々斬でしかない筈!神の力を宿した聖遺物でしかない筈!!」
ならばと放たれるのはロードフェニックスの最大の武器である「炎」、一兆度の火球だ。
埒外物理学によりコーティングされているが故にコントロールされているが、本来なら顕現した時点で世界が滅びる様な大技。
だが翼の左腕についたシェム・ハの腕輪が煌くと炎は瞬く間に勢いを失い、中心に向かって消滅する。
「世界を滅ぼした私の力に勝てるはずが無い!!一体それはなんなのですかっ!!!」
切り札である炎さえも無力化され、ロードフェニックスに残されたのはその身一つ。
もはや突撃以外に選択肢はなかった。
赤と青の二振りの剣、炎と雷を纏った「双翼」の剣が煌く。
「答えてみろッ!!!加賀美詩織!!風鳴翼ァッ!!!!」
『私達のッ!!!シンフォギアだああああっ!!!』
歪み果てた運命の支配者(ロード)を絆の輝きが斬り裂いた。