萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
誰が呼んだか「世界に迷惑をかける女」「世界を滅ぼす女を滅ぼした女」「特異災害検定第一級」「神さえも予測不能」「王の中の王」その全てが私を指す言葉だった。
『ハハッ!死ぬわ私!手も足も腰も思う様に動かねぇ!』
「うそつけ、まだ動くゾ」「そんな貧弱なありさまで世界が救えるか」「使え!」「シンフォギアのパワーアシストに全部任せてきたツケ」
私は今、平和に配信をしている……してはいるがぁっ!この流行のフィッティングゲームぅ!体を動かすぅ!体が悲鳴を上げている!もってくれ!もってくれ!私の体ぁっ!
必死に足を浮かせて落とす!
『やったか!』
「やってない!」「ミリ残って草」「草」「翼さんなら三回目で倒してた」「もうおりんの体はボロボロ」
『よし!やめるか!』
「逃げるな」「トレーニングから逃げるな」「一面ボスでリタイアした奴はじめてみた」「萌 え 声 ク ソ ザ コ 装 者」
あれから半年、事件の処理は大した事ではなかった。
吹き飛んで使い物にならなくなったシャトーを解体したり、ハワイに住人が戻って復興が始まったり。
私は何度も何度も繰り返し検査を受ける事になったけれど、そのいずれも問題なし。
フェニックスギアに関してはまあ……その、アメリカ政府の言う事を少し聞く事になりましたが私に譲渡する事にはなりました。
なんせ世界とハワイの危機を救いましたからね、原因は違う世界の私ですけど。
シャロンちゃんには本当に悪い事をしてしまった、お父さんのオズワルドさんは「また作ればいいさ」とは言っていたけど、その代わりとしてイカロスのギアは米国に譲渡する事となった。
となると私の腕についていたシェム・ハさんの腕輪も国連に引渡しが決定。
それはいいのかと聞こうと思いきや、いつの間にかシェム・ハさんは姿を消していた。
私の中にも、本部のネットワークにも居なくて、別れの言葉も無しで私達の前から去っていた。
色々変な人は助けてくれるだけ助けてくれて、何も言わずにいなくなってしまった。
本当に短い時間しか一緒に居る事が出来なかった、でもあの人は、私のとってはもう一人の「おかあさん」だった、それは間違いない。
だからあの人に恥じない様に、私はまだまだがんばって行こうと思えた。
「なんだ詩織、トレーニングはもうやめたのか」
「だーっ!翼さん!配信中ですから!その格好で画面に映るのはまずいですよ!!!」
「そっそっそうね!失礼しました!!」
色々と問題が消えた今、私は翼さんと一緒に暮らす事になった。
翼さんと二人きりというわけではない、カメリアも居る。
というのも別に付き合ってるから同居を始めたわけじゃありません、時間が出来て落ち着いてきた事から私は「アイドル」を目指す特訓をはじめました。
そうなるとやはりアイドル歴の長い人と一緒にやるのが一番だろうという事で翼さんの隣で、その有り方を学んでいるのです。
当然翼さんからだけじゃありません、マリアさんとか他の人からも色々学んでいますよ?
でももっぱら体力作り、これじゃあ装者として戦ってた頃となんらかわりないですよ!
おかげで私の配信も体を動かすものばかり「ボディビルダーにでもなるのか」「肩にちっちゃい地球のせてんのかーい!」「(翼さんを取られたマリアさんが)キレてるキレてるよ!」など意味不明なコメントがつくようになってしまった。
どうしてこうなったとしか言いようの無い有様、世界はまだまだ私の理解できないものだらけだ。
『失礼しました、なにやら歌姫様の声が一瞬混じりましたが何事もありませんでした』
「おい!翼さんを映せ!」「どんな格好だったか教えろ!」「超重力クソレズ!!!」「ヌッ!!!」
誰が翼さんのあられもない格好を見せるかバカどもめ、私だけの特権ですよ!!
『許されざるよ!!!』
「ゆ……ゆるされなかった!」「おりんアンチスレが伸びるぞ!」
っと画面に通話の着信です。
『おーい、おりーん!何さぼってんだぁ?』
「うたずきんだ!」「雪音姫ーっ!!」「姫ーっ!!」「姫!姫!姫!」
うわでたクリスさんじゃん、めっちゃコメント盛り上がってるし!
