萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
月が欠けて100日、ノイズを操る完全聖遺物「ソロモンの杖」の輸送が行われた。
道中、ノイズの襲撃などもあったが結果は無事輸送は完了。
これから先、これが研究される事でノイズによる被害は完全に無くなっていく。
と思われていた矢先に輸送先である岩国の米国基地が壊滅、ソロモンの杖も失われた。
一応はこんなナリでも、二課の装者だ。
司令から最新の状況は聞いている。
翼さんが、かのマリア・カデンツァヴナ・イヴと共演するライブステージ「QUEENS of MUSIC」を前に私は不安を隠しきれない。
今度こそは生で見たいと取っていたチケットは「一般席」、本当は招待席があったのだけど、そっちには立花さん始めリディアンの生徒も何人かがいるが故に、あえて一般席を取ったのだけど……。
……何も起こらなければそれでいいのです、でももしもの時は。
――――
一曲目「不死鳥のフランメ」が終わる。
会場の熱狂はもはや最高潮、私の心ももうウッキウッキである。
ステージの上の翼さんは本当にカッコイイ……。
「歌には力がある」
「それは、世界を変えていける力だ!」
放送で見る以上に、この演出はとても凄い、キラキラして。
ちょっと涙出てきます……。
これが世界への第一歩、翼さんの夢への……
……!
悲鳴!?
『うろたえるな!!』
そんな馬鹿な。
……ノイズッ!!
でもこれはまるで操られているようで……!
『私達はノイズを操る力を以てして、世界に要求する!』
ノイズを操る力……やはり、そうですよね……「ソロモンの杖」!
そして、あの「ガングニール」!!
『私は、私達はフィーネ。終わりの名を持つ者だ!』
またしてもあなたですか!!!また翼さんの夢を阻むのですか!!!
「何だ!?」
「あの子飛んでるぞ!?」
「トリックじゃないのか!?」
やってしまいましたね。
怒りのあまり、イカロスを展開してしまいました……
やってしまった以上やりきるしかない。
イカロスのセンサーを脳に接続。
意外にこうしてみれば世界が広く見えますね。
会場内のノイズ総数54、ロックオン完了。
ホーミングレーザーを開放。
ノイズの掃討を完了、観客に被害は、無し。
「私は日本政府、特異災害対策機動部所属のシンフォギア装者!加賀美詩織!この事態の収束の為、観客の皆さんは冷静に、迅速に避難してください!」
まずは観客を排除する事を優先、またノイズを出されては邪魔になります。
こういった冷静な名乗りは混乱を防ぐ効果があります、よく災害現場で行われているモノと同じです。
「マリア・カデンツァヴナ・イヴ!あなたをテロの現行犯で拘束します!武器を捨て大人しくしてください、さもなくば」
「さもなくば!何かしら」
「射殺します」
既にレーザーのロックオンは完了しているが分かりやすく両腕の機関銃を見せ付ける。
「あら、随分と自信がお有りのようだけど、私はフィーネよ?勝てる自信が?」
「貴女がフィーネだろうとフィーネであるまいと、地獄に送ってあげます、あなたの罪は重い」
この挑発と投降勧告の間も観客の避難は進んでいる。
今の私の視界は360°全て、目の前の私しか見えていないあなたとは違う。
現にあなたの意識は突然現れた私に釘付け。
同じステージに立っている翼さんにも意識が向いていない。
「最終通告です、投降してください。さもなくば、排除します」
「随分、冷徹なのね。あなた」
またノイズを呼び出した!?観客の避難は……まだ!?
人質だと言うのか!!!……けれど目の前に「ソロモンの杖」は無い。
つまり敵は「まだ居る」
「……あなたほど、クズじゃありませんよ」
マリア・カデンツァヴナ・イヴ、私は貴女に失望しました。
先程の世界を沸かせる様な歌も全て冷めてしまいました。
「負け惜しみね、地に降りてギアを解除しなさい」
私はゆっくりと地上に降りつつも。
ノイズへと再びロックオンを行う。
あなたは気づいて無い。
私は「イカロスと一つ」なのだ。
表面のギアを解除。
すると私の周囲をノイズが囲む。
「詩織!」
翼さんが叫ぶ、しかし心配は無用ですよ。
「そう、それでいい。ギアをこちらに投げ渡しなさい」
私は胸のペンダントを手に取る。
そして投げると同時に、「背中」からホーミングレーザーを開放しつつ走り出す。
逃げ遅れた観客達を人質にしていたノイズを無事に消し飛ばす。
そして目の前のノイズに向かって飛び掛かる。
「死ぬつもりか!!!」
「やめろ!詩織―ッ!!!」
目にモノ見せてやる。
ノイズを踏み台にして、更なる跳躍、そしてペンダントを掴み、再びイカロスを纏う。
「バカな!?何だお前は!」
簡単な事だ、私は最初から「バリアコーティング」も「アームドギア」も解除してない。ストレージから服を出し、体の中にアームドギアを展開していただけの話だ、もっともペンダントがないと新たなアームドギアの展開は出来ないですけどね。
おかげで出掛け用の服がレーザーで消し飛びましたが!裏をかけました!
