萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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ビッキー誕生日おめでとう(さっきの更新で入れ忘れた)
(なおこれはクリスきりしらがメイン)


番外編:先輩と後輩の雑談配信

 ――最近、切歌と調が詩織の影響か、配信をやりたいと言い出した。

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴには悩みがある、それは月読調と暁切歌がネットで生配信をやりたいと言い出したのだ。

 原因は加賀美詩織と風鳴翼、そしてうたずきんこと雪音クリスの3人だ。

 

 普段から3人の生配信でのゲーム実況や歌の投稿やラジオトークなどを見ている二人だが、詩織の退院祝い配信コラボを見てから二人で配信をしたいと言い出した。

 

 当然ながらマリアは反対した、おっちょこちょいな二人ではうっかり身元をバラしてしまう可能性があるし装者としての秘密事もある、さらに自分達はかつて「テロリスト」だったのだ、何処からそんな情報が漏れるかわからない。

 

 立花響と小日向未来は過去の経験から「自分の知らない不特定多数の目に触れる事」の危険さを知っているし、自分や翼は元より有名人、クリスはいつかのデビューに向けての下積み、詩織に関しても「広報」なので世界に姿を晒している。

 

 それに二人はまだそういう事に疎い。

 

 世間の悪意に晒され、せっかく明るくなってきた二人がまた心を閉ざしてしまうかもしれない。

 そう考えるとマリアは気が気でなかった。

 

 

 とはいえ、二人がやりたいという事なら出来ればやらせてあげたい。

 

 考え抜いた結果、マリアが出した答えは。

 

 

 

「なんでアタシが引率をやらなきゃならねえんだ!?」

「だって貴女、二人の先輩でしょ?」

「いやそれはそうだけど、こういうのはもっと向いてる奴が居るだろ!?」

「だって彼女、危なっかしいじゃない!この間だって、貴女達が居るというのに突然、あんな教育に悪いゲームを始めたじゃない」

「いや、あれは事故だって!アタシらが来るとは思ってなくて準備してたのをそのまま出しちまってパニックになってただけだって!」

 

 マリアが選んだのは、雪音クリスの配信のゲストに切歌と調を出して貰う事だった。

 

「そもそもアタシは生配信じゃなくて編集した動画を上げるのがメインだっての!」

「いいじゃない、たまには生配信だって」

「よくねぇよ!そもそも名前どうすんだ!実名で出すわきゃいかねえだろ」

「それもそうね、そこは二人に聞いてみましょう」

「いや、まだアタシは引き受けるって言ってねえ!」

 

 詩織に任せるとどんな事故を引き起こすかわからない、翼はあまりに名前が大きすぎる、響と未来はそもそも配信をしていないしお目付け役として「配信に出るのは少し怖い」と言っていた、自分も名前と「声」が知れ渡りすぎている。

 

 だから確定事項なのだ、クリスに引き受けさせるのは。

 

「でも、切歌も調も……とてもやりたがってるのよ……私としては応援してあげたい、けれど二人だけじゃ本当に心配なのよ」

「……あーもう、これで断ったらアタシが悪者みたいじゃねぇか……しょうがねえな、一回だけだぞ!」

「ありがとう、クリス」

「ただし、30分の雑談だけだ!それ以上の枠はアタシがもたねえ!」

 

 そういう訳で2日後、告知されたのは「先輩後輩の雑談」。

 「え、大丈夫なの!?」と詩織と翼は心配になりつつも、響と未来は「クリスなら大丈夫」と信じて配信を見る事となった。

 

 

『よ……よぉ!皆!今日もうたずきんの配信に来てくれてありがとな!今日はちょっと特別ゲストをだな』

『もう喋ってもいいデスか!?』

『まだだよ!座ってろ』

 「うたずきんの後輩ちゃんかわいい声だな!」「落ち着きがない」「大丈夫?うたずきん引率できる?」「後輩ちゃんて学校のかな」「うたずきんちゃんはこう見えてかわいいツンデレだからな……後輩に頼まれたら引き下がれないかもしれない」

 

『はぁ……という訳で自己紹介しろお前ら!』

『はぁい!ジュリエットデース!』

『……し…シンデレラです』

『という訳で、アタシの後輩だ。ちょっとこいつらだけで配信させるのは間違いなく危ないという事なんで、アタシの配信で少しだけ体験をさせる事になった』

 「面倒見がいいうたずきんちゃんすこ」「シンデレラちゃんはダウナー系?」「ジュリエットちゃんテンションたけーな!」「うたずきんちゃんの母性がすごい」

 

 ――母性ってなんだよ、母性って

 クリスは思わず溜息をついた。

 