『なんですか!レッスンでボロボロな私を笑いにきたのですか!』
『それもあるけど、お前なぁ!現役の装者がなぁ!なんでゲームのトレーニングごときで根をあげてんだってウチの配信に苦情来てたんだよなぁ!』
「伝書鳩ー!!!」「だめだよ」「アカン」
どうやら私の配信を見た誰かがクリスさんに告げ口したようだ、これはまずい。
『っつーことでお前、明日からオッサンの特訓決まったから』
『ウワーッ!!!』
「司 令 降 臨」「風鳴のやべー人じゃん」「衝撃はかき消した」
クリスさんは、先月ついに歌手デビュー、雪音姫/うたずきんという二つの名前で活動している。
衝撃の初シングルでトップを取り、鮮烈なデビュー、一躍話題の人となった。
ちなみに収益や売り上げの一部は「雪音基金」として戦災孤児などの援助に使うそうです。
ちなみに二ヶ月前、司令がメディアのインタビューを受けている最中に錬金術師がテロを仕掛けてきた。
その際に、司令が素手で爆発をかき消した事でこれまた、話題となり、更に私の「上司」である事も明らかとなった。
その結果というか……何故か私のトレーニング配信の度に司令の登場が期待されている、謎だ。
『……今日は配信終えます!お疲れ様!』
「あ!逃げたぞ!」「逃げるなーッ!責任から逃げるな!!」「おつかりん!!」「草」
配信を閉じ、ぐったりと倒れこむ。
あの後、響さんと未来さんは二人で装者として活動する様になった。
私のガングニールは……未来さんのあの有無を言わさぬ笑顔で借りパクされてしまった。
二人が楽しそうなのはまあいいとして、まだ未来さんは戦いなれてない為に特訓の日々。
マリアさんは国連での仕事をしつつ、翼さんと一緒に歌手として活動。
切歌ちゃんと調ちゃんはその……勉強を疎かにしてたのが少しまずかったらしく補習の日々。
エルフナインちゃんとキャロルは、アルカノイズ根絶の為の研究とノーブルレッドの三人と一緒にパナケイア流体を取り除く為の研究をしている。
皆、まだまだやる事が沢山ある、やりたい事も、やるべき事も。
「おねえさまぁー!!ここの問題わからないですよぉ!!」
出された課題に悲鳴をあげ、カメリアが部屋へと入ってくる。
その……カメリアも私に似たのかあまり勉強は得意ではない、その為よくこうして泣きついてくるが、私に聞かれてもどうしようもない。
「いいのよカメリア……愚かでも……」
「おねえさまみたいになりたくなーい!!!」
「んだとコラ」
最近、反抗期というか調子に乗るようにもなってきており、非常に可愛さと憎さが同居している。
そのおかげか学校では友達も出来たそうだ。
私としてもカメリアにもまた、人と共にあることを学び、知り、感じて成長していって欲しいと願っているのだから、それは叶っているのだろう。
「ふう、さっきは見苦しい所を見せたな詩織」
さっきとは打って変わって他人に見せられる格好で翼さんがやってきた。
「だから私は言ったんですよ!翼おねえさまもちゃんと部屋着をしっかり着るようにって!」
「そうだったなカメリア……常在戦場の精神が足らなかったようだ……」
翼さんは私達と暮らすようになってから前みたいに片付け出来ないウーマンではなくなった。
だが、家の中ではあまりに隙だらけのだらけた格好やしぐさをするようになってしまった。
役得……というものでしょうが!その!非常にドキドキするので勘弁して欲しい!
「なぁ詩織」
「どうしましたか翼さん」
それもまた「変わる」事であり、人と関わっていく中で生まれてくる翼さんの一面なのでしょう。
「私と一緒にユニットを組まないか」
「え?」
なんか変な言葉が聞こえましたね、もう一度聞いてみましょう。
「もう一度」
「私と一緒にユニットを組んで歌わないか」
「ワンモア」
「だからつべこべ言わずに私と一緒に歌え」
気がつくと私は翼さんに床に押し倒されていた。
カメリアは気を利かせて部屋から逃げた、オイオイオイ死ぬわ私。
「詩織は嫌か?私と歌うのは」
「そんなことはありませんよ」
床ドンはですねぇ、あのその、私の心臓が耐えられないのですが!
「だったら……ね?」
翼さんの綺麗な顔と私の情けない顔が近い。
「はい……」
大丈夫、私の心臓はそろそろ爆発する、死ぬ。
これにて、本編は完結です。
思えば随分と長い事やっていた……
皆様、本当に感想・評価・閲覧・応援・ファンアートなど色々なものをありがとうございました。
思い浮かべば、番外編や後日談を追加していきたいと思います。
それではまたお会いしましょう。