萌え声クソザコ装者の話   作:青川トーン

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捏造とIFと考察の塊です、おりんの未来の姿。


IF:ロード・フェニックス

 

 砕けた月が照らす瓦礫の街、漆黒と黄金が激突し、ヘドロの様に黒い血と赤い血が飛び散る。

 

「はぁあ゛っ!ははっ!……その程度ですか!ガングニール!!その程度では私は殺せませんよ!」

 

 濡羽色の装甲を纏い、赤い目を輝かせるのはかつて「加賀美詩織」と呼ばれた少女の成れの果て。

 

「もうやめてください!翼さんだってこんなことを望んでません!!!」

「だから何度だって言ってるじゃないですか!私が望んでいる事なんですよ!この世界を焼却して、世界をやりなおす!その為の力だって私にはある!」

 

 かつてアダム・ヴァイスハウプトやパヴァリア光明結社の錬金術師、そして風鳴訃堂が求めた神の力。

 それは今、力を求めた者達の誰の手でもなく、一人の少女の身に宿ろうとしている。

 

 復活したレイラインと、パヴァリア光明結社の残党、さらには風鳴訃堂さえもを利用し、加賀美詩織がその身に宿そうとしている。

 

「響さん、貴女の神殺しはとても厄介です!だからここで私は貴女を殺すと……そう決めたのです!」

 

 詩織の腹を貫通する響の拳に「黒い蝋」が纏わり付く、それは再び「融合症例」になった詩織のイカロスの蝋だ。

 

「こんな!こんなもの!!」

 

 ガングニールのガントレットを回転させ蝋を粉砕し、響は詩織の腹から拳を引き抜くが、同時にそれは詩織に自由を与えてしまう事でもある。

 

「せっかく得た有利を手放しましたね!!」

 

 イカロスの優位、それは飛行により一方的に相手を撃ち下ろす事が出来る事。

 ギアに搭載された「焼却」システムと融合症例によってフォニックゲインと共に増殖し続ける蝋による組み合わせで詩織は今、イグナイトを使う事が出来なくなった響を圧倒している。

 

「させない!」

 だが詩織が飛ぶよりも早く、響は地を蹴り詩織に体当たりをする。

 

 やはり、戦闘経験の差は埋めがたい。

 無理と矢理で力を得ている詩織より、技と力を持った響の方が強い。

 

「そうです!!私は殺さないと止まりません!殺すつもりでこないと死にますよ!あなたも!皆も!」

 

 仰向けで響に馬乗りになられていても、詩織の顔から余裕の笑みは消えない。

 詩織は腕に仕込んでいたジェムを破壊して「アルカノイズ」を召喚、咄嗟にそれに反応して手を離した響に向けて至近距離から機関砲を撃ち込む。

 

 弦十郎や緒川がここに来れない理由はこれだ、詩織はアルカノイズを手に入れた、装者よりも厄介な相手をよく分かっているからだ。

 

「全部この手で犠牲にしました!配信者おりんも、正義の味方の加賀美詩織も、クリスさんも、私を信じてくれた人々も……だからこそ成さなきゃいけないんですよ!!私の願いを!!」

 

 神の力を手に入れる為には人の身を残しておかねばならない、だから詩織もこれ以上のダメージを負う事で全身をイカロスに変えるわけにはいかない。

 

 響がアルカノイズと戦っている間に体を起こした詩織はギアを解除するでもなく、聖詠を唱えその上から更に重ねる形で「フェニックス」を纏う。

 二つのギアの同時展開など、想定されている筈もない、互いに干渉して拒絶反応を起こす可能性だってあった。

 

 だがイカロスとフェニックスは相性がいい、蝋を薪とし、フェニックスはより強く炎を纏う。

 

 

 

 加賀美詩織は、神の力を「制御」できる。

 それは「フェニックス」が「賢者の石」と同一の存在たる「完全生物」であり。

 賢者の石そのものが「神人合一」を成す為の「鍵」なのだから。

 かつてサンジェルマンが自らを「神の力」の寄り代としたのもそれが理由、自らの体に宿して制御できる自信があったのだ。

 

 「フェニックス」の一部を心臓に取り込み、ニグレド・アルベド・ルベドと「大いなる業」を経た加賀美詩織の胸に宿るソレもまた「賢者の石」そのものと言える。

 

 それが現在、本部でエルフナインが解析と推測によって出した答え。

 

 

 

 

「さあ、そろそろこの世界を終わらせなければいけません……覚悟はいいですか、響さん」

 

 加賀美詩織が成そうとしているのは「神の力」による「世界の焼却」とそのエネルギーによって白紙となった世界への「平行世界の転写」。

 

 

 

 だが、そこに加賀美詩織の居場所も、存在もない。

 

 

 完全なる神人合一は、加賀美詩織という一人の人間の運命と因果にはあまりに重過ぎる。

 達成された暁には、神の力諸共に「加賀美詩織」という存在は解けて消える。

 

 そこには「加賀美詩織という存在が無かった世界」が生まれる。

 

 加賀美詩織の本当の目的はそこにあった。

 

 許せなかったのは世界じゃない。

 自分自身だった。

 

 

 勝ちも負けもない。

 立花響の手で殺されても、神の力を得て新しい世界を作り出せたとしても、彼女は自分を殺せるのだ。

 

 

 

「ははっ……さぁ、私にこれ以上罪を重ねさせたくないと思うなら殺して止めてくださいよ!響さん!」

「どうして……どうしてッ!!」

 

 生命力など、もはや有って無い様なモノ。

 生きても死んでもどちらにしても終わりなのだ。

 

 焼却するのは命だけじゃない、計画遂行の為の「最低限」以外は記憶さえも焼く。

 

 周囲には詩織のフェニックスが使いきれないフォニックゲインが溢れ、光が舞う。

 

「エクスドライブでもしてみたらどうですか!じゃなきゃ貴女も死にます!私のせいでね!!」

 

 フェニックスの炎を纏った拳は一方的に響の体に痛みを与えていく、けれど本当に限界を迎えそうなのは響の心だった。

 

 詩織の攻撃は、あまりに、素人がすぎる。

 響が一撃、その胸に一撃与えるだけでその命を奪う事さえ出来る程に隙だらけだ。

 

「もう……もうやめてください!詩織さん!」

「やっと出てきた言葉が……!それだけですか……!恨み言の一言でも吐けないんですか!」

 

 さっきと違い、もう攻撃すらしてこない響に詩織の怒りもまた限界だった。

 

「翼さんを死なせた私を!クリスさんを殺した私が!憎くないのですか!!」

「二人だって、詩織さんを憎んで欲しいと思ってないってわかる」

「なら、貴女の「ひだまり」を今から焼き尽くし奪うとして、それでも私を憎まずにいられるか!」

「……詩織さんには出来ない」

「……もう私は加賀美詩織ですらない!だからやれる!」

「だったら、貴女は誰なんですか……!!」

 

 

「加賀美詩織は、あの日私が殺した!私は……私はロード・フェニックス!運命を支配する者!」

 

 顔も、瞳さえも覆い隠す様な仮面を形成し、鳥の怪人の様な姿となり詩織、ロード・フェニックスが叫ぶ。

 

 それは詩織が神の力を得る為に暗躍する為に使っていた姿であり、加賀美詩織が自身を殺す為に選んだ姿。

 

 




詩織の「世界再生」の理論はAXZのディバイン・ウェポン、神の力の用語説明から想像したアイディアです。

この世界の詩織はAXZでアダムに唆され神の力の器になりかけたりしてるので、神の力について詳しいです。

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