そして跳躍の勢いのまま!
「きゃあ!」
そのアホ面に!拳を叩き込む!!!
「ようやくそのクソッタレな面に一撃入れられましたね、フィーネ」
吹っ飛び転ぶフィーネの姿にスカっとした気分です、タイミング良く観客の避難も終わりましたしね。
「バケモノね、あなた……でもその代償は大きかったみたいよ」
「何の事ですか」
「あなたは世界を前に自らの姿と名前を晒した、私と同じ様にね……あなたはもう普通の生活に戻れない」
……確かに勢いに任せて全てを曝け出してしまいましたね。
「で、それが?どうしたのでしょうか?私は闇に生き、闇に還る。それは今までと同じ、私には失うモノなんてない」
そうです、私は闇の中の存在、人質にされる家族もなければ、友はそこにいる翼さんだけ。
「……ッ!随分と寂しい人ね」
「まぁそんな事はどうでもいいのですよ、現行犯で拘束……ッ!!」
突然空から降ってきた無数の丸鋸を機銃で迎撃する、新しい「装者(てき)」ですか!
「調!切歌!」
しかも二人ですか!これはもう手加減している場合じゃありませんね。
「さて、もう警告はいいでしょう。私ももう手加減している余裕はないので、あなた達を殺すつもりで行かせて貰います」
「……偽善者の仮面を取り繕う事もない!」
黒髪の少女が何やら睨み付けてきますが知ったことですか。
「知った事ですか、やらない善よりやる偽善、少なくともノイズで観客を人質に取るあなた達より覚悟はキマってますけど~?」
「ムカつくデス!」
ムカつくはこっちのセリフです、それにですね!
「翼さん!もうカメラはありません!やっちまいましょう!」
「詩織……」
緒川さんでしょうか、放送を切断してくれたようです、これで思う存分戦える筈です。
「いいんですよ、翼さん。私は所詮影に生きる存在です、今までよりより深い影にでも隠れてればいいんです、それよりも今は翼さんのライブを台無しにしてくれたこいつらを捕まえる、それが大事でしょう?」
「……そうだな……」
「させるかデス!」
緑のギアを纏った方の少女がこっちに向かってきますね、ロックオンは既に出来てます。
「消し飛んでください」
容赦はしない、レーザーを放つ。
「切歌!」
しかしその間にフィーネが割り込み、マントでレーザーを消してくれましたね。
「美しい仲間意識ですね、ならどっちも!」
今までは拡散で撃っていたレーザーを収束へ変更、再びチャージをする。
「させない!」
「邪魔です!」
飛び上がったさっきの丸鋸少女に機銃掃射を浴びせてやりました、悲鳴を上げて落っこちて無様ですね!迂闊なジャンプは狩られるだけですって習いませんでしたか!?
「詩織、仕掛けるぞ!」
「はい、翼さん」
ようやくギアを纏えた翼さんと共に並ぶ、こうして二人で並んで戦うのは初めてですね。
こんな時でなければ、いい気分でしたが――
「よくもやってくれたわね、覚えていなさい」
はぁ?
「逃げるんですか?いや、逃がすとお思いで……?」
どうやらフィーネの一味は逃げるつもりらしいですが、させる訳ありませんよ。
と、また新しいノイズですか、今更高々一山幾らのノイズで私達の足止めが――
「自分達で呼び出したノイズを攻撃した!?」
は?
飛び散るノイズ、私は視線でそれを追う。
ああ、これ「増えてますね」
「翼さん、ちょっとマズイかもしれません、こいつら増えてます。どうしましょう」
「なんだと!?」
マズイですね、さすがにモリモリ増殖するノイズを放っておくわけには行きません、会場から溢れ出たら大惨事です。
「命拾いしましたね、フィーネ。ですが必ず私達はあなた達を地の果てまで追い詰めて今日の事を後悔させてやりましょう」
仕方がないのでフィーネは見過ごす事にした、それにどのみち「ソロモンの杖」をあの三人は持っていなかった。
まだ見ぬ敵が居るはずです。
この後、合流したクリスさんと立花さん、そして翼さんが「絶唱」を「束ね」ノイズは撃退しましたが。
二課本部に呼び出された私は。
拘束されました。