『今日は先輩の配信にお邪魔させていただき感謝デース!こうみえて私、常識人なのでぇ?あ、そこの所ヨロシクデース!』

『き…ジュリエット……そんなに大声出したらみんなびっくりしちゃうよ、私はシンデレラ。特技は家事、よろしくね』

『アハハ、こんな感じで私達は仲良しデース!』

 「なるほど、おてんばとしっかりもののコンビか!やりおる!」「かわいい先輩にはかわいい後輩がついてくるんだな!」

 

 凄まじい速度で流れてくるコメントにすっかりテンションをあげてご機嫌な切歌とまだ若干緊張気味の調、クリスはいつでもマイクを切れる様に、戦闘中のごとく意識を研ぎ澄まし、二人の配信を見守る。

 

『てなわけで先ずは最初の話題を拾っていくか』

 

 クリスの配信スタイルは基本的にコメントを拾って、そこから話題を繋いでいくタイプ。

 ちなみに詩織は自分の用意した話題やコメントから広げていくマルチなタイプで、翼は募集した便りから読み上げていくラジオタイプだ。

 

 おかげでクリスが話題を拾う宣言するとコメントの速度が一気に加速する。

 

『ウワッ!見えないデース!』

『すごいスピード……これが先輩の配信……!』

 

 装者である二人の動体視力も常人より鍛えられているとはいえ、いざこういった初めての試みになると別だ、まるでコメントを追えてない。

 

『っと、そうだな。まずは学校でのこいつ等か!きちんと馴染めてるぞ、でも勉強はアタシと違ってからっきしだけどな』

『デ!?デース!?』

『……今何処のコメントを拾ったの!?』

 「うたずきんは賢いからなぁ…」「成績優秀な先輩」「歌も勉強も両方できるからな…」

 

 だが無数の敵を瞬時に狙い撃てるクリスの動体視力は的確に話に繋げられる話題を見つけ出す、とはいえ余計なコメントも見えてしまうのが玉に瑕だが。

 

『き……きちんと課題は終わらせたデスよ!?それが私達の配信する為の条件でしたから!』

『うんジュリエットの言うとおり、必死になって終わらせた』

 「一気にまとめて片付けるより継続して勉強した方が身につくゾ」「おりんみたいに単位落とすなよ」「そう考えると勉強もアイドルも出来てた翼さんヤバい」「勉強は大事だ、俺みたいにはなるな!」

 

 コメントは二人の学力を心配する声に埋まる、意外にクリスのリスナーは社会人が多い。

 

『そうだぞ、勉強しねーとあのバカみたいになるからな。っとお前達の先輩のバカは二人いたな』

『バカ二人ってもう一人は誰の事デース!?』

『バカ一号はもうわかってると思うが、バカ二号は詩織の事だかんな、あいつも勉強できねえから』

『……私達も気をつけようね、ジュリエット』

『そうデスねシンデレラ』

 「そうそう、おりんみたいにはなるな」「奴は特別だからな……」「バカ一号はそんなになの!?」「バカ一号……一体どんなツワモノなんだ……」

 

 

 

 ――えっ、切歌ちゃんにも私バカって認識されてたの!?

 この言葉にひっそりとショックを受ける立花響であった。

 

 

 

 そんなこんなでクリス+二人の配信は30分間無事に続いた、終了の挨拶までトラブルもなく、二人のミスもなく、なんとかやりきった事で画面に食らいつく様に見ていたマリアは安堵の溜息を吐いた。

 

「さすがね、クリス……貴女はやはり切歌と調の先輩よ」

 

 直接言えばいいものの、独り言を呟くマリアであった。

 

 

 

 

「は、つ……疲れたデース!」

「大変だったねジュリエ……切ちゃん」

「そうデスね、これをいっつもやってる先輩達はスゴいデス!」

 

「ったく、大変だったのはアタシだよ!!ただでさえ生は緊張するのに!お前らヒヤヒヤさせすぎだ……ったく……でもちゃんとリスナーの皆は喜んでくれてた、その点はよくやったな」

 

「皆が……」

「よろこんでたデスか」

 

 楽しそう、それだけの理由で二人は配信をやりたい、と思っていた。

 だが思い出した、リスナーであった自分達もクリス達の配信を楽しんでいた事を。

 

「詩織が言うにはそれは中々出来る事じゃねー、自分も楽しみつつも皆にも楽しんで聞いてもらうのが大事な事だ」

 

「まだまだ勉強不足デスね私達」

「次にやる時は、もっと皆を楽しませられるようにしようね、切ちゃん」

 

 決意を新たにした二人が再びクリスの、うたずきんの配信にジュリエットとシンデレラとして登場するのはまた別の話。


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